ベルモッド様とトッポさん。ジレンは出ません。
文章、もう少し頑張ります。
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「ふぉるの?」
ベルモッドはちらりと目の前の大男、トッポを見た。トッポははいと頷いて見せた。
破壊神であるベルモッドとトッポは向かい合うように立っていた。ちょうど、トッポを己の後任にするための鍛錬に付き合わせていた直後のことだ。
一段落がついた後、トッポがどこか言いにくそうな風体で口を開いたのだ。
ベルモッド様、少々お話が。
ベルモッドもその名前には聞き覚えがある。
フォルノ、昔滅んだテレー人という種族の生き残りだ。破壊神であるベルモッドが個人の名前を認知していることなど殆ど無い。
まして、プライドトルーパーズに名を連ねるような強者でもない、そんな人間。
それを知っていること自体が非常に異常だ。けれど、それも仕方が無い。
「あの娘か。」
「はい。」
ベルモッドは苛立つように組んだ腕を指で叩いた。
ベルモッドにとって、その名前はお世辞にも気分のいいものではなかった。気に入りであるジレン、それの昔なじみに当たるフォルノはいつだって彼を本当の意味で孤高にはしなかった。
ただ一人で強さを求めるジレンであったが、その女が関わると強靱さがわずかに薄れてしまう。
その隙が、ベルモッドは不快であった。
研ぎ澄まされた、刃のような。強靱な、鉱石のような。揺るがぬ、大樹のような。
強さというそれに対して何よりも貪欲であるジレンは、その女の前でだけ、何かが緩む。
それは、本当に些細なものだった。フォルノという存在があるとしてもジレンの貪欲さは変わらなかった。
けれど、それでも、微かなほころびがあった。
破壊してやろうか、そんなことも考えた。が、ベルモッドはそれをしなかった。
理由はいくつかある。
それは、フォルノの存在を否定することでジレンの覚悟を否定するような気がしたから。そうして、その女は確かに善良でもあった。
私、商売人であります。利益に、資本!これこそが最良!お客様がお望みならば、どこへでも!
そんなあおり文句を吐いているが、彼女の仕事は多売薄利だ。仕事ならば本当に何でもやる。ほとんど実益などでない、貧しい星の依頼を優先する。
彼女の父親の話を、ジレンから聞いたことがあった。
おしゃべりというものを好まない彼が珍しく口を開いたそれには耳を傾けてしまった。
自分たちは、悪を滅ぼすことはないだろう。自分たちは、闘争によって何かを得ることはないだろう。
それでも、弱い誰か。どこにもいけない誰か。泥だらけで蹲る誰か。
そんな誰かを導いてやること、助けてやること。
それもまた、一つの正しさであるのだと。
自分たちは悪を憎んでいるのではなくて、人が愛おしいのだと。
ベルモッドは少々ひねくれた部分があるものの、正しさというものを愛していた。善良な人間は報われるべきで、悪党とは裁かれるべきだ。
フォルノは口先では商人を騙っていたけれど、その本質は父親によく似ていた。
そうであるというならば、ベルモッドにはフォルノを排除できなかった。彼のあり方が、何よりもそれを赦さなかった。
力の大会で、自分が願った孤高という強さが否定された今は以前ほどでないにしろ、気に入らないという思いはくすぶっている。
ベルモッドは不快さを隠すことなく、トッポに視線を向けた。
「あれがどうかしたのか?」
「はい、その・・・・」
トッポは非常に言いにくそうな顔をした。ベルモッドはまた口を開いた。
「言いたいことがあるのならさっさと言え。」
「はい、実は・・・・」
トッポはジレンから聞いた、フォルノの不可思議な部分について話をした。力の大会や界王神たちの存在を知らなかったというのに、何故か孫悟空の存在を認知していたことだ。
ベルモッドはそれにふむと顎に手をやり、考え込むような仕草をした。
「・・・・・他の宇宙のことを認識していた、か。」
「はい、ジレンからあやつの名前を聞いた瞬間、非常に取り乱したそうで。」
ベルモッドはそれにどうしたものかと考え込んだ。
まず気になるのはフォルノがどこで孫悟空の存在を知ったかと言うことだ。他の宇宙への干渉など、天使や神々でなければできることではない。
が、ベルモッドやマルカリータが彼女にそんな干渉をしたことはないはずだ。その理由も、意味も無い。
ならば、他の宇宙のものたちか?
