東方骸骨伝   作:くるっくー

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第九話 温もりは優しさの証

 

 

 

 

 

「……あー…よう、フランドール」

 

 

 

 

 

「え……あ、ウン」

 

 

 

 

 

ふぅーっと……

 

 

 

 

 

いや何があったんだこれ。

 

 

 

 

まずボロボロのエントランス。花瓶とかシャンデリアとかぐっちゃぐちゃになってやがる。

 

 

 

 

あーあー、マジで、意識は朦朧としてるし、身体はアホみたいに疲れてるわ、まりょくは少ねぇわで…訳分からん。

 

 

 

 

 

 

棒立ちのまま、その場に立ち尽くすSans。

 

 

 

 

 

「……ってかやっとクソガキ呼ばわりしなくなったー!」

 

 

 

 

 

その静寂も壊れた。

 

 

 

 

 

「…クソガキ呼ばわり?」

 

 

 

 

「そうだよ! 酷いにも程があるし、なんなら今日知り合って間も無いんだよ?!」

 

 

 

 

オマケに操られた様に人が変わるし!

 

 

 

 

続けてフランドールはそう言った。

 

 

 

 

 

操られた…様に…人がかわる…

 

 

 

 

 

 

「何言ってんだ? お前さん」

 

 

 

 

「ワタシにだって分からないよ!」

 

 

 

 

 

とにかく疲れた。今はもうなにも考えたくない。

 

 

 

 

 

「なぁこれってよ…」

 

 

 

 

「…? なに?」

 

 

 

 

「弁償とかしなきゃいけないか?」

 

 

 

 

周りの惨劇を改めて見渡す。部屋の原型が残っていたのは幸か不幸か。

 

 

 

 

まぁどちらかと言えば幸だろうが、それでも限度があるだろ。なんで壁、床、天井の全部に穴とか空いてんだ!

 

 

 

 

 

「う、う~ん…お姉様、なら…ぃゃ、…分かんない。ホントに弁償かも」

 

 

 

 

あはは、と乾ききった笑いが続け様に聞こえた。

 

 

 

 

こりゃ失笑もする。壊したやつが可哀想に見えてくるな。

 

 

 

 

 

 

「…ツケとか出来るもんなんだろうか」

 

 

 

 

「つけ? なにそれ」

 

 

 

 

「あー、簡単に言うなら…支払いをまとめて後にする事だな」

 

 

 

 

 

「…へー、知らなかった。よくそんな言葉知ってるね」

 

 

 

 

「hehe、…良く使ってたモンでな」

 

 

 

 

「でもサンズってしっかりモノ考えてて、優しい感じがする」

 

 

 

 

 

ブッ。…悪意のない言葉の棘が痛てぇ。こんなこと言われるとなぁんかやりづれぇな。

 

 

 

 

 

「……さて、疲れたから座るか」

 

 

 

 

「床危ないよね、コレ」

 

 

 

 

 

ふむ、そう言われるとそうだな。

 

 

 

 

 

「…比較的、あそこの階段なら危なげないんじゃないか」

 

 

 

 

「あ、ホントだ。損傷が少ない」

 

 

 

 

 

疲れたのでオイラの近道は使わずに、歩いて向かい座る。隣にちょこんと、フランドールも座った。

 

 

 

 

 

「はぁ…全く、だぁれがこんな事やったんだ」

 

 

 

 

「……え"、そりゃ…もしかして覚えてないの?」

 

 

 

 

「…おん。その聞き方だとまるでオイラがやったみたいじゃないか?」

 

 

 

 

「いや実際…えー…覚えてないのかぁ…タチが悪いね」

 

 

 

 

 

 

やば、オイラの無いはずの心臓が…違う、ソウルだこれ。ソウルがすんごいドクンドクン言ってる。

 

 

 

 

ここまで極度の緊張があったのは久しぶりだ。

 

 

 

 

