東方追求録   作:ヴァリアス

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小説投稿を初めて、早くも半年ほどが経ちました。
時間の流れを早く感じる事が多くなりつつある今日この頃ですが、相も変わらずに小説投稿に
勤しんでいるうp主です。最近は、他の漫画を題材にした二次創作を作ろうかと考えては東方が
一区切りついてからにしようと感じるばかりです。
後、出来れば感想や一言コメントを書いて頂けると幸いです。(マジで励みになります!)
雑談もこれくらいにして、本編に行きましょう!
それでは、東方追求録 第六話「閉ざされた扉と白紙の運命」どうぞ~!!


第六話

~閉ざされた扉と白紙の運命~

 

咲夜:「零さん、私と『弾幕ごっこ』で勝負してください」

零:「え?」

いきなりの咲夜さんの発言に驚きを隠せなかった。

勝負を挑まれることは予想していたのだが、弾幕ごっこで勝負と言ってくるとは思わなかった。

零:「弾幕ごっこで良いの?殺し合いじゃなくて...」

零:「レミリアは例外だけど、咲夜さんなら死ぬ事は無いから」

咲夜:「勘違いしてるようだけど、貴方を殺す為にやるんじゃないわよ」

零:「じゃあ、何の為にするの?」

咲夜:「貴方が信用するに値するかどうかを見定める為に」

咲夜:「お嬢様は、貴方を信用している様だけど私はそうはいかない」

零:「成程、それ故に弾幕ごっこか~」

咲夜:「受けるも受けないも貴方の自由よ...」

零:「フフフっ...」咲夜からの挑発に乗ってあげようじゃないか。

零:「良いよ、受けてあげる。精々楽しませてね?咲夜...」

そんな僕の言葉を聞いて、己の主に向き直る咲夜さん。

咲夜:「お嬢様...」申し訳なさそうに主の名を呼ぶ。

レミリア:「言わなくても分かっているわよ」それに苦笑を浮かべながらも従者の考えを汲みとるレミリア。

レミリア:「貴方が納得いかないのも理解出来るからね...」

霊夢:「何でこうなるかな~」ため息が聞こえてきそうな霊夢の声に苦笑を浮かべる。

零:「まあまあ、仕方ないさ」と言ってはみるものの霊夢が納得した様子は無い。

霊夢:「あんたは他人事みたいに言ってる場合じゃないでしょ...」

霊夢:「復活したとはいえ、また、無理しちゃダメだからね?」

上目遣いで服の袖を掴む霊夢の手は微かに震えていた。先程の事がだいぶ堪えたようだ...

霊夢を抱き寄せながら頭を撫でる。一瞬、ぴくっとしたがすぐにこちらに身を預けてくる。そんな霊夢に...

零:「大丈夫...霊夢の心配も分かるけど、もう大丈夫だから...」

そう言って諭すと、少し落ち着いた様子の霊夢。

霊夢:「危なくなったら、直ぐ止めるからね!零」

零:「分かってるよ。でも、安心してて、霊夢を一人になんて『絶対に』しないから」

霊夢:「うん...後、もう少しだけこうしてたい...良い?」

零:「咲夜を待たせてるから、なるべく早めでね?霊夢」

霊夢:「分かってるわよ...」

 

 

 

 

 

少し遠くから二人の行動を遠目に見ていたレミリアと咲夜、そして紫。

レミリア:「あの二人って、恋人なの?そうじゃないの?結局、どっちなの?」

紫:「違うのよね~あんなに二人は仲良いのにね...」

咲夜:「何か理由でもあるんじゃないかしら?」

レミリア:「例えばどんな?」

咲夜:「流石にそれは分かりませんが...」

紫:「まあ、理由に心当たりが無い訳じゃないわ...」

レミリア:「あら、何かしら?」

紫:「...先代の博麗の巫女とあの子の事でしょうね...」

咲夜:「あの子とは誰の事ですか?」

レミリア:「先代の博麗の巫女とその子がどう霊夢に関わっているの?」

紫:「...私からは『真実』を話すことは出来ないわ」

紫:「霊夢が話す気になったら、聞いてあげて」

紫:「それまでは何も聞かないで。貴方達の為にも、霊夢の為にも...」

レミリア:「まあ、事情がある事は分かったわ」

レミリア:「それよりも何時まで抱き合ってるつもりかしら?」

レミリア:「見てるこっちが胸焼けしそうだわ...」

そんな視線の先で抱き合う二人の周りには甘ったるい雰囲気が漂っている。

たっぷり数十秒間抱き合った後に、こちらに向かって歩いてくる零。

零:「ごめんね、お待たせしたね」

そう言いながらこちらに歩いてくる零は落ち着いている。

そして、流れる様に構える。その瞬間に零の纏う気配が変わった事を肌で感じる。

改めて先程の戦闘...いいや、違う。零は攻撃を一切していなかった。

つまり、一方的な攻撃を避けていただけのお遊びだった事が分かる。

咲夜:「では、行きますよ?」

零:「いつでもどうぞ...」

そう言ったと同時に、前方から大量のナイフが飛んでくる。

零:「小手調べってところか」

そう言いながら片手でナイフを叩き落としていく。

これぐらいなら硬化の魔法で手を強化すれば余裕だな~と思っていると...

叩き落としていたナイフが消えて、クナイ弾が飛んでくる。

更にナイフも増えて、方向も前方だけじゃなく全方位からの攻撃に変わる。

零:「ほらほら~どうしたの当たらないよ~?」

だからどうという話でもないのだけど、あちらもこれからが本番だろうからね~

零:「さて、何が来るかな~?」

咲夜:「スペルカード発動!!」

咲夜:『奇術「ミスディレクション」』

突如として、クナイ弾を打っていた咲夜が消える。辺りを見回すがいない。

そして、背後からの殺意でナイフを直感で回避する。

零:「うおわぁ!?」ナイフをギリギリで回避したのも束の間に次のナイフが飛んでくる。

零:「ちょちょちょ~!?ちょっと、何本持ってるの!?」

飛んでくるナイフの量は十や百では足りないほどだ。

流石に魔法を掛けているとは言え、これだけの数のナイフと弾幕を捌き切るのはそう簡単ではない。こういう相手に一番効くのは「搦め手」だろう。きっと、咲夜の能力は理解した上で対抗手段を取らなければいけないタイプだろうけど...

だから、リスクはあるが能力が大まかに分かる方法を取る。

零:「ッ...!!」

そう考えていた時、突如して一本のナイフが至近距離に出現し、右腕に深々と刺さる。

咲夜:「その腕じゃあ、さっきみたいな芸当は出来ないでしょ?」

零:「ハハハ...流石に舐めてもらっちゃ困るな~」

咲夜:「精々、頑張ることね...!!」

咲夜:「スペルカード発動!!」

咲夜:『奇術「幻惑ミスディレクション」』

咲夜が二枚目のスペルを発動すると同時にクナイ弾とナイフの量や密度、範囲や出現間隔などが全て向上した完全な上位互換が襲い掛かってくる。これは、両手があってもキツイかも...

そこで足元に落ちている一本のナイフを足先で器用に手元まで打ち上げる。

流石にあっちもナイフを投げている以上、それを使われるのは承知の上だよね?

そして、ナイフを霊力で覆い、中段に構える。集中してナイフや弾幕の軌道や位置を把握する。

身体強化。それは魔法や魔術に置いて、一番オーソドックスなものだろう。

それは初心者から上級者まで幅広く使われており、尚且つシンプルな術式ゆえに技量や保有魔力、練度に作用されやすい。初心者が使えば多少重いモノを持つ程度であるし、熟練者が使えば巨石を打ち砕き大地を穿つ程の威力を生み出すことも出来る。

今回は力で押し切るのは難しいので、速力と動体視力を向上させる。

辺りの光景が引き延ばされる様な感覚が訪れると同時に、自身の半径1メートル圏内のナイフを打ち払う。

零:「うん。戦闘の感覚を体が覚えててくれて、良かったよ」

そんな安堵の言葉を漏らしながら、次々にナイフを打ち落としていく。

その間にも咲夜が現れたり消えたりしているが、強化した目を以ってしても捉えられない。

となれば、能力の候補は「自己強化系」・「時空間系」・「概念系」・「神話系」・「幻獣系」の五つの内のどれかだろう。候補に挙げた順に可能性の高いものだ。

おそらくだが、自己強化系か時空間系のどちらかだろう。

概念系統に共通する特性は、複数の能力を寄り合わせた様な効果を持つ事が多い。幻獣系統や神話系統は能力の出力を上げると比例して、姿に変化が現れる。この他にも系統は存在するが今回の事例には当てはまらない。

そこで駆け回っていた足を止める。急ブレーキによって、靴から黒い煙が出る。そのまま立ち止まり、持っていたナイフを捨てる。

咲夜:「何の、つもり...ですか?」苛立ちというよりは、困惑や疑いが濃い。

零:「何がだ?ただ、立ち止まってるだけだよ」

咲夜:「今は、戦闘の真っ最中ですよ?ふざけてるんですか!?」

零:「ハハハ。アーハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ~」

零:「勝ち確に更にダメ押しまでしたんだからね」

零:「僕がただあのナイフに当たったと本気で思ってたの~?」

咲夜:「違うというなら、なんの為に?」

零:「答える気があるとでも?」

零:「後、優しい零君から忠告だよ~?」

零:「そこから、一歩でも動いたら~死ぬよ?

咲夜:「貴方に何が出来るって言うの!?」

咲夜がそう言って、姿を消した。そう思った瞬間、辺りに大爆破が起きる。

紫さんと霊夢、それにパチュリーが結界を張って爆発を防いでいる。

斯く言う僕自身も結界を張って防いでいる。だが、まともに食らった咲夜は無傷ではないだろう。

零:「だ~から、動いたら死ぬって忠告したのにな~」

大爆発によって起きた土煙が収まると、そこには...

