東方骸骨伝   作:くるっくー

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第五話 染み付いた記憶

ガタッ

 

 

勢いよく扉が開いた。

 

 

 

ん? なんだ? アイツら…

 

 

 

「はぁっ…なーんだ、妖精メイドだったのね。驚いて損しちゃった」

 

 

 

「妖精メイド?」

 

 

 

気になった単語を繰り返して聞き返す。

 

 

 

 

「うん、メイド服着たあの小さいあいつらのこと。いっつも遊んでるサボり魔だよ。ま、ワタシにとってはただの雑魚、なんだけど」

 

 

 

 

ワオ、中々言うな。そこまでなのかこいつら。

 

 

 

 

などと考えていると、そのちびっ子達がこちらへと寄ってきた。

 

 

 

「メイド長!!! メイド長!!!」

 

 

 

「メイド長が! 」

 

 

 

「こいつらにやられたノカ!」

 

 

 

 

「…へいへい、なんか流れ不穏じゃねぇか? なぁフランドール」

 

 

 

「確かに…何か誤解されてるような…でも大丈夫! 紅魔館当主の妹たるこのワタシが説得してあげる!!」

 

 

 

 

「「だれダ! おまえ!」」

 

 

 

 

……忘れられてないか?

 

 

 

 

「…気にすんなよ」

 

 

 

「気にしてない…ぐすん」

 

 

 

「お、OK?」

 

 

 

 

ドワァッと声が広がる。

 

 

 

 

「みんなぁ! かかれぇ!!!」

 

 

 

「「サクヤさんのかたきぃぃ!!」」

 

 

 

「「「「ぉぉおおお」」」」

 

 

 

 

「うまくいったらお賃金上がるぞぉぉおおお!!」

 

 

 

 

「「「「「「「「「「「「ぉぉぉおおおおおおおおぉぉぉあああおお!!!!!!!!!」」」」」」」」」」」」

 

 

 

 

うおぉぉ……てか賃金て、まぁ確かにカネの方が大切だろうけど。

 

 

 

 

 

「んもう許さない!! ワタシだって本気出すから!!」

 

 

 

 

フランドールが少し前のめりにかがみ、その華奢な足にチカラを溜める。

 

 

 

 

ブゥオン

 

 

 

 

Sansの横を恐ろしい程の風圧を出しながら飛び出して行くフランドール。

Sansはその姿を確認することが出来なかった。

 

 

その時初めて、()()()()()()を見たのであった。

 

 

 

 

「?! ッ速すぎだろ……」

 

 

 

 

ここまで速いとなると先程何故自分を持ち上げられなかったのか。その謎がますます深まる。…ま、考えるだけ無駄か。

 

 

 

 

 

フランドールが飛び出して3秒にも満たない時間。

 

 

 

1秒で距離を詰め、

 

 

 

2秒で拳を握る。

 

 

 

3秒で────

 

 

 

 

 

──その勢いは止まった。

 

 

 

 

「あうっ」

 

 

 

 

顔から崩れ落ち、煙が出そうな程の勢いで床を滑る。

 

 

 

 

「フランドールっ?!」

 

 

 

 

ふらっとしつつも、立ち上がる。その姿は産まれたてのイヌ。

 

 

 

足腰がしっかりしておらず、立てるか立てないかの境界をさまよっている状態。

 

 

 

フランドールは今、チカラが入っていない。

 

 

その様子を、Sansは静かに見ていた。

 

 

 

 

 

「うがっぁ──」

 

 

 

小さな悲鳴が木霊する。

 

 

 

 

 

「─! フランドールッ」

 

 

 

 

遅すぎるんだよ、何もかもが。

 

 

 

 

「うっく…」

 

 

 

様々な色をしたキレイな弾幕がフランドールに襲いかかる。

 

 

 

 

 

待て、まてまてまて。

 

 

 

 

突然のイレギュラーな展開に頭がこんがらがる。

 

 

 

 

オレは一体何をすればいい? 見てりゃいいのか?? ただ……見ているだけで……ホントか…?

 

 

 

 

「…は、まただ…」

 

 

 

 

足が動かない。まりょくで出来ているはずの骨の脚が動かない。

 

 

 

 

視界は真っ白になり、

 

 

 

 

 

空っぽの頭蓋骨にフラッシュバック(記憶)起こる(蘇る)

 

 

 

 

 

 

─《オレサマはお前を信じるぞ!》─

 

 

 

─《お前はイイやつになれる!》─

 

 

 

 

─《例えそうお前が思ってなくてもな!》─

 

 

 

 

 

 

─《約束する…オレサマは───バキり。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───「そうだもんな。約束、だもんな」》

 

 

 

 

 

《「heheheh……」》

 

 

 

 

─《you’ve been busy, huh?》─

 

 

 

 

 

*■■■ で 満たされた

 

 

 

 

Sansがポケットから左手を出し、それを上へと振り上げた頃には、

 

 

 

 

