このヘラヘラ騎士の寄り道にも祝福を!   作:名無しのガーディアン

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ハーメルンで最も有名な某このすばクロス小説のように徹底的に騎士ちゃんの名前を出さないスタイルにしようと思いましたが、何度書き直してもしっくりこないのでやめました!


Chapter-01 迷子の迷子の女騎士 / 騎士なき世界にも祝福を!
01-1 :女騎士、異世界に墜落する


――現在、佐藤和真は人生で三番目に奇妙な人物と相対していた。

 

「んむっ、おいしい〜っ! カエルの肉も案外いけるねぇ! ちょっと硬めではあるけど、味は鳥肉に近いようで、より淡白というか……魚にもちょっと似ているような?」

 

 それは目の前でカエル肉のフライをもっちもっちと食べている一人の女性であった。使い込まれた無骨な鉄製の鎧を身に纏った彼女はいかにも“女騎士”といった出で立ちである。

 そのどの辺りが奇妙かというと……。

 

「はぐはぐ……んぐっ、むふー! いやあ助かったよ、色々あってしばらくご飯食べてなかった上、タイミング悪くスッカラカンでぇ……」

 

 ……そう、何を隠そう彼女は、一文無しのすっからかんで、しかも腹ぺこで詰みかけていたのだという。

 ……騎士なのに。

 出会いの経緯はやや複雑で、彼女は彼らの恩人でもあった。故にこうしてカズマは快く昼食を奢っているのだ。

 

「一文無しで行き倒れかけるとは、騎士の名が泣きますね」

「うへへ、お恥ずかしい限りで」

 

 そんな風に自分の事を棚上げしてそんな事をのたまうのはカズマの脳内変人図鑑No.2にして開幕殿堂入りを果たした、“紅魔族随一の魔法の操り手”を自称する究極の1発屋ことめぐみんである。

 

 当の女騎士は自分よりもかなり年下であろう少女、しかも自分に命を救われた相手にそんな風に言われても一切気にした様子はなく、にへらへらへらと笑いながら受け止めている。

 

「エラソーに言ってるが、お前も行き倒れ同然だったの忘れてないぞ。って、ヒトの唐揚げにレモン絞んな!」

「いらないなら下さい」

 

 余所見をしている内にレモン汁をぶちまけられたカエルのフライにカズマが目を剥いていると、めぐみんはその皿当然のような手つきで自分の前に引き寄せる。

 

「いるわコラ!」

 

 それをカズマが取り返すというコントのようなやり取りに、騎士の女性は何の感慨も抱いた様子もなく、相変わらずヘラヘラと笑いながら「あ、レモン掛けたら美味しいんだ?」と自分のカエルフライにレモンをふりかけて齧り付き、頬に手を当て破顔していた。

 

 ちら、とカズマが視線を横にやると、そこにはテーブルに突っ伏して死ーんとなっているアクアこと、栄えあるカズマの脳内変人図鑑No.1となる自称、ではない水の女神がいた。

 カズマの忠告を無視して突っ込んだ挙句、頭から突っ込んだ胃袋の中で半ばとろけた“先客”とコンニチハしてしまったのだとか。

 

(アホ女神、1発屋、そして単純にステータスの低い俺。なんてこった、このままじゃカエル退治すらままならない)

 

 彼は先の戦闘を思い出して深くため息を吐くと、目の前でカエルをリスのように頬張る女騎士に獲物を見る目を向けた。

 

(なんとかして、この騎士を仲間に引き込めねーかなぁ!)

