東方追求録   作:ヴァリアス

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紅魔館編の話もいよいよ大詰めとなってきました!!
そんな中でストーリーの進路に大いに悩みまくっているうp主です。
話の一つの区切りであると同時に、話の大きな分岐点でもあるので尚更悩んでしまい、話の落としどころに苦労しています。
さて、近況報告も終えたので本編へと行きましょうか!!
それでは、東方追求録 第七話「破天異変、開幕!!」ゆっくり楽しんでいってね!!


第七話

~破天異変、開幕!!~

 

零の攻撃が黒パチュリーに直撃する...

そう誰もが思った時、その場の誰もが予想もしない事が起きる。

いきなり地下室への扉が轟音と共に破壊された。破壊された扉は零の光弾の軌道上に飛んでいき、光弾とぶつかって、爆散する。そのまま黒パチュリーへと光弾が直撃したが、扉との接触によって、威力を散らされた光弾では黒パチュリーを破壊するには至らなかった。下半身と左腕が消し飛び、壁に叩きつけられて動かなくなる。

しかし、結果として、零の攻撃から黒パチュリーを守ったのだ。

この状況でそんなことをする人物は、今回の異変の黒幕である「呪術師」だけだ。そう考えた零が背後の地下室への暗闇の中に立つ人物に話しかけながら振り返る。黒幕の顔を見る為に...

零:「!?...そっちから出てきてくれるなんて、有難い...ね...?」

そこに居たのは、零の予想とは異なる存在。それは...

フラン:「...」茫然自失としているフランドール・スカーレットの姿だった。

レミリア:「フラン...!?」いきなりの再開に驚きつつもフランの方に向かって、飛んでいく。

咲夜:「妹様!!」

美鈴:「フラン様!!」

従者の二人は仕える主人と同じくらいに大事な人物の生存に歓喜した。

そうやって、レミリアの手がフランに触れようとした、その瞬間...

零:「止まれーー!!レミリアーーーーーー!!!!!!」零の絶叫が響く。

レミリア:「えっ...?」

その言葉に動きを止めたレミリアの顔の横をフランの左手が通過していた。

それに気付いて飛び退くレミリア。しかし、その顔は動揺と困惑に彩られていた。

霊夢:「んな!?フランがレミリアを攻撃した!?」

パチュリー:「もし、本当に呪術師がフランの狂気を起こしたのなら」

パチュリー:「今、この場で狂気を呼び起こす事なんて造作も無いわよね...」

美鈴:「それじゃあ、味方同士で消耗戦する様なものじゃないですか!?」

紫:「全く頭の回る黒幕ね...厄介極まりないわね」

そんな皆の反応を他所に無表情だった顔を狂気的な笑みへと変えたフランが楽しそうに笑う。

フラン:「アハハハ!!今のは、絶対避けられないだろうと思ったのにな~!!」

フラン:「お兄様~邪魔しないでよ~!!姉妹喧嘩は部外者厳禁だよ~?」

零:「はは...殺す気の攻撃に見えたけど?」苦笑を零しながら、会話する零。

フラン:「私がレミリアお姉様を殺すわけないじゃない~」

そうフランが発言した瞬間、零の態度が一変した。すると...

零:「...おい...」語尾を強める零。

フラン:「どーうしたの?怖い声出して、お兄様~?」対して、更にふざけた調子のフランに...

零:「お前は一体、どこの誰だ?」いきなりの零の質問にその場の全員が驚愕する。

フラン:「酷いな~フランだよ?フランドール・スカーレットだよ?」

フラン:「もしかして、忘れちゃったの?ねえ、お兄様?」

レミリア:「だ、誰って...フラン以外に誰が居るのよ?」困惑するレミリア。

霊夢:「...どういうことなの、零?」状況の説明を求める霊夢。それには答えずに

零:「下手な芝居は止めるんだな...お前がフランじゃない事くらい分かってる」

零:「なあ、呪術師?」そう言った零の言葉に全員が言葉を失う。

フラン?:「...」零の有り得ない言葉に無言を返すフラン。だが、少しすると...

????:「な~んだ、キヅイテタノカヨ?」フランの声ではない機械的な声がフランの口から発せられる。

????:「折角、感動ノ再開ヲ演出スル為二演ジテタノニ...ドコデキヅイタ?」

零:「バーカ!お前は何にも分かってないんだよ」

零:「まず、フランは呪術師と一緒に居たのに、今になってどうして一人で出てきた?」

零:「次に、呪術師が容易く逃がすような奴なら何で今まで逃げようとしなかった?」

零:「更に、僕が一番の確信を得たのは『レミリアへの呼び方』だよ」

????:「呼び方?ソレノドコガオカシカッタ?」

????:「レミリアお姉様じゃオカシカッタ?」レミリアを呼ぶ時だけ、フランの声になる。

零:「ああ、可笑しいよ。だって、今のフランはお姉さまじゃなくて...」

零:「レミリアさんって呼んでたんだから!」

????:「あっ!そういえば記憶を消したんだったwww失敗!失敗!」

そうフランの声で喋る呪術師の態度は、依然として悪びれた様子は無く、むしろこちらを嘲る様な口調だった。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                       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咲夜:「よくも妹様を弄んでくれたわね...!!」

美鈴:「というか、どうして妹様の姿をしているんですか?」と最もな疑問が飛び出す。

パチュリー:「確かに...どうしてかしらね?呪術師さん」

????:「アノサ...ソノ『呪術師』って、呼ビ方止メテヨ?」

零:「名前を知らないからな。じゃあ、名乗れば?」

????:「ハァ...仕方ないか」先程までの機械的な声から人間的な声へと変わる。

????:「それでは改めまして、こんにちは?愚かな紅魔館の面々と運の悪い異変解決者諸君」

ネメシス:「私の名前はネメシス。君たちを断罪する処刑人の名だよ...」

レミリア:「ネメシス...」黒幕の名前には、聞き覚えがあった。

パチュリー:「随分な名前ね?その名が本当なら怪物ね」

零:「義憤の女神、ネメシス...ギリシャ神話の神の名を語るかペテン師が」

ネメシス:「これは君たちへの怒りを忘れない為の名前だよ...」

咲夜:「『私たちへの怒り』?貴方は一体、何者ですか?」

ネメシス:「...。てかさ、この名前は君の妹がつけてくれた名前なんだよ?レミリア」

レミリア:「んな!?馬鹿な事を言うんじゃないわよ!!」

ネメシス:「噓なんてついてないわ。この体も彼女が自分から使って良いって言ってくれたんだから」

霊夢:「あんたの言葉を信じるとでも?さっさと退治されなさい!!」

ネメシス:「...君たちには個人的な恨みはないからさ、さっさと消えてくんない?」

ネメシス:「邪魔するようなら殺すよ?君たちも...」

そう言った瞬間、辺りにネメシスのオーラのようなものが流れる。それを受けた僕たちは...

一同:『...!?』

まるで蛇に睨まれた蛙の様に一歩もその場から動くことの出来ない程の圧。まさしく強者の風格だった。

零:「あ...くっそ。から、だの...じ、ゆう...が...」

どうにか動かした口からはうまく言葉が出ない。ネメシス...確かに不相応な名前じゃないみたいだ。

ネメシス:「そうそう。そうやって、ジッとしてれば殺さないでいてあげるから...」

そう言いながら、レミリアへと歩み寄るネメシス。しかし、動けないレミリアにはどうすることもできない。

ネメシス:「さあ、断罪の時だ。レミリア・スカーレット...」

レミリア:「私に、いっ、たい...どん、な...罪...がぁ、ある、って...?」

ネメシス:「あくまでも白を切るか...良いだろう、これでは懺悔も出来ないだろう」

ネメシス:「せめてもの温情だ。有り難く受け取ると良い...」

そう言って、レミリアへと正八角形の結晶を投げる。それはレミリアの前まで転がっていき、止まった。

ネメシス:「我が名の下に右手の使用を許可する。これで、右手は動かせるだろう?」

レミリア:「...!!」すると、レミリアの右手だけがぎこちなくだが動き出す。

ネメシス:「あー余計な事はするなよ?言ったはずだぞ『温情』だと...」

ネメシス:「余計な事をするようならすぐさま貴様を殺す。それが嫌なら、大人しく従え」

レミリア:「...」その言葉と今の状況でレミリアは抵抗するのを諦めて、結晶を掴む。

ネメシス:「では、閉ざされた罪の記憶を確かめてくると良い。レミリア・スカーレット」

ネメシスがそう言うと、結晶が光り始める。その光を見たレミリアがその場に倒れる。

零:「...!?おい!一体、レミリアに何をした!」

ネメシス:「あーもう。うるさいよ...静かにしなよ」

零:「レミリアにもしもの事があれば、どうなるか分かっ...がはっ...!?」

零が何かを言うより早く、零の腹にネメシスの蹴りが入る。

それは動けない零を反対の壁へと吹き飛ばした。しかし、それだけではなく零の腹に風穴を開けた。

零:「げほっげほっ...ぐぅ、おぁう、あ...」口から血反吐を吐きながら倒れ込む零。

びちゃびちゃと音を立てて、血肉や臓器の一部が零れ落ちる。

それはレミリアの槍の直撃を喰らった時よりも致命傷であることは一目瞭然だった。

ネメシス:「五月蠅いんだよ...死ねば?」

それを見ていた霊夢。ネメシスのオーラの影響が最も弱かった事もあり、立っていられた。

霊夢:「よ、くも...零、をー!!」叫ぶ霊夢と対照的に静かに瞠目するネメシス。

ネメシス:「だから、静かにしててよ...君も五月蠅いと殺すよ?彼みたいに...」

霊夢:「...!!この...悪魔がーーー!!!!」霊夢の瞳には怒りが宿る。

その勢いのままに浮かび上がり、ネメシスへと弾幕を放つ。

ネメシス:「じゃあ、もう良いよ。くたばれ、ゴミが...!!」

その一言を最後に、二人が正面から戦闘を始める。

霊夢:「スペルカード発動!!」

霊夢:『霊符「夢想封印」』

ネメシス:「はあ、面倒だな...博麗の巫女は」

ネメシス:「確か...『スペルカード発動』だったかな」

ネメシス:『禁忌「クランベリートラップ」』

霊夢:「んな!?あんたがどうしてフランのスペルを!!」

霊夢:「まさか、あんたがフランの身体を奪った時にスペルも奪ったの?」

ネメシス:「...さあ?何でだろうねぇ~」そう言って、はぐらかすネメシス。

霊夢:「あんたを倒してから聞けばいい話ね...」

ネメシス:「出来ると思ってるの?それなら随分と舐められたもんだね」

霊夢:「あんたが強いのはもう知ってる。でも、出来る出来ないの問題じゃないのよ」

霊夢:「例え、私が死んでもあんたを倒す!!それが博麗の巫女としての義務だから」

霊夢:「それに舐めてるのはあんたの方よ?」

霊夢:「零の事、あんまり舐めない方が良いわよ?」

その言葉の意味を理解すると同時に背後の零の方を見るとそこに零の姿は無かった。

ネメシス:「!?まさか...お前は陽動か!!」叫ぶネメシスに霊夢は

霊夢:「気付くのが遅かったわね?あんたの負けよ!!」と言い放つ。

零:「はああああああああーーー!!!!」ネメシスの頭上から聞こえた零の声に上を見上げると...

