東方骸骨伝   作:くるっくー

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第二話 イミフメイな出会い

 

 

ユカリから、幻想郷やそこに住まう妖怪…とかなんとかの説明を受けた。

 

 

でもイマイチ分からん。やはりモンスターのような姿をしているのだろうか…?

 

 

まぁそんなことを考えても仕方ない。

 

 

 

今はユカリの話を咀嚼してみる。

 

 

 

 

とりあえず、オイラは幻想郷に住まわせてもらう代わりに、異変解決…とやらをしないといけないらしい。

 

 

と、ここまでが要約した内容だ。

 

 

 

ワケ分かんねぇな。

 

 

 

「───じゃあ、異変についての説明はざっくりだけど話したし、今起きていることについて話すわ」

 

 

「ああ」

 

 

「今回はある妖怪、吸血鬼が原因…っと、そういえばあなたのところには吸血鬼の概念が無かったわね」

 

 

 “キュウケツキ”という聞き慣れない単語に引っかかる。たしかに、地下世界で生きている間、キュウケツキというモンスターを聞いたことはなかった。

 

「字に書けば、血を吸う鬼、ね」

 

 

 チ、を吸う鬼?

 

 ち、チ、地、知………ああ、血か。

 

 

 血吸い…確かニンゲンの身体は水で構成されており…その名称は血。

 

 

 てこたぁ、血を吸い取る…身体の主成分を吸い取るってことだろ?──つまりモンスターにとって『まりょくを吸いつくされる』って事か…?

 

 

 

うへぇ、えげつねぇな。

 

 

どうやらその吸血鬼という存在は幻想郷を自分色に染めたいらしい。

 

 

 

「…そういう訳で、今幻想郷は魔力に満ち溢れてて人間にとって危険な状態よ。まぁそもそもモンスター(魔力の塊)である貴方には関係ない話かもね」

 

 

 

「なるほどな……」

 

 

「不満かしら?」

 

 

 

「…heh、そうだな。それってオイラがやらなくてもいいんじゃないか?」

 

 

 

「フフ…そうかも知れないけど、暫くは幻想郷で生きるんだし…思い出は多く作った方がいいでしょ?」

 

 

見学なんかでもいいけどねぇ。と、間の抜けた声が響いた。

 

 

 

思ったよりも中身の無さそうな理由で唖然としてしまい、いつもなら白い光を宿す骸骨の目も、こればかりは黒く染った。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

()()()との戦いでの消耗もあり、やるぞという気(やる気)は全くというほど起きなかったが、ユカリが急かすので行くことになった。

 

 

 

「うわ…やっぱこれどうなってんのか分かんねぇな…」

 

 

 

 回廊で見た時と同じ形の隙間(ギョロ目)をしているが、どうやら外に繋がっているらしい。外に広がるのは紅い靄がかかった()()、そして紅く、それも規模がアホほど大きい…()があった。

 

 

 

「じゃ、行ってらっしゃい」

 

 

 

「はぁ…ブキミだし、不本意ではあるが…仕方ないな」

 

 

 

いつもより気怠げな身体をなんとか動かし、その隙間をくぐる。

 

 

 

 

 目の前に広がるのはさっき見た館に…どうやら天井だと思っていたものは……()だったらしい。

 

 

 

「これが空…? いや、ユカリはこれを異変だと言っているのか…」

 

 

 

 異変解決するんだったら目の前にある館へ乗り込み、首謀者をボコボコにするのがいいらしい。

 

 

 

 

「さて…どうするか…」

 

 

 

 今、選択肢としてあるのは2つ…

 

 

 

 早速乗り込むか

 

 

 

 

 

 

 寝るか。

 

 

 

 

 ……睡眠というのは重要だ。今だってオイラの生命を維持する為のまりょくだけでカツカツだ…睡眠はそれを解消する。

 

 

 

 実の所、疲れてるからユカリの話なんてほとんど……

 

 

 スペ…スペルなんとか…ルール? とか結界? の話とか……うん、聞いていたのは聞いていた(頭蓋骨の中で音が反響していた)

 

 

 

「と、いう訳で…おやすみ」

 

 

 木の根を枕にし、ふかーい眠りにつくのだった。

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【TIPS】<隙間-スキマ>

*古来より存在する妖怪の賢者の一人【八雲 紫】の力の応用。

*空間の境界を引き裂き、自身の世界と繋ぐことで移動できる。

 

*見たまんま空間をこじ開けたような形、または布をそのまま引き裂いたような形をしており、両端はリボンで結ばれているのが確認できる。

 

*そこに居ないはずの誰かの視線というのは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

よう、オイラは今館にいる。…ああ、さっきまでは確かに寝ていたさ。

 

 

