IS 死神と呼ばれた少女は無限の成層圏を見る 作:狩村 花蓮
第0話 再臨
ー”死神”、”我”がそう呼ばれるようになったのは、果たして何年前だっただろうか?どうしてここまで戦い続けたのだろうか?ー
我は我の愛機に乗ったまま思考を続ける。といってもすでにその機体はボロボロである。各部からフレームがむき出しになっていて、火花が散っている。我がいるコックピットブロックもすでにブロックというには烏滸がましいレベルで開放的になっている。
そして我の眼前には、かつての弟子であり、そして敵部隊の隊長であった女の機体が、こちらにライフルの銃口を向けていた。であればこの思考は恐らく走馬灯の様なものなんだろう。
「終わりです、師匠。貴方の時代は終わりをつげ、世界には安寧が戻る。さようなら、師匠。私の愛した人」
我の最初で最後の弟子、戦士としては優しすぎた彼女は、只厳しく戦いの世界を教えてきた我を”愛していた”といってくれた。我には彼女に愛される資格はないというのに。我はただ、この身を刃とし、この世界に反抗しようとしただけであるのに。
既にライフルは失った。その他の武装も、すでに鳴りを潜めている。だが、まだ闘志はみなぎっている。が、まったく体は動いてくれない。動力系はすべてダウンしていて、もう動くはずはないというのに。動こうとするのはなぜだろうか?
そんなことを考えていると、銃口から光が漏れた。そう認識した時にはすでに。我はその場にいなかった。
きっかけは些細なものだった。ある日、ロシアという国がとある粒子を発見した。その名は『ヴォイド』一定の電流を与えると、ヴォイドを無限に生成しだす画期的な粒子である。当然ロシアはそれに食いついた。これが実用化できれば、半永久機関が完成するかもしれないからだ。
早速ロシアは、国連に資料を提出。国連主導の元、アメリカ、EU、そして日本などが主導となりヴォイドを使った発電設備の作成に取り掛かった。そしてそれは5年の歳月をかけて完成した。『ヴォイドジェネレーター』と名付けられたその発電炉は、原子力よりもはるかに安全に
そして、火力、地熱、太陽光発電よりもさらに莫大な電力を生み出せるようになった。一機でアメリカの1年間の電力の半分を賄っておつりが出るほどであるそれは、すぐに世界各国へと広がった。
小型なため建造コストもさほど高くなくスペースもあまり必要としないため多くの国で運用が開始されたのだ。しかし、それでは終わらなかったのだ。ロシアはヴォイド粒子を兵器に転用しようと考えていたのだ。そしてその悪魔のような兵器が出来上がってしまった。
『ヴォイドアウト・セル』と名付けられた大陸間弾道ミサイルである。そしてその最初の標的にされたのは、日本だった。そのミサイルは九州地方に着弾すると、地図上から九州地方を”消し去った”のだ。
ヴォイドアウトと呼ばれたその現象はまるでブラックホールができたのかというぐらいに大きな黒いドーム状のフィールドを発生させ、それがなくなると跡形もなくさっぱりと島が一つ消失したのである。
それを期に、時代は冷戦の時代へ逆戻りでもしたかの如く、諸外国同士がにらみ合いを続け、各地で内乱、紛争、そして戦争が起こった。そして、世界はその時に”壊れた”のである
人々は老若男女問わず適性あるものは戦争へといやおうなしに駆り出される。各国は『ヴォイドアウト・セル』略して『VOS』に対抗するために新兵器を作り出した。そしてそれこそがあの”死神”を生み出した兵器であり、いわゆるロボットと呼ばれるもの。
『人型戦術対応攻撃機』戦場を次のステージへと加速させるものという意味を込められた機体『アクセラレイト』と名付けられたその機体を初めて作ったのは日本であった。ヴォイドジェネレーターを戦闘用に改良した『ヴォイドジェネレートドライブ』
略して『VJD』を搭載した、半永久的作戦行動を可能とした悪魔の兵器。その第一世代機の名は『
既存の兵器を余裕で蹂躙できるには多すぎるアドバンテージだった。洗車の主砲では傷一つ付けられず、戦闘機は上空を飛行しただけで落とされ、イージス艦の巡航ミサイルは少し近づいただけですべて撃ち落とされる。そして何より、その機体が持つレーザーライフルは、既存の装甲では防げず
簡単に破壊されしまう。そんな”暴力”を体現したような兵器は瞬く間に世の戦場を支配した。そしてそれを作りだした、いや狂気という名の何かにとりつかれた日本の様子は奇しくも、第二次世界大戦中の日本と重なって見えたと後に語られている。他国でもアクセラレイトは作られた。
が、そのこと如くは日本のアクセラレイト、九州凪によって蹂躙された。何故通用しなかったのか?それはパイロットの差である。他の機体は耐G加工を施された専用のスーツを着せられているだけであるが日本のパイロットは違う。
そのパイロットは専用のナノマシンを埋め込まれ機体の生体CPUとして機体を動かすためだけの駒としてナノマシンにより”生かされ続ける”。そして機体とナノマシンで接続されているため、思考そのものを機体にフィードバックすることが可能であり
人間的な機動を可能としている。そしてその第一号パイロットとなりそれから、この悪魔のような時代を第一世代機で戦い抜けた狂人。それが死神と呼ばれた男、ただシノブと名前だけで呼ばれた男だった。
彼はいま、彼の弟子によってとどめを刺されようとしていた。が、動くはずのない彼の機体がそれを良しとしなかった。彼の機体は脚部のブースターを吹かし一気に後方へと加速し、その後方に転がっていた大型の実体剣かつて名刀としてその名をはせたカタナと同じ銘を与えられた
彼の得物、村正をつかみ、再び立ち上がったのだ。既に片腕を失い機体の動力源であるVJDも火花を散らしている、誰が見ても満身創痍な機体の、そのビデオカメラのような頭部のモノアイが光を取り戻す。
ーそうか、まだ我とともに戦ってくれるのだな・・・・・・・・
それに答えるように九州凪は背中にあるブースターを吹かす
ーお前も、このまま終わりたくはないのだな
モノアイセンサーが、目の前のアクセラレイトを見定める
ーでは、行こう。最後の一太刀である・・・・・・・・
機体から悲鳴のような音が聞こえる。それはまるで、最後の力を振り絞る人間のようで
ー我が半身!