咲夜:「クッ、ソ...!!」片膝をつき、ナイフを構える咲夜の姿だった。

零:「ヒュ~!!あの爆発をそれだけの被害に抑えるなんて凄~~~い」

おそらく爆発が起きて、すぐは反応が出来なかった様だが、その後の爆発の爆風を上手く使って、爆心地から一番遠い場所まで最速で移動したのだろう。

それがあの一瞬に起きたなら、凄まじい反応速度と状況判断能力だ。

咲夜:「私の能力を知っていたの!?一体、いつから?」

零:「何言ってるの~?僕は君の能力なんて知らないよ~」

零:「ただ予想をだして、賭けに出ただけだよ~」

零:「そして、今までの君の発言と今の状態から導き出される能力は...」

零:「時空間系統の時間系能力だ。この幻想郷風に言い直すなら」

零:「『時間を操る程度の能力』ってところかな?」そう言うと咲夜の体がピクリと動く。

やっぱりな~と思いながら、実はここでも賭けをしていたのだ。

ワンチャン、能力が自己強化系統の加速系や身体強化系の能力だった場合、時空間系統の時間系の能力の対処方法とは違いがある為に、一歩間違えればこちらがやられかねない。というリスクを冒していたりする。

まだやるつもりの咲夜に少々驚いていたが、ここまでやってしまうとこちらも止める気が無くなってくる。

零:「まだやる気だね?良いよ、やってやる!!」

咲夜:「くっ...!!舐めるな!!」そう言って、こちらとの距離を詰めてくる咲夜。

流石にまた爆発魔法を準備させてくれる程、相手も優しくない。

零:「やれやれ...もう使う羽目になるとはな~使わないで勝たしてくれそうにないし」

零:「仕方ないか...それじゃあ、ちょっとだけ力を使おうかな」

咲夜:「スペルカード発動!!」

零:「スペルカード発動!!」

お互いにスペルカードを発動する。いいや、零が咲夜のスペルに被せる形になっている。

咲夜:『幻世「ザ・ワールド」』

零:『????「謌代′蜷阪?」』

零の口からまるで人の話す...いや、生物の発するどんな音とも表せない音が発せられる。

 

 

 

私の能力。「時間を操る程度の能力」は名前とは少々、違った能力です。

私が初めて能力を発現したのは、父との稽古の時でした。私はヴァンパイアハンターの父と行商人の母の間に生まれただけのただの少女だと『あの時』までは思っていました。

父は私をヴァンパイアハンターに育てるつもりでいた様で毎日、戦闘の為の訓練として組手をさせられ、他には吸血鬼の殺し方や特性、種類などの知識を徹底的に叩き込まれた。それはもはや『洗脳』に近かったと今では思っています。

私が五歳の時、いつもの様に組手をしていると休憩の為にランチを持ってきてくれた母。その背後の崖が突如として、崩れた。父も急いで駆け出すが間に合わない。そんな時に時間が止まってくれれば、助けられるのに。

そんな考えが頭をよぎった。その瞬間、世界は色を失った。何もかもが動きを止めた世界は、まるで別世界だった。

だが、その世界で私だけが動けた。私しかいない世界はまさに「私の世界」と言えた。

しかし、その時は母を助ける事だけを考えていたので、そこまで気にせずに母を引っ張って、落石が当たらない場所に移動させた。

その瞬間に世界の色が戻り、時は動き出す。何が起きたか理解できなかった父と母はお互いに顔を見合わせ、言葉を失っていた。ただ、私はこの力が自分の中の何かを少しずつ削り出している様な感覚を感じていた。

それは『正解』だった。そうだと気付いたのは、能力が発現してから二週間程経った頃だった。

その日もいつも通りに終わるそう思っていた。夜になり眠りに就いたはずなのに意識がはっきりしている事に気付くまでは...

咲夜:「えっ!?ここは、何処?夢の中よね?」

????:「貴様か助けを求めていたのは、運が良かったな...」

咲夜:「貴方が助けてくれたんですか?」

????:「ふん...ただの気まぐれだ」

咲夜:「そうですか...ありがとうございます」

????:「礼など要らん。対価は支払われているからな...」

????:「ただで力を得られる程、甘くは無いぞ?」

咲夜:「対価?って何ですか?」

????:「幼子に言って分かる事かは置いておいて、貴様の『時間』を代償に貰った」

咲夜:「私の、時間?」

全く以て意味が分からない私に声の主は非常にも告げる。

????:「貴様の生きる時間、『寿命』を削らせてもらった」

咲夜:「えっ...?」

咲夜:「私の事、からかってるんでしょ?そうでしょ?だって、だって!」

????:「寿命など減らせる訳が無い。だろう?」

咲夜:「...!!」心の中を見透かされた様な気分だった。

????:「貴様が今、話しているのは人でも怪物でも悪魔でも吸血鬼でもない...」

????:「貴様ら人間の常識の範囲外の存在だ。勘違いするな、小娘」

咲夜:「私は死んじゃうの?」

????:「戯け者。それなら貴様は当の昔に死んでおるわ!」そう一喝される。

ビリビリと覇気の様な威圧感が自分を捉えるのを感じて、身震いすると...

????:「少々、口が過ぎたな」そういって威圧感が収まる。

????:「貴様には力を貸しただけだ、譲渡とは訳が違う」

咲夜:「うん?つまり、私に貴方の力を渡すんじゃなくて...」

咲夜:「貴方の力を私が一時的に借りて使うって事?」

????:「先程まで現実を受け入れらなかった貴様にしては良い答えだ」

????:「例え、そこら辺の小さな生き物一匹でも契約をすれば守らねばならない」

????:「例えば片方が一方的に利益を得られる様な契約をすれば...」

????:「それが例え、神であろうと契約を守らなければペナルティを食らう」

咲夜:「ペナルティって...ど、どんな?」

????:「契約者の死だったり、輪廻転生の権利の剥奪や魂の崩壊などと様々だが...」

????:「一つとして破った方に有利に働いたペナルティは無い。とだけ言っておく」

咲夜:「じゃあ、私はどうなるの?」

????:「貴様は時間が止まればと願っただけだからな」

????:「代償無しで渡せば譲渡となり、強すぎる力に耐えられずに貴様は死ぬ」

????:「だから、代償はこちらで決めさせてもらった」

????:「一定時間の時間停止の能力を貴様に貸した。その代償は貴様の寿命を糧にして発動する」

????:「普通に発動する分には問題は無い訳では無いが、死ぬ様な事は無い」

????:「しかし、能力の並列使用や制限を超えての使用は寿命を多く使うから気を付けろ」

????:「後、この能力の事は他の者には言わない事だな」

咲夜:「何で?こんな凄いものなのに...」

????:「だから、言うなと言っているのだ」

????:「人は強すぎる力には寄り付かん。ましてやそれが他人の手の上など以ての外だ」

????:「それと我の事も他人に喋るなよ?契約は基本、他者に喋るのは危険だ」

????:「最悪、ペナルティが付きかねないからな?」

咲夜:「わ、分かりました...わざわざ説明してくださって、ありがとうございます」

????:「...貴様に説明するのも我の契約内容に含まれるからな当然だ」

????:「精々、使いどころを間違えるなよ?咲夜」

????:「それではさらばだ。数奇な因果を歩む者よ...」

それ以来、この時の声が聞こえた事は無い。そして、あの人が何者なのかも分からない。

私の能力は時間停止を発動すると一定時間経過後に解除される。

それ以外にも能力の制限以上の時間の遅延や加速、更には空間の拡張が出来る。

時間停止中に更に時間停止を発動する事で時間制限を延ばす事も出来る。

しかし、説明の通りにこれらの効果を使用すれば、私の寿命は削られる。

 

 

 

 

 

全てが色を失い、音が無くなった世界。

時間停止だけでは恐らく、彼が何かしらの対策を行ってくるだろう。

だから、大盤振る舞いだ。私自身への加速と本来は一度の時間停止も重ね掛けして攻撃するが、それを一度の攻撃に集中する事で回避可能不可避弾幕が完成する。回避できるが、時間停止に警戒しているからこそ弾幕への回避がおろそかになる。これが時間停止による最後の攻撃だ。

咲夜:「貴方の時間は私のモノ...解除!!」そして、時は動き出す。

零:「!!」気付けば辺りは大量のナイフと弾幕に彩られていた。

更には弾幕やナイフに回避する程の隙間も無ければ、それを作る暇も相手が与えてくれる訳が無い。

恐らく、発動した時点で回避していなければ間に合わないタイプの弾幕だろう。

零:「確かに、これは回避もさっきみたいに全部防御なんて出来ないからね...」

零:「さ~て?どうしたもんかね~」

さっきのスペカは発動までの時間が必要なので少なくとも後、十数秒間は回避していなければいけない。

ナイフが視界を埋め尽くさんばかりに飛んでくる。

そして、ナイフが次々と身体に刺さっていく。足先、脛、膝、腰、肩、肘、掌、胸、腹、首、背中、耳、眼球、口、鼻、額、側頭部、後頭部など刺さった箇所は百か所以上だった。

更に高速でこちらとの距離を詰めてくる咲夜によって首が切断される。

クッソー感覚的に何回か刃が首に当たった感覚的に連続で何回か切りやがったな?

咲夜:「どうにか最後に一撃を入れましたが、此方のダメージが大きすぎましたか...」

その言葉の通りに爆発のダメージが思いの外、体に疲労として蓄積されていたようだ。

片膝を突く。そして、彼の方を見ると...

切った首と目が合う。まるでこちらを見ている様な感覚に陥るがそんな訳ないと結論付けようとする。

生首の表情がニヤリと笑った表情に変わるのを見るまでは...

背筋をゾクリと恐怖が這い登ってくる感覚に襲われる。喉からは悲鳴が今にも零れ出しそうだった。

零:「そんなに怖がらないでよ?ねえ、咲夜?」

零:「言ったでしょ?少しだけ力を使うって...さあ!」零の体が首を拾い上げ、傷口に合わせる。

すると、傷口の血が見る見るうちに傷を塞いでいく。

咲夜:「う、嘘...あれだけの攻撃を食らって...まだそんな力が」

零:「そうだよね、その反応が普通だよね~」

そして、次の瞬間には彼は目の前にいた。首にはナイフが突きつけられており、更には片腕を掴まれている為に抵抗も出来ないようだ。どこまでも規格外の怪物だ。

零:「君の眼には僕はどう映っているのかな?怪物?チート能力者?それとも、ただの敵?」

彼の質問の意図が解らずに黙っていると小声で

零:「君は完璧だ。だからこそ、完璧だからこその『嘘』をつくんだろう?」

咲夜:「!?何時から気付いて...?」

零:「さて、何時からだったかな?それよりも限界が近いでしょ?」

零:「さっきの攻撃で、もうこうやって喋ってるのだって限界でしょ」

悔しいがその通りだった。しかし、ここでそれを認めるのも癪に障るので...

咲夜:「勝者を労うのは当たり前でしょう?」そう皮肉交じりに言う。

零:「あっはっはっはっは!!!!そうだね!!」そう言って楽しそうに笑う零。

零:「それでは、後の事はお任せください。メイド長?」

咲夜:「ええ...くれぐれも失礼のない様にしなさいよ?」

零:「はーい」

そんな返事を聞くのを最後に私の意識は闇の中へと沈んでいくのだった。

 

 

 

遠くで見ていたこちら側では、咲夜によって零がめった刺しにされて霊夢の表情が一瞬、辛そうだったが、その後の展開に誰もが零の強さを再確認することとなった。

最後は、咲夜が能力が発動しても逃げられない様にして...