静寂が訪れていた。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

【TIPS】<トラウマ﹣②>

*トラウマというのは染み付いた記憶である。張り付いて頭から離れないだろう。

 

*時に我を忘れさせ、時に身を任せ、蘇り、時に心への傷を深く、深く抉る。その循環を繰り返す。

*なんとも厄介な存在。

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

ず ぶ。

 

 

 

耳元でそんな音を聞いた。

 

 

 

「…ヒッ…」

 

 

 

 

「……ぃッ…あ、あぁ…いだい…いだいよぉ」

 

 

 

「あ、ぁぁ…」「うっぅ…」「……くぅっ」

 

 

 

 

状況をまるで理解できない。さっきまで沢山いたはずの妖精は? 地に伏している。

 

何が起こって? 四肢に…骨のような物が、刺さっている。

 

 

サンズは? 手を上げて……妖力、いや魔力?分からないけど、そんな感じのチカラを感じる。

 

 

 

 

怖い。

 

 

 

 

「ふ、震えてる…ワタシの…手が…?」

 

 

 

 

本能的な恐怖。

 

 

 

 

これでもお姉様と同じ、吸血鬼。恐るるに足りない筈。どうして? さっきも肝心なところでチカラが入らなかった。早く原因を───

 

 

 

 

 

[!]

 

 

 

 

 

赤色の警告。魔力のようなものが辺りに漂っている。これは………サンズがやっていること。

 

 

 

 

青い、綺麗な瞳。時折()()()()()にも見え、先程とは全くと言っていいほど見違えていた。

 

 

 

その骸骨が今、何をしようとしているのか、全く分からない。

 

 

 

しかし、確実に良くないことが起こる。そう思った。

 

 

 

 

「…ッ! サンズ!! 待って!」

 

 

 

 

チカラが入る。全身を使って叫びに叫ぶ。その声は届いたのか、サンズが一瞬、仰け反るのを確認出来た。

 

 

 

 

 

その隙を()の吸血鬼が、逃す訳がなかった。

 

 

 

 

 

 

今出せる最高速度。その一身に突風が巻き起こる。

 

 

 

 

─先程より速い。

 

 

 

 

─チカラを抜くな。

 

 

 

 

 

─必ず捉えろ。

 

 

 

 

 

─ここで捉えられなければ己諸共やられるだろう。そう思え。

 

 

 

 

 

 

自分にそう自己暗示しながら着実に近づく。

 

 

 

 

目の前には目の中を真っ黒にした骸骨の姿。妖怪のようであり、妖怪ではないその姿は全身の毛を逆立たせる。

 

 

 

正しくソイツは怪物(Monster)であった。

 

 

 

 

──でも、やるしかない…!

 

 

 

己を奮い立たせ、行動をする。骸骨の首根っこを掴まんと吸血鬼の左手が繰り出される。

 

 

 

 

「ゴメンね…ッ」

 

 

 

 

相手に聞こえるかも分からないか細い声で、一人の吸血鬼は言葉を発した。

 

 

 

仕留め─

 

 

 

 

 

 

─ていない。

 

 

 

 

 

 

      ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

*世界の色が消え失せる。

 

 

 

 

*そこは白と黒で構成された空間。

 

 

 

 

*そこにいるのは、吸血鬼と骸骨のみ。

 

 

 

 

 

《「It's a beautiful day outside.」》

 

 

 

 

っは? 消え…た?

 

 

 

 

《「birds are singing」》

 

 

 

 

 

違うッ、後ろッ。

 

 

 

 

《「flowers are blooming」》

 

 

 

 

何を言っているの…?!

 

 

今まで聞いたことの無い言葉…サンズッ 彼は一体─

 

 

 

 

 

《「on days like these, kids like you」》

 

 

 

 

 

 

ゾワリ。

 

 

 

神経を逆撫でするかのような感覚。

 

 

 

聴いていて不快、不愉快極まりない。

 

 

 

 

でも──

 

 

 

 

《「s h o u l d b e b u r n i n g i n h e l l」》

 

 

──やるしかないでしょ。

 

 

 

 

 

*kッ位 が 脇 DelL。

 

 

 

 

 

*欠 ィ が 湧 気出ッル

 

 

 

 

 

 

 

*毛槌が 耳湧き出

 

 

 

 

 

 

 

 

 

決意 が み、みた湧き出る。

 

 

 

 

 

 

突然、身体にのしかかるような重さを感じた。どうやらサンズの仕業の様だ。

 

 

 

「一体どうやってるのか分からないけどっ…やるしかないみたいね」

 

 

 

 

[!]

