例えばこんな刀使さん達   作:ブロx

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幕間 皐月夜見サイド

 

 

 

 闇の中を、ただ征く。

表に出れば敵は七人、いやもっと。それがそこかしこに湧いては出て、潰してはまた湧き出でる。

 

 雪那はその闇の中で、先程光を見ていた。

相変わらずの顔(かんばせ)。憎らしい表情。見事な太刀筋。勝たねばならない怨敵、優らねばならない剣士、越えねばならない刀使、ヒイラギカガリ。

 

「任務は完了です。舞草の里は私と機動隊の手により壊滅、押収。刀使達も捕縛致しました」

 

『ご苦労様です。逆賊達はどうなりましたか?』

 

「取り逃がしました。無論のこと、あえて」

 

『流石です。では帰還してください。気を付けて』

 

「はい、お姉様」

 

望みは叶うと。雪那は笑った。

 

 

 

 

 

 

 鎌府学長の完全勝利。それも戦略戦術共に。その報告に、折神家本邸は喧騒に包まれていた。

 

「高津学長が帰還なさいますわ」

 

「一人で舞草の拠点を壊滅か。あちらの刀使は手練れも多いだろうと思っていたが…」

 

「流石は二十年前の英雄。その一人ですわね」

 

「………」

 

折神家当主親衛隊は拍手すら起こせぬ感嘆を言葉で以って世に表していた。

 

「しかしあの時の表情。まさか学長はボク達と同じくノロを?」

 

「かもしれませんわね。あの方ならば」

 

「………」

 

「夜見。紫様を見たか?」

 

「見ていません」

 

夜見は無表情かつ簡潔に答えた。

 

「御勤めでしてよ、真希さん」

 

「…。ああ、そうだったね」

 

「そういえば皆さん。食事は取りましたか?」

 

 真希が眼を丸くし、寿々花が年相応な表情を浮かべる。…そういえば彼女は気を遣う事に長けていたなと、二人は思い出した。

 

「? そういえば何も食べてないな。寿々花は?」

 

「私もですわ」

 

「はいはい!私もー!お腹すいたー!!」

 

「腹ごしらえは大事と存じます。なにか拵えて持ってきますのでお待ちを。皆さん」

 

「え!?夜見おねーさんの手作り?!」

 

「もしや夜見さん手製のおにぎりですの?」

 

「――おむすびです」

 

「ア、ハイ」

 

「おむすび…!それに加えて今はお蕎麦が食べたい気分ー…!」

 

「我慢しろ結芽。まだ油断できない状況だ」

 

「では失礼します」

 

 夜見は綺麗にお辞儀した。しかしその前に彼女が一度携帯電話の画面を見ていた事を、この場の誰も分からなかった。

 それは大荒魂がここにいればバレていただろう事。しかしもう、そんな事はありえないのだった。

 

 

 

 

「もしもし。私です」

 

『ハローでーす。そちらの状況は?』

 

「依然厳戒態勢です。そちらは?」

 

『鎌府の学長その人に襲われて現在逃走真っ只中デース。あの人、正気じゃありませんでした』

 

「……では高津学長は、やはり」

 

『イエス。ノロを打ち込まれてマス』

 

「…誰の差し金だと思いますか?」

 

『十中八九アナタ方のボスでしょうネ。山狩りの時、アナタが我々に協力を申し出てくれたのは嬉しかったですが、少々遅かったかもしれません。

 ………申し訳ないです。こうなる前に、カタをつけようとしたのですが』

 

「あの方を助ける方法は」

 

『方法は一つ、工程は二つ。彼女の写シを御刀で斬る、そして研究施設に入院させて体内のノロを除去する。これ以外に方法があればむしろ教えてほしいデース』

 

「出来るのですね?確実に」

 

『イエス。長船の名に懸けて』

 

「分かりました。加えて、あなた方が勝つ方法と工程も」

 

『ワオ、今の私達は拠点も戦力も失ったアウトローでーす。その上で。どうすればいいと?』

 

「ここに来るしかありません。今度はあなた方全員で」

 

『敵の本拠に討ち入りしろってわけですか?アハハ、冗談きついデース。私達四十七士じゃありませんし、勝機もありませんしハラキリもしたくありまセーン。

 そして何より、貴女と斬り合いたくも毛頭』

 

「これから二十四時間、ここ(折神本邸)の警備は我々親衛隊のみになります。加えて紫様は奥の祭壇で御勤め中。恐らくまだまだ表には出てきません」

 

『アナタ方四人というこの国最高戦力がそこに居る事実が私の脳内に不可能という結論を出させているんですが?』

 

「そちらの大規模戦力と拠点が無くなった以上、あなた方の選択肢は今すぐ逃げるか今すぐ戦うかのどちらかしかありません。そしてあの方を助けるには後者しかない。ならば私はそちらに合力します。

 ―――第一第二、第四はこちらで食い止めておきます。最悪、第四だけでも必ず」

 

『!OH,MY。できるのですカ?』

 

「勝つ事は無理でしょう。しかし足止めならば可能です」

 

『サスガ。それならば後はこちらの残存、いえ、最大戦力でもってカチコミ!やってみる価値はありそうデース!ありがとうございまーす!』

 

「今から言う時間にやって来て下さい。その時間ならば、本邸にいる人員が最も少ないです。全ては紫様と、あの方の御為に」

 

『了解でーす!』

 

 

 

 

「出来上がりました。おむすびです」

 

「美味しそー!!!」

 

「頂きますわ、夜見さん」

 

「頂きます。――うん、美味い。流石は夜見だね」

 

「恐れ入ります。緑茶です」

 

「でもさー。もぐもぐ、紫様に刃向かったあの叛逆者たち?目的は一体何だったのかなー?」

 

「はしたないですわよ、結芽」

 

「さてね。どんな時代も、為政者に逆らおうと蛮勇を抱く人くらいるさ」

 

「…頂きます」

 

「塩加減が最高ー!流石夜見おねーさん!

もぐもぐ、でも紫様を倒して、もぐ、何をしたかったのかなー?もしかして自分が一番強いんだっ!て言いたかったとか?」

 

「かもしれませんわね。御刀を使う者としては、そんな刀使この国に必要ないと思いますけれど」

 

「ええ~?そうかなあ?」

 

「強さを求める事を否定はしません。しかし、それならば暗殺まがいのことをせずに尋常な立ち合いをすべきです。燕さん」

 

「そう? まあ、そうだね!尋常で一対一(サシ)の決闘の方が、楽しいし気分も晴れるかもだね~。きっと」

 

「ええ。きっと」

 

「あら? 夜見さんが笑う所、久しぶりに見ましたわね」

 

「たまには笑ってみせたらどうだ?夜見」

 

「……。真希おねーさんがそれ言う?」

 

「左に同じ」

 

「??」

 

 彼女は忠を尽くす。どんな時でも。裏切り者だとこの後罵られようとも。これが、この彼女の選んだ道。

 

「善処します。獅童さん」

 

 

 

 

 

 

 

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