というよりは勝ち目がないと悟った感じだった。

そして、何事か二人で話すと零が大笑いすると咲夜は気絶して、零がそれを抱えてこちらに歩いてくる。

零:「いや~ついつい熱くなっちゃって負けちゃたよ~」

霊夢:「何が負けちゃった~よ!?こっちがどんな気持ちで見てたと思ってたのよ!!」

零:「だから言ったでしょ?霊夢を置いて行ったりしないって、信じてなかった?」

霊夢:「バカ...アホ!心配させないで...」そう言って、胸を叩く霊夢に

零:「そんな心配かけるよな奴がお好きでしょう?」

霊夢:「さて、どうかしらね~?あんまり心配させる様なら嫌いになるかもねー?」

零:「そんな~!?」などと軽口を叩いていると、紫さんから質問が来る。

紫:「さっき負けたって言ってたけど、それって納得いってないって事?」

零:「いいや、認めてくれたっぽいよ...」

レミリア:「どうしたの零?何か気になる事でも?」

零:「いいや、何でもないよ」

何故だろうか...咲夜を見ていると『どうしようもない恐怖と安堵』に駆られるのは。

 

 

 

 

 

~紅魔館~大図書館

心地よい微睡みの中で十六夜咲夜は自分の過去を思い出していた。

今のレミリアお嬢様と出会うきっかけになった吸血鬼狩りをしていた頃の記憶を...

いつ振りかの安眠に身を任せていたいが、そろそろ起きなければお嬢様達の朝食を作らなければ...

目を覚ますとそこは自分の自室ではなく、主のご友人であるパチュリー様の魔導書や蔵書の数々が保管されている大図書館のソファーだった。

咲夜:「職務の真っ最中にまさか居眠りしてた?私が...」

今までに一度でもそんな事をした記憶はない。大急ぎでお嬢様を探そうとして、違和感に気付く。

感覚的なものだが、寝ていた時間は一時間や二時間ではない。五時間や六時間は寝ていたと思う。

それを裏付ける様に時計が15時の鐘が鳴る。

咲夜:「大変!!お嬢様と妹様のおやつを作らないとお二人の機嫌が悪くなっちゃう...」

そこで起き上がって初めて、大図書館にパチュリー様やお嬢様やこあ、妹様も誰もいない事に気付く。

咲夜:「珍しい事もあるものね...?」

いつもはパチュリー様など誰かしらがいるのだが、今日は誰一人いない。

そこで、自分が気絶するまでの出来事を思い出す。お嬢様の古いご友人らしい零さん。

その零さんに弾幕ごっこを挑んで敗北した事、そしてその零さんに後の事を頼んだ事も。

咲夜:「まったく、紅魔館のメイド長が聞いて呆れるわね...」

零:「僕は良いと思うけどな~?主の事を大事にしてる証拠じゃない?」

咲夜:「それで主に恥を掻かせていたら元も子もないわ」

零:「そんなもんかな?」

咲夜:「そんなもんですよ...」

ん?私、今誰と会話してたのかしら...そう思って、横を見ると

零:「おはようございます。メイド長」などと言いながら会釈してくる零さん。

しかし、それよりも零さんの服装に驚いていたので、反応はそっちに引っ張られた。

咲夜:「えっと、その執事服は?」

零:「一時的とはいえ、お屋敷の事を任されているので」

零:「身なりは整えておこうと思いまして...間違っていましたか?」

咲夜:「あ、いや。そういう事じゃなくて...」

何から突っ込んで良いのか分からないので、黙り込むと...

零:「すいません。寝起きの頭でこの状況はキツイですね...」

「違う、そうじゃない!」という言葉を飲み込み、説明を聞く。

零:「えっと、咲夜が気絶した後にあったのは...」

零:「レミリアお嬢様や皆さんへの報告をしました」

零:「それで咲夜さんを運ぼうとした所で女性の部屋に勝手に入るのわ、気が引けたので」

零:「大図書館でソファーに運んで治療をして、服の破損を直して...」

咲夜:「まさか、服を脱がしたりしてないでしょうね?」言いながら胸元で手を組むと

零:「し、してません!!してません!!そんな事するわけないじゃないですか!?」

と真っ赤になった顔で自分の身の潔白を主張している零に

咲夜:「あら、冗談よ?それとも本当に...」と更にからかうと...

零:「違います!!!!」とからかわれていることに気付いた零が言う。

零:「もう!話続けますよ?」少しご立腹の様子の零が聞いてくる。

咲夜:「ええ、お願い」と話の続きを話すように促す。

零:「それでちょうど、昼食の時間になったので昼食を作る事になって...」

咲夜:「あ~美鈴が昼食を作ったのね」普段の門番は寝ているが、中華料理の腕は確かだ。

零:「えっと、僕が作ったんですが、不味かったですか?」

咲夜:「...え?そ、そうなの...お嬢様達はなんて?」

零:「えっと、咲夜さんの料理に引けを取らない美味しい料理だった。だそうです」

咲夜:「お嬢様がそこまで言う程の料理の腕なのね...!!」

正直な所は驚きだが、ここで嘘を吐く理由も無いので本当の事なのだろう。

零:「その後は、やっておく必要のありそうな事を片っ端からやってました」

咲夜:「ちなみに何をやったの?」

零:「昼食の用意と片付け、夕食の下準備、お風呂の掃除、追い焚き、館内の掃除、客室の掃除」

零:「外の庭園の手入れ、パチュリー様のお世話、紅魔館の耐震性の調査、外観の掃除と補強」

零:「買い出しと客人の対応、門番さんの起床、メイド長の介護と買い出しを終わらせました」

零:「そして、つい先程にお嬢様と妹様のおやつの用意が終わりました」

零:「それでパチュリー様がフラン様の記憶を取り戻す為に、ご友人のアリス様とアリス様と一緒に来たなぜか『泥棒魔法使い』と呼ばれていた魔理沙さんにお茶菓子と紅茶を用意して持てなしています」

咲夜:「貴方は一体、何者なの?それを全てやるなんて...」

咲夜:「何をしたの?貴方も時間停止が出来るの?」

零:「そんなに簡単に時間を止めたり出来る訳無いじゃないですか」

零:「僕は『分身の魔法』を使っただけですよ」

零:「自分を何人も増やせば、効率は上がり続けるんですよ。当たり前に」

咲夜:「フフフ...貴方に任せて正解でしたね」

零:「そう言ってもらえると頑張った甲斐がありますよ」

零:「さてと、皆さんお待ちですので急ぎましょう」

零:「しかし、メイド長は能力の使い過ぎなので、私がエスコート致します」

そう言って、こちらに手を差し出してくる零に不覚にもドキッとしてしまったが...

咲夜:「まあ、どうしてもと言うなら、ね?」

零:「はい。エスコートさせて頂きます」

咲夜:「ええ、喜んで...」そう言って、零の手を握る。

ほっそりとしているが、確かな力強さを感じるその手が一際、強く握った時...

辺りの景色が一変する。先程まで大図書館に居たにも関わらず、気付けば外のテラスに移動していた。

パチュリー:「あら、転移魔法で登場なんてキザな事するわね」

零:「お嬢様。咲夜さんをお連れしました」

レミリア:「ええ、ありがとう。執事が板についてきたわね?」

零:「ありがとうございます。お嬢様」

霊夢:「あんたの所には、咲夜いるんだから零の事を執事にしようとか思わないでよ?」

零:「まあまあ、レミリアとは約束破ってた分の埋め合わせがあるから...ね?霊夢」

霊夢:「う、うーん...それも分かるけど~~~」

零:「お願い!!霊夢...週一か週二で良いから!!」

霊夢:「はあ~分かったわよ...そこまで言うなら」

霊夢:「ただし、レミリア。零の分の給料は出してよね?」

レミリア:「流石に出すわよ。それくらい...」

零:「別に良いのに...お金なんて腐るほど持ってるし」

霊夢:「持ってるって言ったって、一生涯困らないほどじゃないでしょ?」

零:「いや、困らないレベルの大金があるよ...?」

霊夢:「...マジで?」

零:「うん。幻想郷の相場的に使い切れないよ...絶対に」

零:「外の世界の基準でも使い切れないのに、幻想郷は一円でも大金なんだから」

霊夢:「何を言ってるのよ!?一円が大金じゃなかったら外はどれくらいが大金なのよ?」

零:「う、うーん...人によって感覚は違うけどね~」

零:「僕の基準だと、億とか兆からが大金かな~?」

霊夢&レミリア:『あんたはどれくらい持ってるのよ?』

零:「結構、昔に数百垓超えたあたりから数えるのが億劫になった...」

霊夢:「が、垓って...ゼロ幾つ?レミリア...」

レミリア:「え、えっと...一、十、百、千、万...いっぱい?」

咲夜:「お言葉ですが、お嬢様。垓は、京の次なので十の二十乗で0は15個ですね」

霊夢&レミリア:『想像できない...』

零:「こっちだとうどんや蕎麦が三銭くらいでしょ?」

零:「例え、世界中の人間に死ぬまで食べ物を供給しても余りあるぐらいはあるよ~」

規模が大きすぎるし、誇張しすぎだろと言われそうだけど...実際、あるしな~

零:「だから、お金はいらないよ。俺がしたいからするんだ」

霊夢:「はあ...分かったわよ。勝手にしなさい」

零:「うん、ありがとう!!」

そんなこんなで状況が一段落すると...

零:「そういえば、レミリアも能力持ってるの?」

レミリア:「ええ、持ってるわ。それがどうしたの?」

零:「いや、自分の死にかけた能力が何なのか気になっただけ」

レミリア:「ふっふっふっ♪聞いて驚きなさい!」

レミリア:「『運命を操る程度の能力』っていうのを持ってるわ」

零:「...は?チートじゃん!?何で僕、生きてるの?」

レミリア:「強い能力だとは思うけど、そんな強い?」

零:「いや、ぶっ壊れじゃない?運命を操れば基本、負けないじゃん」

レミリア:「そんなに便利な能力じゃないわよ...」

レミリア:「私の能力は、対象の運命を見る事が出来るの。でも、見るだけ」

レミリア:「無理矢理勝てない相手に勝つ運命なんかは作れないわ」

零:「ちょっとは干渉出来るでしょ?」

レミリア:「いや、なんで分かったのよ...」

零:「あの槍は投擲すると対象に当たる運命を掛けてるんでしょ?」

零:「更にあの槍を当てれば、多少は無理な運命改変も出来る。というところかな」

レミリア:「なんでも知ってるのね?悟り妖怪かしら貴方?」

零:「さて、どうかね?分からないや~」

レミリア:「本当に大事な所ははぐらかすんだから...もう!」

そう言ってはいるが、分かってくれているのは長いこと一緒にいるので分かる。

零:「それよりもパチュリー様達が行き詰まる頃なので、テラスに移動しましょう」

零:「そろそろパチュリー様と魔理沙が白熱し過ぎて、テラス破壊しかねないので...」

レミリア:「あ~パチェって魔法の事になると五月蠅いからね...」

霊夢:「いや、アリスもいるから大丈夫でしょ?」

零:「さて、それはどうでしょかね...」

そう言っているとテラスの方から魔力が流れてくる。これは魔理沙か...