零:『鋼属性上級魔術「デンジャー・シルバーウルフ」』

その零の詠唱と共に天井から赤い目の金属で体が出来たオオカミが出てくる。

そして、次々にネメシスへと襲い掛かっていく。

ネメシス:「銀で出来た狼型のゴーレムか?面倒なものを...!!」

零:「フランの身体に憑依すれば、こっちが攻撃出来ないと思ってたんでしょ?」

零:「残念。そんな覚悟でいないよ。これ以上、フランが悲しむような事はさせない!!」

零:「死なない程度に倒させてもらうよ?ネメシス!!」

ネメシス:「ぐっ...!!雑魚が調子に乗るなーーーー!!!!」

零:「さっきの霊夢の言葉、あれね。一つだけ違うところがあるんだ」

ネメシスの咆哮に淡々と言葉を返す零。その零の顔に笑みが浮かぶ。

ネメシス:「何を言っている?」

零:「霊夢が陽動は正解だけど、僕も陽動なんだよ!!」

ネメシス:「...!?」そこで初めて気付く。遠方に居る脅威に...

紫:「残念だけど、引き剝がさせてもらうわよ?」フランへとスキマを開く紫。

紫がスキマの中の何かを引っ張ると、その瞬間に...

ネメシス:「ぐっあああああああーーーー!?!?!?」ネメシスの苦悶の声が響く。

紫:「くっそ...何で剥がれないの!?」

零:「剥がれない?...まさか!?ヤバい...!!」咄嗟に紫さんを止めようとした時には遅かった。

ネメシス:「妖怪風情が調子に乗るなーーー!!!!」

ネメシス:「破滅しろ!!デストラクション!!」

ネメシスのその一言で一瞬にして、状況が一変する。スキマから手が弾き出されて、その途端に自分の頭を抱え、苦しみだした紫さん。その顔は苦悶と苦痛によって、歪んでいた。

霊夢:「ど、どうしたの!?紫!!」

零:「くっそ!!それがお前の能力か!!精神系統の汚染能力か?」

ネメシス:「はぁはぁ...貴様らにこれ以上、無駄な労力と時間を使う気は無い。死ね」

そう言ったネメシスの目には、激しい怒りの感情と冷たい殺意が混ざりあったような狂気的な目だった。

零:「そんな簡単に勝てると思ってるの?それはいくらなんでも舐めす...『ブン!!』...ぎ...」

そう喋っていた真っ最中に顔の横を何かが通った。そして、後ろから「ドシュッ!!」と鈍い音が聞こえる。

零:「...えっ?」

いつの間にか僕の背後に居たネメシス。そのつま先が美鈴さんの腹に突き刺さる。

美鈴:「がぁ!?」コンマ一秒の静寂のちに壁にめり込んだ美鈴さんを見て言葉を失った。

だが、そんな余裕は無かった。その次の瞬間には、またネメシスの姿は視界から消えていたから。

零:「!!...どこ『ザシュッ!!』...」すぐに音の方向を見たが、もう遅かった。

そこには、手刀で首を刎ねられたパチュリーの姿があった。

すぐに糸の切れた操り人形が如く、地面に倒れ込むパチュリーの体が痙攣を起こす。

そして、動かなくなる。僕は完全にその場の異常な出来事に飲まれて、茫然としていた。その時...

魔理沙:「お前、よくもパチュリーをーーー!!!!」と怒号を上げた魔理沙がミニ八卦路を構える。

魔理沙:「マスターーーー!!!!」魔力を充填しながらネメシスを捕捉する。

零:「魔理沙!やめろーーーーー!!!!!!」そんな僕の声も虚しく、それは起きた。

魔理沙:「スパーーーーーークーーーーーー!!!!!!!!」魔理沙のミニ八卦炉から極太のレーザーが出る。

ネメシス:「...」それを見たネメシスは至って落ち着いて、それに対処した。

レーザーを避けて、側面から回り込んできたのだ。

魔理沙:「!?こんっのーーーー!!!!」だが、レーザーを横に薙ぐことで対処しようとする魔理沙。

しかし、それはネメシスにとっては予想内の出来事だった。

眉一つ動かさずにレーザーの上を跳躍するネメシス。横にレーザーを振ってしまった為に対処できない攻撃だった。それは魔理沙の命を刈り取らんとして心臓へと手刀が滑り込む。咄嗟に目を瞑る魔理沙。

そして「ズブッ!!」という音が耳元で聞こえる。しかし、痛みがいくら待っても来ない。

恐る恐る目を開けると目の前にはネメシスの手刀によって、心臓を突き刺されているアリスが居た。アリスの体から手を引き抜き、距離を取るネメシス。その反動でふらふらとするアリス。それを見て...

魔理沙:「...はっ?なん、で...?」そんな言葉を絞り出すだけで精一杯だった。

それだけこの現実が魔理沙には受け入れられなかった。

倒れ込んでくるアリスをどうにか受け止める。胸の傷口からはダラダラと血が溢れてくる。

魔理沙:「おい...何かの間違いだろ?こんなの、嘘...嘘なんだよなあ?」

アリス:「ご、めん...なさ、い...魔理沙...」口から血を吐きながら喋るアリス。

魔理沙:「お、おい!何謝ってるんだよ...?アリス...」

アリス:「あなたを、助ける、為に...飛び、込ん、じゃっ...た...」

アリス:「ケガは、ない?だい、じょう...ぶ?」

そう言って、魔理沙の頬に触れるアリスの手はその熱を失いつつあった。

魔理沙:「私はお前のお陰で無傷だよ!!それよりお前の傷を心配しろ!!」

魔理沙:「い、今、私が永遠亭まで運んでやるからな!!」

そう言って、アリスを背負おうとする魔理沙をアリス本人が静止した。

アリス:「わたしの、こと、は...いい、から...貴方、と...零達、だけでも、逃げ...て...」

そう言うアリスの言葉を否定しようとして、出来なかった。

いつもの自分なら、真っ先に今の言葉を否定するだろうに、それをしなきゃいけないのが分かっているのに、何故か出来ない...そこで、私は自分の足が震えている事に気付いた。

そうか、私は自分とあいつの実力差に絶望して、戦う気力を失くしたんだ。だから、アリスの言葉を否定できない。今すぐにこの場から逃げたいと思っている自分が居るから...

アリス:「貴方、だけでも...生き、伸び...て、ね?」そんな言葉を最後にアリスはその瞳から光を失った。

魔理沙:「...お、おい...アリ、ス?おい、返事しろって!おい!!」

しかし、アリスがその問いに答える事は無く、もうその瞳に光を宿らせる事は無い。

魔理沙:「あぁ...あああああああああああああああああああああああああ!!!!」

立て続けにパチュリーとアリスを失った魔理沙の悲痛の叫びが大図書館に木霊する。

零:「クッソ!!これ以上、好きにやらせてたまるか!!!!」

そう言って、ネメシスとの距離を詰めようとした僕と霊夢の手足に何かが巻き付く。それは人の手の形をした枷だった。

霊夢:「な!?なにこれ...拘束具!?」

零:「くっそ...外れねえ!!」

霊夢:「魔理沙ーーーーー!!!!逃げてーーーーーー!!!!!!」

そんな霊夢の悲鳴のような叫びが魔理沙に届いたのか、僕には分からない。

魔理沙:「なんで!?どうして!?パチュリーが!!アリスが!!」

魔理沙:「死ななきゃいけないんだよーーー!!!!」

そんな魔理沙の絶叫に答える声は無かった。誰も答えられなかった...

ネメシス:「...」

気が付くと目の前にネメシスが立っている。無言で頭上に手刀を構える。

魔理沙:「どうして...どうして...どうしてなんだよーーー!!!!」そんな魔理沙の叫びにネメシスは手刀の一閃を返した。閃光如きスピードの手刀が縦に振り下ろされる。

一瞬の静寂の後に「ズルッ」という音ともに魔理沙の身体が左右に分かれる。

霊夢:「魔理沙ーーーーーーーーーーー!!!!!!いやあぁぁぁぁ!!!!!!」

あまりに凄惨な魔理沙の最後を目にした霊夢が悲痛な叫びを上げる。目から涙を流しながら、ネメシスを見る霊夢の目にドス黒い何かが生まれるのを僕は直感的に悟った。そして、霊夢はネメシスへと

霊夢:「お前だけは...殺してやるーーーーー!!!!!!!!」

霊夢:「夢想天生」

その一言ともに霊夢の身体から膨大な霊力が溢れ出る。霊夢の身体が空中に浮かびあがり、その周りを陰陽玉や御札弾幕などが展開されていく。そして、霊夢は世界から浮くことで半透明になる。

その瞬間に、辺りを弾幕の嵐が破壊する。そこには明確な殺意があり、それ故にその破壊力は圧倒的だった。

弾幕がネメシスを取り囲む。逃げ場などは一切なく、スペルカードルールなどは存在しない。純粋な相手を殺す為の弾幕、いや凶器と化した弾幕がネメシスへと向かっていく...はずだった。