「大丈夫? 息苦しそうだよ」

 

 

 

 

「…す、すまん。驚愕の事実に震えてんだ」

 

 

 

 

 

「…ぶふっ…くく」

 

 

 

 

「笑うなよ、一応お前さんの友達の危機だぜ」

 

 

 

 

「あははっ! 危機に遭ったら助けてあげるから安心して!」

 

 

 

 

「heh、そりゃ心強いことこの上………あ」

 

 

 

 

 

 

ここで本来の目的を思い出す。

 

 

 

 

 

オイラ、異変解決しに来たんだった。

 

 

 

 

 

「…なぁ、お姉様ってどこにいるんだっけ」

 

 

 

 

「え、えーと…最、上階?」

 

 

 

 

「うへ、もう異変解決辞めちまおっかなぁ…」

 

 

 

 

「…うあ、そっか。サンズは元々、そのために来たんだったよね」

 

 

 

 

 

「そうなんだが、まぁ、なんというか。疲れたからなぁ」

 

 

 

 

「……ふーん」

 

 

 

 

 

 

……

 

………。

 

 

 

 

 

 

漂う静寂。今それが、とても心地よく感じる。紅を基調とした内装。趣味が悪いことこの上ないが、もうそれも慣れてきた。

シャンデリアやらなんやらの証明の類いが壊され……いや、壊してしまったから部屋が全体的に暗い。

 

 

 

 

 

背中を上の段差に預け、身体を倒す。

 

 

 

 

 

柔らかいカーペットが、身を包むようだ。

 

 

 

 

壊れた廃屋のような感じがする。所有者の居なくなったボロ屋だ。…誰も居なくなった後のような…安心出来るようなそうじゃないような。

 

 

 

 

 

「……サンズ、なーに考えてんの?」

 

 

 

 

「…故郷の事だ」

 

 

 

「帰りたい?」

 

 

 

「正直複雑だ。帰りたいが、帰りたくない」

 

 

 

 

「はは、なにそれ」

 

 

 

 

 

しばし沈黙。

 

 

 

 

 

「…サンズの故郷の話、聞きたいな」

 

 

 

 

「オイラのか、まぁいいけどよ」

 

 

 

 

 

さて何を話すか。スノーフルのこと、遺跡であったおばさんのこと。それに友達、そもそもの地下世界のこと。

 

 

 

 

 

考えれば考えるほど、話したくなるようなエピソードが出てくる。

 

 

 

 

「……そうだな。じゃあつい最近のことでも話すか」

 

 

 

 

フランドールはこちらを見つめ、静かに頷く。

 

 

 

 

「オイラの住む所、そこはスノーフルの町と呼ばれていてな」

 

 

 

 

「一面雪、雪、雪、…で氷。が特徴の地域なんだよ」

 

 

 

 

「まぁそのお陰なのか、オイラたちモンスターの中でも、特に毛深い…ケモノ系中心で構成されてんだ」

 

 

 

 

 

「うん…ん? モンスターって?」

 

 

 

 

「…あー、妖怪みたいなもんさ。オイラとかもモンスターの一種さ」

 

 

 

 

「へぇー…」

 

 

 

 

「続けるぜ………───」

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで、オイラ達2人で会話が弾んで行った。

 

 

 

 

フランドールはどうやら聞き上手なようだ。しっかりこちらを見て、聞いて、リアクションをしてくれる。

 

 

 

 

とてもいい子だ。

 

 

 

 

 

そんでオイラは話に話し込んだ。

 

 

 

 

スノーフルのこと。日常をどう送ってるのかとか。こちらの世界との文化の違いだとか。楽しかったこととか。…ホントに、色々。

 

 

 

 

 

「──んでよ、Papyrusの奴はこう言ったんだ─「コレは戦闘用ボディだから」ってな。只のコスプレ用なのにな」

 

 

 

 

「あははっ、サンズの弟、可愛いねぇ」

 

 

 