零:「はあ...やっぱりか~」

レミリア:「やっぱりって、まさか本当に?」

零:「まあ、ぽいね。どっちが先かは知らないけど」

零:「転移魔法使うからこっち来て!!」

その零の呼びかけ通りに零の近くに集まると...一瞬にして、景色が変わる。

 

 

 

~紅魔館~  テラス

パチュリー:「だ~か~ら~それじゃあ、暴走の原因の説明がつかないじゃないの!」

魔理沙:「だから、フランが多重人格だとするなら」

魔理沙:「魔力が体内に過剰に蓄積された事により、もう一つの人格が刺激されて」

魔理沙:「その結果、暴走が起きるんじゃないか?って言ってるんだよ!!」

パチュリー:「それが説明がつかないって言ってるの」

パチュリー:「フランが魔力を体に溜めこみやすいのは、私も目を付けたけど」

パチュリー:「それじゃあ、その過剰な魔力は一体、どこから来たの?」

魔理沙:「それは、空気中の魔力を吸収して...」

パチュリー:「それが机上の空論なのは貴方が一番よく知っているはずよ?」

魔理沙:「...」

零:「はいはい。そこまで!!そこまで!!」

零:「二人とも熱くなるのは分かりますが、落ち着いてください」

パチュリー:「私は落ち着いてるわ。無理な事を無理と言っているだけよ?」

零:「はあ~どこが落ち着いてるんだか...焦ってるのが顔に出てるよ?」

アリス:「そうよ、二人ともフランちゃんを助けたいのは同じなんだから」

アリス:「焦っても何も解決しないわよ。ね?」

そう言って、二人を宥めているのは『七色の人形使い』のアリス・マーガトロイドだ。

彼女もまた魔法使いであり、フランの記憶を戻す為に協力してくれた一人だ。

零:「そうそう。一回、思考をリフレッシュしてから考えようか」

零:「皆で考えれば、良い考えが思い浮かぶかもだし」

ただ、そこである事に気付く。それは、事の原因であるフランが居ないのだ。

レミリア:「あれ?フランは一緒じゃなかったの?」

そのレミリアの質問に三人が暗い面持ちになるのを見た全員に悪い予感が走る。

零:「何か、問題が起きたんだね?それも事態を争うような事が...」

パチュリー:「さっき、フランを魔法で解析したの」

パチュリー:「その結果、フランの記憶領域にあったはず記憶の痕跡が無かったの」

零:「おい...最悪の事態の一歩手前じゃねえか!?」

レミリア:「どういう事!?最悪の状況の一歩手前って、私達にも分かるように説明して!!」

零:「例え、どんな小さな記憶でもどれだけ綺麗に消そうとそこには記憶が存在すれば」

零:「記憶領域に残滓が残る。それがないって事は...そこに記憶はない」

零:「消滅じゃなく初期化。記憶の修復は絶望的、出来ないと言っても良い...」

零:「最悪の報告だ。こうなれば、記憶を消した奴を見つける他ない」

零:「消した奴に残った残滓を核に記憶を呼び起こすしかない」

零:「見立てじゃ、猶予は?」

パチュリー:「明後日の朝がタイムリミットね...」

零:「猶予は一日半か...上等だ!!」それだけあれば十分だ。

零:「咲夜さん、美鈴さんを呼んで来てください」

零:「魔理沙、アリス、パチュリー。手伝って!!」

零:「レミリアは、フランと一緒にいて。フランが不安にならない様にしてあげて」

零:「それとフランの運命に何か問題が起きたら、報告して」

レミリア:「分かったわ、零」

咲夜:「分かりました」

魔理沙:「ああ!何でも言ってくれ!!フランを助ける為だ」

アリス:「ええ、力になるわ。零さん」

パチュリー:「フランの為よ、勘違いしないでね?」

霊夢:「私は?」

零:「霊夢は、紫さんと藍さんが対応してる妖怪の無力化に順次して!!」

零:「再度、心象投影が行われた時の被害が他に広がらない様に」

霊夢:「分かったわ。でも、肝心の紫がいないわよ?」

零:「紫さんなら、さっきスキマで行っちゃったから転移で飛ばすね?」

霊夢:「分かったわ、こっちは任せるわよ?零」

零:「うん。任せて!!霊夢」

そう言って、私は紫達の下へと転移するのだった。

 

 

 

それからは、あっという間だった。

幻想郷全体を探知出来るレベルの大魔法陣を作って、起動。それを二人体制で魔力を流し続ける。

基本は僕を固定とした魔理沙、アリス、パチュリーの三人でローテーションをした。

それにより、幻想郷内限定だが隠蔽看破と索敵魔法を仕掛けた。

更に紅魔館を強固な防御結界と魔法や魔術を遮断する障壁で覆い尽くす大魔法を展開する。

夕刻には霊夢と紫さんが暴動の鎮圧を完了したので、その後は全員が紅魔館に待機した。

そうして、準備を進めていた時だった。

レミリア:「零!!フランが...フランの運命が...途絶えたの」

零:「どういう事?運命が途絶えるって、それじゃあまるで...」

零:「今すぐにでもフランが『死ぬ』みたいじゃないか...」

レミリア:「...ええ。運命は、この世に存在するもの全てにある」

レミリア:「例え、木の葉一枚であろうと運命は存在する」

レミリア:「その存在が朽ち果てるまで...そして、フランの運命は何も映さない」

魔理沙:「おいおい!ここまでやって、無駄でしたじゃすまないぞ!?」

零:「レミリア、運命は急に見えなくなったの?それとも徐々に?」

レミリア:「ほとんど、急に見えなくなったけど...一つだけ見えたものがあるの...」

零:「何が見えたの?」

レミリア:「変な魔法陣が書かれた大扉が見えたの...何処かで見覚えがあるのよね」

零:「魔法陣...大扉...見覚えがある...」そこで思い当たるものがある事に気付く。

零:「レミリア...それって、大図書館にあった扉?」

レミリア:「あ!そうよ、地下室への扉よ!!」

零:「それでさ...今、フランって一人じゃない?」

一同:『!?』そこで全員が気付く。現状の危険性について...

レミリア:「フランの所に戻るわ!!」

零:「一緒に行くよ、レミリア!!」

咲夜:「私も行かせていただきます!!」

パチュリー:「待って、三人とも何処に行こうとしてるの?」

レミリア:「は?そんなの地下室に決まって...」

パチュリー:「その地下室の扉は、どこ?」

その言葉を皮切りに、辺りに扉が無い事を全員が確認する。ただ、一人を除いて...

零:「!?...おい!何時からだ?パチュリー!!」

零:「地下室の扉は、何時からあんな魔法陣が書かれてた!!」

そういう零の言葉に、パチュリーが一瞬の無言を挟むと

パチュリー:「私達には地下室の扉が見えないわ。ねえ?」

そのパチュリーの発言に頷く一同。それに驚きながらも何もない壁を指差す零。

零:「ここにあるじゃないか!それとも...これが原因?」

そう言って、壁をマジマジと見つめる零。少しして、納得したように此方を向いて

零:「地下室への大扉が魔術によって、空間から隔絶されてる」

零:「そこに存在しているのに、そこに無いって状態なんだ...」

零:「多分、俺が見えてるのは妨害・隠蔽魔術看破を眼に仕込んだからだね」

パチュリー:「抜かりないのね、流石の一言ね...」

零:「ただ、構造に違和感しかないんだ」

魔理沙:「違和感?未完成とか?」

零:「そういう違和感じゃないんだけど、これは外からは一切の干渉は出来ない」

アリス:「そうね?地下室にフランを閉じ込めて、出させない為じゃないの?」

魔理沙:「そうだぜ、何がおかしいんだ?」

零:「ただ、外からの耐性を上げ過ぎて、内からは簡単に開いちゃうんだ」

パチュリー:「なるほど...確かに違和感しかないわね」

霊夢:「全くもって分からないけど、ここで誰かが中から開くまで待ってるって事?」

零:「そうだね...」

レミリア:「ダメよ!!今のフランは能力の事も忘れてる。制御だって危うい状態なの!!」

零:「分かってる!でも、焦ったところで出来る事が無いんだ...」

零:「外からじゃ、紫さんの能力でも干渉できない」

零:「中からフランが開ける他ないんだ...」

その場に嫌な空気が流れる。誰もが考える最悪の事態、それは...

紫:「中の吸血鬼が暴走して、外に飛び出すまで待つしかないって事ね?」

霊夢:「ちょっと、紫!?あんた、今のは流石に酷いんじゃない?」

レミリア:「良いの、霊夢。覚悟しておかなきゃいけない事だから...」

そう言ったレミリアの顔は、引き攣った笑顔とも呼べない顔をしていた。

零:「...」どうして、こんな顔をしている子を放っておけよう。

零:「一つだけ、この状況を打開する方法がある...」

零:「僕が無理矢理、この魔術を破壊する。『グレイプニル』で」

霊夢:「あんた、それはあんたの寿命を削って呼び出してるんでしょ!?」

零:「大丈夫!大丈夫!...レミリア、助けたいの?フランを...」

レミリア:「そんなの、当たり前じゃない!!」

零:「分かった。任せて...レミリア」

この言葉だけで、僕の命を削るだけの価値がある。

零:「出でよ!名匠の拘束具、グレイプニル」

零:「我が血肉を糧に今、ここに顕現せよ!!全てを喰らう者よ!」

零:「我が前の障害の一切を喰らい尽くせ!!」

その詠唱と共に出現した魔法陣から鎖が伸びる。鎖が絡み合い、大きな口と化す。

零:「スペルイーター!!」

その瞬間、グレイプニルの口が大扉の術式へと噛みつく。壁には一切の傷は無いにも関わらず、

術式はしっかりと嚙み砕いていた。そのままの勢いで砕いた術式を飲み込む。

それと同時に身体からごっそりと魔力と寿命が持っていかれる。

零:「ゴフッ...!!アッ、ブナー!!」そう言って、吐血しながらも立ち上がる零。

霊夢:「ちょっと、また無茶して!!」

アリス:「待って!回復するから...!!」

零:「いや、回復は良いから。魔力を少し分けて?」

アリス:「...分かったわ」少しずつではあるが、魔力が供給される。

零:「ふ~!元通りです!!」そう言った零の体に一切のダメージは見受けられない。

魔理沙:「馬鹿げた回復スピードだぜ...」

レミリア:「ありがとう!零、後は任せて...!!」

零:「いや、僕も行くよ?」

紫:「貴方は今、無理をしたばかりなの。休んでおきなさい」行くのを制されてしまった。

零:「...いつでもスキマ開けるようにしといてね!!」

紫:「分かってるわ」

そう言って、紫達が地下室へと行こうとした時だった。扉の先には地下へと続く階段が...

そこには『無かった』...

