魔法至上主義は「劣等生補正」に打ち勝てるのか?   作:どぐう

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良い続きが全然思いつかなくて、5・6回くらい書き直しました。遅くなってすみません。

【追記】リアルが忙しいので、少し更新ペース落とします。
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第7話

 九島光宣がいくら変わり者でも、謎の男に襲われていれば助けるという思いが皆にはあるらしい。確かに、今の彼はパラサイトでも何でもなかった。人道的な観点で言えば、困ってる人にはちゃんと手を差し伸べるべきだろう。

 

「彼から離れろ!」

 

 将輝が特化型CADを男に向けて警告する。けれど、それ自体はブラフ。本命は愛梨の「神経攪乱」。自己加速術式を併用し、猛スピードでターゲットに接近する。しかし、彼女の魔法が効果を表さなかった。

 

(……発動前にキャンセルされた!?)

 

 CADから吐き出された魔法式が霧散することで、エイドスの改変が出来なくなってしまったのだ。こんな不可思議な事態を引き起こせる人間。おれの知る限り、たった1人しかいない。

 

(コイツ、達也か!?)

 

 どうして、こんなところにいる? もしや黒羽だけでなく、彼も駆り出されているのか。しかし、厄介なことになった。この場を丸く収められるかは、おれにかかっている。つまりは「いかに、この状況を有耶無耶にするか」だ。勘付かれる前に何とかしなければならない。

 

「愛梨っ!」

 

 彼女と達也(であろう人物)の間に、自分の身体をぐっと割り込ませ、光宣を含めた「こちら側」と達也を分断。そして、彼にだけ見える角度で逃げろとハンドサインを送ろうとした……その時。

 側面から、達也に向けて慣性増大された紙片が襲いかかる。琢磨の「ミリオン・エッジ」だ。遅延術式ゆえ、起動式だか魔法式だかが露出しなかったのだろう。

 直接、紙を分解すると思いきや……運動ベクトルを分解して無力化していた。魔法を誤魔化すためか。

 

(おいおい……マジでどうする?)

 

 打ち合わせをしている訳でもなし。どうしたら良いのか、本当に分からない。とりあえず、他の「やるべきこと」に注力することにした。地面に転がっている人型アンドロイドに向けて、放出系魔法を行使する。

 何故なら、見るからにそれは「パラサイドール」だから。破壊する必要がある。OSに焼き付いたパターンは物質構造に変化していて、そのまま「精神構造干渉」は使えない。しかし、電子回路への簡単な事象改変は行える。せいぜい、ショートさせるくらいだが。

 

「夜久くん! 離れてっ!」

 

 意図を理解した愛梨が、感じ取った改変箇所を目掛けて「エレクトロ・キューション」を発動。高圧電流を一気に流し込むことで、機能停止へと追い込む。壊れたパラサイドールのボディに「拘束具」としての役割は担えない。新たなる宿主を求めて、パラサイトは外へ飛び出してくる。

 

(あとは封印するだけだ!)

 

 以前も使用した特殊な呪符を使って、紙の中に押し込もうとする。だが、それは叶わなかった。

 

「夜久くんっ!」

 

 一瞬のうちに地面に転がされた俺を見て、愛梨が悲鳴交じりの声を上げた。無理もない。人間が吹き飛ぶのを目撃すれば……そうなる。

 

「……させない。思い通りには」

 

 光宣がおれの腹目掛けて、いきなり蹴りを入れてきたのだ。突然のことであり、他の人間も達也に気を取られていた。だから、受け身も取れないまま、思い切り地面へと叩きつけられる。コンクリートと頬が擦れて、やけに熱い。

 

「だって、もうこれしかないから」

 

 熱に浮かされたような顔で、光宣は宙へ手を伸ばす。冒涜的なのに、馬鹿みたいに美しい。それが腹立たしかった。

 

「パラサイトを取り込む気か!」

 

 琢磨が叫んだ。同じタイミングで、将輝がCADを抜く。双子が手を繋ぐ。しかし、起動式は全て定義破綻した。「仮装行列」の効果によるものだ。

 でも、光宣は本懐を遂げることは出来なかった。圧縮された想子弾が、パラサイトを情報次元へと押し込んだからである。おれはこの技術を知っていた。以前……第四研の誰かが報告を寄越してきていたのだ。達也が「遠当て」という封印方法を開発したと。

 

「……やれやれ、変な誤解があったな」

 

 驚いたことに、達也が悪びれもせずに喋り出した。ヘルメットのシールド部分を開け、しれっと顔まで出して。もっと早く正体を明かしてくれよ、と思った。

 

「なんで、アンタがここにいるわけ!? あと何、その変な服!」

 

 香澄が真っ先に詰め寄った。彼女は風紀委員で、彼ともそれなりに交流があった筈だ。

 