 

「だろ? んでそれからはも〜う外さないったらありゃしない。外に行く時も、飯食う時も、オイラを叱る時も…なんならシャワーを浴びる時だって外さないんだ」

 

 

 

 

「えっ! …そ、そこまで気に入ったんだ…」

 

 

 

 

「ああ、さすがに寝る時には外すみたいだがな。可愛いやつだよ…」

 

 

 

 

 

「…んふふ」

 

 

 

 

「そうそう、寝る時と言えば、いつもオイラが……あ? どうしたよ、フランドール」

 

 

 

 

「いや、そんなに生き生きしてる…饒舌になってる姿? を見るの、初めてだなぁって」

 

 

 

 

 

…生き生きしてる…か。

 

 

 

 

思えば、心の底から楽しいと感じたのは、久方ぶりだろう。最近は色々あり過ぎて、楽しいどころじゃなかったからな。

 

 

 

 

「それもこれもアンタのお陰さ」

 

 

 

 

「んえっ」

 

 

 

 

「フランドール、アンタがこうして、オイラなんかの話をゆっくりと…あー、親身になって聴いてくれてる」

 

 

 

 

「あ、え…」

 

 

 

 

「モンスターってな、結構マイペースなんだぜ? …だから、お前さんみたいなのは珍しい」

 

 

 

 

「…いや、」

 

 

 

 

 

「オイラは嬉しいぜ。アンタみたいなのが、幻想郷初の友達だなんてよ」

 

 

 

 

 

「……」

 

 

 

 

 

静かなる時。止まったかと勘違いしてしまいそうな程。

 

 

 

 

 

「…そんな」

 

 

 

 

 

「…そんな?」

 

 

 

 

「そんなにワタシは優しくない。思っている以上に、汚い。穢れてるよ。だから、そんな風に言わないで」

 

 

 

 

「ふーむ…? どうやら見解の相違…まー、過小評価と言ったところだな?」

 

 

 

 

「見解の相違でも過小評価なんかでもない。事実なの…! …もう、誰も…」

 

 

 

 

 

コイツと話してると、結構、雰囲気がシリアスになる。Sansはそう思った。

 

 

 

 

 

「フランドール、お前さんはオイラの友達だ、そこは─」

 

 

 

 

 

「ワタシなんかト友達になったら…ふ、不幸になる…」

 

 

 

 

「……あー?」

 

 

 

 

 

「…み、みんな! みんな皆ミンナ! そう、言ってるんだ! 言っテたんだ! フランドール・スカーレットは悪魔の子!! バケモノって!!」

 

 

 

 

 

張り裂けんばかりの声。咆哮だ。いつの間にか、くつろぎの空間は打ち砕かれ、()()()、粉々になった。

 

 

 

 

彼女は顔を伏せる。知らず知らずの内に、とても良くない距離感を、感じ始めていた。

 

 

 

 

 

「……声、震えてんぞ」

 

 

 

 

 

「…アナタも直に分かるよ。ワタシがどんな、どンな存在なのかを!!」

 

 

 

 

 

はぁ、筋違いにも程がある、ガキか? コイツ…と心の中で悪態をついた。

 

 

 

 

と、思ったが、見た目は完全にニンゲンの子供だったのを忘れていた。

 

 

 

 

 

「…あー、とりあえず、落ち着いてお茶でも…」

 

 

 

 

「…くぅっ…」

 

 

 

 

 

フランドールの背中に生えており、細く、滑らかな翼が羽ばたく。それと同時に、彼女自身もまた、力強く踏み込み、立ち上がり、跳んだ。

 

 

 

 

 

全くもって素早い事この上ないが、Sansはその目で捉えた。

 

 

 

 

 

フランドール、彼女の目尻には水が溜まっていたのを。

 

 

 

 

 

 

「…! フランド──!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フランドールの方へ、身体の向きを変えようとする。

 

 

 

 

 

