IS 死神と呼ばれた少女は無限の成層圏を見る 作:狩村 花蓮
第3話 ついぞ死神は学び舎へ
ここまでずいぶんと長い時間を要した。長きにわたる自己研鑽と勉学の果てにようやく力を手に入れるための機会を我は手に入れたのだ。
IS学園、ISを専門に取り扱う、アラスカ条約にづいて設立された、国立の高等学校である。まぁ、国立と銘打っているが、この学び舎に通っている生徒の中には日本生まれでない者もいる。それはなぜか。
『運営及び資金調達には原則として日本国が行う義務を負う。ただし、当機関で得られた技術などは協定参加国の共有財産として公開する義務があり、また黙秘、隠匿を行う権利は日本国にはない。
また当機関内におけるいかなる問題にも日本国は公正に介入し、協定参加国全体が理解できる解決をすることを義務付ける。また入学に際しては協定参加国の国籍を持つ者には無条件に門戸を開き、また日本国での生活を保障すること』
とIS運用協定「IS操縦者育成機関について」で示されている通り、この学び舎には日本だけでなく様々な諸外国もかかわっているため、日本国籍でない者もいるわけだ。最も、ISは世界的に認知されてる兵器であるから当然といえば当然なのだが。
ISの前では現行の戦闘車両や航空機はただの鉄くずと化してしまう、史上最悪の兵器になってしまったマシン。それがISである。だが今、ISはスポーツの面が大きく出されており、この学び舎にいる新入生のほとんどはISの危険性をあまりよくは理解していないだろう。
こう言う我も、一回動かしただけであるため、他より少しわかる程度であるのだが。......さて、そろそろ現実逃避もやめにするか。我は我の前に座る幼馴染の方を見る。周りはすべて女子生徒であり、当人はとても居心地が悪そうにしている。
(全く、あれだけ迷うなと言っておいたはずなのだが。どうして迷った挙句会場を間違えるのだか......これからはバカ馴染みと認識を改める必要があるな)
千冬殿曰く、一夏はあの巨大な試験会場で散々迷った挙げ句、入る部屋を間違えた。そこに在った待機状態のISに、興味本位で触れたところ、動いてしまったのだという。
女にしか動かせないISを動かした男。今のところ、世界でただ一人の例外。そんな希少な存在に対し世界が取る行動など、一つしかない。良くて好待遇、悪くて実験動物だろう。
しかし、まさかISを動かせる男がいるなどと真面目に考える者はこの世界にはいまい。故に不用意にISに触れたことに関する落ち度は、一夏にはない。
だが、これから一夏には前途多難な運命が待ち受けているだろう。絶えず様々な思惑、打算、悪意の渦中に否応なしに巻き込まれるのだから。それだけ”世界初”という言葉は重いのだ。
「皆さーん、席に着いてますかー?最初の
壇上に立つ、眼鏡を掛けた副担任が明るい声で話している。我が入試で相手になった人物、山田殿である。あの時は歳不相応に幼い外見からは想像も付かないほどの覇気を発していたが、今はそれもなく、我たちと同年代と言われれば信じるだろう。
胸だけは不釣り合いに大きいが。どこか子供っぽいのである。我らにとってはインパクトの強い人物であろう。
「それでは皆さん、今日から一年間、よろしくお願いしますね」
だが、今この場ではまだインパクトが足りなかった。我の周りにいる女子生徒の関心はすべて、あのバカ馴染みに集中しているのだから。当然山田殿......いや、山田先生は生徒から無視される。
「......あ、あの〜......皆さ~ん......?」
「「「「「「......」」」」」」
「....ええっと....あの、それでは自己紹介をお願いしますっ!出席番号順で!」
本日教え子になったばかりの生徒達から完全に無視されるという惨劇もめげず、なんとか流れを作り出そうとする山田先生。流石に今回は無視されず、生徒達は自己紹介を始めていった。
「あ」から順番にいけば、「いわがみ」の番はすぐに来る。妙な雰囲気に冷や汗を流す山田先生に促された我は覚悟を決めて立ち上がった。....一夏にはあまり聞かせたくないが、このクラスの人間にはわかってもらう必要があるからな。
”この体”について。
「我は岩上シノブ。一人称が変なのは気にしないでくれ、自身でも変だということは承知しているからな。さて、我はとある”事故”で左腕をなくし、右足に麻痺が残っているため、このように杖を突きながらでなければ歩くこともままならない。
