少女、司波深雪と自分は小中校と何故か一緒でそれなりに付き合いがあった。
恐らくはあの神の原作への関連付けの為なんだろうがそれにしても毎回席が隣なのは流石にどうなのかと思う。
そのおかげか彼女とは友好関係を築く事ができ、単純に言えば友達といった関係にはなったのだがこの少女と兄にはちょっとした秘密がある。
事実は少々複雑なのだがこの国には十師族と呼ばれる十の魔法師族がいる。
その日本を代表する魔法師の一族、その最高傑作がまぁ、この司波深雪とその兄の司波達也なのだがその二人に何故か自分が関係しているのかというと。
叔父はその四葉の一族であるらしく、彼女達とは遠い親戚らしいのだ。
そして叔父は俺の行動によって生き延びたイレギュラーの1人であり、その後の達也誕生のいざこざで当主と揉むに揉めて四葉を去った1人らしかった。
因みに年々、その達也の力を耳にし、対抗馬が必要だと感じたのかそこで特異なBS魔法を持つ自分の才能に目を付けた爺様はそれはもうどう考えても子供にやらせるようじゃない厳しい訓練を孫の自分に強要し始めて親父殿とも大喧嘩し、縁を切ることになったが、今回、色々と爺様が反省と償いの意味もあって今住んでる沖縄に招待したと言うわけだ。
親父殿もやったことは許しがたいけどいつまでもこのままではいけないと思っていたのか爺様の謝罪を受け入れ、その招待を受け入れたんだがそこで根本の原因と遭遇し、不穏な空気から逃げてきた子供組が今集まっているといった具合である。
彼女達の母親も護衛と共に子供達と離れたところで爺様と言い争っている。
両親はそれに苦い顔をしながらも子供組に合流し、面倒を見てくれていた。
とはいえ、母と父は産まれたばかりの弟にかかりきりで自分は妹の面倒を見ている。
兄と気まずい彼女には面倒を見てくれる護衛も母親に着いていっており心苦しいのだろう。
そこで俺に話しかけてきたみたいだが、
その兄が滅茶苦茶こちらを見ている。
警戒されているみたいだがなんかしただろうか?
まぁ母親から別れ際に耳打してたみたいだしそれで自分を監視しているんだろうが。
子供相手に大袈裟なとも思う。
いや、毎回大事な妹の傍に場合によっては敵ともとれる叔父の子孫の自分が居るんだし当然ではあるか。
そんな風にお互いに無関心を装いながら妹の相手をしつつ、深雪ちゃんの会話に相づちを打って過ごしていると妹がせっせと作っていた砂のお城(どうみてもトンネル未開通の砂の山)が波に浚われて崩れてしまった。
それを見て泣き出してしまった妹が深雪ちゃんに慰められながら自分に抱き着いて号泣する。
曰く一生懸命作ったのにと。
こうなると自分はどうしても弱い、
『わかったわかった兄ちゃんがおっきい砂のお城をたててやるから』
と慰めていつの間にかキレイなおねえちゃんと打ち解けていた深雪ちゃんに妹の面倒を少しだけ見ていてくれとお願いし、魔法で砂を生成しつつ、周囲の海砂と混ぜ合わせてチャクラで固め、テーマパークで遊べるような砂の城を作り上げた。
箍が外れてしまったのか高さは12メートルはあるばかでかい城壁付きの城をである。
しかし、どうにも反応が良くない。
子供達というか妹と弟は喜んでいるが他の皆は顔を強張らせている。
そこでふと昔の事を思い出した。
とあるジャングルで同じように遊びで砂の城を出した際に藤丸とマシュ、着いてきていたサーヴァントは凄い凄いと喜んでいたが一緒にいたカドックと通信していたメンバーは全員同じ様に引き攣っていた。
こんな簡単な砂遊びなんか大規模な戦闘では日常茶飯事であまり気にしていなかったのだがよくよく考えて見てみれば…、うん、デカいな。
どうすんだ、コレ。
うーむ、明らかにやり過ぎだ。
両親もあちらで言い合ってた三人も因みにまわりの観光客も突然の怪奇現象に驚愕しだんまりである。
これに喜んでいるのは我が妹だけであるという事実。
あっ、これはアカン。
これは絶対なんか言われるなと思いつつ、深雪ちゃんから勢いとノリで妹を返して貰うとそのまま、
「沖縄城に突入する!」
といって誤魔化すように砂の城に逃げ込んだ。
何故か深雪ちゃんも戸惑いながら付いてきてしまったので兄である達也君も一緒に来たのだが、それにつられて観光客のように気になった人達がバンバン入って来てしまったので崩れぬように更なる改良と遊び場の増築(滑り台等)をしなくてはならなかった。
おかしい、なぜ自分は昔のようにこんな事を1人でしているんだ?
