このヘラヘラ騎士の寄り道にも祝福を! 作:名無しのガーディアン
では、ガデテル10章クライマックスの騎士ちゃん不在IFからスタートです
??-? :女騎士、ヘラヘラと帰還する
「くっ、あああああああっ!!!!」
全身から迸る青い輝きを明滅させながら、一人の女性が苦悶の声を上げていた。荒廃した浮遊城の空で、蒼い光翼から展開された鉄壁の結界は二体の異形によって今まさに破られようとしている。
かつて宇宙より飛来し、世界の大半を喰らい尽くした
インヴェーダーが繰り出して来た太く強靭な4本の腕を持つ巨大な怪物が殴る度に結界は歪み、ひび割れてゆく。
それでも結界は損傷するたびに修復し、その進撃をかろうじて食い止めていた――
(させ、ない……ッ! 絶対に、させないッ!! あの夢を本当にさせるわけには……!!!)
想像を絶する苦悶に全身からは脂汗が噴き出し、高価な人形を思わせる端正な顔を強く歪め、輝くような金糸の髪を振り乱しながら彼女は必死に抵抗する。
たとえそれが無意味な一時凌ぎに過ぎないと、誰の目から見ても明らかであろうとも……昨夜見たあの“悪夢”を――敵が仲間を、護るべき民達を食らい尽くすあの光景を再現させはしまいと、彼女は命をすり潰す勢いで力を振り絞り続けた。
「ひ、姫様っ!!」
大剣を持つ壮年の戦士が痛ましい光景に思わず声を上げる。
「こんな、事って……」
魔科学技術の粋を詰め込んだ砲台の上で、目を覆うゴーグルを震える手で押し上げた女が呆然と呟く。
「ひいぃ! 終わりや! ワシらはもう、ここで死ぬんや!! うわあああああ!!」
「イヤよ! 死にたくない、死にたくないいいっ!」
「デ、デニー、怖い……けど、諦めない!」
珍妙な喋るレッサーパンダが、赤髪の女が、髭面の男が、身を寄せ合って震え上がる。
「諦める、もんか……!!」
橙色の髪と赤い角を持つ魔族の女が、握り締めた拳を再び構える。
「だい、丈夫、だッ……私が、私が絶対に――ッ!!」
蒼い光翼を激しく明滅させながら、女性――姫は、仲間を護りたい一心で歯茎から血が滲む程に歯を食いしばって耐えていた。
「ゴ、アアアアアッ!!」
「ふ、ぐぅっ……あっあああっ!」
――しかし次の瞬間、姫が血を吐くような悲鳴を上げると同時に、ビキリと嫌な音を立てながら怪物の爪が青白い結界を突き破る。
その僅かな綻びへと強靭な前肢をねじ込み、扉をこじ開けるようにして二体の怪物がその結界を破り侵入した。
「んぎゃーっ、入って来よったァ――ッ!」
「させ、ないッ!」
巨大な怪物に続くよう背後に控えた軍勢が侵入する寸前、結界は再び閉じられる――だが、侵入した異形は真っ直ぐに姫へと迫った。……と、その時。
「グルアアアッ!」
「ゴアッ!?」
宙で悶える姫へ飛びかかった怪物を、横から飛び出してきた白い巨体が咆哮とともに弾き飛ばす。
「し、シロッ!? ――いけっ、いてもうたれぇ!」
「がおうっ!」
喋る珍妙なレッサーパンダの声援を受けて、角の生えた巨狼は任せろとばかりに咆哮する。怪物に負けず劣らずの体躯を持つ彼らの守護獣シロは仲間を護るために敵と対峙した。
「ガァオッ!」「ゴアァアッ!」
白銀の分厚い毛皮に覆われた巨体を躍動させ攻撃を躱した彼は、太い前脚で怪物を打ち据え、鋭い牙を剥き出しにする。
跳びかかってきた怪物を蒼く長い角で怪物の横面を張り飛ばし体勢を崩すと、強靭な前脚で抑えつけながらその首元へ喰らいついた。
その外皮はあまりに固く、鋭く硬い牙が一本、乾いた音を立て折れる――しかし、シロは怯まず突き刺さったもう一本の牙を深々と食い込ませた。怪物が奇声を上げて暴れるが、彼は決して放すまいと唸りを上げた。
「うおおおっ!」「おりゃあああああ!」
壮年の戦士と魔族の女が得物とする大剣と拳でもう一体の怪物の突撃を辛うじて押さえ込む。
その僅かな隙を、砲手は見逃さない。
「でかしたゴリラども! 食らえ、マギトン・カノンッ!!」
素早く照準を合わせトリガーを引けば、その砲口から輝く魔法陣が現れ、目を焼かんばかりの極光の弾丸を怪物に向けて放った。
「ゴアッ!」
二人に襲い掛かろうとした怪物に突き刺さった弾丸はその硬質な外皮に阻まれながらも、その巨体を大きく仰け反らせる。
「ちっ、外皮が堅い……! このっ!」
その攻撃が通っていない事を察した彼女は、素早く操縦桿に掛けられた安全装置を外し、トリガーを力いっぱい引き絞った。
「ゴガアアアッ!?」