ネメシス:「デストラクション...」

その言葉をネメシスが呟いた瞬間、あり得ない光景が目の前で起きた。

霊夢:「...えっ?...」霊夢の弾幕がネメシスにではなく、霊夢自身へと突っ込んでいったのだ。

それに何故か夢想天生特有の霊夢の無敵状態が解除されていた。そして、迫る弾幕になすすべなく蹂躙される霊夢を、僕はただ見ている事しか出来なかった。

霊夢の華奢な身体が打ち上げられて、大図書館の天井にぶつかって落ちてくる。

その瞬間、何故か拘束が解除された。一瞬、疑問にも思ったが、理由を考えるよりも早く身体が動いた。

霊夢が地面と激突するギリギリで受け止める。

零:「霊夢!!しっかりして!!」

霊夢:「れ、い...?」僕の呼びかけに答える霊夢の声はとても弱々しいものだった。

零:「そうだよ、零だよ!!」

霊夢:「あはは...私、失敗しちゃった...ごめんね?」

零:「謝らないで!!霊夢は頑張ったよ...頑張ったんだよ...!!」

霊夢:「フフッ...やっぱり、優しいなー零は...」

霊夢:「あんたに散々、酷い事言った私にも、そうやって優しくしてくれるんだから...」

零:「当たり前じゃん...霊夢は口下手なだけだよ...」

霊夢:「そう、かしら...?」

零:「そうだよ...!!でも、霊夢の気持ちは伝わってたし、分かってるよ?」

霊夢:「そう、良かった...」

零:「...」

霊夢:「...」

僅かな沈黙の時間、しかしその静寂はすぐに霊夢の一言によって破られた。

霊夢:「ねぇ、零?傍に居る?」

零:「居るよ...」

霊夢:「そう...もう、目が見えなくなっちゃった、みたい...」と苦笑する霊夢。

霊夢:「最後に、零に言っておかないと...いけない事が、あったわ...」

零:「何...?」

霊夢:「私も、零の事が、大好き...!!この世界の誰よりも、貴方の事が...!!」

その言葉を聞いた途端に目の前の霊夢の姿がぼやけた。そこで、自分自身が涙を流している事に気付く。

零:「そんなの...ずっと前から知ってるよ...バカ...!!」

そう返すしかなかった。この言葉をもっと前に聞けていたら...そう思うと涙が止まらなかった。

霊夢:「もう...何、泣いてるのよ。私が、安心して、死ねないじゃない...」

それを見た霊夢の目尻にも涙が浮かぶ、それでも笑顔を作ろうとする霊夢。

零:「死なないでよ...霊夢!!もっと一緒に、居て欲しいよ...!!」

そんな零の言葉を聞いて、霊夢の心の中に留めた言葉が溢れる。

霊夢:「そんなの、私だって...一緒だよ...!!」霊夢の目からも涙が零れる。

霊夢:「でも、もう身体の感覚がほとんどないのよ...」

そう言う霊夢の身体の周りには、霊夢の血によって大きな血溜まりが出来ている。

霊夢:「ねぇ、零...最後に、私のわがまま...聞いてくれる?」そんなことを霊夢に言われた。

零:「最後なんて言うなよ...!!」僕は駄々っ子の様に被りを振るう。

霊夢:「もう、いつまでも子供っぽいんだから...仕方ない...」そう言った霊夢の腕が僕の頬に触れる。

零:「...!!」そして、僕の唇と霊夢の唇が重なる。

霊夢:「えへへ...零の、ファーストキス...貰っちゃった...」

霊夢:「零。貴方だけでも、生き、抜い...て、ね...」そう言って、ゆっくりと目を閉じる霊夢。

その言葉を最後に霊夢の目が開くことは無く、その口は言葉を紡ぐことは無く、そして、その顔は笑顔を見せる事は無かった。まるで何もかもがどうでもよくなりそうなそんな感覚を感じながら冷たくなっていく霊夢の身体を抱きしめた。

ネメシス:「すぐに貴様もこの世から消してやる。安心しろ...」

そう言ったネメシスの背後には頭を潰され、身体に無数の銀のナイフが突き刺さったレミリアの死体と、自分で頭を壁に打ち付けたのか頭部の原型が無くなっている紫さんと寄り添いあうようにして倒れる小悪魔と咲夜さんの姿だった。二人の胸には何かで貫いたような風穴が開いており、明らかに致命傷だった。

零:「皆、死んだのか...?」

ネメシス:「分かり切った質問をするな?まあ、この場の九人はもう死んでいるか瀕死のどちらかだな」

零:「そうか...」

ネメシス:「さらばだ、愚かな者よ...」そう言って、ネメシスが手刀を振り下ろす。

零:「...『アブソリュート・プロテクション』...」零の一言が発せられると同時にネメシスの手刀が弾かれる。

ネメシス:「なっ!?...何をした?」突然の事で咄嗟に距離を取るネメシス。

零:「君の目的は、レミリアや皆を殺す事だったんだろう?」

零:「悪いが、それ以上の蛮行はさせないよ...君には僕と一緒に地獄巡りをしてもらうよ?」

ネメシス:「!!貴様、まさか...俺と心中する気か!?」

零:「そういう解釈で良いよ。まあ、君はあの世で僕は現世だけどね...」

零:「僕は生きないといけないから、この地獄を...彼女たちと一緒にね?」

そう言った零の傍には、いつの間にかこの場の九人の死体が集まっていた。

ネメシス:「いつの間に!?どうやって...」ネメシスの驚愕を他所に魔力を練り始める零。

零:「開け、この世の地獄の門。かの罪人を極刑の地へと誘え...『デモンズド・ゲート』」

零の詠唱に呼応する様に空中に禍々しい模様が刻まれた門が現れる。その門には幾重にも鎖と呪符が張られており、扉と扉の間から怪しい煙のようなものが流れ出ている。

ネメシス:「...!?」その門を見た瞬間に180度回転して、出口へと走りだした。ネメシスに、その素早い撤退の判断をさせたのは、感覚的なものなのか、それともこの門を知っているのか...まあ、どっちにしろもう遅い...

大図書館の入り口の扉まで駆け抜けていったネメシスが勢いよく扉を開こうとしたが、扉は空間に固定された様に微動だにしなかった。それどころか無理に開こうとするネメシスの手を弾いたのだった。

零:「君に逃げ場は、もう無いんだよ...」

ネメシス:「これだけの魔法か魔術をあの一瞬で作り出したというのか!?」

零:「あり得ないって言いたそうな顔だね...」

ネメシス:「それは、そうだろう...貴様にそこまでの実力があるなら私を倒すことも容易いだろうに...」

零:「そうだな、お前を倒すのは訳ないだろう...」

零:「だがな、お前の身体はフランの身体なんだよ。出来れば傷つけたくなかったんだよ...」

零:「でも...もうそれもお終いだ。精々、地獄で反省しろよ...『オープン・ヘル』...」

門の中の虚無が辺りの物を無視して、ネメシスだけを吸い込む引力を発生させる。

ネメシス:「ぐっ...!!がぁ...吸い込まれる!!」

床に剣...『レーヴァテイン』を突き立てる事でどうにか耐えているが、それもすぐに限界が来る。

ネメシスの足がふわりと宙に浮く...そのまま、身体が門の中へと吸い込まれていく。

そして、ゆっくりと扉が閉まっていき...そして完全に閉ざされた。

零:「これで、終わったんだよね...霊夢」

そんな零の呼びかけに答える声は無かった。心に残った虚無感に苛まれながら、これからどうしようかを考えようとしたが、思考が全くまとまらずにいた。その時...

零:「...?なんで門が消えてないんだ...」本来はすぐに消えるはずの門が消えない。

零:「...!?まさか!!」その理由に行きついたと同時に扉が内側から壊れていく。

これをやったのは、おそらくネメシスだ。だが、これは破壊というより崩壊したいようだった。

ネメシス:「面倒な技だったが、根幹にあるのは単純な即死魔法の術式だったな...」

零:「まさか、抵抗したのかよ...!!怪物バケモノが!!」

ネメシス:「貴様だけには言われたくないな...」

面倒な事になった...さっきみたいな攻撃は、おそらくもう通用しない。

それにそれを用意するだけの時間的猶予も恐らくないだろう...

ネメシス:「これだけの手練れであれば、もっと強力な魔法があったであろう?なぜ使わん?」

零:「チッ!!分かってるのに聞くなよ...魔力切れだよ」

ネメシス:「で、あろうな...それ以外の理由が見当たらないな」

一見、こんな会話をする理由は一切ない様に見えるが、この時間で少しでも魔力を回復しておくことで、この後の戦闘に備えることが、僕が今、出来る事だったからだ。

それは相手も分かっているはずだ。それを理解した上で会話しているという事の意味は、圧倒的な自信からか、それとも単なる酔狂か...

どちらにせよ、こちらにデメリットは無い。いや、本当にそうなのか?

こちらは一方的に消耗している上に一人だ。そんな奴に時間をかけて倒す意味があいつにあるのか?

それとも、戦闘することのデメリットがあいつにあるのか?僕の気付いていない何かが...

ネメシス:「どうした?黙り込んで...打つ手なしというやつか?」

零:「まあ、そうかな...打つ手がないから考え中だよ」

僕がそう答えると、ネメシスは神妙な面持ちで話しかけてきた。

ネメシス:「これは私の単なる独り言だ。貴様がどう思おうと貴様の自由だ...」

ネメシス:「お前はこちら側か?あっち側か?それとも...そのどちらでもないのか?」

零:「...」

零:「...どっちなんだろうね?まあ、しいて言うなら...」

零:「どっちもだよ、バーカ!!」そう言って、舌を出す僕を驚いたような目で見るそいつに...

零:「何もただお前と会話してたわけじゃねえーんだよ!!」

零:「てめえの能力の大体の予想はついた...後は、てめえを倒すだけだ!!」

ネメシス:「一体、ここからどうやって私を倒すというのかな?」

零:「僕の魔力の保有量は結構、膨大なんだよ?」

零:「その魔力量がどうして、こんなに減ってると思う?」

ネメシス:「まさか...まだ大魔法を準備していたのか!?」

零:「維持し続けるのが、大変だったわ。後、魔法じゃなくて、魔術だよ...」

零:「時空間魔術...時間逆行『クロック・リターン』...」

ネメシス:「な、なぜ...そんな魔術を貴様が使える!?」

零:「精々、考えとけ...じゃあな、クソ野郎!!」そんな言葉と共に僕の身体は光に包まれていった。

 

 

 

そして、世界は巻き戻る。霊夢たちの死も無かったことになる...