レミリア:「...は?」

咲夜:「え...」

霊夢:「ちょっと、これ...」

魔理沙:「私、疲れてるのか?幻覚が見えるのぜ...」

アリス:「幻だったら、良かったわね...」

零:「階段が、無い...だと!?」そう、そこに階段は無かった。代わりにあったのは

パチュリー:「転移ポータルなんて誰が用意したのかしら?」

誰がここに作ったポータルかは知らないが、警戒しておくに越したことはない。

零:「僕が最初に飛ぶ。問題なさそうなら戻ってくる」

レミリア:「私も一緒に行く」

零:「...分かった。行くよ?」レミリアの言葉を聞きながら、ポータルに触れる。

次の瞬間、何処かの外に飛ばされる。辺りには、湖と森がある...

零:「何処だ。って、ここ外じゃねえか!?」残念な事に、外はまだ日は沈んでいない。

レミリアは吸血鬼だ。いつもならパチュリーが日除けの魔法の一つでも掛けるだろうが...

レミリアがここに飛んでくれば、まず間違いなく灰になる。

転移が完了するより早く、レミリアを押し倒して覆いかぶさる。

レミリア:「え!?何して、いきなりこういう事は...もっと順序が、あるでしょ...」

何事かごにょごにょと言うレミリアに自分ごと異空間から取り出したマントを覆い被せる。

零:「レミリア!」と何事か言っているレミリアに呼びかける。

レミリア:「ヒャ、ヒャイ!!」

零:「...大丈夫?どうしたの変な声出して?」数回程、口をパクパクとさせてからそっぽを向いて、

レミリア:「バカ...何でもないわよ」

零:「?」レミリアの変な態度を不思議に思っていると、自分がレミリアを押し倒している事に気付く。

零:「えっと、別にこの状況下で襲おうとかは考えてませんから!?」

レミリア:「し、知ってるわよ...外だから日光が当たらない様にしてくれたんでしょ?」

零:「う、うん!うん!」不覚にもレミリアの恥じらう姿に背徳感を感じてしまい、ドギマギしながら答える。この状況下でなければ、とても魅力的な状況だが残念ながら事は急を要する。

零:「今、退くね!」そう言って、レミリアにマントを掛けてポータルの方に戻ろうとして...

零:「...」咲夜と目が合う。とてつもない殺意が籠ってそうな眼がこちらに向いている。

最早、ゴミを見る様な目ではあるが、空を指差すとこちらの状況を理解した様だが納得のいってなさそうな顔をしているが、こちらにどうしろと?という顔で見ると...

咲夜:「お嬢様」渋々、主の名を呼ぶ。

レミリア:「ひゃあああああ!?!?」咲夜の声に変な声で返事をした性でこちらをまた見てくるので無視する。

零:「皆を連れてきて、咲夜」と咲夜に言うと、ポータルから出てきた咲夜。

咲夜:「もう来るわよ...ほら?」

そう言われて、咲夜が出てきたポータルの方を見るとぞろぞろと出てくる。

霊夢:「外に続いてたのね...」

魔理沙:「こんな転移魔法陣を作れる奴なんて限られてくるな」

アリス:「そうね。というか、レミリアは?ここ、外だけど」

パチュリー:「大丈夫。レミィならそこに居るわ」

紫:「零が付いているんだから当り前よ!」

全員がこの場に集まった。いや、もう一人か二人居ない人がいた。

零:「ここって、何処だろう?」

零:「幻想郷内だと思いたいけど...どう?紫さん」

紫:「ここは紅魔館の近くね。それほど離れていないわよ」

零:「あ~!ここって、霧の湖か...」

レミリア:「あそこに紅魔館の門が見えるわね」

咲夜:「あら、お寝坊さんが来たみたいですよ?お嬢様」

レミリア:「みたいね...」

美鈴:「皆さん、ここまで何をしに来たんですか?」

レミリア:「美鈴。貴方、紅魔館の門を昨日の夜から誰か通ったかしら?」

美鈴:「いいえ、誰も通っていません」

咲夜:「貴方、紅魔館から妹様が消えたの。何か知らない?」

美鈴:「え!?何時から妹様が!?」

零:「分かったよ、フランの居場所が今、はっきりとね...」

霊夢:「ど、どこに居るの?」

零:「地下だよ。紅魔館の、ね?」

紫:「そのようね。まだ紅魔館の地下に居る」

咲夜:「なぜそう言えるんですか?」

零:「地下にぽっかりと何も感じない空間がある」

零:「どうやら奴さんから仕掛けてきたみたいだよ...」

パチュリー:「そのようね。結構な悪趣味ね」

その瞬間、全員の視界が紅魔館の異変を目の当たりにする。

空を覆う赤い霧、それはまるで...

レミリア:「あれは...!!紅霧!?」そう、正に『紅霧異変』の再来を見せつける様だった。

零:「ハハハ...ふざけやがって!!!!

紅霧異変。それはレミリアが吸血鬼の妹のフランの為に起こした事だ。

だが、今、目の前で起きている事はそれを真っ向から否定し、嘲笑する様なものだった。

腸が煮え返る程の怒りが沸きあがる。それはこの場の全員の総評だった...

その性で気付くのに遅れた。

零:「!?美鈴さん、上!!」

美鈴:「!!おわっ!?」間一髪で空から降ってきた弾幕を回避する。それを放ったのは

レミリア:「あれ、って...まさか!!」

美鈴:「わ、私?でも、黒い...?」

零:「わざわざ再現してるのか...悪趣味すぎるだろ!」

零:「偽物にはさっさとご退場願おうか?」

その言葉と共に踏み込むと同時に蹴りを放つ。しかし、しっかりとガードされる。

そこから打撃の嵐がこちらに飛んでくる。一ミリも隙のない攻撃に後ろに下がらせられる。

零:「チッ!!」こちらの攻撃は当たらなそうな動きに攻めあぐねていると、そのままの勢いでこちらに突っ込んでくる黒い美鈴。標的は僕ではなく、霊夢たちに向く。

零:「何やってんだよ!!」

零:「スペルカード発動!!」

零:『水属性上級魔術「バブルカノン・ダブル」』

その言葉と共に足元から水泡が沸きあがる。その水泡から大粒の泡の玉が飛び出す。

それは黒い美鈴の進行方向を塞ぐように通過する。一瞬、ほんの一瞬だけ黒美鈴の動きが止まる。

だが、その一瞬が戦闘に置いてどれだけの意味を持つかはよく知っているだろう。

黒美鈴の背後に回った美鈴が気を纏った拳で右の脇腹辺りを貫く。

美鈴:「お嬢様達に私の姿で攻撃しないでください...不快です!」

その一撃で黒美鈴は形を失い、ドロドロの液体になる。

零:「マジか...戦闘カンが馬鹿みたいに良いみたいですね」

美鈴:「そちらこそ、私が手を出すまでも無かったでしょう?」

零:「さて、それはどうですかね~?」そうはぐらかす。

レミリア:「こいつは結局、何なの?美鈴みたいな姿してたけど...」

パチュリー:「これ、魔術人形じゃないかしら?どう見るかしら零?」

零:「十中八九、魔術人形で正解だろうね」

零:「魔力が少しだけど残ってるし、あの身体能力は人形特有の関節の無さからだろうから」

本来なら有り得ない角度から放たれた拳があった時点で「能力」か「人外」かのどちらかなのは確定していた。

零:「それにしてもこの状況は芳しくないな。急ぎ、紅魔館に戻る必要が出来た」

レミリア:「それって、これが紅霧異変の真似事をしてるから?」

零:「それもあるけど、それよりも紅魔館に誰かいる...人じゃないけど」

霊夢:「妖怪?魔法使い?神?神霊?月人?一体、何?」

紫:「呪術師...そうじゃないかしら?零...」

零:「気付いてたんですか?紫さん」

レミリア:「まさか!?」

咲夜:「その呪術師は、妹様の狂気を誘発させている奴ですか?」

零:「...そうだよ...」

パチュリー:「つまり、紅魔館にはフランと呪術師の二人しかいないって事ね...」

その発言を聞いたと同時に咲夜が能力を使おうとする。それを視線で制する。

零:「この状況を相手が望んで作ろうとしていたんだしたら、面倒だ...」

パチュリー:「面倒な状況を打開する策はあるの?」

零:「あるわけないじゃん...あったら、面倒じゃないよ」

魔理沙:「面倒って、何がだよ?」

アリス:「魔理沙。今回、魔法陣で色々と罠や障壁を構築したじゃない?」

アリス:「相手は、それを無視して紅魔館に侵入してるの」

魔理沙:「それは分かってるのぜ。それのどこが面倒なんだ?」

レミリア:「確かにね...どういう事?」

零:「簡単に説明すると、罠も障壁も僕たちに反応する様に弄られてるって事」

魔理沙:「...はああああああ!?そんな簡単に魔法陣を上書きされたのか!?」

零:「多分、上書きされたから何事もなく入れたんだと思うよ」

零:「さてと、紅魔館に入るための策を考えないとだね」

魔理沙:「正面から破壊する事は出来ないのか?」

霊夢:「そんな簡単に出来る訳ないじゃない...」

零:「まあ、出来ない事もないけど~理論上は...」

紫:「ねえ、私の能力でどうにか中に入れないかしら?」

零:「流石にそういう系統の能力への対策もしてるか...ら...」

不自然な言葉の途切れ方をする零の方を見ると、何かに気付いて思考している様だった。

霊夢:「何か方法が思いついたの?」

零:「結構な賭けだけど、可能性はある!」

レミリア:「少しでも可能性があるなら、やるわ!!」

零:「紫さん、協力してもらいますよ?」

紫:「ええ、分かったわ。それで何をすれば良いの?」

零:「あの結界の歪みを広げて、無理矢理に壊すんですよ」

紫:「結界の歪み?まさか、また無茶するつもり?」

パチュリー:「今回は無理はしないと思うわよ?」

零:「今回は、紫さんの方が無理しそうですけど...」

紫:「?一体、何をさせるつもりなの?」

零:「あの結界に呪術師が干渉した部分に出来た歪を、スキマで無理矢理広げて」

零:「そこに弾幕や魔法を打ち込むことで侵入する事が出来るかもって考えたんだよね」

零:「その余波で罠も破壊出来たら、ラッキーだな。っていう算段ですね」

紫:「それは貴方の負担を減らせる?」

零:「はい。それは確実に...」

紫:「なら、やりましょうかね?」

パチュリー:「ミスは許されないわよ?間違っても、スキマで直接的に中に干渉したらダメよ」

パチュリー:「あくまで、スキマは歪みへの橋渡しだからね?」

紫:「分かってるわよ。そんなへましないわよ...」

零:「それじゃあ、始めるよ?」

結界の構築術式に干渉を始める僕と隣で紫さんが結界の歪みを広げていく。

零:「やっぱり、思った通りだったよ...」

零:「自動防衛機能の術式が機能しなくなってる。まあ、おかげで結界内に入れるんだけど」

紫:「歪みを広げたけど、これくらいで良いかしら?」

パチュリー:「上出来よ。それじゃあ、出番よ!」

一同:『スペルカード発動!!』

霊夢:『霊符「夢想封印」』

魔理沙:『恋符「マスタースパーク」』

レミリア:『神槍「スピア・ザ・グングニル」』

咲夜:『メイド秘技「殺人ドール」』

アリス:『咒詛「首吊り蓬莱人形」』

美鈴:『彩符「彩虹の風鈴」』

残りの全員のスペカが結界に開いたスキマに撃ち込まれる。すると、結界に一本の亀裂が入る。

それは瞬く間に結界全体に広がり、不安定になった結界が大きく揺らぐ。

零:「これだけ壊せば、入り込む隙はある!」

結界の構築術式に過剰な魔力を流し込む。そのままの状態を十秒程維持すると...

