待て、ジレン。孫悟空に会ったことあるってマジか。   作:白狐

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短めになります。
次から動きがあるかな?

感想、評価、いただけると嬉しいです。


マジか、ジレン

 

 

「待て。」

「何をだ?」

「いや、待て。」

 

フォルノは頭を抱えてしゃがみ込んだ。もちろん、わかっている。目の前の幼なじみの言葉には欠片だって深い意味は無いし、本当に字面通りの言葉なのだろう。

それがわかるからこそ、頭が痛い。

 

「・・・・よし、ジレン。そのな、うん。どうして、そんなことを考えたんだ?」

 

ともかくは、だ。フォルノはおそるおそるジレンに問いかけた。ビル風が二人を吹き抜けていく。そうして、ジレンは不思議そうな顔をしたが、フォルノと視線を合わせるようにしゃがみ込んだ。

ビルの屋上の端っこでしゃがみ込んで向かい合わせになっている自分たちは傍目から見れば相当にヘンテコであろうなあとフォルノは考える。

 

「お前には散々に世話になった。」

「お、おう?」

「・・・・俺は、そうだな。同胞であるプライドトルーパーズの皆をないがしろにして戦ってきた。一人で強くなることを望んだ。信頼など、弱ければ所詮は無くすだけだからだ。」

 

フォルノはそれに黙り込んだ。本当に、久方ぶりに向かい合った幼なじみの本音だった。フォルノはじっとジレンを見た。

 

「だが、俺は、信頼というのものに負けた。」

「・・・・待て、それってやばいんじゃあ。」

 

なんといっても宇宙の平和を守るという触れ込みで構成されているプライドトルーパーズだ。そうして、その中でジレンは本当に彼が対応しないといけない敵としか戦わない。

そんな彼は負けた?

突然の大事にフォルノが動揺していると、ジレンはああそうかと頷いた。

 

「そうか、お前は力の大会のことを知らないのか。」

「力の大会?」

 

それにジレンはまず、簡潔にこの世界のことを話し始めた。

なんでも、フォルノたちの住む、世界、または宇宙は全部で12個あり、それぞれに違う創造主を抱いている。が、それぞれにペアのようになっている宇宙があり、似通っている部分があるそうだ。

 

(創造主が違うという、平行世界があるようなものかな?)

 

「そうして、宇宙の創造を司る界王神、そうして破壊を司る破壊神がいる。」

 

フォルノははてりと、首を傾げた。なぜか、ジレンがいったその単語に対してどこかで聞いた覚えがあった。

が、そんな宇宙の理など知っている知り合いなどいただろうか。フォルノはそのまま黙ってジレンの話を聞いていた。

 

「その二つの神の上に、全王様、全ての神を統べる王がいるわけだ。」

「えらく大層な存在がいるんだね。それで、力の大会は?」

「ああ、その全王様は12ある宇宙の内、8つの宇宙を不要とした。我が、第11宇宙もだ。」

「・・・・もしかして。」

「ああ、お前の予想通り、戦闘能力で生き残る宇宙を決める大会が開かれたんだ。」

「それで、お前さん、負けたの?」

 

ジレンはこくりを頷いた。フォルノはぶわりと冷や汗が流れるのを感じた。

 

「それって、この宇宙、滅びてないのおかしくない?」

「力の大会で優勝者にはどんな願いも叶えられるという権利が与えられた。そうして、優勝した第7宇宙は滅んだ他の宇宙の復活を望んだんだ。」

「・・・・なるほど、それでか。」

「俺は、第7宇宙の奴らに負けた。負けた俺を、プライドトルーパーズの皆は責めなかった。」

「そりゃあ、責めないよ。」

 

ジレンの言葉を遮るように、フォルノは思わずそう言った。それに、ジレンは大柄な体を縮こませてその大きな黒い瞳でフォルノを見た。

 

「頑張って、足掻いた誰かを笑う人間なんて、あの場所にはいない。そうして、皆、お前さんが頑張っていることも、足掻いていることもわかっているよ。なら、責めるなんてそんなこと、出来るはずがないだろう。」

 

なんだか、切なくなってフォルノはそう言った。

情を持つと言うことは、別段相互理解を必要としているわけではないのだ。何かの拍子に、一方的にでも持ってしまう心は確かにあるのならば。

ジレンの過去を知っている。無くして、亡くして、ここまで来てしまった彼の過去を知っている。

それならば、そのひとりぼっちを願う心を嫌えるものはいないだろう。

 

「・・・・そうだな。」

 

ジレンはこくりと、子どものように頷いた。それにフォルノはそうだろうと笑った。

向かい合って二人は子どものようにこくりとうなずき合った。

 