 

 

――――――――

――――――

――――

 

 

 時を遡ること数時間前。

 カズマはパーティに加わりたいと申し出てきためぐみんの実力を拝見する事も兼ねて、ジャイアントトードの討伐を行っていた。

 ジャイアントトードは名前の通り人間を軽くひと飲みにしてしまうほどに巨大なカエルであるが、めぐみんの放った爆裂魔法はその巨体をいとも簡単に消し飛ばしてしまった。

 

 ……と、そこまでは良かったのだが。

 

「ちょちょちょ、おまっ! ど、どうすんだよこれェ!?」

 

 カズマは滝のように冷や汗を垂らしながら絶叫する。周囲には今しがためぐみんが倒したそれと同等の大きさのカエルが、なんと五匹。

 爆裂魔法の衝撃に叩き起こされたのか、その巨体が次々と土の中から這い出してきたのだ。運の悪い事にその位置は彼らを取り囲む形となっており、逃げるに逃げられない。

 

 さらに、悪いことはそれだけでは無かった。

 

「あー……ちょっと……ヤバいかもしれません、ね……」

 

 巨大なカエルを軽々と消し飛ばし――倒した以上のカエルを呼び出した下手人であるめぐみんは、なんと魔力(MP)切れでダウンしていた。窮極の威力を誇る爆裂魔法は、その消費魔力もまた莫大。

 故に彼女は先程の一発ですべての魔力を使い果たしてただのお荷物と化してしまったのだ。

 

「こ、このままじゃマズイぞアクア! お前腐っても女神なんだろ、女神のご都合パワーかなんかでなんとかできないか!?」

 

 こうなっては頼れるのは一人だとカズマは振り返る。

 滝汗を流しながら震えていた青髪の女性――アクアはちょっとどころじゃないポンコツではあるものの、何を隠そうやんごとなき理由で命を落としたカズマをこの世界へと導いた女神なのである。

 

「腐ってもって何よ!? 私は腐敗とは無縁な清廉なる水の女神なんですけど! カズマにはそろそろ私の凄さってもんを見せ付けてやる必要があるみたいね……いいわ!」

 

 彼の言い草に憤慨しつつも、アクアは目の前のカエルを睨みつけて気合十分に得物の杖を握り締めた。

 

「ゴッドブローはなんか相性が悪かったみたいだけど! 今度のこれはどうかしら――!」

 

 アクアの持つ杖の先端に、眩いオーラが凝縮されてゆく。見るからに凄そうなそれにカズマは不覚にも期待してしまう。

 

「見てなさいカズマ、女神だけが使える超必殺技を! これは女神の愛と悲しみの鎮魂歌ッ、ゴッド・レクイエム! 相手は死ぬッ!

 

 神々しいエフェクトとともに突き出された杖はまっすぐにカエルの丸く膨らんだ腹部へと突き刺さり、凄まじい光を撒き散らしながらその柔らかい皮膚を――ぷるりんと波打たせる。

 

 腹を殴られたカエルは小首を傾げると、感情のない目でアクアを見下ろしていた。

 無駄に神聖属性を纏っていたとしても、打撃は打撃である。

 

「……あ、あれ? あの、その……いやあ、アナタなかなかしっとりモチモチとした綺麗なお肌を――」

 

 ぱくり。カエルに対して意味不明なお世辞で誤魔化そうとした彼女は、無情にも頭からぱっくりと咥えられてしまった。

 

「こ、こ、このアホ――ッ! あれ程打撃は効かないって……!」

 

 上を向いたカエルにもごもごと飲み込まれてゆくアクアを唖然と見ていたカズマは思わず絶叫し、剣を手に救援に向かおうとする。

 

――が、その背に切羽詰まった声がかけられた。

 

「あ、あ、あ! まずいですカズマ、カエルがマントを引っ張ってます! ちょ、動けないので助けていただけるとぉあ――っ!?

 

 カズマが慌てて振り返ると、そこには宙を舞うめぐみんの姿があった。宙へ投げ出されためぐみんは足からきれいにカエルの口へと落ちてゆき、その下半身がすっぽりと収まってしまった。

 

「ああー、あー、これはマズイです……絶体絶命の、ピンチ……!」

「お前まで食われてんじゃねぇ!?」

 

 焦るカズマの目の前でずぶずぶとカエルの口の中へ沈んでゆくめぐみん。彼女は諦観の笑みを浮かべると、右手親指を立てた。

 

「あ、あ……あいるびー、ばぁっ――ぷえっ

めぐみんんんんんッ!?