 

 

 

 

《「heh、足元に気を付けな」》

 

 

 

またまた唐突に出現する赤色の警告。明らかな危険色、これだけは彼の優しさであると言えるのでは無いか、そう思った。

 

 

 

 

「…不味いッ、跳ばなきゃっ…と」

 

 

 

 

ジャンプで回避する。すると、先程まで感じていた重圧が消え失せた。

 

 

 

「…飛べる─…ッ! よっ、ほっ!」

 

 

 

目の前まで迫ってきていた骨の壁を通り抜ける。どうやらウェーブ状に通り道があったようだ。

 

 

 

今まで培ってきた弾幕戦闘技能を駆使し、避ける。

 

 

 

 

《「まだまだいくぞ、クソガキ」》

 

 

 

 

「…くっ、まだあるの?!」

 

 

 

Sansはポケットから出した左手を振る。

 

 

 

その目はあの時、サンズに探検へと誘ってもらったときの目と似ていた。

 

 

 

何故か惹き付けられる蒼い目、それを見ているだけで時間が潰せそうな程綺麗な目。しかし決定的な違いがあった。

 

 

 

その蒼さは濃く、そしてその中に垣間見える黄色の光が輝く。

 

 

 

「──っ! 弾幕は?!」

 

 

 

不味いっ…考えるよりも先に身体を動かさなくちゃ…───?

 

 

 

 

*その世界は 静寂 で 満たされている 。

 

 

 

《「what's happened? 何故……?」》

 

 

 

 

()()の世界に その 中間(灰色) が 混ざりゆく 。

 

 

 

コツン、コツン、と骨と骨のぶつかる音がする。

 

 

 

「指を…鳴らしてる…?」

 

 

 

《「クソっ…何故だ…! Blaster!」》

 

 

 

「ブラスター…?」

 

 

 

気になる単語を口に出す。

 

 

 

でも今はそれどころじゃない。サンズの暴走…なんでこうなったのか分からないけど、ワタシはそれを止めなければいけない。そんな気がしてる。

 

 

 

だから、今はチャンスだ。

 

 

 

 

ゆらりと身体を揺らし、またもや風圧を起こしながら飛び込む。

 

 

 

当たれ、当たれと祈りながら。

 

 

 

 

しかしまたもやその握りこぶしは空を切った。

 

 

 

 

 

《「──heheh……仕方ねぇな」》

 

 

 

その声はまたもや背後から聞こえた。

 

 

 

な、また背後に回られた?! いくらなんでも、目で追えないのはおかしい…まさか、咲夜と似た能力…?

 

 

まだ確定出来ないけど、可能性としては有り得る。……だとしたら、かなり恐ろしいかもね。

 

 

 

《「…どうやらBlasterが動かねぇみてぇだが…アンタはこれも知ってるのか? ま、オレは仕事を全うすりゃいいんだ」》

 

 

 

簡単だろ。

 

 

 

Sansはそう言い、手を伸ばす。そして指先をクイッと繰り返し曲げる。

 

 

 

挑発のジェスチャー。3回ほど曲げられた時、戦いの火蓋が切られた。

 

 

 

 

 

 

Sansは距離を取り遠距離から攻撃を仕掛け、フランドールは距離を詰めて接近戦を仕掛ける。しばらくはこの繰り返しであった。

 

 

◆◆◆

 

 

骨だけが飛び交い、シャンデリアやその他の装飾が傷つく。

 

 

◆◆◆

 

 

フランドールは相も変わらず拳を振るう。この幻想の土地でのルールを理解していない訳ではなかった。それでもフランドールは接近戦を仕掛ける。

 

 

◆◆◆

 

 

傷付けないように。かつて自分がやったことを反省し、出来るだけ傷付けないように、一番手加減の利く近接攻撃へ頼る。

 

 

◆◆◆

 

 

それでも攻撃は当たらない。確実に仕留められる位置にいたのに、気が付いたらそこは忽然としていた。

 

 

◆◆◆

 

 

 

「ちィっ、当たらなァーいなぁ 」

 

 

 

 

 

《「……」》

 

 

 

「ネぇーえ! 何(だんま)りしてるのよ」

 

 

 

その問いかけには答えない。いや、あるいは応えないのか。

 

 

 

どちらにせよ、Sansとフランドールの会話は既に成立しなくなっていた。

 

 

 

 

 

「…ふぅ〜っ…もう、イイのかな…?」

 

 

 

少女は心に決めたモノを抱いて期待する。

 

 

 

「…せっかく手加減してあげようと思ったのにね…うふ、仕方ナイよねぇ?」

 

 

 

《「死ね」》

 

 

 

ズガガガガ

 

 

 

地面から無数の骨が生え、フランドール目掛けて伸びてくる。フランドールはその骨を捌き、砕き、避ける。

 

 

 

「あはっ中々壊れないし……イイよネ」

 

 

 

《「お前さんには分からないだろうな。一瞬にして世界が終わってしまう、その事を知っている恐怖をな」》

 

 

 

「ふひ…ヒハハ…分カルわけないでしょ」

 

 

 

《「……」》

 

 

 

これは正真正銘の殺し合い、に良く似ており、再現されつつあった“遊戯(ゲーム)”。

 

 

 

 

 

怪物と妖怪の“ゲーム(遊戯)”だ。

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