しかしISを学びたいと思う気持ちは君たちと同じくらいあるつもりだ。だからどうか、”普通”に接してほしい。これからは同じ道を目指す”家族”なのだからな。まぁ、よろしく頼む」
周りからの視線には困惑や同情の視線が感じ取れる。....いささか空気を重くしてしまったようだ。だが悪く思わないでくれ、これも必要なことなのだ。
「......え....ええっと、じゃ、じゃあ、次の人お願いしますっ!!」
そして一夏の番となったわけだが、やはりというかなんというか、一夏は固まっているだけで何も話そうとしない。というか話せないのだろう。
まぁ、自分以外で同性の人間は誰もいない訳だから仕方ないといえば仕方ないのだが......。でも、我だって気まずくなるのを承知で言ったのだからお前もしっかりと話せ。それに教師の指示なのだからな。
我は一夏のいるあたりに向けて殺気を放ってみる。すると常日頃我の殺気を感じている一夏は
「くぁwせdrftgyふじこlp」
と、訳の分からん奇怪な反応を示す。それを見てクラスの中で笑いが起こる。山田先生はすごくおろおろしてる。心配してるのだろう。
「織斑君!?だ、大丈夫ですか!?」
「あ、い、いえ。大丈夫れす」
「で、でしたら......あの、自己紹介をお願いします。男の子は織斑君だけですが、あまり緊張しなくていいですよ?」
「............はい」
一夏は立ち上がり、その場で振り向いた。教室の中央最前列の席に座る一夏は、後ろを向けば教室内の生徒全員を見渡せる。それはつまり、自分に集まる視線を真っ向から受け止めるということであり、その数に僅かに息を飲むのが見て取れた。
「えー......えっと、織斑一夏です。よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げる一夏に、続きを期待する視線の十字砲火が浴びせられる。いっそ物理的な圧力すら感じさせる視線に気圧されて口を開いた一夏に、皆の期待が一瞬高まった。
でも、彼女たちは知らんのだ。コツは我でも図り切れなかった根っからの大バカ者であるということを。
「..........以上です」
がたたっ、とずっこける音がする。まぁ当然だろう、来たいずれも甚だしいのだからな。それに、教室の入口を開ける音が混じっていることに気付いた。
見れば、クラスメイトの反応が意外なのか不本意なのか微妙な顔をしている一夏の後ろに、出席簿を振り上げた見慣れた長身の美女の姿が。
――ドグォッ!!
一夏の頭から、凄まじい音がした。その衝撃に覚えがあるのだろう、驚愕と困惑が入り混じった顔でゆっくり振り向いた一夏は――
「げぇ、関羽!?」
「誰が関羽だ誰が」
ドパアァァァァンッッ!!
さっきにも増して凄まじい轟音が響き、一夏が悶絶する。よく割れなかったな。我はあれを耐え来る自信などないぞ。相当頑丈な頭なのだな。
「まったく、こんなことだろうと思ってはいたが。......山田先生、あなた一人に任せてしまい、すみませんでした」
「い、いえ。大丈夫です」
そう山田先生に声をかけ、壇上に上がるスーツ姿の長身の美女。長い黒髪を後ろで結び、それを翻しながらこちらを向く女性はもはや我にとってはなじみのある顔。
ーー織斑千冬ーー
IS乗りの中での世界最強を意味する称号『ブリュンヒルデ』を、全世界の数多の強豪を倒し手に入れた、最初の世界最強。戦い、こと近接戦闘においては彼女の右に出るものはほぼいない。
彼女が使用した機体『暮桜』の単一仕様能力「零落白夜」はISのシールドを問答無用で削り切る。いわば”一撃必殺”の能力だ。シールドが削り切られた方が負けるISの試合だけじゃなく
対IS戦においては絶対的なアドバンテージを持つ能力、そしてそれを使いこなし、幾多の強者を沈めて来た本人の実力もまた、世界最強と呼ばれるにふさわしい。
「諸君、私が織斑千冬だ。お前たち新人をこれから三年で使い物になる操縦者に育てる為の基礎を、徹底的に叩き込むのが仕事だ。私の言うことはよく聴き、よく理解しろ。
出来ない者には出来るまで指導してやる。分からないことがあれば遠慮なく質問しろ、分からないのに黙っていれば力ずくで聞き出す。
私の役目は弱冠十五才を十六才までに鍛え抜くことだ。逆らってもいいが、それ相応の理由と実力、そして覚悟が要ることを理解しておけ。いいな」
暴君のようなきつい言い方だ。だが、ここにいる者たちの反応と言えば......
