東方骸骨伝   作:くるっくー

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第三話 まだまだ続くよ探検は

 

 

 

 

 

「わ……え…っと…」

 

 

 

「……おっと、イミフメイだったな、こんな知らんやつに「一緒に行こう」だなんて」

 

 

 

 

気分が高揚してる。さっきまであった倦怠感や心労が無くなっている気がする。…何故?

 

 

 

いや、そんなことはどうでもいい。重要なのは()()がこの子にとても、それはそれはとてもとても恥ずかしいセリフを吐いてしまったことの方が重要だ。

 

 

 

…はぁ、気分わりぃな。穴があったら入る。無けりゃ作る。

 

 

 

「…はぁ〜ぁぁああ……」

 

 

 

「だ、大丈夫?」

 

 

 

──人は自分が冷静でなくとも、他人の方が冷静でないと判断した時、意外と頭が覚めるものだ。

 

 

 

少なくともこの状況、いきなり現れた骸骨が一緒に行こうなどと言い、その後すぐに無いはずの眉間を指で抑えるポーズを取っては呻きを上げる。

 

 

─そんな状況により、恐らく金髪の少女の頭は冷やされただろう。

 

 

 

「…ぁー…なんでもねぇさ。悪かったな、邪魔したぜ」

 

 

Sansがそそくさと戻ろうとする。…前に進まない。というか上半身が引っ張られてる感覚だった。

 

 

 

「うおっ…んな、おいおい伸びる伸びるから服伸びるって」

 

 

 

「……一緒に行かないの…?」

 

 

 

─否、全然冷やされてない。なんなら加熱中だ。

 

 

 

「ヴッ……あれは若気の至り(?)っつーかなんて言うか…ついな?」

 

 

 

「除け者にするの…?」

 

 

 

うるうる。そんな擬音がぴったりな目をしている。

 

 

 

こんな事されちまったら断れないぞ。…流石に気が引けるな。自分から誘っておいて切るなんて。

 

 

 

それに怒らせたらヤバそうだ。そんな言い訳を心の中で呟いた。

 

 

 

「…分かった。行こう。オイラはSans、ただの……スケルトンさ」

 

 

 

「…!! ワタシはフラン! フランドール・スカーレット!」

 

 

 

 

ここに一体の怪物と化物の友情が芽生えた瞬間だった。……のか?

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

紅き空、その下に佇む真っ赤な館。その最上階に君臨するは妖怪の中でも上位の存在。

 

 

 

吸血鬼、レミリア・スカーレット!

 

 

 

そんな化け物に挑むは一面紅色でも目立つ紅白の巫女。生物の中ではちっぽけな存在ではあるが、その小さい身に宿すのは代々受け継がれてきた巫女のチカラ。

 

 

 

人間、博麗の巫女、博麗霊夢(はくれい れいむ)

 

 

 

さぁ今宵は楽しくなりそう───

 

 

 

 

 

「なによそれ、バッカじゃないの?」

 

 

 

「何おう! 折角この魔理沙様が戦いを盛り上げてやろうと思っての気遣いだったのに?!」

 

 

 

はぁ〜…と、ため息を吐く巫女。

 

 

 

「要らないわ、そんなの。それよりさっさとアレ、退治しちゃった方がいいんじゃない?」

 

 

 

「おいおい2対1は卑怯だろ? だからハンデとして俺は盛り上げ役だ!」

 

 

 

「意味分かんない…はぁ」

 

 

 

 

またため息を吐きつつも、しっかりと相手を見据える霊夢。左手に握るは所謂(いわゆる)お祓い棒。そして右手、その指の間にお札が一枚一枚挟んであるのが分かる。

 

 

 

「…やっと終わったのかしら? そろそろ、飽きてきたのだけど?」

 

 

 

体の大きさには見合わないくらい大きい玉座。そこにドカッと座り、肘をつき、足を組みながら見下した目でこちらを見つめるソレは欠伸を噛み殺した。

 

 

 

「フン、随分と偉そうな態度ね? えぇ? …気に入らないわ、この霧のことも、あなたのその態度も」

 

 

 

「だからどうしたというの? たかが人間風情に吸血鬼が気を遣うと思ったら大間違いよ? …いいわ、私が叩きのめし示してあげる……吸血鬼と人間の格の違いというものをね」

 

 

 

 

その見た目の幼さに似合わず、非常に威圧的、それでいて傲慢な態度。並の人間ならこの時点で泡を吹いて倒れていてもおかしくは無い。

 

 

ただ、普通の人間ならまずここには来ない、ここにはどこか普通ではない少女達しか居ないのだから。

 

 

 

 

当然、臆することも無い。

 

 

 

「ハッ! 上等、さっきのメイド諸共ぶちのめしてあげるわ!」

 