 

 ――ちゅぽん。

 と間抜けな音とともに飲み込まれためぐみんに、カズマは再び絶叫する。

 

「ど、どーすんだよこれ!? えっ、なに? 俺一人で五体同時に? む、無理無理無理無理、絶対に無理ッ!!!

 

 あとの二人がろくに戦力になっていなかったとはいえ、ついに最後の一人となってしまった彼は顔面蒼白となる。

 

(くそっ、逃げようにも道は塞がれてるし、おくちがフリーのカエルはまだ三体もいやがる! というかジリジリと近づいてきて……)

 

 迫るカエルに焦りを募らせながら、カズマはそれなりに自慢できると自負している自らの頭脳を必死に回転させる。

 貧弱な彼ではお食事中でろくに動かないカエルを倒すのが精一杯で、しかも彼のパワーでは一撃撃破とは行かないし背後から3体ものカエルが彼を狙っている。

 

(――だめだ、なんも思いつかねえ)

 

 詰みだ。そう思ってカズマは思わず天を仰ぐ。

 

(せっかく異世界転生したってのに……! いい思いの一つもしないまま俺はまた死ぬ、しかもまた童貞のままでッ!)

 

 天を仰ぐカズマの頬を暑い雫が流れてゆく。

 見上げた視界の端で、カエルが飛びかかってくるのを捉える。

 その速度は奇妙な程にゆっくりであり――。

 

(ああ、死の瞬間がスローモーションに見えるやつ、ホントなんだな。トラクターの時は目を瞑ってたからな……はは、カエルが降ってきてやがるぜ晴れ後カエル、時々ヒトってか? ……ってあれ?)

 

 見上げた視界に飛び込んでくるカエルの上に頭から落ちてくる人の姿が見え、カズマはあんぐりと口を開ける。

 

「ぁぁあああああああああああああああ!?」

 

「ゲコっ!?」

 

 ばちこーんというとんでもない音とともに、カエルと銀色の人型が空中で衝突する。

 そのあまりの衝撃に彼に飛びかかってきていたカエルはその軌道を変え、めぐみんを飲み込んだカエルの上に落ちた。

 

「ゲロォ!?」

 

 飲み込む途中で重量に押しつぶされたカエルの口から、粘液まみれのぬめぬめぐみんがにゅるすぽんと飛び出してくる。

 それを唖然として見ていたカズマは、自分の横にどさりと何かが落ちてきた事に気づく。

 

……それは全身に金属鎧を纏った人間だった。

 

「痛ったぁ〜……!」

 

 驚いた事に、その人物はあれだけの衝撃の後にも関わらずくぐもった呻き声を上げて自力で起き上がり、その無骨な兜を外した。

 

「……えっ?」

 

 その中身の意外さに、カズマは思わず声を洩らした。

 

 兜からはみ出していた薄い金色の長髪が風で大きく広がる。

 しばらくぶりに外気に晒された白い肌は兜に篭っていた熱でうっすらと上気しており、しっとりとかいた汗が日を照り返している。

 

 面立ちの整ったその女性は、まさにカズマのイメージする“女騎士”そのものであった。くりくりとした形のいい翠色の瞳と目が合って、彼は思わずどきりとしてしまう。

 

「あいたたたーっ……と、何やらピンチみたいだね?」

 

 女性は大事故の直後だというのに油断なくぐるりと周囲を見渡すと、カズマにそう言ってにへら、と不敵に笑い。

 

「さぁて、やってみよっか!」

 

 ジャコン。どこからともなく、()()()()()()を取り出した。

 

「……は?」

 

 呆気に取られたカズマが漏らしたそんな気の抜けた声は、ズダダダダダという激しい銃声とマズルフラッシュの嵐にかき消された。

 

※※※

 

ゔぇっ、ゔぇえ……()()()()が、こっち見て……ぇえぅっ

 

 幸運にも流れ弾に当たることもなくカエルの残骸から引きずり出されたアクアはなにやら見たくないものを見てしまったらしく、粘液塗れの体で地面に座り込みエグエグと泣きじゃくっていた。

 

「カエルの中って、生臭いですけど……なんと言うかこう、いい感じに温かいんですね……知りたくなかったですけど」

 