「キャァァァァッ!!千冬様、本物の千冬様よ!」
「ずっと前からファンなんですっ!」
「私、お姉様に憧れてこの学園に来たんです!北九州から!」
「あの千冬様にご指導いただけるなんて幸せです!」
「お姉様のためなら死ねます!むしろお姉様のために死にたいっ!」
――どういうわけか、黄色い悲鳴だった。
やはり千冬殿......織斑先生のネームバリューは凄かった。やはり織斑先生はISを志す乙女たちにとって、もはや憧れを通り越して崇拝する対象なのだろう。
まぁ、織斑先生の実績を考えれば当然なのだが。しかしこうもやかましくなるとは我も予想外だった。これは、織斑先生があきれたような雰囲気を前面に押し出しているのも仕方ないと思う。
「......どいつもこいつも。何故私のクラスには馬鹿者ばかりが集まるんだ。ようやく解放されたと思えば、またこれか」
これは相当だな。言い方からして、本当に心からの本音なんだろう。有名人とはここまでつらいものなのか。
「きゃあああああっ!お姉様、もっと叱って!罵って!」
「でも時には優しくして!」
「そしてつけあがらないように躾をして〜!」
こいつらの耳は木偶の棒なのか?全く話を聞かないじゃないか。今はまだHRだからよいものの、これがもし授業であったらこれが一時間永遠と続くのか......頭が痛くなる
ほら、織斑先生の顔を見てみろ。呆れすぎてもはや何も言うまいとしている顔だ。我もため息が出てしまう。
すると織斑先生は一夏の方へと顔を向ける。......阿修羅もかくやというほどに顔が強張っている。うむ、あれは確かに少し怖いな。
「で?挨拶も満足に出来んのか、お前は」
うむ、これは終わったな。一夏が
「いや、千冬姉、俺は――」
ズドォ!
......はぁ!?おい待て、今一夏の頭に振り下ろしたのは出席簿だよな?先ほどの非じゃない音がしたのだが......これはもはや織斑先生の膂力の方ではなく出席簿の耐久値が素晴らしいな。
今度あの出席簿を作った人間と会ってみたいものだ。
「織斑先生と呼べ、馬鹿者」
「......はい、織斑先生」
その遣り取りで、二人の関係に気付いたのだろう。教室がにわかにざわついた。
「え......?織斑君ってもしかして、千冬様の弟....?」
「まさか世界で唯一男でISを使えるっていうのも、それが関係してるの......?」
「羨ましいなあ、代わってほしいなぁっ」
やはり皆羨ましがっているのか。でも、あまり良いものではないぞ。織斑先生の実生活は一言で言えばめちゃくちゃだ。どこかの部屋に一週間放り込んだらすぐにゴミ屋敷になるぞ。
しかもジャンクしか食わない。あの人は自炊もできなければ家事全般もできない、体を動かす方が得意な女性だ。一夏レベルで家事ができない限りあの人と住むのは無理がある。
我もすぐに匙を投げるだろう。
と、ここで始業を知らせるチャイムが鳴る。どうやらかなりの時間を費やしていたようだ。我はそっと一時間目の準備をしつつ、一夏ではなくもう一人の幼馴染の方を向く。
ー固いー
我がもう一人の幼馴染に感じたのはそれだった。
(もう少し素直になっても良いのではないか?そんなに固いとあまり仲間ができないぞ......)
