東方骸骨伝   作:くるっくー

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第十一話 イレギュラーメイド

 

常に表情をニッとさせている骸骨が目の前にいる。

この幻想郷では珍しい、明らかに人ならざる者…というよりは外見がまんま骸骨なので、()()()()()()()がひしひしと伝わる。

 

 

彼曰く、弾幕勝負はどうやら初めてらしい。

 

 

彼自身の雰囲気的にもそうだろう。と即肯定出来るほど、争いを好むようには見えなかった。

 

 

 

幻想郷で生きる者ならば知らない筈がない。

 

 

 

 

そう頭の片隅では呟いていても、実際どうなのかは不明なので、とりあえず「彼は初心者」という体で進めていくことにした。

 

 

 

そう無理やり納得することも可能()()()

 

 

 

 

唐突に、「痛いのは嫌」だのなんだのと言い、ルール替えを行った。しかも一発当てれば勝負あり、という内容で。

 

 

 

 

やっぱり経験者では? と喉から出かかった言葉を呑み込み、先輩として「ハンデはそれだけでいいのか」そう聞いた。

 

 

 

そしたらどうだ。返ってきた答えは──

 

 

 

 

──問題ない。むしろハンデなんか付けたら困るぞ。それでもいいのか?

 

 

 

なんなんだ、この妖怪は。

 

 

読めない。何がしたいのかが分からない。

 

 

 

ここまで真意を探ることが出来ないと、さすがの私も不安になってくる。

 

 

 

額から水が一筋伝う。

 

 

 

汗だ。

 

 

緊張している。さっきまで、勝つビジョンがクッキリと視えていたのに。

 

 

 

 

少々困惑していると、既に始める流れになっていたようだ。

 

 

 

彼の声に従い、距離を取る。

 

 

 

深呼吸をし、出来るだけ平静の心を保つ。

 

 

 

ああ、まずい。悟られてはいけない。そう考えながら。

 

 

 

 

 

──「お前さん…その顔、緊張してるって顔だな。heh、なんでアンタが緊張してるのかは分からないが、リラックスだぜ、リラックス」

 

 

 

 

大丈夫、殺し合いをする訳じゃあないんだからな。

 

 

 

 

そう、ニヤついた骸骨は、口の端を指で持ち上げながら言った。

 

 

ゾワッと来た。一応ポーカーフェイスのつもりだったが、一発で見抜かれた。

 

 

 

 

またたらりと汗が伝った。

 

 

 

「それじゃあ、3、2、1、0の“ゼロ”のタイミングで開始だ」

 

 

 

「…分かりました」

 

 

 

「……3」

 

 

 

 

美鈴が戦闘態勢に入る。

 

 

 

 

 

「…2」

 

 

 

 

 

睨みつけるかのように強く、相手を目で捉えて。

 

 

 

 

「1」

 

 

 

 

その時を待つ。

 

 

 

 

 

「0」

 

 

 

 

 

──瞬間、溜めていた力を解放し、一気に飛び付く。

 

 

 

ここまで速かったらどうだろう、流石に追いつけないだろう。

 

 

少しの安堵と共に弾幕を一撃放とうとする。

 

 

 

しかし、チラとサンズの方に目をやると……()()()()()()()

 

 

顔色何一つ変えることなく、コチラを見ているサンズが居た。

 

 

 

 

まずい。

 

 

 

怪しい。

 

 

 

退け、退かないとヤバイ。

 

 

 

 

何かしてくるかもしれない。

 

 

 

様々な可能性が頭の後ろへ流れ、半ば脊髄反射並のスピードで引き返す。

 

 

 

 

退く時、弾幕を放つと、既に試合は()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

【TIPS】<紅美鈴─②>

*彼女はやや思い込みが強い気質がある。

 

*彼女を抑止させることの出来る人物が居なくてはならない。気が付いたら暴走してた、なんてことが無いように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

さ、て、と…始めるか。

 

 

 

 

とまぁ半ば怖がらせるように伝えた訳だが…お相手さんはー…

 

 

 

 

…なんかめっちゃ考え込んでんな。

 

 

 

 

──彼には分かる。相手の顔を見たら分かるのだ。

 

 

 

人には表情筋というものがあり、喜怒哀楽それぞれに特徴のある動きが存在する。

 

 

 

 