ゆっくりと目を開ける。時間逆行後、特有の意識が引き延ばされた様な感覚。

目の前でレミリアが倒れている。しかし、取り乱すことはしない...

今は目の前のネメシスからの威圧感もオーラも感じない。

だから、ネメシスへと力強く一歩を踏み出す。そして、そのまま跳躍する...

ネメシス:「...!?な、なぜ動け...ぐっ!!」不意打ちの回し蹴りをギリギリで腕をクッションにすることで受けきったネメシスが距離を取ろうとするが、こちらも距離を詰めることで反撃の隙を与えない。

零:「フッ!!ハッ!!セイッ!!」そこからは接近戦が繰り広げられる。

最初はネメシスも反応が遅れていたが、すぐに反応してくる。

ネメシス:「...調子に、乗るなー!!」そう言って、こちらに蹴りを放つネメシス。

その蹴りを、身体を仰け反らせる事で避けて、そのままの勢いで後方宙返りで距離を取る。

零:「もうお前の思い通りにはならない!!」

ネメシス:「貴様!!私のオーラを前に動けたからと言って、私に勝てる道理は無いぞ!!」

そう言いながら、構えるネメシスの構えは武術のそれだった。

先程の様に、騙し討ちや不意打ちはもう通用しない。そう思うと、自分はネメシスに勝てるのかと不安に駆られそうになるが、そんなことに臆している暇は...ない!!

零:「勝てる勝てないじゃないんだよ...!!」

零:「僕たちは、お前に勝つためにここに居るんだよ!!」

己に纏わりつく恐怖を言葉によって、打ち払う。それは僕だけでなく...

魔理沙:「まったく...幻想郷に来てすぐの外来人に気付かされるなんてな!!なあ、霊夢?」

霊夢:「その通りね、魔理沙。私たちはいつも通りに黒幕を退治するだけね!!」

そう言って、僕の隣に立つ魔理沙と霊夢がお祓い棒とミニ八卦炉を構える。その二人の目には恐怖や不安はなく、その代わりに自信と希望が満ち溢れていた。

黒幕を倒す。という、いつものスタンスに戻った二人を見たネメシスが...

ネメシス:「!?どうしてお前たちまで動ける!?」と驚愕の声を漏らす。

霊夢:「さあ?零の言葉のお陰かもね?」

魔理沙:「だな!!まったく『勝つためにここに居る』なんてカッコつけてくれるぜ!!」

ネメシス:「そ、そんなことで...動けるようになっただと!?ありえん!!」

美鈴:「案外、そんなことないと思いますよ?」

パチュリー:「まあ、魔術師にしては中々良い事を言うわね...」

そう言って、歩いてくる二人を見たネメシスの顔が歪む。

ネメシス:「貴様らまで動けるようになったというのか!!」

紫:「まったく、幻想郷の賢者が怖気づいているなんて...私らしくないわね」

そんなことを呟きながらこちらに歩いてくる紫さん。それを見て、更にネメシスの表情が曇る。

零:「言ったでしょ?思い通りにならないって...」

ネメシス:「貴様らがどれだけ抗おうと意味は無い...!!ここで全員、殺す!!」

零:「やれるもんならやってみろ!!その前に、お前をぶっ倒す!!」

ネメシス:「フン!!戯言を...!!」そんな言葉を最後に、こちらに凄まじい勢いで突っ込んでくる。

そして、僕も向かってくるネメシスへと正面から突っ込んでいく。お互いに拳を構える。

そうして、二人の拳が真正面からぶつかり合う。

その瞬間、辺りに途轍もない衝撃が走る。空間が歪んだ様に錯覚する程に...

零:「マジかよ...身体強化無しの素の力で、ここまでなのかよ!!」

ネメシス:「力比べではこちらに軍配があるようだな?」そう言って、更に力を加えようとするネメシス。

零:「そうかもね...ただし『力比べでは』だけど、ねぇ!!」

そう言って、いきなり零が腕から力を抜いた。零とネメシスの拮抗していた拳。もし、片方がいきなり力を抜いたらどうなるだろうか?答えは至極単純だ。ネメシスの拳が力のぶつけ先を見失い、背後に拳が流れる。

ネメシス:「ぐっ、お...!?」どうにか寸でのところで踏み止まる。

しかし、僅かな一瞬ではあるが零への意識が散漫になる。その隙は戦闘においては致命的過ぎた。

零:「フン...!!」

ネメシス:「ぐがぁ!?」そんな苦悶の声を上げて後ろに吹き飛ぶネメシス。

彼には、今の一瞬の出来事を正常に判断するだけの余裕は無かった。それもそのはず、ネメシスが食らったのはただの打撃ではなく、洗礼された武術の技。「掌底」という人体を内側から壊す技だ。

それは通常の打撃が外側から人体を破壊するのに対して、内臓や骨などの人体の内部に打撃の衝撃を伝えて破壊するという考えのもとに生み出された技。防御は意味をなさず、鋼すらも打ち砕くことが出来る。

それを至近距離で胴体に食らったのだ。たとえ頑丈な吸血鬼でもただでは済まない。

その証拠に、ネメシスは衝撃の余波でまともに立ち上がるどころか今の状況を判断することも難しい。

ネメシス:「あ、がぁ...!!ヒュー...ヒュー...げぇあ、あああ...」

おおよそ外的な変化は無いが、その体の中は大変な事になっているだろう。

まず、打撃の直撃した部位にある小腸や大腸、腎臓や脾臓などの臓器は破裂したり、潰れたり、様々な状態だろうが、どれ一つとしても無事な所は欠片も無い。

零:「腹部に直接、掌底が入ったんだ。背骨がガタガタで下半身に力が入らないだろう?」

ネメシス:「...」そんな零の言葉に無言を返すネメシス。

零:「まあ、激痛と混濁する意識の中で身体を起こしてられるのは、素直に凄いと思うよ」

そんな零の言葉にも何も返さないどころか、微動だにしないネメシス。

霊夢:「あんた、そんな簡単に勝てたの!?」

魔理沙:「おいおい...これって、私たち必要あったか?」魔理沙のそんな一言に

零:「いや、動きを止められたのは、油断してたのと初見だったからだよ」と零が答える。

零:「それに、この技は少しの間、動きを止める程度の威力しかないからね」

美鈴:「いやいやいや!!人間なら即死級ですよ?」

美鈴:「まあ、警戒されると当てるのは困難でしょうね...」

このメンツの中で武術に詳しい美鈴の言葉に霊夢と魔理沙がジト目になる。

そんな二人の抗議の視線をスルーしながら、ネメシスへと視線を向ける。

相変わらず、動かないネメシス。その体は微動だにしない。

その時、自分の中で嫌な予感が走る。それが何なのかが分からずに、今の状況を確認する。

零:「...!?おい!てめぇーネメシスーーー!!」そう言って、ネメシスへと詰め寄る零。

零がネメシスの胸倉を掴んで、乱暴に吊り上げると。そこには...

零:「てめぇー!!一体、何時から入れ替わりやがった!?」

そこに居たのは、ネメシスに精巧に似せた魔導人形だった。その証拠にネメシスの表情は何処か涼しげで先程までの激痛に歪んだ顔とは全く違った。それを見た零が舌打ちと共に人形を地面へと投げつける。

零:「くっそ...!!しくじった!!」

霊夢:「切り替えて、零!!でも、何時から入れ替わってたの、あいつ...?」

魔理沙:「ここでぼさっとしている間にもあいつが何するかわかったもんじゃないぜ...」

紫:「どうするの?零...」

美鈴:「このままだとフラン様の記憶も戻らなくなるんですよね?」

零:「...」皆からの問いに答えようとしたが、何を答えればいいのか分からない。

僕の沈黙を皆がどんな風に受け取ったかは分からない。ただ、良い印象を与えていないのは確かだ。

そんな重い沈黙を破ったのは、微かな嘲笑を混ぜた声だった。

ネメシス:「いやー流石に掌底を食らった時はヤバかったわー」

ネメシス:「ほーんとに酷い事してくれるよねぇ?良心は痛まないのかい?」

そんな言葉が辺りに響く。ひどくその声がウザったく感じたのは、僕だけではないはずだ。

零:「てめぇ...インターバルの事を知ってやがったな?」

ネメシス:「逆に知らないと思ってたの?そりゃあ、随分と楽観的な考えじゃないか?」

僕の奥の手の一つである『アンチマジックフィールド』は、魔術回路にかかる負荷が重い技だ。

それ故に、発動後の一定時間は魔法や魔術は使用する事は出来ない。

僕は常に常時型の索敵魔法を展開しているが、この奥の手を使った後は少しの間だが、使えない隙が出来る。

ネメシス:「確かに溜め時間の長さもまあまああるけど、それだけなら...」

ネメシス:「魔法で追い打ちを掛ければ良いよねぇー?それをしない...嫌、出来ない」

ネメシス:「フフフ...全く容赦なんてしてちゃ死んじゃうよ?」

依然として、姿を現さずに声だけを響かせているネメシス。

零:「だったら、姿を見せてみろよ?隠れてるだけの臆病者が!!」

ネメシス:「アハハハ~安っぽい挑発だねぇ~?まあ、臆病者かもね...」

ネメシス:「まあ、今はちょっと君たちの相手は一旦、お休みだよ~」

紫:「...?どういう事?」

霊夢:「何?零に勝てる気がしなくて、逃げる準備かしら?」

そう二人が各々の反応をする。まあ、霊夢はただの挑発だけど...

ネメシス:「まーさか、そんな訳~!!ただ、ちょっと...」

ネメシス:「君たちを舐め過ぎてたから、ここから本気でやろうかなって話だよ」

ネメシスの声が調子を落として、覇気を纏った声が響く。

咄嗟に身構えそうになる程に濃い闘気が辺りを覆う。それは相手の言葉が冗談やハッタリではない事を物語っている。だが、それは...