 

 

「うわー…神聖なはずの巫女が「ぶちのめしてあげるわ!」とか言って大丈夫なのかよ…」

 

 

 

「うっせ! アンタは邪魔だからどこかに隠れてろ!」

 

 

 

「へいへーい」

 

 

 

魔理沙と呼ばれた、巫女ではない方の人間。姿かたちはどちらかと言うと、御伽話などに出てくる魔女、そのような格好をした白黒の人間。それが箒に跨り瞬時に駆け回る。

 

 

 

「ふぅ…これで心置き無くやれるわね。覚悟なさい! 二度と逆らえなくしてあげるわ!」

 

 

 

「それはこちらのセリフ……フフ、巫女の力、試させてもらうわ!」

 

 

 

二つの力、激突。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【TIPS】<吸血鬼-ヴァンパイア①>

*妖怪の一種であり、妖怪ヒエラルキーで言ったら最上位に位置する存在。

*非常に多くの弱点を抱えているが、その代わりにおぞましいまでの力を秘めている。

 

 

 

 

 

 

 

 

色々あって心強い仲間が増えた。見た目はどう見ても子供、それもニンゲンの。それでも侮ることは出来ないだろう……オイラの勘がそう告げている。

 

 

 

「さ、サンズ! どうかしたの?」

 

 

 

「ん? あぁいや、これからどうしようかと」

 

 

 

あくまでもオイラがここに来た理由は異変の解決だ。……待て、そもそもオイラ、異変がなんなのか具体的に聞かされてなくないか。

 

 

 

…はぁ、ユカリのやつ…幻想郷を全く知らないオイラにどうしろと…

 

 

 

「うーん……あっ! 探検、探検しよう!」

 

 

 

口を先に開いたのはフランドール・スカーレットの方であった。

 

 

 

「探検?」

 

 

 

「うん!」

 

 

 

非常に快活であった。

 

 

Sansは何度も思うが、この子があのえげつない気配を漂わせてたのかと何度も己の目を疑ってしまう。

 

 

 

 

それでも、スケルトンは恐れない。恐れを見せたらオシマイだ。

 

 

 

 

「ふーむ…いいな、それ。じゃ、案内役頼むぜ、あー……おじょーさん?」

 

 

 

「お嬢さんじゃない! 名前ならちゃんとある!」

 

 

 

「あーへいへい……フランドール・スカーレット?」

 

 

 

「長いからヤダ。フランの方でいいよ」

 

 

 

ふむ、オイラ達モンスターと同じ…というかウチの王族(ドリーマー家)と同じ感じなのか?

 

 

「OK、フランドール。案内頼むぜ」

 

 

フランドール……それで、サンズ」

 

 

 

「どうした?」

 

 

 

妙にモジモジとしている。…なんか不味ったか…?

 

 

 

咄嗟に身構え、フランドールの言わんとしていることに耳を傾ける。

耳はねぇけど。

 

 

 

「その…ワタシ、閉じこもってたからここの構造あんまり覚えてないの…」

 

 

 

え。まじか。

 

 

 

「まじだよ」

 

 

 

おっと声に出てたか。

 

 

 

「出てるよ、現在進行形だけど」

 

 

 

 

あえてここで詳細を聞くことはしない。オイラはコイツのことを知らない。コイツもオイラのことを知らない。

 

 

 

ズカズカと詮索してしまうのは仲間、友達としてどうかと思うからな。

 

 

 

「…だから、“探検”ね。OK、オイラも探検しよう。行こうぜ、フランドール」

 

 

 

「…うん!」

 

 

 

 

……それにしても、先程から…と言うよりかはフランドールと出会ってから…? 妙に身体が軽い。

 

 

そして何より、まりょくが回復している。体力も満タンで気分爽快だ。

 

 

何故だ? …やはり分からないな。全く心当たりがないが…

 

 

 

 

やっぱり考えるのはやめよう。分からないことだらけで不毛だな。

 

 

 

 

さて、ロビー(最初の所)に戻ってきはしたが…

 

 

 

 

「異変…そうだ、異変の首謀者。そいつは誰か分かるか?」

 

 

 

「そもそも異変ってなんのことか分かんないけど…多分、お姉様だと思う…」

 

 

 

 

ほう、姉貴かもしれないのか。

 

 

ん?そういえばユカリ…「ある吸血鬼」みたいなこと言ってたな。そういう事だったのか。

 

 

 

 

「お前さんの姉貴、どこにいるか分かるか?」

 

 

 

「昔の…お姉様だったら高い所が好きだったよ! いつも身の丈に合わない玉座に座って「フン!」って感じで可愛いんだよねー」

 

 

 

可愛い…か。

 

 

……高い所か。まぁそれなら分かりやすい、階段を登ってきゃあいいしな。

 

 

 

 

 

とまぁそれから数分は、階段と廊下の連続だった。途中途中、部屋がいくつも存在していたが、ほとんどが空き部屋みたいな感じで味気なかった。

 

 

…なんか思ってたより広くないか?