彼の生きざまを表しているかのようだった
(せめて、一太刀、届かせて見せる!)
その機体は旧アメリカ製第三世代アクセラレイト『ザ・サウンド・オヴ・ウェーヴ』最新型のVJDと新型スラスターによるそれまでのアクセラレイトとは一線を画す機動力と戦闘能力を持った最新鋭機である。その手には新型レーザーブレード『シーカッター』が握られている。
それを構え、自身の師匠を迎え撃つべく構える。そして、
結果は明白、ザ・サウンド・オブ・ウェーブのレーザーブレードが九州凪のコックピットブロックを貫いた。なんともあっけのない幕引きだった。交差する二機。永遠にその状態が続くかと思われたが、弟子である彼女が通信を開いたことでそれは終わりを告げた。
「師匠。確かにあなたがたは強かった。あの日々は楽しかった、でも、私はそれを裏切った。私を含めみんな倒れました。仲間のところへ行ってください。あなたの、あなたたちの思いは、意志は、私がつないで見せます」
その言葉を聞いて彼は初めて気づいた。
ー何故ここまで戦ってきたのか?なぜ死神と呼ばれるようになっても戦いに身を投じたのか?
その答えがようやく彼にはわかった気がした。
(そうか・・・・・・・・我はただ、示したかったのか・・・・・・・・)
彼は、示したかったのである。たとえ世界が終焉に向かうとしても、何をしてでも自分を変えない。生き続けるという意思を示したかったのだ。
そしてそれを誰かに知ってほしかったのだ。つないでほしかったのだ。
彼にはかつて仲間がいた。とても少なく、短い間だったが志は同じく、とても充実した日々だった。
ー自分の不幸を呪い、それでもあきらめずに抗い続けた男がいた
『俺は、俺の不幸を不幸で終わらせたくない!』
ー世界に絶望して、世界を変えようとあがいた女がいた
『世界は、人の手で変えられる。皮肉だが、それを証明したのが、この機体だ』
ー一度家族を失い、仲間たちの手で再び家族を作れ、それを守ろうとした女がいた
『私の家族はお前らだ。たとえ血がつながってなくても、私はお前らを守る』
ー世界をもとの平和に戻そうとありとあらゆる手を尽くし、敵側へと回ってでも平和を願った女がいた。
『私はただ知ってほしい。人は誰でも平和を望むんだってことを』
ーどんなことをしても自身の生き方を曲げず、最後まで戦い続けた死神と呼ばれた男がいた。
『我は我の生き方を変えるつもりはない。たとえ戦い以外の道がなかったとしても絶対に諦めない』
思うところはあった。喧嘩もした。考えの相違から二つに割れることもあった。が、根の部分で思っていたことは同じだった。
ー誰よりも平和を望み、世界から拒まれようとその意思を未来へとつなぐ
(そうか・・・・・・・・ならば、悔いはない。届いていたのなら・・・・・・・・悔いはない)
すでに満身創痍だった彼は、血反吐を吐きながらも言葉を紡ぐ
「.......おおきくなったな、我が弟子。あと......は....頼 んだ ぞ」
そう紡ぐと彼は、彼の相棒とともに火の海の中へと沈んだ。
ーこれは、例え世界が自らを拒もうと、自らの意志を押し通した、一人の男の物語である。ー
うん、ISなのにIS要素はどこに行ったって感じですが、次回からちゃんとIS要素が入るのであしからず。ではまた次回お会いいたしましょう。サヨナラ!