 未だに魔力欠乏から抜け出せないめぐみんもまた、カエルの粘液でベトベトの身体を地面に横たえていた。

 そんな惨憺たる状況の仲間(アクア)、及び仲間候補(めぐみん)を見て大きくため息を吐き、カズマは命の恩人たる女騎士へと向き直ってぺこりと会釈した。

 

「あーえっと、ありがとうございます助かりました」

 

「いえいえ、人助けも騎士たる使命! 気にしないで〜」

 

 そう言って快活に笑う女性に、カズマはいい人そうでよかったと内心で安堵した。なにせ、ガトリング砲を片手に笑顔でヒャッハーする姿は少々怖かったのだ。

 

「ええと、俺はカズマって言います。そこの青いのはアクアで、そっちのちっこい方がみぐみん」

「おい、私のどこを見て小さいと表現した……」

 

 自分につけられた形容詞に不満を顕にし凄むめぐみんだったが、カズマはどこ吹く風であった。

 そんなやり取りに笑顔を浮かべ、女性はカズマと握手を交わす。

 

「私はカンタベリーの騎士(ガーディアン)、ディアンだよ。よろ――」

 

 きゅるるる、という音がして女性――ディアンは固まる。

 

 カズマがその音の出処へ視線をやると、彼女は照れたように笑った。

 

「あ、あはは。そういえば、いろいろあってごはん食べ損ねてたんだった……うう、お腹空いたなぁ」

「そうなんですか? 俺達もこれから街に戻るんで一緒に食事行きます?」

 

 お腹をさすっていたディアンは彼の提案に目を輝かせる。

 

「是非とも! あ、あとですね、その、お願いがあります」

「なんでいきなり敬語……? なんです?」

 

「……お金ないので貸して貰えません?」

 

 恥ずかしそうに頬を掻きながら、そんな事を言い出したのであった。

 

 

――――

――――――

――――――――

 

 

 そして銭湯でヌメヌメを洗い流したのち、今に至る。

 

ひかひ(しかし)はんたへりーほひう(カンタベリーという)ふには(国は)ひいはほほは(聞いたことが)はいへふね(無いですね)

「口の中のモン飲み込んでから喋れ」

 

 カズマがジト目を向けると、めぐみんは口いっぱいに頬張ったサラダをごくりと飲み込んだ。

 

「具体的にどの辺にある地域なんですか? 冒険者として旅立つにあたって世界の大まかな地域については調べたつもりですが、カンタベリーという地名はとんと聞いた覚えがありません」

 

 彼女が怪訝そうに尋ねると、ディアンはカエルの肉に齧り付く手を止めて目を丸くする。

 

「ええっ、カンタベリーを知らない……? 確かにそこまで大きな国って訳でもなかったけど、インヴェーダーの侵略開始地点として世界中で注目されてると思ったんだけど」

 

「……侵略者(インヴェーダー)? 他国から侵攻を受けているんですか?」

 

 首を傾げた彼女の言葉に、今度はめぐみんが驚く番だった。

 

「ううん、宇宙から来た……宇宙人?」

 

 そう言って首を傾げ、再びカエル肉にかじりつきもっちもっちと咀嚼するディアンにめぐみんとカズマは思わず顔を見合わせた。

 

「……そういえば、ここはラー帝国の一部じゃないの? インヴェーダの親玉みたいなヤツの力で空に吸い込まれて、気がついたら落ちてたんだけど、実は私結構遠くまで飛ばされちゃってたりする?」

 

「そのラー帝国ってのも分かりませんが、ここはベルゼルグ王国にある駆け出し冒険者の街“アクセル”です。ほら、地図のこの辺りに」

 

 彼女の疑問に答えるため、めぐみんが荷物から簡易的な世界地図を取り出して指し示すと――。

 

「どれどれー? ……………………うん?」

 

 それを覗き込んだディアンの表情は徐々に困惑へと変わっていき。

 

「あ、あれれー? 私の知ってる世界地図と全然違うんだけど……」

 

 

 


 

 

「何っ? ディアンが行方不明……ッ!!