零:「本当に最悪だ...」僕たちにとっては、状況の悪化を意味するものだった。

零:「ただ、お前の能力のおおよその予測はついてる...」

ネメシス:「えぇ~?まだ、能力使ってないのに可笑しいなー?」

零:「...『概念系統』の能力...そうでしょ?」そう言った零の言葉に相手が息を吞む気配がする。

零:「当たってたみたいだね?その反応だと...」

ネメシス:「あ~!!今のカマかけだったのかーうわぁ...嫌な奴」

零:「はっ!!お前には言われたくないかな」

ネメシス:「ただ、それ以上はまだバレてないっぽいね?」

零:「さあ?どうだろうね?」

ネメシス:「君は今、ミスを犯した。それが君にまだバレていない事の証明だよ」

零:「...」

ネメシス:「君は概念系統と言ったが、どんな能力とは大まかにも言っていない」

ネメシス:「それはつまり、君の中で私の能力の種が分かっていないから」

ネメシス:「そんなぼかした様な言い方なんだろう?違うかい?」

悔しいがこいつの言っている事は、的を得ている。

そうだ。僕は、こいつの能力が概念系統の能力だというところまでは分かったが、そこから先の部分が分かっていない。運良く相手が能力の情報を漏らしてくれれば、楽だったのだが流石にそう甘くは無かった。

ネメシス:「さてと、それじゃあ~お話もここでおしまいにしようか」

ネメシス:「これから最後の仕上げに取り掛からなきゃだからね...」

零:「くっそ...!!まだ話は終わってないぞ!ネメシス!!」

そんな僕の声に答える声は無かった。ただ、その場には静寂だけが満ちていた。

 

 

 

 

 

時は少し遡り...零とネメシスの戦闘後。

ネメシス:「げほっ!!げほっ!!」紅魔館の中庭に転移したネメシス。

あの零と名乗った少年。見た目は人間の少年の姿だが、ずば抜けた回復能力とあの保有魔力。

そして、少年の力とは思えない程に強力な攻撃と人並外れた耐久性。これらから、彼が人間ではない事は予想していたが、まさか武術の心得があったとは...

撃ちこまれた掌底の性で、身体の自由が制限される。視界が歪み、内臓が掻き回された様だ。

その衝撃が冷めやらぬ中で、ネメシスの本能がその場から逃走を判断できたのは幸運だった。

ネメシス:「これは、舐めてかかった私の落ち度だな...」

本来ならば、私が彼らと対面するのは、全ての準備が終わった後なのだが、イレギュラーな彼の存在に計画が搔き乱されている。

ネメシス:「...まずは、この状況の打破からだ...」

そう言って、自分の身体を極小の爆発で吹き飛ばす。

一瞬の灼熱感と激痛が走り、全ての感覚が消えて、何も感じなくなる。

そして、そこから徐々に身体の感覚が戻ってくる。失った体が作り直されていく。

ネメシス:「ふぅ...出来れば、この方法は使いたくないな...」

吸血鬼の再生能力が如何に強力でも、不死特攻の武器や魔法、能力などが存在するので相手の能力が分からない状況下で身体を吹き飛ばすのはリスクが高い。

しかし、そうならないという確信めいたものがあった。彼らはこの体を取り戻そうとしていた。

その体を自ら壊す様な真似はしないであろうことは予想がついていた。

ただし、それが通じるのは一度だけだとも分かっていた。

だから、この方法はギリギリまで温存していた。しかし、それも使う事になった。

立ち上がって、身体の調子を確認する。不調な部分は...無し。

ネメシス:「うーん...このまま、準備でも良いけど」

ネメシス:「多分、探されちゃうかな。特にメイド長...厄介だな~!!」

頭を抱えたくなりそうな状況ではあるが、少しの時間を稼げればこちらの勝ちだ。

ネメシス:「まあ、少しはこっちから揺さぶりをかけて、時間稼いで...」

そう言いながら、紅魔館の壁に触れる。すると、触れた部分に魔法陣が浮かび上がる。

そのまま、手を壁に触れさせながら歩き始める。ゆっくりと歩くスピードが上がり...走り始める。

次々と壁に生み出されている魔法陣、これらは全て『魔法』の一部だ。

何故、そんなものを壁に大量に付けているかというと...これが全力で彼ら叩き潰す為の『準備』だ。

そうして、走りながら先程のホールに魔法で声を飛ばす。

 

 

~少女会話&移動中~

 

 

ネメシスは、今日で何度目かの驚愕をしていた。

その原因が一人の少年なのだから驚きだ。どこで彼に勘付かれたのかは分からない。

だが、私は一切と言って良いほどに能力の情報を公開していない。

それなのにも関わらずに、彼は私の能力を概念系だと言い切った。

何か確信が無ければ、概念系だと断言など出来ない。一体、どこで...

そんな思考をしながら、走っていると...目の前に魔法陣が浮かんだ壁が見える。

ネメシス:「...!!着いたか」私は中庭を魔法陣で一周した。

これで魔法の準備は、終わった。だが、そろそろ彼らも限界だろう。

メイド長が意識を取り戻せば、一巻の終わり。と、までは行かないものの、準備は間違いなく台無しにされる。

そして、懸念するべき脅威がもう一人...零だ。

彼の魔法の腕は一流だ。故に、彼の魔力回路が復活してしまえば、すぐに索敵魔法で魔法陣に気付き、こちらの企みなど見透かされる事だろう。

だから、時間稼ぎとカモフラージュの意味合いでデコイを作り出す。

ネメシス:「良いか?お前たちは私の最後の準備が終わるまで時間を稼げ」

その命令に、頷くと姿を消したデコイたち。それを見送ると、ネメシスは最後の準備を始めるだった。

 

 

 

ネメシスの声が聞こえなくなってからどれだけの時間が過ぎただろうか。

周りに居るはずの霊夢達も一言も話さない。こうやっている間にも、ネメシスは僕たちを倒す為に準備を進めている。それは分かっているが、今、むやみやたらにあいつを探すのはリスクがある。

準備が始まったとしてもこちらが見つける為には最低限、僕とパチュリー、紫さんの協力が必要だ。

だが、僕の魔力回路はまだ修復が終わらない。

ここまでの度重なる酷使に、アンチマジックフィールドの使用で魔力回路は甚大な被害を受けている。

普通の魔法使いや魔術師なら、再起不能となり、二度と魔法が使えない体になっているだろう。

そうならないのは、僕の身体が特殊だからなのと「能力」のお陰だろう。

そうやって、思考を巡らせていると...

パチュリー:「どうやら準備をしているのは、本当の様ね...」

パチュリー:「囲まれたわ、敵よ...」そんなパチュリーの言葉に全員が戦闘態勢を取る。

紫:「数は、十や二十じゃないわね...百くらい居るんじゃないかしら、これ...」

霊夢:「百でも二百でも倒すしかないでしょ?やるわよ」

魔理沙:「そうだな、高火力で薙ぎ払うぜ!!」

アリス:「そうね、まずはこの状況をどうにかしましょう」

皆が戦闘をしようと構える中で、パチュリーと美鈴さんは、咲夜さんとレミリアについている。

零:「パチュリー、美鈴さん。二人をお願いします」

美鈴:「はい!必ず、守り抜きます」

パチュリー:「貴方に言われるまでもないわ。任せなさい」

二人の返事を聞きながら、僕も戦闘態勢を取る。

それを合図に、襲撃者たちが襲い掛かってくる。だが、それは予想外の相手だった。

零:「なっ!?...どういうことだ!!」

零:「どうして、どうして、妖精メイドたちが襲ってくるんだ!?」

そう。襲ってきたのは、紅魔館で雇われている妖精メイドたちだったのだ。

いきなり、弾幕を出しながらこちらに突進してくる妖精メイドたちを避ける。

霊夢:「ちょっと、主人に歯向かうにしてもタイミングが悪いわよ!?」

魔理沙:「違うぜ、霊夢!!こいつらの目を見てみろよ」そんな霊夢の言葉に、異を唱える魔理沙。

霊夢:「この目は、まさか...!!」そう言われて、近くを通り過ぎる一匹の妖精メイドの目を見る。その目は...真っ赤に染まり、焦点が合っていなかった。とても正気とは思えない目だ。

アリス:「ええ、貴方や零が戦った妖怪たちと同じ。狂化の魔法を掛けられてる」

零:「つまりは、あの心象投影もあいつの仕業だった。ってことだな...」

紫:「まあ、狂化されたのが、妖精メイドで良かったわね」

確かに、低級妖怪が上級妖怪クラスになる程の強化。妖精ではなく、妖怪に使われた方が厄介だ。

魔理沙:「ん?いや待てよ...確か、紅魔館にはこいつら以外にも...」

何かに気付き、魔理沙が何事か呟いた時だった。轟音と共に壁が壊れて、その向こうから巨大な怪物が出てきた。

霊夢:「ちょっと、なんでこんな奴が紅魔館に居るのよ!?」

怪物は、全身が黄緑色で、背丈は四メートル程だが、身体を覆う筋肉の量が余りにも多い。その性もあってか、威圧感がとんでもない。腕を広げれば、十メートルほどありそうな巨体の上の方に妖精メイドたちと同じ正気を失った赤い目が付いた獰猛な顔がある。

アリス:「こいつは、オーク?でも、体色が違うし、牙が無い。まさか、変異種?」

その怪物の正体が何なのか、見当もつかない。と言いたげなアリスに対して...

魔理沙:「やっぱり、居やがったーーー!!」そう叫んだのは、怪物を指差す魔理沙だった。

霊夢:「ちょっと、魔理沙!!あれ何!?」そう聞く霊夢に、魔理沙は...