バキィー-----ン!!!!!!

結界全体にヒビが回ると同時に閃光が迸り、紅魔館全体を覆ていた結界が壊れる。

館や辺りに結界の破壊の衝撃と魔力の波が広がる。それにより、辺りの罠が一斉に誤爆する。

零:「どうにか壊せたけど、貰った魔力がほとんど尽きちゃったよ...」

紫:「ぐぅ...妖力と魔力を結構、消耗しちゃった。それに『能力』も...」

零:「紫さん、大丈夫ですか?体に異常は無いですか?」

紫:「ええ、大丈夫よ。心配してくれてありがとう」

紫:「少しだけ能力に違和感があるけど、大丈夫よ。問題ないわ」

零:「そうですか?なら良いですけど...」

あの返答の感じ的に、さっきの能力行使で相当な負荷が掛かっている。

スキマは当分の間は使えないと思った方が良いな。あれ以上使わせると何が起きるか分からないから...

零:「パチュリー、罠はどれくらい壊せた?」

パチュリー:「そうね、少なくとも紅魔館内に入れるくらいには壊せたと思うわ」

零:「なら、上出来だね。皆、準備は良い?」

一同:『おおー!!』

そう言って、一同は紅魔館へと向かうのだった。

 

 

 

それから、残った罠を避けながらホールまで移動してきた僕たちを迎えたのは、案の定というか予想通りというか黒い咲夜だった。こちらも、先程の美鈴同様に魔術人形だった。

ただ、こちらは咲夜さんが時間停止で一瞬にして、決着をつけてしまったのだが...

零:「この感じだと、レミリアやパチュリーなんかの魔術人形も居そう」

レミリア:「ただ、能力が無いだけ幾分か楽ね」

零:「そういう意味じゃあ、パチュリーの魔術人形は体力無くて、魔法使えないから脅威にならなそう」

パチュリー:「それは遠回しに私の体力の無さをディスってるのかしら?」

零:「実際に体力無いのは事実であって、馬鹿にしてるわけじゃないよ...」

そんな話をしながら、大図書館に向かっていると大図書館の方から

小悪魔:「あ!パチュリー様達、どこ行ってたんですかー」こあが歩いてくる。

パチュリー:「いや、こあ。貴方こそどこに居たのよ?」

小悪魔:「え、大図書館に居ましたよ?私...」

レミリア:「...」険しい表情でこあを見るレミリア。

零:「レミリア、大丈夫だよ。本物だから...」そのレミリアの心中の一抹の不安を否定する。

レミリア:「サラッとこっちの心を読むんじゃないわよ」

零:「顔に書いてあったから、心配って...」

レミリア:「そんなに顔に出てたかしら...まあ、ありがとう」

零:「どういたしまして...」

そんな会話をしながら、大図書館の中に入る。

零:「それよりも、いつまでそうやってしてるつもり?」

その零の言葉に全員がその『異変』に気付く。

レミリア:「...ッ!!」

咲夜:「一体、何時から!?」

全員が集まっていた机の上にふわふわと黒パチュリーが『浮遊』している。

パチュリー:「能力までは再現してないんじゃなかったの?」

零:「少し考えれば分かることだった。魔術で作られた人形なんだから...」

零:「魔術でパチュリーの能力を再現する事も可能じゃないか」

レミリア:「つまり、普段のパチェと同じ実力って事?」

零:「いや、体力面で見たらもっと面倒かも...」

そんなことを言っている間もふわふわと浮くだけの黒いパチュリーは手元の魔導書?のようなものに意識が向いていて、こちらの存在に気付いていない様子だった。

零:「マジでパチュリーのそっくりさんだwww」

パチュリー:「どういう意味よ?」

零:「本に夢中で周りの事が二の次三の次になってるところとか」

パチュリー:「そ、そんなことないわよ...」

零:「まあ、そこは今は置いといて...気配察知に引っ掛からなかったんだよね」

霊夢:「つまり、零の感知能力で見つけられないってこと?」

零:「that's right!」

紫:「伝わらないわよ?霊夢に...」

零:「え、英語知らないの霊夢?」

霊夢:「エイゴって、董子が喋ってたやつ?」

レミリア:「その通り。って意味だったかしら?」

零:「おお~!!流石、レミリアだね~」

レミリア:「紅魔館の主だからね。人間の言葉も理解出来ないと務まらないからね!」

霊夢には英語は伝わらなかったようだけど、レミリアは外で過ごしていた時に人間に溶け込む為に英語が話せる様に教育されてきてるから伝わったようだ。教養の差というべきか...

これに関しては霊夢が教養が無いというよりは、レミリアの教養の水準が高すぎるだけである。

零:「というか、マジで何もしてこないね...黒パチェ」

パチュリー:「その変なあだ名を辞めなさい!」

パチュリーさん。毎回、反応する気なのだろうか?

零:「特に害が無いなら、無視だよ!」

レミリア:「後から、攻撃される。なんて事は無いの?」

霊夢:「そうね、その可能性を考えると今の内に倒しておくべきね...」

紫:「強さも今までのと一緒だと考えると、そこまでの脅威でもないだろうけど」

咲夜:「逆に不安要素を残す必要が無いですものね」

零:「止めておいた方が良い。今までの奴とは訳が違う」

咲夜:「どうしてですか?」

零:「今までの奴は能力なしの状態だったけど、今回は能力ありと変わらない」

零:「今までの本来の実力も出せてない人形と一緒に考えるとケガじゃすまないよ?」

魔理沙:「はん!そんな脅しにビビッて攻撃できないと思ってるのかよ?」

魔理沙:「こいつが倒せなかったら、例の呪術師にも通用しないだろ!!」

アリス:「確かにそうね、魔理沙の意見も最もね。それに...どうせ戦う敵でしょう?」

零:「それはそうだけど...」

霊夢:「もう無理よ...魔理沙は言い出したら聞かないわ」

レミリア:「そうね、親友の姿を使って悪さされるのも嫌だし。ね?」

零:「あ~もう!分かったよ!!やるよ、やれば良いんでしょ!?」

紫:「あらあら、大変ね?零~」

零:「そう思うなら止めてくださいよ、紫さん...」

紫:「まあ、私も幻想郷で勝手をされていて、少し苛立ってたから良いストレス発散になりそうねえ~」

零:「そういう事か...だから、止めなかったのか」

紫:「ええ、そういう事よ~」

零:「まあ、こうなったらやってやりますよ!」

紫:「その意気よ~♪」

乗せられてる感が半端ないが「チョロ」とか思ってそうだが...ここは乗せられよう。

零:「この黒パチュリーに僕が攻撃をしたら、すぐに全員戦闘準備。いいね?」

一同:『了解!!』

零:「こっちから攻撃するから、ちょっと罪悪感があるけど...」

零:「状況が状況だからごめんね!」

零:「雷属性上級魔術『鳴響雷電』」

スペルを発動すると同時に、大図書館の天井に黒い雷雲が立ち込める。

そして、雷鳴が辺りに鳴り響くと黒パチュリーへと雷が降り注ぐ。それはまるで全てを閃光と轟音でかき消さんとするようだった。

それをまともに喰らえばただでは済まないだろう。まともに喰らっていれば、だが...

黒パチュリー:「...スペルカード発動...!!」

予想通りに全く雷撃は黒パチュリーに一切、掠りもしていなかった。

なぜなら、こちらの攻撃が当たるよりも早く結界が張られていたからだ。

黒パチュリー:『土符「レイジィトリリトン上級」』

雷撃を通り抜けて、弾幕と岩石が飛んでくる。本物の岩石が混ざっている故にその殺傷能力は通常のスペカよりも遥かに高いだろう。魔理沙あたりは一回でも直撃すれば、死ぬ可能性がある程だ。

零:「そんなのありかよ!?スペカじゃなくて素の魔法じゃないか!!」

黒パチュリー:「スペルカード発動!!!!」

黒パチュリー:『火符「アグニシャイン上級」』

黒パチュリーの周りに魔導書が何処からか飛んでくる。そして、その魔導書たちは忽ち炎に包まれる。

零:「はあー--!?!?!?!?スペルの連続発動!?おい!オリジナル軽々と越えてきたぞ!?」

そんな情けない零の絶叫に答える余裕は周りに居た者達にも無かった。

二つのスペルが合わさり、回避の難易度を跳ね上げさせている。

零のスペカで傷一つ付かない結界を突破出来る程の高威力のスペカを持ち合わせていない訳では無いが、それを使えば大きく体力や霊力、魔力や妖力などを消費する為に撃つに撃てない。

黒パチュリー:「スペルカード発動!!!!」

黒パチュリー:『木符「シルフィホルン上級」』

そこに更に追い打ちを掛ける様に三つ目の連続のスペカを唱える黒パチュリー。

その全てが通常のスペカの十数倍の威力を孕んでいる。

零:「パチュリー~!!黒パチュリーの方が強いのはどうなの~!?」

パチュリー:「私に文句を言ったってしょうがないでしょ!?」

零:「何とかしないと本物の方が劣化版になっちゃうよ~」

パチュリー:「何か策を考えなさい!零」

零:「何で僕なの~~~!?!?」

パチュリー:「ごちゃごちゃ言わずにさっさと考えなさい!」

零:「そんな理不尽な~!!」

しかし、確かに魔術で作られた人形の対策を魔法使いのパチュリーに問うのはお門違いというものか。

魔術を使う者としては役に立ちたいのは山々だが事はそう簡単ではない。

あの魔術人形は通常の人形とは訳が違うのだ。特別な強化を施された特殊魔導人形。

僕の予想の魔術人形の上位互換で更に、魔法と魔術の両方を使用出来る。

だからこそ、パチュリーのスペカを使えて、尚且つ、魔術による攻撃にも対抗する結界を張る事が出来たのだ。

特殊魔導人形は、魔術人形よりも多くの魔力と供物が必要なはずだ。

そこで恐らく、呪術師はパチュリーが実験に使用しているものに目を付けた。それらを供物にする為に一度、紅魔館から外に僕達を飛ばしたのだろう。

零:「本当に厄介でしかないな...多分、フランに何かする為の供物もこっちで現地調達ってところか」

零:「こっちの打つ手が無くなるのも時間の問題か...」

零:「まだ、相手の目的も分かってない状況で、それは不味い」

この状況をどうにかしないとフランの所に行くなんて夢のまた夢なのだから...