 

 

 

「フランドール」

 

 

 

「なに?」

 

 

 

「これ、探検っつーより散歩の方が合ってないか」

 

 

 

「…確かに。これだけ広かった記憶はなかったけどね…」

 

 

 

「そうだ、フランドールの姉貴ってどんな奴なんだ?」

 

 

 

「っえっと……」

 

 

 

やべ、なんか言葉に詰まってんな。

 

 

 

「わり、余計な事聞いた」

 

 

 

 

「ううん、大丈夫。ワタシと目を合わせてちゃんと話してくれるヒトはホントに久しぶりだから。なんでも話すよ」

 

 

 

「─そうか」

 

 

 

失望。フランドール・スカーレットの目に映る赤い瞳、は濁っていた。

 

 

希望も何もかも失ったような顔をし、先程までの子供らしさも消え失せ、残ったものは()()()()であること。その事実だけ。

 

 

 

そんな事も一瞬の出来事。取り繕うように戻っていったその可愛らしい表情は本当に何も無かったかのよう。()()()()()だ。

 

 

 

 

 

フランドールが口を開く。

 

 

 

「…ワタシのお姉様は、かっこいいんだよ」

 

 

 

「ほう、どんなとこがだ?」

 

 

 

「いつも凛としてて…みんなそれに従うんだ! …ホントは、けっこう見た目相応の精神年齢してるけど。そんな紅魔館の主なんだよ」

 

 

 

「…なんか、キャラ濃いな」

 

 

 

「お姉様はワタシの憧れだったの。その強さに見惚れて、酔って、追いかける。ワタシの生き甲斐でもあった」

 

 

 

「…ふむ。過去形」

 

 

 

「うん、過去形。…その幻想はすぐに崩れ去った。力が強かったんだ、ワタシの方がね。でもそれだけならまだ良かった。…それからが…お姉様の態度が変わった気がしたの」

 

 

 

「態度」

 

 

 

気になる単語を繰り返すように返事をする。

 

 

 

「なんだか、ワタシから離れていくような気がして、お姉様だけじゃなかったんだよっ! パチュリーも咲夜もいつもより冷たい気がして…それでっ……」

 

 

 

「…それで」

 

 

 

「それで…なニ、したんだっけ? ワタシ」

 

 

 

 

ポス、ポス、と、ピンクのスリッパが絨毯を踏みしめる音が鳴り止む。

 

 

 

 

 

「フランドール? 大丈夫か」

 

 

 

「あァ、うん…大丈夫。ちょっ…と、思い出せないだけ」

 

 

 

待ってて、すぐに思い出すから。そうフランドールは告げる。

 

 

 

 

 

「…ふーん、んじゃ思い出さなくてもいいんじゃないか?」

 

 

 

「…え?」

 

 

 

「覚えていないって事は()()()()()()()()()()()()()()()だろ? みんなの態度が変わった事を覚えているのに、その後が分からないなんてことはあまり…無いだろ?」

 

 

 

無駄に回る舌を駆使し、それっぽいことを吐き出してゆく。

 

 

 

 

……あ と、小さく息が零れたのをSansは耳にした。

 

 

 

「…ぅん、確かに…そう、かもしれない……ごめん、サンズ」

 

 

 

「おいおいなぁに謝ってんだ…こーゆう時は「ありがとう」とか言っとくべきだろ」

 

 

 

クスッと…その少女は笑った気がした。その姿は正しく年相応な態度。やはり幼く見え、どこかSansの脳裏に突き刺さった。見たこと無いはずなのに感じる既視感。

 

 

 

そんなものは目の前の笑顔が良く似合う少女でかき消されてしまった。

 

 

 

 

「hehe、ちっとクサいか?」

 

 

 

「…あはっ、ちょっとだけ」

 

 

 

「うえぇ…マジか」

 

 

 

 

「でも、ありがと! サンズ」

 

 

 

 

 

探検はまだ続く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【TIPS】<吸血鬼-ヴァンパイア②>

*吸血鬼というのは非常に長生きである、ニンゲン等と比べるのもばかばかしい程に。

 

*長生きの他にも、基本的身体能力はもちろん、そのほとんどの機能がニンゲンより優れている。

 

*吸血鬼は若い頃に身体の成長が著しく低下する。その中でも力が強ければ強いほど、幼い頃に成長が収まる傾向にある。




霊夢は微ヤンキー。
魔理沙は俺っ娘。
レミリアはカリスマ。
フランちゃんはいい子。
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