自分はここにゆっくりと遊びにきた筈なんだが……。
おかげさまで大好評ではあったのだが過去のブラック労働を思い出させた色々と問題になる一幕だった。
本当の問題はこの後だったが。
爺様と親父は、先程まで言い合ってた二人は頭を抱えたり、複雑な表情でこちらを見ていた。
因みに深雪ちゃんにも魔法の勝手な使用はよくないと叱られた。
気づかずに警察沙汰にもなっていたので(地元住民や遊んでいる観光客に配慮してかサイレンも鳴らさず、私服できていたようだが子供らしく知らんぷりしていた)意外な注目を浴びてしまった。
おかげさまで自分は色んな所に挨拶まわりに行くはめになった。
流石にこんなことが出来る子供を放っておけないと厳重注意と共に監視が付いてしまった。
やり過ぎてしまったとはいえ前途多難である。
どうも感覚がNARUTO世界とカルデアに毒されていてこれぐらい大丈夫かと思ってしまうのが問題なのだがどうにも矯正が難しい。
カルデアの異常なイベントの数々に大規模忍術で森を創ろうが谷を創ろうがなれているのか見過ごしてしまう木の葉の住人達。
だからか城の一城くらい普通だと思ってしまっていたのだが、
「ここって現代社会なんだよなぁ……」
「何を当たり前の事を言っているんですか。
それよりも魔法は絶対、緊急時以外使っちゃ駄目ですよ!いいですか!」
「深雪の言うとおりだ。あんな規格外な規模の魔法は使用を控えてくれ。」
こんな感じで両親や司波家に警戒されてしまった俺はお目付け役として司波兄妹と目立たぬように尾行してくる警官及び軍関係者に監視されるようになってしまった。
簡単に言えば、自分が使った土遁が場合によっては戦略級とは行かずとも戦術級の魔法には匹敵すると見ているのだ。
しかも、その子供はCADの補助もなく、30秒弱で建造し、目立った疲れがないどころか更には遊具の増築、補強等を行い、通常通りに行動している。
そんな子供が市街地を歩いている。何らかの拍子で癇癪なんて起こして魔法なんて使われたら……。
うーむ、ヤバイわこれ。
誰だって監視をつける、というか監禁されたっておかしくないわ。
両親に爺様、おまけに司波さん家が対応してくれたからこうして外に出て、のんびり観光出来てるんだろうから感謝しかないでござる。
心の中で土下座しながら俺はとりあえず二人にどうするかと尋ねる。
ちなみにさっき言ったハブ対マングースは却下された上にもうそういった催しは行われて居らず、映像鑑賞のみらしい。
そうしたらもうちんすこう食べ比べかペットの投棄で荒れ果てた生態系(日本にいないグッピーといった外来種が排水溝等で生存しているらしい)が本当かどうか観察しに行くくらいしか思いつかない。
それを話したら二人は盛大に額を押さえて溜め息を吐き出した。
失礼じゃなかろうか、他にもダイビングとかしてみたいことはあるが流石に子供だけじゃ出来ないだろうと話してみると司波兄のほうが少しの間、顎に手を当て考えながら言った。
「……俺に少し提案があるんだがちょっといいか?」
▽
そう発言した司波兄は軍事基地への見学へいかないかといういかにも女の子受けしない提案だった。
というかこれ明らかに最初から軍関係者とかに提案されていた内容なのではないだろうか?
まぁ、後学になるならと深雪ちゃんも了承し、自分も気にはなっていたから二つ返事でOKした。
簡単な施設の案内から訓練の見学へと流れていく。
問題はそこで起こった。なんと見学客であるはずの自分達に組手をしていかないかと風間とかいうお偉いさんは提案してきたのだ。
それを何故か乗り気で受けた司波兄は難なく対戦相手を下し、因縁があるらしいブラック海坊主にも華麗に勝利して仲直りの握手、二人は幸せになって終了の筈だったのだがここでこの男は余計な一言を言った。
俺と模擬戦をしないかと誘いを掛けてきたのだ。
勿論、魔法なしで純粋な体術のみの勝負をしようとか言ってはいたが明らかに自分を測るつもりで言っていたのは目に見えている。
しかも、魔法が暴発するかもしれないし、無意識で使ってしまうかもなんて言ったらお偉いさんの部下が変な指輪を持ってきてこれで防ぐとかなんとか。
結局、深雪ちゃんも見たいのかあまり強く言わず、司波兄の休息時間を作る目的もあって、他の基地隊員と2連戦後に十分休憩して司波兄とやり会うことになってしまった。
不味いと思って簡単に負けようとしたのだがなにを思ったのか一回戦からいきなり相手側が不意打ちを仕掛けてきたのだ。
はぁ?と思ったのも束の間、身体に染み付いた動きであっさりと返り討ちにしてしまいあれよあれよという間に2人目も礼も宣言もせずに襲いかかってくる。
結果はもう言うに及ばずあっさりと瞬殺してしまい、場は静寂に包まれてしまった。
その上、自分の一撃は相手に重症を負わせていたためそこで一時中断となってしまった。
焚き付けてきたのは君らでしょうにと思いながらも責めるような視線で此方を見る彼等に内心うんざりしながらも責任をとるため(全く納得いかないが)治療を行った。
いろいろと言われたが無視してさっさと治してやると気分を害したと一方的に言い放って帰宅した。
踏んだり蹴ったりで滅茶苦茶気分が悪い。
とはいへ、このままでは本当に不味いと感じた。
思った以上に価値観が違いすぎるのだ。今思えば対戦相手への怪我は内臓の損傷に頚椎骨折というそれなりにヤバい怪我だった。
いや、この認識も相当不味いのかもしれない。
早め早めに価値観を矯正しないと━━━といったところで自分が何も考えずにさっさとその怪我を治したのを思い出した。
頬を伝わる不味い汗を感じながら俺は無視を決め込むことを決意した。
あわよくばそのまま流れてくれると嬉しいんだがなぁ……。
そんな事を思いながらびんびんに感じる司波兄の視線を感じつつ、俺は家へと戻るのだった。