直後、体勢を立て直そうともがいていた怪物の顔面に極太の魔力光線が直撃した。途切れることのない強烈な極光はやがて怪物の外皮を溶かし、その下の強靭な筋繊維を焼いてゆく――しかし。
「うあああああああ゙あ゙ッ!!!」
本来避けるべき断続した照射による砲身の暴走を全身で抑えつけ、オーバーヒートの熱で身を焦がした女は絶叫していた。
暴走し限界を迎えた砲身が破裂しその衝撃で彼女が砲台から投げ出されると同時に、極光は怪物の肉体を爆散させた。
「ソヒっ!?」
地面に落ちた女――ソヒに、魔族の女が駆け寄る。
「うぐっ……わ、たしはいいから! もう一匹は!?」
「大丈夫! シロがいま息の根を止めた!」
「ヒュ……ヒュ……ガッ!?」
根本から折れた牙から血を流し、荒い息を吐きながら結界へと鋭い視線を向けた白き巨獣が――。
「たった二匹で、こんなに手強いなんて……ッ!?」
そう言って拳を握り締めた魔族の女が――。
「うあ、あああ……!!」
「あ、あああ、あれ……!」
珍妙な喋るレッサーパンダ率いる傭兵団が――。
『『ゴアアアアアッ!!!』』
結界を破らんと殺到する無数の怪物達の姿に愕然とする。
たった二体を倒すのと引き換えに彼らの切り札である白き巨獣は鋭い牙の片割れを失い、最大火力を誇る魔科学兵器は破裂した。
そんな恐るべき怪物が視界を埋め尽くす程の群れを成して殺到する光景に、人々は言葉を失う。
結界が軋み、歪む度にその衝撃は戦場を揺るがす。
結界を維持する姫の表情は今までに無いほどの苦悶に歪み、目や鼻からは鮮血が滲み始めていた。
――そして。
「――ぎっ! がああああっ!!!」
姫が金切り声を上げると同時に、結界にひび割れが際限なく広がり始めていた。
「や、やだぁッ……止まっ、てよ! 止まってぇええええ!!」
もはやどれほど力もうとも結界のひび割れは止まらない――そして限界を迎えた姫が叫ぶと同時に、結界は甲高い音と衝撃波を伴い内側へ破裂した。
結界の破片が空へ溶けながら消える中、墜落する姫を壮年の戦士が慌てて受け止める。
「姫様ッ!」
「う、ぐ……ごめん、なさい……ごめんなさい! 運命を、変えられなかった……! う、あ、あああ……!」
涙に濡れた顔を両手で覆いまるで幼い少女のように泣きじゃくる姫に、戦士は沈痛な表情を浮かべる。
(こんな時、
絶望に打ちひしがれた姫は迫りくる怪物の群れを呆然と見つめる。
殺到する怪物達が大きく跳躍する姿に、その場にいた誰もが自らの死を悟った。
ここで、自分たちは終わってしまうのか。
皆の頑張りは、犠牲は、全て無駄になってしまうのか。
姫は込み上げる悔しさに涙し、自らの無力を――そして、かつて誰よりも頼りにしていた彼女の不在を嘆き、呪った。
――ズドン
突如降ってきた巨大な鋼鉄の拳が、先頭を走る怪物を押し潰したのは、姫たちがすべてを諦めた、まさにその時だった。
想定外の奇襲に対応できず、突出していた一部の怪物たちはその強烈な衝撃で宙を舞った。
「これって……!?」
仲間の手を借り立ち上がりながら、その鉄拳に見覚えがあったソヒは呆然と呟いた。
――次の瞬間。
「やあああああっ!」
やや気の抜けるような叫びとともに、巨大な光の剣――チャンピオンソードが戦場へ叩きつけられた。
拳と並び立つよう戦場の中心に突き立ったそれは、その衝撃波をもって周囲で立ち竦む数体の怪物を吹き飛ばす。
――そして、光の剣に続いて一人の女騎士が地上に降り立った。
「いっえーい! 私、参〜上っ!!」
「……………? …………?!」
その姿と緊張感に欠ける声に姫は涙に濡れた目を驚愕に見開いた。
彼女が率いる騎士団の鎧。その兜からは長い金髪が溢れており。
かつて喪われたその後ろ姿は、夢にまで見たその姿は。
「きみは……!?」
「おひさしぶりです、姫様〜! ……おっきくなりましたねぇ、これならもう、戸棚のお菓子を取るのに肩車はいりませんね?」
こんな時だというのに印象深いへらへらとした笑顔で新緑の目を輝かせる女騎士に、姫は思わず泣きながら笑ってしまった。
「ふぐっ……ううゔっ……遅いよぉ………!!」
「えへへ、ごめんなさい姫様。でも、もう大丈夫ですよ!」
あの日帰らなかった彼女を、姫は信じて待ち続けた。待って待って待って、それでも現れない彼女に、姫は悲しんだ。悲しみは降り積もり、やがて心へ積もる感情には恨みも混じりはじめた。
もはや元あった心がわからなくなるほどに降り積もった感情、あの日とほとんど変わらない姿と笑顔を見たこの瞬間、まるで雪解けのようにその双眸からとめどなく流れ落ちていった。