その中でも眼球の動き──即ち視線とは、次何をしてくるのかも読めるくらいには分かりやすいのだ。

 

 

 

 

 

──目は口ほどに物を言う、とはよく言ったものだと思わないかい? まったく、ニンゲンはよく観察が出来ている──

 

 

 

 

 

誰かがそんなことを言っていた気がした。

 

 

 

 

ホント、昔のニンゲンってのは上手いこと言うぜ。オイラ個人としても、この言葉は重々承知しているつもりだ。

 

 

 

ふぅ、と一息付く。分かりやすいほど焦りを感じている表情のメーリンに一言。

 

 

「──リラックスだぜ、リラックス」

 

 

大丈夫、殺し合いをする訳じゃあないんだからな。

 

 

 

今は、争う時じゃない。また万全な時にでもやればいいんだ。

 

 

 

そう、また今度な。

 

 

 

 

そう自分に言い聞かせ、戦闘準備モドキへと向かう。

 

 

 

 

 

「それじゃあ、3、2、1、0のゼロのタイミングで開始だ」

 

 

 

Sansは淡々と告げる。

 

 

 

「3」

 

「2」

 

 

「1」

 

 

 

「0」

 

 

「ゼロ」の、「ろ」を言い終える前に、美鈴は既に動き出していた。

 

 

 

 

大事なのは、観察。

 

 

 

自分から見て右側に跳び込もうとしているメーリンの姿が見える。

 

 

 

 

直線的な動きだな、分かりやすい。と、余裕の笑みを浮かべるSans。

 

 

 

 

Sansの真横に跳び込めるかどうかの位置で、突然美鈴の動きがカクっと下がる。

 

 

 

そのまま()()()()()()()、撤退の為か、地に足を付ける。

 

 

 

 

ワオ、マジで飛べんじゃん。

 

 

 

Sansは美鈴の行動に、そのままの感想を思い浮かべる。

 

 

 

 

 

そのまま、巨大な弾幕が放たれる。それと同時に足元から骨が芽生え、その弾幕目掛けて、数本伸びる。

 

 

 

伸びて、相殺を試みるが、弾幕の勢いが弱まっただけで、ギリギリ、完全な相殺は出来ていなかった。

 

 

 

これでいい。この威力が丁度いい。この、ギリギリ弾幕としての形を保てる程度のエネルギーを保有している状態がいい。

 

 

 

「……ふぅ、これくらいか」

 

 

 

 

骸骨の不敵な笑みが更に、更に深まる。彼の狙いはこれだった。ワザと、弾幕を相殺出来るか出来ないかのギリギリで止め、威力の弱まった弾幕にぶつかる。

 

 

 

 

一発で終わるルールも、一瞬で終わらせるための戦略だった。

 

 

 

 

 

威力を削がれ、大分小さくなった弾幕は、見事、Sansの横っ腹に直撃。

 

 

する前に、掻き消された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──はァ?! 何が、()()()()?」

 

 

 

 

 

 

 

既に数メートル程離れている美鈴が、そのような芸当が出来るはずがない。

 

 

 

急に、“弾幕が消え去る”なんて。

 

 

 

 

いや、分からない。断定出来ない。メーリンがたまたま弾幕を遠くから消せる能力を持ってるのか。はたまたオイラのように、別の場所に追いやったりできるのか。

この世界の弾幕は遠隔からでも消せるようになっているのかは分からない。

 

 

 

だがしかし、一つだけ判断が下せる。

 

 

 

 

メーリンに弾幕を消すようなメリットは存在しないという事だ。

 

 

 

 

そこで初めて、改めて美鈴の様子を見ようと、美鈴の飛び退いた方向に目を向ける。

 

 

 

 

「居ッ…たけども…何やってんだ? アイツ…」

 

 

 

そこには、正座をして跪くメーリンと、あの時、フランドールと一緒に助けたニンゲンがいた。

 

 

 

メイド服の、アイツだ。

 

 

 

この状況、まさにイレギュラーってやつだ。オイラの脳内予定にはそんなの無かったんだからな。

 

 

 

光が照り映える程の輝かしい銀色。モンスターであるオイラですら、美人さんなんだ、とひと目で分かるくらいには美人だ。多分な。

 

 

 

「──それで、美鈴…私はあなたに、頼みましたよね? その客人が目覚めたら、お嬢様の元へ連れてゆけ、と」

 

 

 

「ひゃ、はい…ソウデスネ…いや、しかしですね! 今回は私にも言い分はあるので──「…はぁ」

 

 

銀髪の女は、懐からナイフを取り出し、それを見せつけるようにメーリンの眼前で構えた。

 

 

 

「ウッ…ハイ…すみませんでした…」

 

 

 

ホントなにがおこった?