寝てもまりょくが()()()()()()()()んなら意味無いだろ。でもまぁ、頭は幾分スッキリとしたな。

 

 

 

いつもなら数分経てばそこそこ動けるようになるんだが…明らかに回復能力が弱い。恐らくは……“まりょく”違い。

 

 

 

先程ユカリは「魔力が満ちている」と言っていた。…しかし幻想郷とあの地下世界は違う場所にある……言わば殆ど異世界と言っても過言じゃない。

 

 

それならモンスターの“まりょく”とここ(幻想郷)の“魔力”……この2つがどうなのかを調べる必要がある。

 

 

 

ま、コンキョなんてねぇけどな。

 

 

 

「ま…考察、元い妄想は後にしよう。意識は大丈夫でも身体は疲れてる…極力、頭と身体は使いたくない」

 

 

 

それはもう何もしてないのと同義だろ、というツッコミは置いておく。

 

 

 

 

まず、この真っ赤な館は堅牢な門で守られていた。まぁ門自体は大丈夫なんだが…門の前で死んだように眠ってるやつがいたもんで…ビビったね…

 

 

 

 

なんせオイラの仲間(サボり)が早速見つかったからな。あの様子から察するに…中々の手練だ。

 

 

この異変が解決したら挨拶でもするか。

 

 

 

 

門をくぐり抜けるとそこはだだっ広い一面緑の敷地だった。でも整えられた草木にはつい感嘆の息を漏らしたぜ。スケルトンだけどな。

 

 

 

館の中は外装がそうであるように、当然内装も真っ赤だった。今ここだな。

 

 

 

「ここの主は真っ赤な色が好きなのか? …こんな配色、目に悪いだろ」

 

 

 

ざっと見た限り…うん、一階と二階で分かれているみたいだな。とりあえず、下から潰すように探索はしたい。…まぁ勘でいいか。

 

 

 

よし、進もう。

 

 

 

 

ギィ…と軋む両開きの扉を開け、薄暗い様子を確認する。生憎モンスターには、そのぐらいの暗闇は気になりもしないのでそのまま進んだ。

 

 

 

ペタ…ペタ…ペタ…

 

 

 

開けてすぐにあった階段の絨毯をピンクのスリッパで踏みしめながらゆっくりと降りる。Sansの周囲を静寂が取り囲む。壁には燭台と…その上のロウソクが灯されているくらいしかない。

 

 

 

 

少しして階段を降りきると、またもや一本道。一本道と言っても横幅が大きく、通路の長さも短いためそこまで通路というふうに感じない。

 

 

なんなら、部屋とまで形容できそうだ。

 

 

 

 

「……これは、鉄…鉄扉だな」

 

 

 

そこにあるのは、厳かな雰囲気を醸し出している扉。その鉄扉にはどうやら…細長い穴…横長で、縦に短い小さな窓がもう一つ付いていた。

 

 

まるであの、赤い…そう、我が家の郵便受け位の大きさだった。

 

 

 

「この小さい扉は開かないな…鍵がかかってるみたいだ」

 

 

 

 

 

コンコンコン

 

 

 

鉄に骨がぶつかる音が響く。しかし返事は帰ってこない。

 

 

「こっちは…なんだ、これを捻ればいいみたいだな」

 

 

案外簡単に開いてしまったが、警戒は怠らない。

 

 

まりょく残量としては、残りカスから積もったカスにまで回復した、とはいえ、結局は足りないのだ。

 

 

その残り少ないまりょくを練り、念入りに防御体制へと入る。

 

 

「ふー……OK、入るぜ」

 

 

 

金属らしく重々しい音を発しながら扉が開く。

まずこの通路より明るいことが分かった。

 

 

そして目に入るのは大きな箱。パッと見では何か分からなかったが、どうやらそれは棺桶であることが分かる。

 

 

確かお城の最深部に同じようなのがあったな。

 

 

 

「ふむ…赤と黒の基調とした部屋、随分と本館に比べりゃメルヘンチックで可愛らしい────

 

 

 

 

 

背中から刺される様な、何とも言えぬ威圧で撫でられる。

 

 

 

強烈な視線……殺気、 いや違うな、違うんだが…

 

 

 

───振り向いてみるか…?