──その瞬間、身体全体に悪寒が走り、まりょくの蠢きを感じた。

 

 

 

 

竜巻状に形成された渦。ある場所を中心にして取り巻いているようだ。その場所とは─紅魔館上空。恐らくその辺りだろう。

 

 

 

 

そう直感的に分かるくらい、まりょくが動いていた。

 

 

 

 

 

「なんだ、これ…空気が、不味い…」

 

 

 

 

身体にピリピリした感覚が芽生える。

 

 

 

 

 

味覚はサイアクを訴えているが、自分の身体は上々になっている。

 

 

 

 

 

「…うっ、ぎぼっ…ぶぇぇっ」

 

 

 

 

 

口元を両の手で抑え、階段から転げ落ちてしまう。

 

 

 

 

幸いなことに、転げ落ちたことによる衝撃で床が抜ける、という事にはならなかった。

 

 

 

 

いってぇ…

 

 

 

 

 

「…ぐぅぅっ…ふゆがいだ…」

 

 

 

 

今までに出したことのない声が漏れた。

 

 

 

 

 

空気が不味いのだ。だと言うのに、自身の足りないまりょくが少しづつ回復していく。

 

 

 

 

 

──苦しい。

 

 

 

 

 

──誰か、助けてくれ。

 

 

 

 

 

 

「…っサンズ! しっかり!」

 

 

 

 

 

フランドールの、声。不快感の中、コイツだけは安心出来る。初めての友人。

 

 

 

 

 

「…ぉぅえ」

 

 

 

 

 

嗚咽を漏らした。出ないはずの吐瀉物を吐き出す様に。苦しい。

 

 

 

 

 

くるじぃ。苦しい。辛い。づらい。ギヅイ。ぎぼぢわるい。ふがい"。あぁ、もう嫌だ。こんな苦しいのなら、いっそ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──まりょくの流れが消え失せた。

 

 

 

 

 

 

 

「あ"〜……ぐ、ぅぉえ」

 

 

 

 

「…っサンズ、汗…凄い」

 

 

 

 

 

うずくまった身体をなんとか起こし、手を後ろ側へ持っていき、姿勢の悪い正座のような格好になった。

 

 

 

 

顔を上に向け、必死に呼吸を整える。

 

 

 

 

 

「ぜぇ…ぜぇっ……」

 

 

 

 

「サンズ、サンズ…!」

 

 

 

 

 

Sansの身体が更に後ろへ倒れる。否、倒される。

 

 

 

 

 

「……ふ、フラン、ドール…hehe」

 

 

 

 

「笑ってる場合じゃないよ! ワタシ…ワタシ、サンズが…っ」

 

 

 

 

 

Sansの脇腹から背中辺りに、柔らかいものが巻き付く。フランドールの腕だ。彼女の顔をSansの顔に伏せられ、抱きつくような形になっている。

 

 

 

 

 

「…あー、恥ずかしいとこ見せたな」

 

 

 

 

「…着眼点が、違うでしょ」

 

 

 

 

 

「……まぁ、気分はサイアクだか身体は大丈夫だ。もうそろそろいいだろ?」

 

 

 

 

そう言ってフランドールを離そうとする。

 

 

 

 

 

「……待って、このままに、させて」

 

 

 

 

 

 

「…Really?(マジで?) このまま? …んまぁいいか」

 

 

 

 

 

 

()()()。故郷では感じる事の無かった……いやどうだろ。まぁとにかく暖かいのだ。フランドールの体温が高いのか、骨身にまで伝導してくる。

 

 

 

 

 

 

これこそ本当の(コツ)伝導ってな。

 

 

 

 

 

…てか、やっぱ優しいんじゃねぇか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【TIPS】<温もり>

*モンスターという種族では、温もりという言葉は常用的に使用されにくいのだ。

 

 




栄養は無いことも無いけど味がゴミな食べ物、を無理やり食べさせられてる気分。
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