「近距離メインの魔法戦闘を行う魔法師にとって、戦闘スーツの着用は珍しくないんだがな……。──ここに来たのは、知人の藤林さんに頼まれたからだ。従兄弟が九島家の試作兵器を持ち出したので、何とか止めて欲しいと」

 

 大体の事情は掴めた。なるほど、藤林響子と繋がっていたのは彼らしい。

 

「──……アイツ、一高のエンジニアよね? 何者なの」

 

 小声で愛梨が尋ねてきた。その質問は、だいぶ説明に困る。下手なことを言って、達也側の言い訳と食い違ったらマズい。

 

「あんまり、学校の人知らないからな……」

 

 この言葉で誤魔化し切ることにした。まさか「従兄弟です」という訳にもいくまい。

 

「──それにしても、辺りがだいぶ静かじゃないか?」

 

 確かに、将輝の言う通りだっだ。それなりの騒ぎが起きたのに。スタッフの1人も来ないのは、かなりおかしい。

 それに、元からどことなく空気感が怪しかった。てっきり、パラサイトのせいだと思っていたが……そうではなかったのだ。

 

「そうか……」

 

 流石に「おかしい」と気づいてしまえば、違和感を見つけることも簡単。少し離れた場所の植え込み。その1つに近寄り、手で土を掘る。爪に砂が入るのが不快だが、魔法を使わない方が良い。しばらく掘ると、カチンと何かが爪に当たった。周りの土も退けて、そっと取り出す。

 

「ビンゴだ」

 

 掘り当てたのは……クリスタル製の小さな人形。

 

「何だ?」

「人形……ですよね?」

「南米を中心に使用されている呪物。出力が弱くて気づかれにくいが、認識阻害の効果はかなり強い。やっぱり、何かカラクリがあったな」

 

 人形を摘み上げながら、光宣をじっと見る。すると、彼はのろのろと後退りした。

 

「ぼ、僕は知らないよ!」

「へぇ。まぁ、どっちでも良い。おれたちを小競り合いに集中させる目的が、少なくとも誰かにはあったんだ」

 

 おれは右足を振り上げ、足の甲で人形を蹴り飛ばす。サッカーボールを蹴る要領と同じだ。クリスタルで出来たそれは宙を舞い、アスファルトに激突して割れた。

 

「ほらな」

「……これは!」

 

 おれたちは、20体以上のパラサイドールを視認した。これだけが周辺に潜んでいたのだ。気づかなければ、不意打ちを食らっていたかもしれない。

 

(……待てよ。達也なら、絶対『視えていた』んじゃないか?)

 

 横目で、彼をチラリと見る。平然としていた。まさか、全てを押し付けて立ち去る気だったのではないか。気づいてよかった。

 

 

 

 

 

 

 七草家本邸。そこでは、2人の人間が睨み合っていた。パラサイドールの実証実験が、烈の預かり知らぬところで……弘一の手によって前倒しされていたと発覚したから。

 

「どういうことだ……?」

「どうもこうも。実験はわざわざ九校戦に拘ることありませんよ」

 

 顔面蒼白で詰め寄る烈に対し、悠然と微笑むだけの弘一。いつぞやとは立場が逆転していた。

 

「十師族システムを提唱したのは、先生……貴方なのに。変だなぁ」

 

 自分の娘たちが、パラサイドール計画を止めようと躍起になっていること。そして、四葉夜久や一条将輝まで噛んでいることも……彼はもちろん知っていた。知ってて、放置している。

 

「お分かりでしょう。十師族子息であっても対抗可能な新兵器。その価値は計り知れない。しかも、パラサイトさえ増殖させれば……いくらでも大量生産できる。まさに夢のようです」

「そんな目的で、パラサイドールを開発した訳じゃない! あれは」

「えぇ。先生のことは、誰よりも理解していますよ。『魔法師が望まぬ戦いを選ばずに済む世界』のため……。何度聞いても立派です。惚れ惚れしますよ」

 

 でも、それは甘い幻想だ──弘一はサングラスを外しながら言う。視力のない筈の右眼が、烈を射抜いた。弾劾するかのように。

 

「パラサイドールが増えて、魔法師の価値が下がった世界になっても。魔法師は、魔法師にしかなれない。なりたくない。待ち構えるのは、少ない牌の奪い合いですよ」

 

 義眼のある方の瞼をこじ開けてみせ、ニヤリと笑う弘一。プリントされた瞳があらぬ方向へ向く。光も感じ取れない目で「未来を見た」と皮肉っているのだ。

 

「だから……獅子が子にするのと同じで、崖下へと突き落としてやらねばなりませんね。馬鹿みたいな世界で、無事に生き延びられるように。『社会に求められる強い魔法師』にしてやることが、親の出来る精一杯の愛情だ。──私は我が子にそれをしてやれると思っているから、計画への協力も決めたのですよ」