魔理沙:「あれは、妖精メイドと一緒にここで働いてるゴブリンたちだ!!」

霊夢:「は?ゴブリンって、こいつが!?」

霊夢:「ここのゴブリンなんて、精々、あんたや私よりも小柄だったじゃない!!」

魔理沙:「狂化の魔法は、体のリミットを強制的に外す事の出来る魔法だ」

魔理沙:「対象者の身体の限界を考えなければ、これぐらいはいけるんだろう、さ!!」

その魔理沙の言葉を裏付ける様に、怪物の目から血涙が流れる。

霊夢:「やっぱり、あいつはぶっ倒さなきゃいけないわね...」

魔理沙:「あぁ!!さっさとこいつを倒して、ネメシスの野郎を倒そうぜ!!」

その言葉が聞こえてかどうかは分からないが、怪物が雄たけびを上げながらこちらに跳躍する。

霊夢と魔理沙が左右に飛び退く。すると、先程まで二人が居た場所にクレーターが出来る。

霊夢:「噓でしょ?」

魔理沙:「はは...これは、一筋縄じゃ行かなそうだな...」

そんな二人の後ろ、妖精たちの包囲網に穴が開く。その中を駆け抜ける影が二つ。

零:「今は構ってあげる余裕は無いんだ。だから、さっさと眠って!!」

そう言って、弾幕の嵐の中を抜けてきた零が、怪物の真下まで駆ける。そして、そのまま怪物の顎を蹴り上げる。

怪物の巨体が衝撃で浮く。そのまま、地響きを立てながら、後ろに倒れる。

すると、壁に開いた穴の方から先程の怪物と同じ姿の怪物がぞろぞろと出てくる。

その先頭に居た五体程が、零の方に向かって走り出す。怪物が一歩を踏み出す度に大図書館全体が揺れる。

先頭の一体が、零へと腕を振るう。その瞬間、轟音が鳴り響き、床がごっそり抉られる...はずだった。

紫:「貴方たちに恨みは無いのだけれど、少し手荒に行かせてもらうわ!!」

先程の轟音は、怪物の手首が零の後ろの壁にぶつかった音だった。

怪物の手首にはスキマが開き、その先は壁にぶつかって、そのままだ。

だが、怪物は即座に反対の腕を振ろうとしたが、それを紫さんが許すはずもなく...

怪物全員が、両手両足をスキマで外されて、達磨状態だ。

零:「じゃあ、気絶を...」そう言って、怪物に向かって歩こうとする零に

紫:「その必要は無いわ。もう終わったもの...」

紫さんがそう言った時には、怪物の手足は元に戻り、そして、全員が気絶していた。

零:「流石、仕事が早いですね。紫さん」

そう関心の声を漏らすと、フフフッと自慢げな紫さん。しかし、能力を回復して直ぐに使ったのだ。

また少しインターバルを挟んだ方が良いだろう。

そこまで考えて、自分の魔力回路の修復がやっと終わった事に気付く。

零:「これで、ある程度は戦えるな...」そう言って、索敵魔法を発動し始める。

零:「...!!」すると、直ぐにそれに気付く。中庭を魔力が覆っている。そして、その魔力の供給源...つまりはネメシスが居る場所もはっきりと分かる。

パチュリー:「どうやら、あいつの居場所が分かったみたいね?」

零:「ああ。だが、あっちも何かとんでもないことしようとしてるみたいだな」

パチュリー:「この中庭を覆ってる魔法の事?これは低級魔法よ。恐らくはカモフラージュね」

零:「そうなの、か?」パチュリーの意見に微かな違和感を持つ。

パチュリー:「?何、まさか低級魔法でこの状況をどうにか出来るとでも?」

零:「い、いや...そういう訳じゃないけど...」いや、おかしい。

ネメシスがそんな大した時間稼ぎにもならないような事に魔力を使うだろうか?奴ならこの魔力の消費した状態なら全て、意味のある事に使うはずだ。なら、この魔法も...

零:「中庭を覆う魔法を解析...爆裂魔法?だが、威力が弱すぎる...」

この威力では、紅魔館を吹き飛ばす事は愚か、壁自体も壊せるか怪しい。

必ず、これには何か役割がある。まだ、僕たちが気付いていないだけで...

その時、こちらに向かってくる。僅かな魔力に気付く。咄嗟にその方向を見ると、そこには人型のゴーレムが居たのだ。それらには魔力がほとんどなく、この至近距離にまで近づいてきて、初めて存在に気付いた。

零:「...!!敵襲ーーー!!!!」僕が叫ぶと同時にゴーレムが此方に跳躍してくる。

しかし、そのスピードはそこまで早くない。これなら...対応できる!!

ゴーレムが拳を振り上げると同時に、僕の蹴りが胴体を捉える。その一撃でゴーレムが砕ける。

更に後ろから来ていた二体のゴーレムも霊夢と魔理沙によって倒される。

魔理沙:「こいつら全然強くないのぜ!!」

霊夢:「そうね。きっと、ネメシスの魔力が少ないからね」

紫:「ただ、数が多いのが難点ね...ネメシス本体との戦闘もあるから力は温存したいわね」

ゴーレムからは魔力がほとんど感じられない。故に魔法で作られたわけではない。

つまり、これはゴーレムではなく、土塊人形つちくれにんぎょうだろう。故に地面が元々、持っている微弱な魔力しか感じない。

零:「はは...これは、読みあいで負けたか...」

土塊人形の数は、百や二百ではない...千体は居ると思える程にはその数が多かった。

呪術なら魔力を使わずに供物や呪力を使えばいい。

零:「ここでもたつくわけにはいかない。ちょっと、僕も『能力』を使うか...!!

ここで能力を使うのは、とても危ない上にリスクもある。

しかし、背に腹は代えられない。やるしか、ない!!

零:「霄ォ菴薙r豌エ縺ォ螟峨∴縺ヲ縲√☆縺ケ縺ヲ繧呈ウ「縺梧款縺玲オ√○」

零が未知の言葉で何事か呟くと、零の身体から水が溢れる。

その水はすぐに辺りに広がり、土塊人形たちの足元に広がっていく。すると、土塊人形たちの進行が目に見えて、遅くなり始める。

零:「全員、飛んで!!」その零の一言に瞬時にその場の全員が反応する。

その瞬間だった。零の身体から出ていた水の量が一気に増加する。それはまるで、いきなり津波が起きた様に思えた程だった。そして、土塊人形たちを飲み込んでいく。

霊夢:「え、嘘...零!」上空へと飛翔した霊夢達の目の前には水没しかけている大図書館がある。

この水の発生源である少年の姿は何処にも見えない。すぐに霊夢とそれを見た魔理沙が飛び込もうとするが、それを紫とアリスが止める。

アリス:「待って、魔理沙!!あなたが今、飛び込んだら被害が増えるだけよ!!」

魔理沙:「そこを退くんだぜ!!アリス。零を助けないと...!!」

その二人の横で静かに対峙する霊夢と紫。霊夢の凄まじい気迫のこもった眼と真っ向から視線を合わせる紫。

紫:「霊夢。零が心配なのは分かるけど、大人しく見ていなさい」

霊夢:「なぜ?」そう短く問いかける霊夢。それに対して、紫は...

紫:「それは、この水が恐らく、零が能力を使って出したものだからよ...」

霊夢:「...!!まさか、これが零の能力?」

そこで私の中でここに来る前の零の言葉が思い出される。零は、自身の能力を周りに言う事を躊躇っていた。しかし、こんな状況になってしまったからこそ能力を使った。そういう事なのか?

私が紫の言葉に思考が向いた時だった。

荒れ狂っていた水がいきなり、渦を巻き始める。すると、水は見る見るうちに減っていき、一人の少年だけがその渦の中心に立っていた。

霊夢:「零!!」私はすぐに零へと飛翔する。こちらを見て、手を振る零の数メートル手前に着地する。

そのまま、床の水溜まりも気にせずに、零へと駆け寄る。

零:「あはは...久しぶりに能力使ったかも...おわぁ!?」大渦の中心で苦笑しながら、手を振っていた零。

その言葉が、いきなり胸に飛び込んだ霊夢によって、止まる。

霊夢:「い、いきなり、あんな能力使って、こっちの気も考えなさい!!」

零:「いや...能力使うか結構、迷っちゃったから...ごめん」

申し訳なさそうに頭を下げる零。それは自分の選択が遅い事の謝罪だけではないような気がする。

霊夢:「...別に、能力を出し惜しみしていた事を攻めてる訳じゃないわよ」

零:「うん。それもあるけど、こっちの事情でも謝ってるんだ...」

そうだ。僕は一度、目の前で霊夢を殺されたのに能力を使う事を躊躇った。自分の為に他人をまた犠牲にするところだった。その事を口には出さずに頭を下げる。

魔理沙:「全く、しっかりしてくれよ?お前がこの中で一番、強いんだからな」

零:「えっ!?僕が?いやいや、まさかそんな訳、ない...よね?」そう周りの霊夢達に尋ねると

霊夢:「そうね。零か紫、私の誰かね...」と霊夢。

紫:「私は...零が一番だと思うわ~」紫のその言葉に、周りの全員が驚く。

魔理沙:「お前が一番って、認めるなんてな。紫...」ありえないと言いたげな魔理沙の言葉に少し不満げな顔をしながらも答える紫さん。

紫:「まあ、能力なしでもあれだけの戦闘が出来るなら能力を使ったら、勝てるかどうか...」

紫さんのそんな言葉に、胡散臭そうな顔で霊夢がため息交じりに言う。

霊夢:「な~に言ってんのよ...心じゃ自分が最強って、思ってるでしょ?紫」

紫:「あら、どうしてそう思うのかしら?霊夢...彼の能力を知らないのに」

霊夢:「いや、紫だって知ら...まさか!!あんた、零の能力の事を知ってたんじゃ...!?」

零:「...!!」

紫:「何の事かしら...?」そう言って、白を切る紫。

そんな紫へと鋭い視線を向ける霊夢。それを口元を扇で隠して、真っ向からこちらも鋭い眼光を返す。

零:「い、今はそれよりもネメシスの企みをどうにかする事の方が先決でしょ?」

そんな零の言葉に、悪くなりかけた二人の空気をどうにか修正する。

ふと、頭をよぎった「ある事」を少し離れた場所にいる二人に聞いてみる。

零:「咲夜さんの容体は?目を覚ましそう?」

パチュリー:「いいえ、まだ目を覚ましそうにないわ...」

美鈴:「お嬢様の方も全く目を覚まさないです...」

人数が少ない上に、全員が消耗状態にある。全くもって、キツイ状況だ。それでも行動を辞めたら、後はただ蹂躙されるだけだ。まずは、ネメシスの準備の妨害と討伐を目標に動く。

零:「まずは、ネメシスのもとに向かおう」そう言った僕の言葉に

魔理沙:「狂化の魔法や呪術の人形、結構な数の手数を切ってるのに余裕なあいつが、通路や部屋の中、ホールや大図書館に中庭と私らがここから移動するであろう場所に何の対策もしてない。なんて私には思えないぜ?」

魔理沙の言っている事は正しい、普通に撤退したならだが...