「フォルノ、俺は、まだ信頼だとか、未だにそれを持てるかわからない。ただ、そうだな、繋がりというそれにお前のことを思い出した。」

 

それにフォルノは納得した。確かに、自分とだけは彼は繋がり続けていた。ずっと、自分とだけはないがしろにはしなかった。昔、酷いことを言った自分を赦して、そうして、拒絶しなかった。

 

「俺は、過去に囚われていた。ギッチン様のことも、お前の父のことも。だが、俺は信頼や繋がりに敗れ去った。そうして、トッポに言われた。俺と、プライドトルーパーズにも確かに繋がりはとっくに出来ているのだと。」

 

ジレンは伏せていた視線をそっとフォルノに向けた。焼け付くような視線が、黒い目からこぼれていた。

 

「お前は、俺にとって過去の象徴だ。俺を置いていかなかった、唯一の過去だ。囚われていた、過去の象徴だ。」

 

ジレンは大きな手で、片手で掴めてしまいそうなフォルノの頬を覆った。

 

「お前は、俺にとって何なのか。繋がりとは、どんなものか。それは、俺を強くするのか、弱くするのか。俺は知りたい。俺にとって、お前は、なんなのか。」

 

その言葉にフォルノも、唐突の同居の言葉の意味を理解した。

 

「それで、お前さんは過去と向き合い、整理をするためのその象徴である私とは何なのか考えたいと。それで、一緒に生活して向き合う時間を長くすれば、整理も早く終ると思ったんだな?」

「ああ。フォルノなら理解すると思っていた。」

 

嬉しそうに珍しく笑う幼なじみにフォルノは遠い目をした。

いや、てめえ私が幼なじみでよかったな。下手な奴にそんなこと言ったら泥沼化してたぞ。

なんてことを考えつつ、フォルノは以前よりもぐっと空気の柔らかくなったジレンを見た。

 

「・・・・その負けたお相手さんと戦うの、楽しかったかな?」

「楽しいなどと、思ったことはない。」

「そうかい。にしては、やけにすっきりしたかおをしてるじゃんか?」

「さあな。」

 

ジレンはすねたようにフォルノから視線を外した。けれど、すぐに気を取り直したのか、ふっと微笑みを浮かべた。

 

「・・・ただ、次に戦うときは俺が勝つ。孫悟空にな。」

 

その時、フォルノは一瞬だけ固まった。やけに聞き慣れた固有名詞にジレンのことを油の刺さっていないブリキの人形のような動きで顔を向けた。

 

(孫、悟空?)

 

なんだ、そのやたらと聞き慣れた名詞は。いや、もちろん、世界観的にどんなものか知らないし、自分の生きていた世界との言語的な意味合いでどんな兼ね合いがあるのか知らないが。

めちゃくちゃに聞き慣れたその単語に固まってしまう。

そうして、孫悟空という単語に呼応して、界王神と破壊神という単語のそれを思い出す。

 

そうだ、自分が生きていた頃、親の漫画で読んだ小柄なモヒカンの少年の姿を。

フォルノは冷や汗と、言っていいのかわからないが、動揺によってふらふらとジレンを見た。ジレンもまたフォルノのおかしな様子にどうしたのかと彼女を見た。

 

「あの、その、さ。その、孫悟空って、その。黒髪で、一人称がオラで。」

 

フォルノは持っていた手荷物から手帳を取り出して、がりがりと絵を描いた。それは、端的に孫悟空といわれると想像する髪型のシルエットを殴り書いた。

 

「も、もしかして、こんな、感じの髪型で。ヒューマノイド系の人?」

「・・・・なぜ、お前がそんなことを知っている。」

 

ジレンの言葉などフォルノには届いていなかった。というよりも、それ以上の衝撃で頭が真っ白だった。

 

(そーだよ!!思い出したよ!!)

 

界王神、魔神ブーの時に出てきた宇宙の王の、神様で。

破壊神、親戚の子どもの付き添いで行った映画!ベジータがなんか踊っていて、赤いサイヤ人は驚きだった記憶がある。

 

(猫の、スフィンクスみたいな、そうだよビルス様!!)

 

覚えている、あの傍若無人な人柄のことについては。

 

(待って、でも、ジレンなんてあの話に出てこなかったぞ!?いや、でも。確か、アニメオリジナルの奴が何クールかあるって聞いた気が!?)

 

混乱の中で、それでも、フォルノは思わず四つん這いになり叫んでいた。

 

「いや、何十年越しの真実やねん!?」

 

自分の転生していた先は、どうやらドラゴンボールの世界であったらしい。

 

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