画家の出会い   作:汐風鈴

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 ウマ娘のアプリを始めました。非課金勢です。
 Cygamesさんには悪いですが。

 今回はちょっと長めです。まだウマ娘との絡みはないです。


ステッキのように

 連絡先をお互い交換したたづなさんに2日に1回はトレセン学園に顔を出せと言われたので翌日、午後4時ごろにトレセン学園に向かうことにした。

 

 とはいえ、ウマ娘たちはトレーニングをしているので話しかけるのは気が引けるし、行くところもない。こんなだだっ広い場所散策していたら迷子になってしましそうだ。

 

 そうやって腕を組みながら彼女らの練習を見ていると横から話しかけられた。

 

「あんた、見ない顔だな。新トレーナーか?」

 

「いいえ、ただの画家ですよ。」

 

 話しかけられた方向を見ると棒付きの飴玉を舐めている男性がいた。インターネットで見たトレーナーのバッジが襟の辺りについているのでこの男性はトレーナーなのだろう。

 

「ちょっと不審者と間違えられましてね。無実を証明する為にしないといけないことがあるんですが、それまで時間が余っていまして…。さらに2日に1回ここに来いと言われてきてみれば、案の定することがないんですよ。」

 

「画家っていうなら絵を描きゃいいんじゃないか?」

 

 それは自分のプライドが許さないので、僕は首を横に振り否定する。

 

「せっかくの機会です。最初に描くウマ娘はレースを走る瞬間でなくては。」

 

「ああ、メイクデビューね。…最初に描くってどういうことだよ。ウマ娘は周りにいるし、描く機会なんていくらでもあるだろう。」

 

 どうやら彼は結構勘が鋭いらしい。なんとか発言を言及されないような手はないだろうか。ここで三つの案が浮かぶ。

 

・嘘をつく(最近ってことですよ。)

  →納得しづらい

 

・正直に話す

(実は一昨日までウマ娘のことを

    全く知らなかったんですよ。)

  →信じるわけがない

 

・話を方向転換する。

(そ、そういえばトレーナーって具体的に

 どんなことをするんですか?)

  

 これだ。少々強引だがこの”ウマ娘知らないよ疑惑”を誤魔化すことができるだろう。

 

「そ、そういえばトレーナーって具体的にどんな仕事してるんですか?」

 

「お、おい今はこっちが質問してるだろうが。…まあいいよ。ウマ娘のトレーニングとそいつらのアフターケアが中心だな。休日一緒に過ごすこともあるし。」

 

「楽しそうですね。」

 

「ああ、やり甲斐があるんだよ。担当ウマ娘が勝てば嬉しいし、あいつらと一緒に過ごしていれば楽しいんだ。ひと段落するごとに”この仕事やっててよかったな”って、そう思うんだ。」

 

「面白そうですね。スポーツのコーチって。文化系の僕にはあまりわからないです。」

 

「でも画家ってんなら”描いてて楽しい”とか”自分の絵を褒められると嬉しい”とかあるんじゃないの。」

 

 僕は否定する。

 

「そんなんあってないような物です。はっきり言うと苦ですね。何かを生み出すって結構難しいんですよ。絵画で食っていけるのはほんの一握りだけ。僕だってその中に入れない。僕は画家って言ってますがほぼイラストレーターになってますよ。画家だって自称です。」

 

 画家を名乗るのはただのプライドでしかなかった。確かに人には絵が上手いと言われるが、稼げなきゃ意味がない。

 

 すると彼は棒付き飴を口から出し、親指と人差し指でステッキのように振る。

 

「じゃあ、お前もやってみるか。」

 

「えっ、」

 

「トレーナーの仕事だよ。お手伝い程度なら大丈夫だ。お前、暇なんだろう。仕事の楽しさを教えてやる。」

 

 ふっと思わず笑ってしまう。なんて自由な人なんだ。まるでブラック企業のようではないか。それじゃあ彼の担当ウマ娘もこんな人たちなのだろうか。

 

「もちろん、やりますよ。僕は天瀬玲凪です。あなたは?」

 

 と自己紹介しながら握手を求めるようにして手を前に出す。

 

「俺は沖野晃司だ。よろしく、天瀬。」

 

「よろしくお願いします。沖野トレーナー。」

 

 軽い自己紹介をすると、二人で固い握手をした。それは万力のようだった。

 




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