それもまた理由が見つからない。加えて、フォルノはどうやら孫悟空に対して好感といえるものを持っていると言うことだった。
(天使、神々のほかに他の宇宙に干渉できるものと交流があると考えた方が良いのか?)
ベルモッドは少し考えた後、ちらりとトッポを見た。どこか、他に言いにくいことがあるように見えた。
「・・・・トッポ。何か、言いたいことがあるんじゃないか?」
「は。いや、その。」
珍しく歯切れの悪い台詞にベルモッドの眉間に皺が寄る。
「言え。」
断言すれば、トッポは非常に言いにくそうに口を開いた。
「・・・・その、ジレンからこの話を聞いたのですが。どうやら、フォルノとジレンが一緒に、住居と共にしているようで。わ、私が何かを言う権利はないのですが。なんというか、その。」
トッポは視線をうろうろさせた。そうして、次の瞬間、背筋が震えるような何かを感じ取る。
「・・・・トッポ。」
「は、はい!!」
「今すぐフォルノに話を聞きに行く!同行しろ!」
「わ、わかりました!」
トッポは頭を抱えた。やはり、ベルモッドにフォルノのことを報告すべきではなかったのではないかと、破壊神の据わった眼にそんなことを考えた。
マルカリータに頼み、フォルノの元に転移した、ベルモッドとトッポは彼女の宇宙船に現れた。その先には、何かの機械をいじっているフォルノの姿があった。
「くっそ!ここは、うん?ここの回線か!」
ぶつくさ言うフォルノは自分の宇宙船に現れたトッポたちのことなど目もくれずにその機械をいじっている。
「フォルノ、少し・・・・」
「今忙しいんだ!後にして!!」
フォルノは三人の方を見もせずに叫んだ。トッポはそれに慌てて彼女の方に向かう。ベルモッドたちがあがめるべき存在であることなど知らないとはいえ、あまりにも無礼であると思ったのだ。
彼らの正体を話し、礼儀というものを取らせようとしたのだ。
が、フォルノは自分に話しかけてきたトッポににらみ付けて叫んだ。
「トッポの旦那!今は邪魔しないでくれないか!?」
「そんなことをいっている場合ではない、この方々が。」
「そんなもヘチマもあるか!いいか、自由の戦士トッポ!あんたたちが自分の正しさを優先するように、私にも守るべきあり方がある!どんな仕事も、誠実に行う!それが私のあり方だ!邪魔をするな!」
フォルノはようやくベルモッドたちのことを認識したようだった。
「道化師の旦那に、美人なお姉さん。なんか用があって来たみたいだけど。今は取り込み中だ。用事が終ったら話は聞くから。トッポの旦那、冷蔵庫の中身好きにしていいし、適当に過ごしてて!」
フォルノはそう言うと、三人のことなど無視してまた古びた機械に向かい合い、なにやらがちゃがちゃといじり出す。
「お、おい!」
「・・・・いや、いい。」
ベルモッドは、どうやら船の操縦席部分に当たるであろう場所を眺めた。さほど機械に詳しいわけではないが、古びているものの手入れはされていることは理解できた。
「その女がそう言うんだ。終るまで待つとしよう。」
ベルモッドはそう言って、操縦席の後方にあった椅子に座った。そうして、必死な形相のフォルノを眺めた。
「い、いいのですか?」
「いいんじゃないんですかね?そういわれてですますよ。」
マルカリータもそれにならって椅子に座った。それに、トッポは渋々従った。
フォルノが機械をいじっていたのはそこまで長い時間ではない。だが、トッポからすれば永遠のようだった。
なんといっても基本的に神々に対して敬意を持っているトッポからすれば彼らよりも他に何かを優先させるなどあり得ないことだった。
が、ベルモッドがそう言うならば従うほかにない。先ほどまでの苛立ちなど嘘のように静まりかえったベルモッドの隣が嫌に気まずい。
(話さない方が、よかっただろうか?)