そんな心のつぶやきは、届くわけもなく霧散し、我はこの靄とした気持ちを晴らすべく机へと向かった。
一時間目が終わりを告げた。それと同時にもう一人の幼馴染こと篠ノ之箒は一夏を連れてどこかに行ってしまった。まぁ奴らがどこに行こうと我の思うところではない。
流石に非行に走ろうものなら全力で止めるがな。それに、我のこの体では彼らに追いつくのはもう不可能だ。......まぁ、おおよその予想はつく。大方これまでのことと我のことを聞いているのだろう。
(別にお前が気にすることでもないだろう......箒)
我は相当思考の海に沈んでいたのだろう。何度も我のことを呼ぶ声がようやく聞こえた。
「シノブ。おい、シノブ。大丈夫か?」
「......あ、織斑先生。これは失礼、少々考え事をし過ぎていたようです」
声をかけて来たのは織斑先生だった。我に一体何の用だろうか?別に問題行動なぞしておらんのだがな
「いや、大丈夫ならいい。それより話がある、ついてこい」
「いやしかし、これからの授業は......」
「これは速やかにお前に話をしておかねばならないものだ。問題ない、すでに話は通してある。サボったなどと思われる心配はない」
「......了解しました」
......どうやら面倒事のようだ。そう思った我は、憂鬱な気分になりながら織斑先生のあとをついて行った
あまり構造を把握できていないIS学園の中を歩くこと十数分。連れてこられたのは生徒会室だった。
「織斑先生。これはどういうことですか?」
我はたまらずそう聞く。
「面倒事と先ほど述べただろう?それの中身をこれからお前に話してもらう。あとは生徒会長から聞くといい。私は授業に戻るからな」
そう言い、織斑先生は来た道をせっせと戻っていった。仕方がないので我は生徒会室の扉を叩く。
「失礼します。一年A組、岩上シノブです」
礼儀は重要だ。我がそう言うと、中から女性の声がする。
「どうぞお入りください」
我はその指示に従い、生徒会室の扉を開ける。そこに立っていたのは、青い髪色をして、その手に扇子を持った女子学生、眼鏡にヘアバンド、三つ編みで、明るい茶色?のような髪色をした女子生徒。そして、灰色のレディーススーツに身を包み、銀色の長い髪をポニーテールにしている女性の三人がいた。
「お待たせしました。岩上シノブ、ただいま到着しました」
「いいえ。こちらこそ、突然の呼び出しに答えていただきありがとうございます。そう言えば自己紹介がまだでしたね。私の名前は布仏虚、生徒会会計を務めております」
眼鏡をかけた女子生徒がそう言った。この人が虚という人なのだな。
「了解しました、虚さん。それで、本日はどのような要件で?」
「それは、会長がこれよりお話になられます。詳しい話は会長から」
どうやら会長が話してくれるらしい。私は頷き、会長と思われる青髪の女性の方を向く。
「やっと本題に入れるわね。改めて、私は更織盾無。生徒会長をしているわ」
この人は盾無というのだな。覚えておこう。
「さて、長々と話してもあれだし、本題に入りましょうか。と、その前にまずはこの人のことを紹介しなくちゃね。こちらは、本庄薫さん。鷹成重工の技術部の方よ。そして、あなたを呼び出すことになった人でもあるわ。……というのも実は、あの入試の実技試験の時、あそこで観戦していたのは何もIS学園の教師陣だけでは無かったのよ。今期の受験から、伸び代がありそうな生徒で代表候補生じゃない生徒を見つけることを目的に一部のISメーカーの役員の方に見せることになったのよ。そして、その中で選ばれたのがあなただっていうわけ。ちなみにその時いた役員の一人が本庄さんなのよ」
会長の言葉が終わると、本庄と呼ばれたスーツ姿の女性がこちらを向き、席を立って礼をしてきた。
なるほど、話は何となく読めた。それはありがたい。ありがたいのだが……
「鷹成重工。鷹成といえばあの倉持技研と肩を並べる有名なISメーカーじゃないですか。それが一体わr…私に何のようなんでしょうか?」
「それは本人から聞いてちょうだい。では、本庄さん。あとはよろしくお願いします」
本庄さんは、会長に一礼した後、私の方を向いた。