零:「もし、本当にネメシスがあの時に大図書館から転移で逃げたなら、紅魔館の近くの屋外に逃げたはずだ」

零:「なら、通路や部屋にトラップを設置する様な時間的猶予も魔力的な猶予も無いはずだ」

美鈴:「でも、何で屋外に逃げたって言えるんですか?室内の可能性の方が高そうなのに...」

美鈴さんの最もな疑問に、先に答えに辿り着いた様子の霊夢が...

霊夢:「今のネメシスの身体は、フランの身体よ?今は吸血鬼にとっては最高のタイミングでしょ?」

美鈴:「あ...!!そうか!今、外は夜なんですね...!!」

零:「はい。体力や魔力などの回復の為に向かうはずです!そして、恐らくそこは『中庭』...」

アリス:「目的も行先も決まった。なら、後は行動あるのみね」

魔理沙:「お?アリスが珍しくやる気だぜ!!」

アリス:「何よ?人を怠惰みたいに言わないで。まあ、らしくないとは思うけど...」

アリス:「単にやられっぱなしってのが癪なのよ...ただ、それだけ」

魔理沙:「おぉ~!!意見が合うな、アリス!!」

そんな二人の会話に先程の光景がフラッシュバックする。魔理沙を庇って、心臓を貫かれたアリス。アリスの亡骸を抱きしめて、絶叫しながら、真っ二つにされた魔理沙。

零:「...同じ未来になんて絶対にさせない...」目を瞑って、瞼の裏の光景を消し去る。そうして、静かな決意を口にしながら中庭を目指して、僕たちは飛び立つのだった。

幸いな事に、ゴブリンが開けてくれた風穴のお陰もあり、中庭への直線ルートが作られている。一直線になって、飛ぶこと約十分、外の景色がうっすらと見えてくる。

零:「外が見えてきたよ!全員、戦闘準備!!」そう声を掛けながら、大穴から外に飛び出そうとした。その時だった。いきなり、視界が白い閃光に包まれる。

霊夢:「な、何なの!?いきなり!!」その霊夢の言葉に答える声は無い。

何故なら、いきなりの閃光に視界を奪われた上に、謎の轟音で聴覚も麻痺していた為だった。

咄嗟に魔法で辺りを探って、先程まで館を覆っていた魔法陣が一つ残らず、消えている事に気付く。

零:「さっきのは、そういう事か...!!」

ただの爆裂魔法では、館を破壊するには至らない。しかし、この魔法は破壊が目的ではなかった。ネメシスの目的は、爆裂魔法の爆発時に生じる閃光と爆音だった。トラップを通路や部屋に仕掛ける事は出来なくても、こちらが向かってくる上で通らなければいけない場所に置いておけば、僕たちが通るときに起爆すればいいだけだ。

という事はつまり、僕たちは今、ネメシスから視認できる場所に居るのだ。

零:「ヤバい...!!」咄嗟に両脇に居るであろう霊夢と魔理沙へと腕を伸ばす。

指先に触れた温かな二人の身体を一気に引き寄せながら、後退する。すると、先程まで自分たちが居た場所に何かが高速で通り抜ける。閃光でまだはっきりしない視界でも、それが何なのかは理解できた。

零:「銃弾...!!まだまだ手札が尽きないな、お互い...!!」

そう言って、地面を強く踏みしめる。地面に魔力を流し込み、隆起させることで、無理矢理に壁の穴を塞ぐ。

眼に魔力を集中させる。すると、視界が徐々に回復する。

零:「大丈夫!?皆!!」そう言って、振り返ると一箇所に集まっている皆と息を荒くしている紫さんが写る。

零:「紫さん!?大丈夫ですか?何処かケガして!?」焦りながら聞く僕に

紫:「大丈夫よ...後ろの全員は無傷よ」

零:「紫さん自身が大丈夫なんですか!?」

紫:「...え、ええ。大丈夫よ...心配しないで」

零:「で、でも...」そう言った紫さんの顔は血の気が引いた様に青白い。それに呼吸も荒い上に、汗もダラダラとかいていて、とても平気な様には見えない。

紫:「いきなりのスキマの多重展開で疲労感が来ただけだから...」

零:「...」辛そうな紫さんと正面から目線を合わせる。その目は光を失ってはいない。

紫:「大丈夫...!!」その言葉には有無を言わさない迫力があった。

零:「...信じますからね?嘘だったら、承知しませんから!!」

紫さんの気迫に飲まれて、そんな言葉を言う事しか出来ない自分が酷く惨めだ。

紫:「ええ...分かったわ」そう言って、立ち上がる紫さんを支える。

霊夢:「ちょっと、紫!?あんた、さっきの攻撃食らったの?」

紫:「食らってないわよ...ちょっと無茶しただけよ」

魔理沙:「おい、全く攻撃してこないぞ?ネメシスの奴」

零:「いや、さっきの攻撃は自動迎撃用のトラップ魔法だよ」

アリス:「もしかして、空中に魔法陣か何かが設置されてたのかしら」

零:「恐らく、ね...」

パチュリー:「これからどうするの?このままここで足踏みしてるつもり?」

零:「まさか...この罠を突破する」

美鈴:「突破とは言っても、具体的には何をするんですか?」

零:「正面突破」美鈴さんの質問に即答する。

美鈴:「...へっ?正面突破って、えっ!?」僕の言っている事が理解できないと言いたげな反応に

零:「さっき、魔法で通路を塞いだ時に辺りの魔力反応を探って、これを見つけたんだ」

そう言って、見つけたものを皆に見せる。

魔理沙:「それって、魔法陣か?でも、壊れてないか?」確かに魔法陣は壊れている。

零:「その通りなんだけど、魔法陣が問題じゃないんだよ」

パチュリー:「成程、魔力の残滓ね...」

零:「正解。ネメシスの、正確にはフランの魔力だけど...」

零:「まあ、それをサンプルに辺りを索敵して、ネメシスがここらに設置した魔法を見つけて、解析する」

零:「その上で真正面から無力化して、倒す。そんな感じの作戦」

霊夢:「いや、脳筋すぎるでしょ!?それは作戦って、言わないわよ!!」

魔理沙:「てか、無力化って、そんな簡単にできるものだったか?」

パチュリー:「そんな訳ないでしょ?あいつが異常なだけよ...」

これが緊急事態でなければ色々と突っ込みたいところだが、今はそれに反応する時間も惜しい。

零:「魔法陣を解体。術式内の魔力の残滓を確認、サンプルを採取」

零:「サンプルを解析。同様の魔力反応を探知...確認完了」

魔法を展開して、魔法陣の中に残っていた魔力の残滓を取り出して、辺りにそれと同じ魔力の反応が無いか確認する。辺りには先程の攻撃の引き金になったと思われる魔法の反応があった。

零:「結構、数が多いな...まあ、何とかなる範囲だろう」

そう言いながら、ゆっくりと埋められた大穴へと近づく。

紫:「...零!!」後ろから名前を呼ばれたので振り返る。そこには心配そうな顔をした紫さんと皆がいる。

零:「さっさと片づけてきます!!」そう言って、壁に触れると人一人が通れそうな割れ目が出来る。

割れ目は、僕が通り終わってからすぐに閉じる。

目の前には紅魔館の中庭が広がっている。その中心...テラスの真ん中にある魔法陣の中にネメシスが見える。

そこまでの距離は約十メートル。しかし、そこまで行くまでの間に凄まじい数の探知魔法がある。

零:「念には念を...って事なんだろうけど、過剰でしょ...」

もはや残りの魔力を全て探知と迎撃に使ったと言える程には凄まじい数だった。

零:「文字通りに最終手段の為の時間稼ぎ特化って事か...」

この数の探知魔法を全て避けて、ネメシスに近づくのは流石に僕でも難しい。紫さんなら、もしかしたら...そこまで考えてからその事実に気付く。

零:「!そうか...最初の攻撃は紫さんか咲夜さんの能力を封じる為か...」

あえて、視覚と聴覚を奪ってから攻撃する事で紫さんや咲夜さんが能力を使わざるを得ない状況を作り出したんだ。更に戦闘を複数回に繰り返す事で、能力を酷使させる事で面倒な二人の能力を消耗させて、封じる事が出来る様にしたのだ。

零:「クッソ...一体、どこまで読んでるんだよ...?」

そんなことを思いながらもネメシスへと駆け出す。

僕の身体が探知魔法の範囲内に入り、凶弾が僕を襲う!!...はずだった。本来なら...

零:「ハッ!!分かってても恐ろしいなぁ!?」そう言いながら、探知を無視して、ネメシスへと走る。

零:「君にどんな事情があるかは知らないけど、残念ながら君の負けだ!!」

そう言って、拳をネメシスへと打ち込む...はずだった。

零:「は?」僕の気の抜けた声が辺りに響く。

僕の拳はしっかりとネメシスの顔を捉えた。そう思った時には、僕の拳はネメシスをすり抜けて、空を切っていた。全く理解が追い付かずに、そのまま体勢を崩した僕の目の前で、ネメシスが蜃気楼のように消える。

零:「な!?まさか...これは、お前の能力なのか?」

ネメシス:「さあ?わざわざ言うバカはいないんじゃない?」

背後に突如として現れた気配に問いかけると、そんな返事が返ってくる。そう、ネメシスだ。大図書館で、何時から偽物と入れ替わっていたのかが分からなかった時点で、この事態を想定しておくべきだった。

ネメシス:「流石に隙だらけなその状況を君はどうにか出来るかな?」

零:「...」考えろ、考えろ、考えろ、考えろ!考えろ!!