 

 過去、AIやロボットに仕事を奪われ……多くの人々が失業した。それゆえ、現代の教育方針は専門家の早期育成へとシフトしている。高校の時点で大まかな進路を決めなくてはならない。しかし、卒業後の就職で苦戦する者たちは今も減らなかった。

 魔法師は特に専門性の高い職業とされている。けれども、パラサイドールが広く普及すれば……いつかその優位性は失われるだろう。「劣等生」はきっと増加するに違いない。

 

「パラサイドール計画は、逆に反魔法主義を加速させるでしょう。──でも、安心してくださいよ」

 

 手に持ったままになっていたサングラスを、弘一は掛け直した。

 

「……反魔法主義は過熱してこそいますが、論点はバラバラになり始めている。しばらくすれば、上手く切り崩すことも出来ましょう」

 

 人は欲深いもの。元はそれなりに正しいところがあったかもしれない批判も、段々と「世の中をよくするために」の題目のもと……どこまでも過激化する。いまいち筋の通らない主張をしてしまう人が多く出てくれば、こちらで世論はいくらでもひっくり返せるだろう。弘一はそう確信していた。

 

「ですから、とにかく子供の良き未来を考えましょう。我々はそれができる点で、四葉真夜とは違うのですから」

 

 夜久について、弘一は烈から詳しく聞いていた。

 

「それはエゴだ! お前の子供たちがお前と同じように思うとは限らん!」

「……親のエゴに過ぎないのは事実ですよ。でも、それを否定できますか? 他でもない、先生が」

 

 ぐっ、と烈が言葉に詰まる。光宣のため、という思いが……老いた身体に鞭打ってきた理由だった。

 

「親の心、子知らずと言いますからね。だからでしょうか……光宣くんは私の意見に、概ね賛成なようですよ」

「……光宣を悪の道に引き込んだのはお前かっ!」

「何か勘違いしているようですが」

 

 魔法師兵器論自体は、前々から彼が信じていることですよ。彼がそう告げると、烈は肩を落とす。

 

「……やはり、そうなのか」

 

 孫は自分とは異なる意見を持っている。その事実から逃げずに直視してはいるが……どうしても「誰かのせいにできたら」と思ってしまうのだった。

 

「光宣くんと先生が分かり合えないことは、私も少し心が痛みますがね」

 

 いけしゃあしゃあとそんなことを言う弘一。そもそも、光宣の我儘を叶える羽目になった烈の部下のために、パラサイドールを用立てたのは彼である。その対価に、特殊な認識結果の術具を土に埋め込ませた。自分の子以外はどうでも良いからこそ、世間知らずの少年を上手く操れるのだ。

 彼は立ち上がり、項垂れる烈の肩に手を置いた。

 

「ですが、ご安心を。貴方の『本当の夢』だけは……私がきっと叶える。四葉夜久を何としてでも、こちらへ引き入れてみせますよ」

 

 師と教え子。この2人の会話を外で聞いている者が1人。長女の真由美である。家に迎え入れた際の烈のただならぬ雰囲気を感じ取り……そっと様子を窺っていたのだ。

 

(どうなってるの……それに「子供のため」って、正気?)

 

 途轍もないショックから、彼女は口元を両手で押さえた。

 弘一の目論見は、娘にパラサイトを憑依させることだ。真由美はそう直感する。しかも、きっと事故でそれが為されることを期待しているのだ。そのために、四葉夜久との接触を止めていない……ここまで考えて「そういえば」と気づく。一高に在籍していた時の、さりげなく夜久を庇い立てる自分の態度を父親は咎めなかったと。もちろん、あの頃は今のようなプランを持っていなかっただろうが……こういうことを見越していたのかもしれない。

 何か問題が起きた時。「責任」を盾に、夜久を取り込むことが出来るかもしれないから。

 

(何よりも! 2人に何かあったら……私、耐えられない!)

 

 真由美は部屋着(少々ゆったりしているだけで、上品なデザインのワンピースではある)のままなのも気にせず家を飛び出す。コミューターに飛び乗り、向かうは九校戦会場。何も出来ないかもしれないけれど、何もしないではいられなかった。




⭐︎書きかけで「違うな……」でやめた話の一部

人数が多すぎて(達也もいるし)困って……遠くから文弥が撃ったダイレクト・ペインで達也夜久光宣だけ耐え切りました〜にしよう展開→前と似てるし、たぶん面白くないなぁとボツ

夜久がさりげなく達也を逃がす→何のために達也を出したのか分からないのでボツ

愛梨と夜久だけ、他から離して演習林に向かわせる。そして、なんかピンチになる展開→なんでそこで行くんだよ、と思ってボツ


色々考えましたが、まぁ今のが良い感じかなぁと思います。七草弘一とかも、悪役なりにそこそこの格をあげたかったので。
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