「あなたが、岩上シノブさんね?私は本庄薫、鷹成重工の技術部長です。本日はあなたにお願いがあってきました」
「お願い、ですか。…とりあえず話を聞かせてくれませんか?」
少しきな臭いが、聞くだけなら問題なかろう。我は話を聞いてみることにした。
「先ほど生徒会長さんがおっしゃったように、我々はあの実技試験を観戦しておりました。そして、その中でも我々の目に留まったのがあなただったのです。片腕しかない状態であそこまでの戦闘機動を行い、勝利こそできなかったものの、あの山田氏に引けを取らない戦いっぷりを見せてくれました。ここまでの逸材は、今まで我々が見てきたどのISパイロットよりも優れていると断言できます。そういうことなのでぜひあなたには、我々が新開発し、最終試験を行っている次世代ISの、テストパイロットをしてほしいのです。誤解を恐れずにいうのであれば、我々との契約を結んでほしいのです」
本庄さんの口から飛び出てきたのは新型ISのテストパイロットの勧誘。テストパイロットということは、企業に専属パイロットとして所属するということ。だとすれば色々とメリットはありそうだな…でも、やはり胡散臭いな。そんな甘い蜜には屈しないz…
「もちろん専属のISパイロットとして契約させていただきますので、そこで給与は発生します。支払額はそこそこの額を保証させていただきます」
やはり給料は出るのか。ふむ…特にデメリットもなさそうだしな。了承しても問題なかろう。お金はやはり必要だ、うむ。
「…わかりました。その件、お受けしようと思います」
「本当!?……ごほん。では、先ほども述べた通り、我々は専属パイロットとしてあなたと契約を結びます。よってあなたには、我々への協力金として、毎月指定の口座に振り込みます。その代わり、あなたが実践訓練など、様々な用途でISを使う場合、機体内のレコーダーに保存された可動データ諸々は全てこちらへ提出してもらうことになります。そのデータをもとに我が社の技術班が新たなシステム、武装、動力などを制作、又はアップデートをその機体に施すことになります。機体の損傷などに関しては、大規模なものはこちらのメンテナンスルームで修理します。小規模なものに関しては機体内蔵の自己修復機能で修理することができます。なお、そちらに貸与する機体は先に述べた通り試作品のため、IS本来の用途で破損した場合に限りますが、例え大破したとしても責任を負う心配はありません。そこは保証します。さて、口頭でざっと説明はしましたが、あまり分からなかったでしょうから、詳しくはこの書類を参照して下さい」
そういうと本庄さんが書類をバッグから取り出し、我の目の前に置いた。そこに書いてあったのは、先ほど本庄さんに言われたことだった。ただ詳しく書いてあっただけである。一通り目を通した後、我は先の書類と一緒に出された黒ペンを使い、その書類、いわゆる契約書にサインをした。本来こういう書類は未成年は保護者の監督のもと書くか、保護者自らが書くことになっているが、ISに関しては未成年者のサインでも問題ないようになっている。ISに関することは、その企業がしっかりと全ての責任を負うシステムになっているからだ。
「これで必要な手続きは全て終了しました。本日は我々との契約を結んでいただいたこと、誠に感謝申し上げます。それで、お願いがあるのですが、よろしいでしょうか?」
「何でしょうか?」
「この機体は、まだ完成とは言えません。特殊な機体ゆえ稼働に必要なパイロットのパーソナルデータと戦闘データが足りないためです。パーソナルデータは最初の搭乗時に入れられるので問題ないのですが、戦闘データはどうしようもありません。そこで、一回でも構いません。あなたのISでの戦闘データが欲しいのです。出来れば我々が見ている目の前で」
なんと無茶な。この学校では新入生は、入学から一定の期間がなければISの使用どころか装着すら許されていない。我には、どうすることもできない。
「その問題、案外すぐに解決するかもしれんぞ」
生徒会室にいた全員が扉の方を向く。そこに立っていたのは、織斑千冬その人だった。
オリジナル設定満載な回でした。次回は一気にVSセシリアと降り機体のところまで持っていきたいと思います。ではまた次回