トッポの思考はそれに尽きる。
ベルモッドが彼らの同居?にどんな感情を持っているのかわからない。ただ、良い感情は持たないだろうことは理解できた。
孤高の強さというものから、信頼というものに意識を傾けているジレンをベルモッドは否定する気は無いようだった。けれど、以前からのことを考えて険悪になることは考えられた。
(いや、もちろん、ジレンが誰と暮らそうと、それが悪人でも無い限りは私に何かを言うことはないのだが。)
うーんうーんと悩むトッポのことなど気にすることもなく、ベルモッドはじっとフォルノを眺めていた。
暫くすると彼女は雄叫びを上げた。それはトッポにとって天使のラッパのように聞こえた。
「うおっしゃ!!やったぜ、直った!さすがは私、出来る子、ナイス!!!」
立ち上がったフォルノはトッポたちを振り返った。
「トッポの旦那に、初対面のお二人さん!これから瞬間移動するから、ちょいっと揺れるかもだけどそん時はごめんね!」
フォルノはそう言ったと、正面に向き直り右手を前に突き出した。
「・・・座標は確定、対象を認識。」
フォルノはゆっくりと、移動する地点、移動するものを認識し。そうして、一瞬だけ宇宙船が微かに揺れた。
「・・・・移動しましたですますね。」
「こっから宇宙船で移動するから!」
フォルノはそう言った後、操縦席に乗り込んだ。
フォルノの宇宙船が降り立ったのは、とある辺境の星だった。フォルノは降り立った瞬間、機械を手にして瞬間移動をした。
十数分ほどだろうか、フォルノは手ぶらでそのまま宇宙船に帰ってきた。
「いやあ、ごめんね!ちょいっとトラブってて。」
にっこりと笑ったその様は愛嬌を感じる。
群青の髪に、黄金の瞳をしたそれは、星々で美的感覚の違いはあれ好感を感じさせるものだった。
真っ直ぐで、人に対しての真摯さを感じさせるそれは、確かに善良さというものを感じさせた。
トッポは緊張の時間が終るとほっと息をついた。
「・・・・トラブルというのは?」
「いや、それは言えないよ。」
「話せ。」
フォルノはベルモッドのそれに不快さを感じたのか顔をしかめた。
「話せないよ。」
「何故だ?」
「客の個人的な情報だ。私は商人であり、契約を結んだ時点でそれは絶対だ。誰にだって言わない。」
「フォルノ、いい加減にしろ!」
「トッポの旦那!私の仕事に関しては、プライドトルーパーズにだって口出しさせないよ!」
「この方は破壊神様と、お付きの天使様だ!」
その言葉にフォルノはようやく目の前の存在を理解したのか、目を丸くした。
「・・・・猫、じゃないんだ。」
まじまじとベルモッドを見たフォルノに、彼は傲慢に言い放った。
「それで、トラブルというのは?」
「・・・・あの星にめちゃくちゃ珍しい病気の子どもがいるんですよ。ようやく、希少な薬が手に入ったんですが、その薬、管理がめちゃくちゃめんどくさくて。さっきの機械はそれを調整するためのものだったんですけど。」
「故障した、と。」
「はい、そうです。」
頭を掻きながらフォルノは気まずそうに言った。それにベルモッドは重ねるように口を開いた。
「だが、テレー人ならわざわざ機械を直さずとも、そのまま瞬間移動すればよかったんだじゃないのか?」
「うちの能力はそんなにも万能じゃないですよ?そりゃあ目視の範囲でならミリ単位での調整もききますけどねえ。規模がでかくなれば出現する場所がものすっごいアバウトになるんですよ。星範囲の座標だと、下手すると建物だとか、岩にめり込みかねないですし。マーキングしたものがあればいいんですけどねえ。」
そこまで言った後、フォルノはトッポを見た。
「そうだよ、トッポの旦那。あんたに用があるんだよ。」
「な、なんだ?」
「実はさ、このあたり宇宙海賊が出てるらしいんだよ。」
「なに?」
「元々、この仕事はほかの人間がやるはずだったんだけど、それが出るせいで私が出張ることになったんだ。」
「わかった。対処をしておこう。」
「頼んだ!それで、あの。」
フォルノはちらりと、目の前のベルモッドを見た。
「・・・・破壊神様が、私に何の用でしょうか?」
「孫悟空のことだ。」
ベルモッドの言葉に、フォルノはですよねえと遠い目をした。