零:「あ~!やっぱり、手を出さない方が良かったかな...ま、今更か」

そこで僕に向けて、追加の弾幕が飛んでくる。だが、スペカに比べれば...

零:「後、ウザったいんだよ。さっきから!!」こんなものそよ風程度に過ぎない。

零:「あ~もう!レミリア!霊夢!次のあいつの攻撃をどうにか防いで!」

レミリア:「簡単に言ってくれるわね...!」

霊夢:「何か作戦があるのね?」

零:「まあ、賭けの要素が強いけど...やる価値はあるよ」

レミリア:「なら、やる他無いわね」

霊夢:「そうね。今は零の言葉を信じる他ないわね」

零:「ありがと!頼んだ!」

そう言って、意識全てを逆転の一手に向ける。辺りの魔力は黒パチュリーが作られた時にほとんど使われて、体内の魔力を使う他ない。魔力が溢れ出す様に減っていく。だが、惜しむ気は毛頭ない。

だって、それが目の前で僕への攻撃を受けてくれる二人への答えだから...

 

 

 

零が後ろで静かに目を閉じて、力を練り始めている。

霊夢:「さあ、ここが正念場よ。レミリア?」

レミリア:「ええ、そのようね。気を引き締めていきましょう。霊夢!」

霊夢:「あんたこそやられるんじゃないわよ?」そう軽口を返すと目の前の黒パチュリーへと向き直る。

零が逆転の一撃を準備し始めると今まで全員を狙っていた黒パチュリーがこちらに攻撃を集中させる。

表情は顔が真っ黒で分からないが、零の攻撃の邪魔をするという事はそれで倒せるかどうかは置いておいても、少なくとも食らいたくない攻撃である事は確かだ。

霊夢:「スペルカード発動!!」尚更、零に近づけさせる訳には行かない。

霊夢:『夢符「封魔陣」』

私の結界によって、進行を阻まれた黒パチュリーが此方に向けてスペルを発動する。

黒パチュリー:「スペルカード発動...」

黒パチュリー:『金符「シルバードラゴン」』

銀色のドラゴンが次々と天井の方に出来た魔法陣から降り注ぐ。しかし、その攻撃が私に当たる事は無かった。なぜなら、レミリアがスペルカードで黒パチュリーのスペカを無力化したからだ。

レミリア:「スペルカード発動!!」

レミリア:『紅符「スカーレットシュート」』

レミリア:『神槍「スピア・ザ・グングニル」』

レミリアも黒パチュリーと同様に、スペルの連続発動を行ったのだ。

スペカとスペカのぶつかり合いによって生じた衝撃波が辺りの本棚を大きく揺らす。

すると、こちらとの距離を一瞬で詰めてくる黒パチュリー。レミリアの至近距離に現れる。

黒パチュリー:「...!!」レミリアへと拳を打ちこむ。

突然の接近は、レミリアの動きを一瞬でも止めるには十分すぎた。

レミリア:「んな!?...ガハッ!!」

黒パチュリーは姿が黒い事を除けば、普段のパチュリーと変わらない動きをしていた。故に知らず知らずの内に姿や動きがレミリアの中で重なっていったのだ。それ故にいきなりの接近に反応が出来なかった。

黒パチュリーの拳は、軽々とレミリアを反対側の本棚へと吹き飛ばす程の威力だった。

運良くガードが間に合った為に致命傷は避けられたが、拳を受けた両腕が悲鳴を上げる。

レミリア:「片方、骨まで届いてるわね...これ」左腕の肌が紫色に変色している。中で内出血でもしたのだろう。修復するまでは片腕で戦わなければいけない。

レミリア:「パチェみたいに喘息がない健康体な体なのね。貴方...」

吸血鬼の体が脆い訳では無い、黒パチュリーの打撃の威力がとてつもないだけだ。

霊夢:「レミリア!!」こちらの状況を見た霊夢が此方に駆け寄ろうとする。

レミリア:「霊夢!貴方の役目は零が準備出来るまで守る事よ!」

霊夢:「でも...レミリア!あんた、腕が...!!」

レミリア:「私は吸血鬼よ?この程度の怪我なんてすぐ治るわ...」

レミリア:「私は紅魔館の主、レミリア・スカーレット!!」

レミリア:「貴方には、ここで私の相手をしてもらうわよ?紛い物さん...!!」

そう言葉を吐きながら、黒パチュリーへと向かっていくレミリア。

それに対して、手の平を向ける黒パチュリー。その表情は黒一色、故に何を考えているのか全く分からない。

しかし、対峙するレミリアには分かった。その静かな殺意に...

黒パチュリー:「...スペルカード発動...」

黒パチュリー:『木&火符「フォレストブレイズ」』

今までのスペカが普段の数倍、数十倍に匹敵する威力なのに比例しているかのように、現在のスペカは数百倍か数千倍の威力に引き上げられている。紅魔館の壁や床が衝撃で歪んだ様に感じる。

図書館の壁に一条の亀裂が入る、それは辺りへの攻撃の苛烈さを物語っている。

五行の木生火。木は燃えて、火を生む。

このスペルは過去にパチェが...本で見た森林火災をテーマにしたスペルだ。

だが、本来のスペカ...いや、本物の森林火災すら越えた「災害」それがそこにあった。

通常のスペルでは相殺出来るか怪しい...いや、不可能だろう。

普段から魔理沙とパチュリーの弾幕を受けており、時には私とフランの「ごっこ遊び」殺し合いにも耐える程には耐久面の強化をしていたのに関わらずに、それが無いかのように図書館が破壊されていく。

レミリア:「あはは...これは、どうしたもんかしらね。ねえ、咲夜?」

咲夜:「私とお嬢様がいれば、こんな奴に遅れは取りませんよ...」

レミリア:「フフフ...そうね、貴方の力を貸して?咲夜」

咲夜:「お嬢様の為なら喜んで...!!」そういった咲夜がレミリアと共に姿を消す事、僅か一秒にも満たない時間の後に黒パチュリーのスペカを相殺せんと咲夜とレミリアのスペカが繰り出される。

咲夜:「スペルカード発動!!」

咲夜:『幻幽「ジャック・ザ・ルドビレ」』

レミリア:「スペルカード発動!!」

レミリア:『神罰「幼きデーモンロード」』

二人のスペカによって、相殺には至らなかったが黒パチュリーの弾幕に隙間が出来る。

レミリア:「全員!あいつにスペカを撃って!!」そうレミリアが言うと...

一同:『スペルカード発動!!』

魔理沙:『恋符「マスタースパーク」』

アリス:『蒼符「博愛の仏蘭西人形」』

パチュリー:『金&水符「マーキュリポイズン」』

美鈴:『彩符「彩光乱舞」』

紫:『結界「動と静の均衡」』

レミリア:『紅符「不夜城レッド」』

六人が黒パチュリーに向かって、スペカを唱える。それを結界で防ごうとする黒パチュリー。

咲夜:「やる事がワンパターンなのは人形らしいわね?」

咲夜:「パチュリー様の姿を真似て、お嬢様を傷つけた罪...その身で償いなさい!!」

咲夜:「貴方の時間も私のもの...」

咲夜:『幻世「ザ・ワールド」』

そう咲夜が言うと同時に黒パチュリーの目の前に弾幕が迫る。正確には、黒パチュリーがスペカの近くに移動させられたのだ。時の止まった世界で、十六夜咲夜によって...

黒パチュリー:「...!?」初めて、黒パチュリーが見せた明確な『焦り』の感情。それを見逃す程にこの場に居る面々は優しくはない。

レミリア:「さっきの借りを返すわよ?偽物!!」

片腕に再生を集中させることで短時間で片腕を直したレミリアがグングニルを構える。

静寂の後に閃光が閃く。黒パチュリーとレミリアの間に出来た結界と槍がぶつかる事で衝撃波が辺りに広がる。

黒パチュリー:「...!!」ピキッ!という音ともに結界と槍の接触点に小さな、しかし確かにヒビが入る。

レミリア:「貫け!!グングニルー!!!!」レミリアの咆哮に答える様に槍が結界を貫いて、その奥に居る黒パチュリーを本棚へと吹き飛ばす。轟音と共に土煙が巻き起こる。

魔理沙:「どうだ!?やったのか!?」

紫:「...」

レミリア:「はぁ...はぁ...はぁ...」短時間で度重なるスペカの使用によって、魔力と妖力が底をつく一歩手前だ。これ以上、戦えば死ぬ可能性もあるギリギリの戦いだった。

レミリア:「...くっ、そ...!!」しかし、土煙が晴れて見えた光景は...

レミリア:「あんた...かった、すぎるのよ...!!」

右肩と右腕を消し飛ばされた黒パチュリーだった。血などは出ていないが、壊れた部分からは魔力が漏れ出している。しかし、まだ戦うつもりの様でこちらへと歩みを進めている。

こちらは、もう立っているだけでも辛い上に、気を抜くと倒れてしまいそうな程にボロボロだった。

先程まで、零の方に意識が向いていた黒パチュリーがレミリアという存在を見ているのが分かった。

レミリア:「やっと、私を倒すべき相手として見たわね?」

咲夜:「お嬢様は、やらせません!!」そう言って、黒パチュリーの背後に現れた咲夜。

しかし、何故か背後を取った咲夜の攻撃よりも早く動いた黒パチュリーが、咲夜の背後から蹴りを放った。

咲夜:「がっ...!?」次の瞬間、咲夜の体がゴム毬かの様に地面を跳ねて、私の後ろの壁へと飛んでいく。

レミリア:「...へっ...?」

美鈴:「咲夜さん!!」そのまま、壁に激突...!!する寸前で、美鈴が間一髪で自分を壁と咲夜の間に捻じ込む。

お陰で最悪の事態は防げたが、咲夜は頭を強打したことで意識を失ってしまった。

その瞬間、目の前が真っ赤に染まる。咲夜を傷つけられた事で私の中の何かが音を立てて、今まさに壊れようとしていた。遠くでパチェや美鈴の呼ぶ声がする。ただ今は、ドウデモイイ...目の前のあいつを殺せるなら!!

私が黒パチュリーへと突っ込もうとした、その瞬間だった。

霊夢:「レミリア!!落ち着きなさい!!」という霊夢の声に自分が吐血をしているという事に気付く。

黒パチュリー:「...ッ...!!」凄まじい勢いでこちらに突っ込んでくる黒パチュリー。

その手が私の眼前に迫るが、相打ちにするには十分すぎるほどの隙を晒している。そう思い、攻撃しようとした私の目の前に...