ネメシス:「君に時間をあげる程、僕は馬鹿じゃない...よ!」

瞬間、蹴りが鳩尾へと叩き込まれる。だが、それはギリギリに死なない程度の威力に抑えられていた。

零:「ぐぁ...!!がはぁ...」

ネメシス:「君のそれは、死に戻りに近いものだろう?」

ネメシス:「そうと分かれば、対処は出来るだよ。殺さない程度に嬲るだけさ」

あっさりと僕の超再生のカラクリを当てて見せた。少しばかり、実力を見誤っていた。

ネメシス:「その顔が見れれば、十分だ...」

ネメシス:「それに、もう全てが手遅れなんだよ...待機状態の魔法を展開」

ネメシスの言葉に答える様に、途轍もないサイズの魔法陣が現れる。

零:「ッ!?まさか、この規模の魔法を維持し続けていたのか?最初から...」

零:「でも、魔力量があまりにも足りなさ過ぎる。どういうことだ」

ネメシス:「分からない?君ぐらいの魔法使いなら知ってると思ったけど...」

零:「...!!魔法を先行させて、維持していたのか?」

ネメシス:「君だけが実力を隠していた訳ではないよ?」

つまりは図られていたのだ。構築寸前で維持状態の魔法と一から構築する魔法とでは完成までの時間が大幅に変わる。それは初級魔法でも中々の効果を発揮するが、この技術の神髄は上級魔法や極大魔法などの高等魔法で発揮される。本来ならば、途方もなく長い詠唱が必要な魔法を発動までの時間を大幅に短縮する事が出来る。

ネメシス:「全く...計画通りに行かないとは思っていたけど、まさかここまでとは...」

ネメシス:「でも、それもここまでみたいだね?」背後から心底、楽しそうな声が聞こえる。

零:「クッソ...!!」

最早、こんな状況になってしまえば攻撃を多少貰ってでもネメシスの魔法を止める。

そう考えると同時に拳を地面に叩き込む。しかし、それより背後のネメシスの手刀の方が一瞬、速かった。

僕の首が宙を舞う。だが、首を失った僕の身体が拳を地面に叩き込む。

ネメシス:「...ッ!!」一瞬、ネメシスの顔が驚愕に染まる。そんなネメシスを地面から生えた土の棘が襲う。

しかし、それを間一髪のところで避けるネメシス。

そんなネメシスの目の前で、首のない零の身体が立ち上がる。そのまま、近くに落ちている自分の頭を拾う。

ネメシス:「ははは...まさか、高位の悪魔?それとも、妖怪か不死持ち、か...」

零:「悪いが...お前は、道連れにしてでも倒す」斬り飛ばされた首を傷口に押し当てて、治癒する。

ネメシス:「...『倒す』?」僕の言葉を聞いたネメシスの顔から感情が消える。

ネメシス:「倒す...フッ...まだそんな甘い事を考えてたの...?」

ネメシス:「こっちは、『殺す』気でやってるのに、ねぇーーー!!!!」

ネメシスの殺意が、今までで一番色濃く、感情的に表れる。

それはまるで...『分かってもらえない子供の癇癪』の様だった。

実際に起きる被害は、そんな生易しいものではないが...僕にはそんな風に見えた。

零:「くっ!はっ!セイッ!!」一発一発がとても重い。打ち合う腕が悲鳴をあげているのが分かる。

魔法陣の展開が完了するまで残り一分と言ったところだが、このままでは止める事など無理に等しい。

零:「スペルカード発動!!」僕のその言葉を聞いたネメシスが追い打ちをかけようと距離を詰めてくる。

ネメシス:「させる訳ないだ...『ゴスッ』ぐっ...!?」ネメシスの言葉が途中で途切れる。

零:「記憶を完全に共有できてないか、単純に警戒できてなかっただけかな?」

ネメシスが僕に向かって放った拳が当たるより早く、僕の膝蹴りが腹に刺さる。吹っ飛ばされそうになりながらもどうにか踏み止まったネメシスが驚愕しながら問う。

ネメシス:「どうして...スペルカードが、発動していないんだ...!?」

零:「言うだけなら誰でも出来るよな?」そう、さっきの発言はブラフだ。

スペルカードを発動する直前、力を溜める為に僅かな硬直が存在する。それを狙ってくるのは、容易に想像できていた。故に、このタイミングで苦し紛れのスペル宣言をした様に見せれば、決定打を与えるべく攻撃を仕掛けてくる。隙だらけのその攻撃にカウンターをいれるだけの簡単な事だ。

ネメシス:「そういうことか...!!どこまで私を舐めている!!」

零:「時間稼ぎに応じる気は無いからね。このまま止めさせてもらうよ」

そう言いながら、魔法陣へと走る零。二人は戦闘の性で立ち位置が180度逆転しているので、零の方が魔法陣に近くなっていた。それに気付いた零は、ネメシスに隙を見せる事で戦闘の中断を急いだ。

ネメシス:「クソ!!させるか...!!」ネメシスが零へと手の平を向ける。

ネメシス:「...」移動する零へと手の平を向けるだけのネメシスの手が何かを握る様な挙動をする。

零:「...!!嘘だろ!?」背後を一瞥した零の顔が青ざめる。そして、そのまま横跳びでネメシスの手の平の直線上から外れる。次の瞬間、テラスの柱の一つが跡形も無く消える。

ネメシス:「成程...ありとあらゆるものを破壊する程度の能力。これは強力だ」

ネメシス:「まあ若干、使いづらいな...まあ、数回使えば感覚も掴めるか」

零:「嘘だろ!?ここに来て、フランの能力まで使えるのか!?」

ネメシス:「使えないと言った記憶は無いけど?」そう言いながら、こちらに手を向けてくるネメシス。

零:「...!!」急いで、近くの垣根に飛び込む。すると、先程までいた場所が爆発する。

零:「残り十秒...!!賭けしかないじゃん!!」隙を見て、爆発の煙に紛れて突っ込む。

ネメシス:「これは中々、照準の感覚が独特だな...」そんな事をぼやくネメシス。

その鼻先目掛けて、弾幕が飛ぶ。だが、それを難なく避けるネメシス。

零:「信じてたよ...避けてくれるって!!」煙から距離を取ったネメシス。

その背後の垣根から零が突然、現れる。予想外の零の登場にネメシスの反応が遅れる。

零の拳がネメシスに当たる...!!零がそう確信した。その瞬間...

 

 

 

ネメシス:「残念...タイムオーバーだよ...」

 

 

 

そんなネメシスの言葉を言ったが早いか、足元の魔法陣から途轍もない魔力が立ち昇る。

零:「んな...!?」その途方もない魔力の余波で中庭が一瞬にして荒地へと変わる。

それと同時に、僕自身もその余波に吹き飛ばされる。度重なる戦いによるダメージが遂に限界を迎えたのか、紅魔館の壁のあちらこちらに亀裂が走る。そして、夜になり始めた空を背景に紅魔館が崩れ始める。

ネメシス:「君は本当に私の想像を超えてきたよ...それもここまでかな?」

そう言って、僕の方に狂気的な微笑を向けてくるネメシス。その口が状況の均衡の終わりへと詠唱を紡ぐ。

ネメシス:「千の凶器とそれを束ねる狂華の姫。今一度、赤き月夜に狂宴を!」

ネメシス:『心象投影「紅血の夜狂華」』遂にネメシスの詠唱が完了する。

ネメシスの身体が夜空に昇る。空に浮かぶネメシスが夜空に浮かぶ月に、その手の平を向ける。

その手に魔力が一点に集中する。

ネメシス:「『破天』」

たった一言。しかし、それによってもたらされた光景に、僕は言葉を失った。

空にヒビが入ったのだ...そのヒビは瞬く間に辺りの夜空に広がった。

零:「う...嘘だろ...!?」そのまま更に手をゆっくりと握りしめていくネメシス。

それに呼応するかのように、ひび割れた夜空が崩れ始めた事で、その下のあるものが僕の目に飛び込んできた。真っ白なネメシスの髪色と対照的な真っ赤な月。月とは言うが、月の周りをとてつもない魔力が覆っていて、その膨大さ故に本来は実体を持たない魔力が赤黒い靄の様に見える性で『太陽』の様にも見える。

ネメシス:「あぁ...!!とんでもない魔力量と濃度だ。力が無限に湧き上がってくるみたい!!」

ネメシス:「この力があれば、何でもできる気がするよ!」そう言って、笑うネメシス。

それが妄言ではないのは、今、こうやって対峙している僕自身よく分かる。ネメシスの空っぽに近かった魔力がとてつもないほどの量に膨れ上がったのだ。それは、身体から余剰分の魔力が漏れ出すほどだ。

ネメシス:「さあ、本当の意味での大異変は、これから始まる!」

ネメシス:「そう!この『破天異変』は...!!」高らかにネメシスは叫ぶ。

幻想郷に対しての宣戦布告。本来ならそんな事は不可能に近いが、今のネメシスならそれも可能だろう。

だが、それよりも僕は、空の上に存在するものの方に意識がいっていた。

零:「真魔の瞳...やっぱり、これが原因だったのか...!!」

僕が驚いていると、上空のネメシスがこちらを見て、神妙な面持ちで頷く。

ネメシス:「まさか『これ』を知っているとは...やっぱりすごいね。博識だ」

そう言うと薄ら笑いを浮かべるネメシスに、こちらも不敵な笑みを返す。

零:「やっと、君の正体がおおよそ想像出来てきたよ」

ネメシス:「そう?じゃあ、回答をどうぞ...?」

零:「君の正体は...

 

『フランのもう一つの人格』

 

でしょ?」




第七話いかがだったでしょうか?
紅魔館編も佳境に差し掛かってきました。それなのに投稿期間も開いてしまったり、話のまとまりも無ければ、文章もグダってしまい申し訳ありません!!今後は、リアルも忙しくなっていき、更にグダったりすると思いますので、どうか温かい目で、気長にお話を待っていただけると助かります。
さあ、話は本編に戻りますが、ネメシスの圧倒的な力を遂に目の当たりにする零達。ジワジワと一方的に追い詰められていく状況!打開の糸口は、レミリアの過去に...!!次回はいよいよこの異変の始まりであり、根本にある事について書きたいと思っています。
それでは、次回“東方追求録”第八話「破天異変 ~壱~」お楽しみに!!
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