 

 

 

後ろにいるナニカ、それの正体を確かめる為の決意を固める。

 

 

 

バッと振り返るも、そこには誰もいない。ホッとするが、それではさっきのがなんだったのか説明がつかなくなる。その事に強い違和感を感じる。

 

 

 

…と、そこで視線を下から上へと向けると…

 

 

 

目の前に手を前に出して襲いかかろうとするような…そんなポーズをとっている金髪の少女の姿。

 

 

 

「──ッ?!」

 

 

 

どうやら接近されていたみたいだ。姿形はニンゲンそのもの、しかしその殺気のようなよく分からないモノは本物である。

 

 

 

彼の洞察力は凄まじい。

 

 

その目をもって、外見的特徴を捉える。

 

 

同じくニンゲン型。髪色は金、又は黄。背丈はあのクソガキと同程度。狂気を感じる。

 

 

しかし相違点としては、()()()()()()()()()()()。見たこともない服装。それに宙を浮いている事だ。

 

 

何をしようとしているのかは不明。情報不足だ。

 

 

 

「…ッあー…」

 

 

 

固まった空気の中、先手を取ったのはSans。辛うじて口は動く。

 

 

 

しかし、その流れを壊すように少女が言葉を紡ぐ。

 

 

 

「アハっ、バレちゃった」

 

 

 

まるで、小さいガキが隠れんぼでもしていて、隠れてるのがバレた時のような声色をしていた。……ちょっと具体的すぎるか?

 

 

 

にしても……バレちゃった、だぁ? なんだ、コイツ。まるで子供じゃないか。無邪気な子供のような反応だが…それでもこの、筆舌に尽くし難い感覚、本物だ。

 

 

 

…あの忌々しい()()()()の雰囲気に似てる気がする。

 

 

 

「えーと……ところで、君はだァれ? ここ、ワタシの部屋だよぉ?」

 

 

 

「っと、悪いな。外の景色を見てもらったら分かるが、あの…異変っつーのを処理しに来た」

 

 

 

静かに己の身体の主成分…すなわち()()()()を込める。

 

 

 

「外? あなた外から来たのね! 今外がどうなってるって? 異変? 楽しそう!ワタシも混ぜてよ! ねぇ!!ねェ?!?!」

 

 

 

目の前にいる金髪の少女は両手でガッツポーズを作り、それを振りながらこちらへと迫る。その興奮ぶりに少し恐怖する。

 

 

臆するな、静かに…勘づかれないように逃げる準備を整えるんだ。

 

 

 

 

「hehe…悪いが、オイラはここに遊びに来たわけじゃねぇ。……命の恩人的なやつの、まぁ依頼で来たんだ」

 

 

 

だから、アンタを同行することは出来ない。そうキッパリと続ける。こういう奴はハッキリ言った方がいい、そう思った。

 

 

 

「……………アハ」

 

 

 

 

…っ! ナニカ(雰囲気)が変わった…

 

 

早く逃げなければならない。そう本能から感じた。

 

 

 

「アハ、あははははぁ! ()()()()だよォ?! ()()()()()()…どうして?! ワタシなにかした?! お姉様も咲夜もパチュリーも!!なんでワタシだけ仲間外れにする(置いていく)の!! 誰か教えてよ!教えて……! …誰か、

 

 

 

教えてよぉ……」

 

 

 

「…っあ」

 

 

 

顔はくしゃくしゃっとしており、眉をひそめ、目尻が歪む。ニンゲンが苦痛や困難に直面した時と同じ顔をしていた。

 

 

あるいは…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だったかもしれない。

 

 

 

ある、非情で狡猾で、心優しい骸骨にはそれが見過ごせなかった。己の守ることの出来なかったモノ、そして…変えることも出来たはずの運命。

 

 

 

今まで押し殺して来た感情が溢れ出る。

 

 

 

全てはオイラの怠慢。呆れ。

 

 

 

 

オイラの…オレのミスへの諦め。

 

 

 

 

オレの…責任からの、怒り。

 

 

 

 

この世界に来て、初めて…決意を抱く。

 

 

 

 

自分の行動に悔いを残したくない。

 

 

 

 

 

そう思うと

 

 

 

 

 

 

 

 

*【決意】が 湧き出す !

 

 

 

 

 

 

 

「─Hey…一緒に行こうぜ」

 

 

 

自然と出た言葉。別に何か考えあってこんなことを口走った訳では無いが、なんならさっさと逃げるべきだとさっきまでは考えていたはずだ。

 

 

 

目元が熱くなっているのを感じる。これは、アイツとの交戦中、四六時中感じていたモノだ。

 

 

 

「……えっ」

 

 

 

間抜けな少女の声が響く。

 

 

 

「heh…気が変わった。気が変わったんだ、だから一緒に…いや、連れて行くんだ」

 

 

 

単語を、一つ一つ丁寧に、発する。

 

 

 

いつの間にかSansの左目に、色褪せてはいるものの、シアンブルー色の光り輝く丸い玉が宿っていた。

 

 

 

 

幻想の霧はまだ晴れない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【TIPS】<シアンブルー>

*三原色のひとつで、やや緑味の青色。水色に近い緑とも取れる。

*シアン、とは「暗い青」

 

*その明るくも深海のような色は、人々を惹きつけるだろう……

 

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