零:「人形如きが、図に乗ってんじゃねえー!!!!」その怒号と共に目の前に居た黒パチュリーが吹き飛ぶ。

目の前には、彼が立っていた。そして、こちらを向きながら...

零:「咲夜は無事だ、安心しろ。冷静になれ、レミリア...」

零:「お前が死んだら、フランはどうなる?咲夜は?この紅魔館は?」

そこまで言われて、ハッとする。頭に血が上っていてから思い浮かばなかったが、確かにそうだ。

零:「レミリアや咲夜、皆がやられた分の借りは...僕が返す!!だから、見てて...レミリア」

そう言われてしまい、不意に涙が零れる。それは瞬く間に拭い切れない程に溢れ出した。

レミリア:「お願い...零。あいつを、倒して!!」そう言った私の言葉に零は...

零:「あぁ...任せろ、レミリア!!」そう返してくれた彼の姿は、とても頼もしいものだった。

 

 

 

逆転の一手を完成させた僕が目を開けると、黒パチュリーが咲夜を蹴り飛ばした瞬間だった。

反対の壁へと吹き飛ばされていく咲夜を美鈴が辛くも受け止める。

その瞬間だった、背筋に悪寒が走ったのわ。直ぐにその原因がレミリアである事が分かる。

黒パチュリーを視線だけで射殺さんとする程の気迫の眼差しの中に、憎悪や殺意などがドロドロに混ざり合った感情が渦巻いている。更に、自分の命を削ってまで黒パチュリーを殺そうとしているのが、ありありと伝わる。

零:「ヤバい...あれは自分の意思が無い。暴走状態に入ろうとしてる!!」

霊夢:「零!!出来たの?」

零:「あぁ。でも、それどころじゃなさそうだ!」

零:「レミリアに声をかけて、正気を取り戻させるんだ!!」

霊夢:「分かったわ!」霊夢の返事を聞くと、咲夜たちのいる方に移動する。

零:「美鈴!咲夜さんの状態は?」

美鈴:「さっきから返事が無くて...息も不規則で安定しないんです!!」目に涙を浮かべる美鈴さん。

パチュリー:「それに、頭蓋やあばら骨、鎖骨や肋骨などの合わせて計十六か所の骨折と全身打撲」

パチュリー:「頭部強打による神経系統の麻痺と痙攣が起こってるわ。事は一刻を争うわ!!」

零:「ここで致命傷だけ僕が直すから!パチュリーと美鈴さんはレミリアに呼びかけを!!」

パチュリー:「分かったわ!」

美鈴:「咲夜さんを、お願いします!!」

二人がレミリアの方に意識を向けている間に咲夜さんの傷を治していく。

骨折していた骨はくっつけ、一部の複雑骨折や粉砕骨折に関しては医療魔術で新しい骨で繋ぎ止める。一番心配な頭部へのダメージは想定以上で頭が割れており、更にぶつけた衝撃により神経系が麻痺を起こしている。額の傷を治癒して、麻痺してしまった神経系統を魔術で沈静化して治療する。

どうにか傷は塞いだが、呼吸がどうにも安定しない。仕方ないので、人工呼吸を行なう。

その結果、咲夜の呼吸が安定し始める。流石に、命のかかった状況なので手段を選んでいられない。

零:「ふぅー。どうにかなったな...」

呼吸が安定し始めると、咲夜の青白かった顔が見る見るうちに生気を取り戻していく。

零:「これで後は、レミリアを止めて...あいつを倒すだけだ」

レミリアにパチュリーと美鈴さん、霊夢が声を掛けているが、本人は聞こえているが無視している様だ。霊夢の声に、一瞬だけ意識を取り戻しかけた様だが、すぐに怒りに身を任せて暴走しようとする。

そこで、黒パチュリーが一瞬にして距離を詰める。しかし、レミリアはその場を動こうとしない。相打ち覚悟で確実に黒パチュリーを破壊しようとしている。

しかし、こちらに意識の向いていない黒パチュリーまで跳躍して、そのままの勢いで横薙ぎに蹴りを放つ。

それはもろに黒パチュリーにヒットする。吹き飛ぶ黒パチュリーを他所にレミリアに声を掛ける。

零:「咲夜は無事だ、安心しろ。冷静になれ、レミリア...」とレミリアの求めていた言葉を告げると、先程までの憎悪に染まった顔が安堵の表情に変わる。

きっと、ずっとフランの事や僕の事、その他の色々な事の重圧に耐えていたのだろう。ずっと気丈に振る舞っていたが不安だったはずだ、辛かったはずだ。それらの感情が「咲夜が死んでしまったかもしれない」という状況で限界を迎えてしまったのだ。

だからこそ、今、レミリアは安心から目に涙を浮かべている。だが、それで良いと思う。ここに来て、最初に会った時から感じていた昔との違和感、それは「レミリアの性格の違い」だった。

確かに、大人になるにつれて性格が変わる事はあるが、そういう性格の変化ではない。

まるで「無理をしてまで子供が親の真似をしている」そんな感覚に近いだろう。昔のレミリアは事あるごとに泣いており、その癖に負けず嫌いで色んな事で自分と張りあっていた。しかし、今のレミリアはどうだろうか。

紅魔館の事や、フランの事、咲夜や美鈴たち従者の管理、幻想郷の有力者との付き合い等々、自分の行動にどうしても責任が付きまとう故か、昔のような自由奔放な感じは欠片もしない。笑顔よりも無表情の方が多い様に感じた。今日、会ったばかりの僕が感じるのだ。咲夜やパチュリーは、もっと感じているだろう。

だから、レミリアを押しつぶさんとしている「責任の重圧」から解放する。

レミリアが紅魔館の皆に頼るのが一番なのは分かっているが、すぐにそれを実践できるほどレミリアは器用じゃない。だから、今は僕にその背負いきれない責任を肩代わりさせてもらう。

僕もレミリアの背負っているものを一緒に背負ってあげたいから。

冷静にレミリアを諭すと、レミリアは「あいつを倒して」と頼んできた。きっと、今までのレミリアならこんな事はしなかっただろう。それをするようになったという事は、少しは心情の変化があったのだろう。

お願いされて断るなんて事は無いし、頼まれたなら返す言葉は一つだけだろう。

「任せろ!」その一言だけで良い。その言葉を聞いたレミリアの頬を涙を流れる。そんなレミリアを見る事が出来て、ホッとする反面でふつふつと怒りが沸いてくる。

零:「おい...人形。お前も作られて、利用されてるって事くらいは僕も分かっているつもりだ」

零:「お前にあるのは、ただ状況を判断するだけの知能とその高性能な魔力回路」

零:「それと、極大魔法一発を耐えるだけの耐久性と膨大な保有魔力」

零:「お前にとっては、作ったやつ呪術師の命令が全てなんだろう...?」

この人形はただ術者の命令を遂行する為に最善の行動をとるだけのただの道具。

だが、こいつのやった事は許せる範疇には無い。だからこそ...

零:「お前にどれだけ怒りを募らせても意味が無いというのは分かっている」

零:「だから、もう慈悲も同情も哀れみも無い。ただ、お前を倒す。それだけだ...」

零:「さあ、決着だ。引導を渡してやる...」静かにそう言い放つ。

その一言と解放した覇気で戦闘の意思を伝えるには十分だった様で、その瞬間にこちらへと左手を向けてくる黒パチュリー。その手の先に魔法陣が生み出される。そこから魔法を生み出し、こちらに向かって発射してくる。それは火に、水に、土に、風に、と様々な魔法弾が撃ち込まれる。

しかし、それが当たる事は無かった。なぜなら、その魔法全てが僕の前方で忽然と消息を絶ったからだ。

黒パチュリー:「...!?」自分の放った魔法が消えた事に驚きを隠せないでいる様な黒パチュリー。

零:「言ったろう?決着だ。と...」

そう僕は一切、勝負だとは言っていない。決着だと言ったのだ。

もうあの時点で黒パチュリーには、もうどうする事も出来なかったのだ。

零:「チェックメイトだ...!!」

その言葉がどれだけの意味を持っているのかを判断するだけの知能が黒パチュリーにあるが故に、もう勝ち目がない事は火を見るよりも明らかだった。その両者から少し離れたところで...

霊夢:「え...!?ど、どういう事なの?」

美鈴:「えぇーーー!?!?!?!?な、何が起きたんですか!?」

紫:「嘘...あれだけの魔法をどうやって!?」

パチュリー:「まさか...!!あの短時間で準備したの!?」

レミリア:「もう...カッコイイじゃない!!」

などと様々な反応を見せる一同と眠る咲夜とそれを見守る小悪魔。

その中で唯一、この状況を理解したパチュリーはその事実に驚愕していた。

パチュリー:「零...まさか、あの短時間であの魔法を発動したの!?」

レミリア:「あの魔法?それって、何なの...?」

パチュリー:「それは恐らく...」

零:「『アンチマジックフィールド』だよ」

一同:『え...?』

紫:「それって、魔法を無力化する魔法!?」

零:「そういう事。ただし、自分もその対象範囲内だから他の魔法は使えないけどね...」

そういう零は確かに魔法を無力化されているのか、魔法を使わずに物理攻撃だけをしている。

零:「まあ、『魔法』だけじゃなく『魔術』も対象だけどね?」

その零の言葉とほぼ同時に零の目の前で何かが弾けた。それが不可視の空気の刃である事に気付くのにさほど時間はかからなかった。それを誰が放ったのかも...

零:「残念ながら万策尽きたようだね?お人形さん...」

その言葉に無言を返す黒パチュリー。まあ、あの人形が話せるのかどうかも分からないが...

零:「さあ、これで終わりだ!!」

零:「スペルカード発動!!」スペルカードを宣言しながら、手の平を黒パチュリーへと向ける。

零:『破符「塵界破」』

その瞬間、純粋な霊力の塊が零の手の平に集まり、そして収束して一条の光の弾丸となって黒パチュリーへと向かっていく。黒パチュリーは避ける様な素振りを一切見せない。

そして、極光の光弾が黒パチュリーに直撃する...




第六話いかがだったでしょうか?
今回は話が今までで一番、長くなってしまいました。途中で読み疲れた方、本当にスイマセン!
上手い事、文章をまとめられなかった私の文才の無さ故ですが、どうか温かい目で見ていただけると助かります。
さあ、紅魔館編もいよいよ大詰めです!フランのいる地下室への扉の前に立ち塞がる黒パチュリー。その圧倒的な強さに徐々に追い込まれた零達だったが、零の大技により何とか黒パチュリーを追い詰める事に成功する。フランは無事なのか?そして、黒幕の正体とは!?
最後にご意見、誤字脱字のご指摘などありましたら、コメントをお願いします。
次回“東方追求録”第七話「破天異変、開幕」お楽しみに!!
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