 

 ラー帝国でのチャンピオン捜索に同行していたマリアンから通信機越しに告げられたそんな言葉に、私は声を慌てて潜める。

 背後を振り返った私は、夕食の準備をするロレインの後を楽しそうについて回る姫様の姿を確認して安堵のため息をついた。

 

「……マリアン、すまないが詳しく状況を頼む。お前たちはあいつと一緒に行動を共にしていたのではないのか?」

 

 平静を装おうと努めるものの、通信機を握る手に自然と力が入ってしまっている。……落ち着かなくては。

 

〘……詳しく話すと長くなるから簡潔に言うわ。まず、私達は先に一般エリアへ通されたんだけど、脳筋ちゃんだけ入国審査でカンタベリー人だけが特別な手続きがあるとかで連れて行かれたの〙

 

 そこまで言うと、電話先のマリアンは少しためらうように言葉を詰まらせるが、やがて「落ち着いて聞いて」と前置きをして話し始めた。

 

〘今、カンタベリー人は難民化してるじゃない? それに関連して色々とあるんだろうな、とは思ってたんだけど……どうもラー帝国宰相の判断でカンタベリー難民を収容所に隔離して労役を強いていたようね〙

 

 そんな言葉を聞いて、私ははらわたが煮えくり返るような怒りに思わず受話器を握り潰しそうになってしまう。

 

なんだとッ!!

 

〘落ち着いて聞いてって言ったでしょ、結論から言うとその件は解決したわ。独断でインヴェーダーと繋がり、難民をその犠牲にした事を知った第七皇女アイシャ姫の告発で宰相は投獄、難民は開放された〙

 

 そこまで言ってからマリアンは小さく笑い、こう付け加えた。

 

〘どうもこの一件には脳筋ちゃんも絡んでたみたいで、第七皇女は対インヴェーダー戦線におけるカンタベリーとの同盟を決断したそうよ。これから使者が行く手筈になってるから〙

 

「ラー帝国が同盟を!? それは心強い……!」

 

 技術力に優れたラーは世界でも指折りの大帝国だ。

 それが同盟関係を結んでくれるとなれば、対インヴェーダーにおける心強さは段違いとなる。

 カンタベリー民に行った仕打ちは許しがたいが、それを脇に置いてでもこの同盟は受けない選択肢はない。

 

〘宰相の討伐後に功労者である脳筋ちゃんが私達と合流して戻ってくると言い残したまま、いつまで経っても帰ってこないからって皇女殿下が直々に探しに来て私達に話した内容はここまで。彼女も脳筋ちゃんがこっちに来てない事を知って酷く驚いてたよ〙

 

 彼女は深くため息をついた。

 

〘とにかく、軍と一緒に近辺を捜索したら使者を連れて浮遊城へ帰るから、もしそっちに連絡が来たら教えてちょうだい〙

 

 言い終えると、マリアンは慌ただしく通信を切ってしまった。

 

 ……これだけの事を成し遂げたあの新入り(ディアン)には色々と話を聞きたかったのだが、一体あの子はどこへ行ってしまったのか。元々フラフラと単独行動をしがちではあったとはいえ……。

 

エヴァ!

 

ひゃっ……ひ、姫様?」

 

 通信機を置いた途端背後から響いた声に私は思わず飛び上がる。

 

 ゆっくりと振り返ると、背後には竹串の先にウィンナーを刺したものを両手に握りしめたニコニコ笑顔の姫様が立っていた。愛らしい。

 

「ロレインが邪魔だからこれでも食べてなさいって! エヴァの分も貰ってきたから、ハイ! どうぞ!」

「あ、ありがとうございます、姫様」

 

 深く礼をしてかれ湯気の立つそれを受け取り一口かじれば、肉汁が口の中へと広がった。

 ……心の中を渦巻く不安が僅かばかり和らぐようだった。

 

「ねーねーエヴァ、今のってディアたちからの電話?」

「は、はい、そのようなもの……です」

 

 不意に姫様からされた質問にどきりと心臓が跳ねた。

 

「そういえばこの前、ラー帝国からディアが電話くれたんだよ!」

「……ディアンから!?」

「うん! それがね――」

 

 少し驚きはしたものの、よくよく考えれば失踪したのはついさっきの出来事だ。姫様から話を聞くと「今大変だからちょっと激励が欲しい」と言うような内容だったようだ。

 時間から考えれば、労役に入る直前だろうか?