民を護る戦士としての仮面を脱ぎ捨て、あの日の幼い少女の顔で泣きじゃくる姫の頭を優しく抱いていた彼女は――やがて立ち上がる。
「さーて、姫様を泣かせる悪い奴らは、みーんな私達がやっつけちゃうからねー!」
滂沱の涙を流す姫と未だ唖然とする仲間たちに背を向け、女騎士が高く掲げた剣は暗雲の切れ間から差し込んだ朝日を反射して輝いた。
この世界から喪われて久しい
「アイアン・ティタンの腕にくっついて飛んでくなんて、あの脳筋ちゃんも相変わらずだね……」
無数の軍勢と並び立つよう丘の上に聳える巨大なヒト型の中からは、そんな呆れた声がスピーカー越しに響いた。
「あんにゃろう、無茶苦茶しやがって……!」
茶髪の少年が頭を抱える横で、青髪の女が笑う。
「すっごいじゃない、まさかリアルにタオパ○パ○するところを見れるなんてびっくりだわー!」
「ううう、ズルいです! 一人だけあんなに目立ちよってからに……! こうなったら、私もズドンッと一発かましてやらなければ!」
魔法使い然とした黒髪の小柄な少女が赤い目を光らせながら杖を掲げるのを、同じく黒髪赤目の少女――こちらは発育が良い――が慌てたように押しとどめる。
「こんな状況で爆裂魔法なんて撃ったら味方の人まで巻き込んじゃうでしょ!? ちゃんと考えてよね!」
「ううむ、それにしてもあの屈強そうな怪物の数……! お、思わず興ふ……武者震いをしてしまうな!」
「おい、よだれ垂れてんぞ、この変態クルセイダー」
「……んっ!!」
恍惚賭した表情でそんなことを言う長身の女騎士にジト目で少年が睨む。と、そんな姿をみて、彼らの前に立っていた銀髪の褐色女性がおかしそうにくすりと笑う。
「……ふっ、いきなり居なくなったかと思えば。こんなに愉快な仲間を引き連れて颯爽帰還するとは、なんとも彼女らしい破天荒さだ」
ひとしきり笑った彼女は表情を引き締めると、腰に差した軍刀を引き抜き、掲げた。
「幾多の敵を突破し、ここまで辿り着いた我らに余計な言葉は必要なかろう。今やるべきことは、一つだ」
凛とした面持ちで声を張り上げる彼女の言葉に、さしもの彼らも口をつぐみ、表情を引き締めた。
「カンタベリーの同胞たちの――」
「そして! 異世界から来た愉快なヘラヘラ騎士の為に!」
「おいバカ、アイシャさんの言葉遮んな!?」
一人だけ目立つのは許さんとばかりに勝手にしゃしゃり出てきた少女とそれにツッコミを入れる少年に一瞬面食らいながらも、女性――アイシャはふっと口元に笑みを浮かべ、そして宣言した。
「――全軍、突撃!!」
『うおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!』
その宣言と同時に、堰を切ったように軍勢が動き出す。
それは忌まわしき侵略者を討ち滅ぼすために、そして同盟国の友人たちを助けるために。
――これは異世界を渡った女騎士が起こした奇跡の物語。
・姫(未来姫)
本名不詳、主人公が仕えていた小さなお姫様。
主人公が行方不明になったまま侵略者の攻勢が激しくなり、自ら戦場に立って民を護る盾とならんと頑張ってきた。
予知能力や結界を張る力など、強力な特殊能力を秘めている。
・女騎士(主人公)
伝説の剣の導きに従い世界に散らばる12人のチャンピオンを捜索している途中、突然失踪した主人公。10年越しに帰ってきた。
いつもヘラヘラしているらしい。
・インヴェーダー
突如空から現れて姫様や主人公の故郷を滅ぼし、やがて全世界を脅かした恐るべき敵。
その恐ろしさたるや、常にいがみ合う人類を結束させるほど。
・浮遊城ヘブンホールド
主人公が拠点とする、謎に満ち溢れた文字通り空飛ぶ城。
ラピュタ。
9章でダークメイガスによって世界から追放された騎士ちゃん
原作ではよりによって最終決戦直前の時間軸に届けてしまうという痛恨のミスを起こしてしまったダークメイガスですが、このIFでは全く違う世界に追放成功するという大金星でした
なお、異界の神含む仲間を引き連れてラー帝国側に到達した模様
もしこの作品がエタったら
1.このすば世界に落ちた騎士ちゃんがカズマたちとわちゃわちゃした後、なんやかんやで帰還アイテムを手に入れる
2.ラー帝国陣営にたどり着いた騎士ちゃん一行はアイシャたちと出会い事情を聞いてなんやかんや説得し
3.この場面に帰ってきてなんやかんやで勝利、このすば勢は元の世界へ帰り、騎士ちゃんも過去へ帰ります……過去へ帰ります(重要)
といった流れで完結するということを脳内補完しておいて下さい
……あの、ところで11章はまだですか?(´Д`;≡︎;´Д`)