 

 

 

すると、銀髪のメイドさんがスっと近付いて、頭を下げる。

 

 

 

「申し訳ありませんでした。門番が粗相を…この件はしっかりと躾けますので。どうか、何卒許しては頂けないでしょうか」

 

 

 

「お、おう、大丈夫…っですよ」

 

 

 

思わず敬語になってしまった。らしくもないのによ。

 

 

 

 

「ありがとうございます。貴方の寛大な心に感謝を」

 

 

 

「いやっ…そんなことは…ねぇけども」

 

 

 

目の前のメイドさんのテキパキとした態度に、すこし、気圧されてしまった。

 

 

 

まあ…気を取り直して、自己紹介でもしておくか。

 

 

 

「オイラはSans。ただのジョーク好きなスケルトンだぜ」

 

 

 

「これはご丁寧にどうも、私は十六夜(いざよい) 咲夜(さくや)。咲夜でも十六夜でも、お好きにお呼びください」

 

 

 

「オーケー、オイラのことも、Sansでいいぜ。よろしくな、イザヨイさん」

 

 

 

 

そうしてSansは、ヒトが思わず()りたくなる()を差し出した。

 

 

 

ずっと静観していた美鈴の口が開く。

 

 

 

「…ちょっ! 咲夜さん! 気を付けてくださいよ! あの手には()()()が仕掛けられていますよ!」

 

 

 

躊躇なく握る咲夜。

 

 

 

そのまま上下に少し運動して、二人の手は離れた。

 

 

 

「え、えっ?! 」

 

 

「……美鈴? 何もありませんよ?」

 

 

「うっ、いや、違うんですよ。これには深い訳が……アハハ」

 

 

「…はぁ、ここまで虚言が酷かった時などいつ以来でしょうか。まぁ良いです。あなたは本来の持ち場に戻りなさい」

 

 

 

「…はぁ〜い」

 

 

 

Sansの耳には、届いた小さな声。

 

 

 

美鈴の小さな…「確かにナニカがあったのに」という声を逃さなかった。

 

 

 

そして、(Sans)は思う。

 

 

 

 

あんなよく分からん奴(ナイフで脅してくる)にイタズラなんか出来るわけないだろ…! と。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

そんなこんなして、ようやっと紅魔館内、厳密には()()()()()()()()()()()()()()()()に戻ってきていた。

 

 

 

なんで?

 

 

 

 

「そういえば、サンズ様にはここで助けて頂いたそうなのですが…」

 

 

サンズ様。なんか…ものすごいムズムズするな。

 

 

 

「あー…まぁそうだな? 一応、助けたことになるのか?」

 

 

 

「事の顛末(てんまつ)は聞いております。何やら、身内が無礼を働いたようですね」

 

 

 

Sansはあやふやになっている記憶を掘り起こし、ああこれの事か、と納得する。

 

 

 

「オイラ、何故かそん時の記憶が曖昧なんだ」

 

 

 

「…ふむ、曖昧、ですか」

 

 

「ああ、そんなんだから、今も記憶がボヤっとしてる気がすんだよ」

 

 

「と言いますと?」

 

 

 

「…あー、ロビーが元通りになってないか…?」

 

 

Sansは少し、声を震わせながら言った。ついでにホネも若干カタカタ震えさせながら佇んでいる。

 

 

 

十六夜咲夜は、ああ、と納得した顔をし、口を開く。

 

 

 

「私が直しました」

 

「は?」

 

 

 

今世紀最速で、尚且つ首のホネが折れるんじゃないかってくらい速く聞き返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【TIPS】<十六夜 咲夜ー②>

*妖怪に負けず劣らずの身体能力があるニンゲン。

 

*それに加え修理も出来る。

 

*逆に何ができないのかが分からない人物。

 

 

 

 

 

 

 





戦闘描写をちょっと修正。
書き忘れてたTIPSを追加。
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