 

「ところで、ディアはいつ頃帰ってくるの?」

「そう、ですね……きっと、今週中には帰ってくるかと」

 

 咄嗟に言ってしまった言葉に、ズキリと胸が痛む。

 私の内心とは裏腹に、姫様は笑顔を更に輝かせながらぴょんぴょんと楽しそうに跳ねた。かわいい。

 

「そっか! じゃあ、もっと青い石探してびっくりさせちゃおっと! じゃあちょっとお散歩してくるねー!」

「あ……」

 

 食べ終わった串をテーブルに置き、もう日も落ちそうだというのに旅館を飛び出した姫様を、私は引き止めることができなかった。

 

 ……ディアンの事だ、きっとなにかしょうもない事をやっているだけだろう。すぐにマリアン達に発見されて、浮遊城に戻ってくる。

 そう思い込もうと努めながら、胸に湧き上がる言いしれない不安とともに油まみれの竹串をゴミ箱へと捨てた。

 




カエル「親方! 空から鎧の騎士ガッ」(断末魔)

・女騎士“ディアン”
愛称はディア、言わずもがなガーディアンが由来である。
性格は“明るい”をベースにしており、“おとなしい”騎士ちゃんプレイヤー故にボイスを確認するために古いスマホにもガーディアンテイルズをDLする必要が発生した。
カマゾン恐怖のガトリング騎士ちゃん。

・姫様(チビ姫)
大好きなディアンの帰りを無邪気に待つ小さなお姫様。
ディアンが喜ぶリトライとかガチャに使える綺麗な青い石をプレゼントするため、せっせとお散歩して拾い集めている。
かわいい。

・エヴァ団長
カンタベリーの騎士団であるガーディアンズの団長。
現在王侯貴族が幼い姫様しか残っていないので、現状は実質的にカンタベリー王国の代表。
趣味は皆に隠れてアイドル活動をすること。

・マリアン
ティタン族という大人でも他種族の子供程度の体格しかないホビット族種族の天才エンジニア。
小柄な体格でも負けないようにパワードスーツや巨大ロボまで作ってしまう。才能が高いがゆえに驕っていたが、それが原因で痛い目にあってからは少し丸くなった。
伝説の剣チャンピオンソードに選ばれたチャンピオンの一人。

・浮遊城
本作で浮遊城にいる人間はゲーム本編内で騎士ちゃんに同行する事を選択したキャラたちに限るのでSSR勢は基本いない。
ワールド8悪夢でガラム様との会話で騎士ちゃんが近況を知ってるらしいことが確認されたナリは浮遊城に居着いている。
性格的にあまり積極的な協力をしてくれることはなさそう。
保護した難民たちの一部も浮遊城に住んでる。
アイシャ&シャピラはゲーム内ではついてきた事になってるけど、本作では自国戦況が変わるまでは国に残り、本格的に対インヴェーダーの共同戦線を張るようになった辺りで合流する事となる。


ラー帝国の調査に赴いたPTは騎士ちゃん/ユズ/マリアン/ソヒ
ユズは相棒だから、マリアンソヒはもちろんラー帝国がスチパン的な高い技術力ありそうな場所だから技術を見たくてついてきた。
入国後中々来ない騎士ちゃんにユズは心配し、マリアンソヒは特に気にせず観光し、夜になっても予定した宿に現れない騎士ちゃんにようやく全員焦り始めた。
翌日以降聞き込みを開始し、やがてカンタベリー人が収容所に入れられているという噂を聞き出して入念にテロの準備を始めて、まさに実行する所だった。
が、その前にアイシャが訪ねてきたので未遂に終わった。
ギリギリセーフ。
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