このヘラヘラ騎士の寄り道にも祝福を!   作:名無しのガーディアン

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間に合った……(3/21 05:24)
いよいよ明日は生放送、11章の発表ですね(願望)


01-2 :女騎士、異世界では自称騎士

「あっちゃあ、インヴェーダーのヤツらめ、今度はそう来たかぁ〜!」

 

 推定、異世界から飛ばされてきてしまったという驚愕の事実を知った当の女騎士(ディアン)の反応と言えば、これである。

 

 こりゃあ一本取られたぜ、とばかりに片手で頭をぺちりとやってへらへらと笑う彼女の様子に、手段は違えど異世界からこの場所へと渡ってきたカズマは目を丸くした。

 

「……えっ、なんか反応やたらと軽くない? もしかして、帰る手段に心当たりがあるとか?」

 

 死という絶対的な区切りをもって、更には予め一応の覚悟を決めつつ元いた地球との離別を果たした彼ですら、望郷の念に駆られた経験は既に両の手指では足りない程にある。

 もし何の覚悟もなくいきなり異世界へと落とされたら……と思うと、彼はぞっとした。

 

「ん? いやあ、特に心当たりはないよ?」

 

 カズマの問いに対し、ディアンはそんなあっさりとした反応を返しながらサラダを一口ぱくりと頬張った。

 

「あの、今は侵略者との戦争中なのでしょう? 残してきた故郷は心配じゃないんですか?」

「うーん、心配っちゃ心配だけど。今の浮遊城には、私より強いヒトや賢いヒトがいっぱい増えたからね。私一人欠けたくらいじゃ揺るがないし、そもそもこんな時に慌ててもしょうがないよ」

 

 やや心配するようなめぐみんのそんな質問に彼女はあっけらかんとそう答えた。なんとも肝が据わっているものだとカズマは少し感心した。

 

「そういうもんか。……いやまあ、実際そういうもんなのかもしれないけど、自分が居なくても問題なく社会は回るってちょっと悲しいよな」

 

 カズマは自分が死んだあとの故郷を想像する――しばらくは家族が悲しんでくれたとして、それだって割とすぐに元通りに近い生活になるだろう。まして家族以外となると……。

 自分の死が元の世界に遺した傷跡などそんな程度でしかないのだと、彼は少しばかり悲しくなった。

 

 ちょっとばかりセンチメンタルな気分に浸るカズマの横で、めぐみんが鼻息荒く身を乗り出した。

 

あのっ、そんなことよりもですね! 今、“浮遊城”という単語が聞こえましたが……もしや、それは文字通り空に浮かぶ城、と言う……!?」

 

 彼女が耳聡く聞き逃さなかった単語にカズマもまた興味を抱く。

 

「うん? ……ああ! そうそう、私達の拠点は“浮遊城ヘブンホールド”って言ってね、空に浮かぶ小島みたいな感じなんだよ! ええっとねぇ〜」

 

 どこか期待するような、そわそわワクワクとした様子のめぐみんに対し、ディアンは腰につけた革のポーチから()()()()()()()()()()()を取り出し――。

 

(……ん?)

 

「えーっと、確か地上からの()()が――」

 

 その黒い板を操作し、その()()に浮かび上がった()()()()()()()して()()を表示させ始め――。

 

(………んんんっ!?)

 

「これはシロちゃんの写真、これは姫様の写真……かわいい、これはシロちゃんに噛まれてるマービンの写真……っと、あった、これこれ!」

 

 そして地上から見上げるアングルで撮られた、城を戴く巨大な浮島の鮮明な()()()()()()を表示して見せたのであった。

 

(んんんんんんんんんっ!?!???)

 

ふ、ふぉおおお……!! なんとロマン溢れる拠点……!!」

 

 その絶景写真に純粋に感動するめぐみんとは対照的に、カズマの内心はその写真を表示している()()()()()()()にしか見えないそれに対する驚愕でそれどころではなかった。

 

「ちょちょ、ちょっと待ってもらっていいかな? 今取り出したその薄くて黒い板は、その……」

 

 カズマがなにやら妙に動悸のする心臓を抑えながら尋ねると、写真に見入っていためぐみんもまたその黒い板に注目し始めた。

 

「確かに、この風景を保存する魔導具(マジックアイテム)は初めて見ますね」

「ああ、これ? これは通信用の魔導具なんだけど、こんなふうに――写真を撮ってアルバムにしたりもできるんだよ! あ、そういえば……って、当然圏外だよねぇ」

 

 カシャリ、と音を立てて手慣れた様子で正面に座る二人を撮影した彼女は、ハッとしたように電波状況を確認する。

 当然のように通信圏外である事に「たははー」と残念そうに笑うその反応はまるで現代人だった。

 

 頼んでみるとやけにあっさりと貸し出されたその魔導具を借り、カズマが少し触ってみると、それはどこからどう見ても地球で見慣れたスマートフォンのそれである。

 背面に書かれたロゴは見たこともない文字だが、なんとも奇妙な一致もあるものだとカズマが思っていると――。

 

「豊作の神様がやってるカマゾン(k a m a z o n)っていうお店で売ってるんだー。結構いいお値段するんだけど、カマゾンの()()()()()を使ったり()()()()()()()()で交流とかしたいからみんな持ってるんだよね」

 

Amaz○n!! Faceb○○k!!! なんだよそれ! 異世界はどこいったんだよ!!!」

 

 そんな衝撃的な解説に思わず頭を抱えるカズマ。ディアンはそれを見て目を丸くしたかと思うと、やがて吹き出して笑い出す。

 

「あはは、その反応キャサリンにそっくり!」

「キャサリン、ですか?」

 

 ひとしきり笑うと彼女は再び魔導具を操作し始め、やがて一枚の写真を表示してテーブルの上に置いた。

 

「キャサリンはね、雪山で出会った青い目が綺麗な女の子なんだー。ほら、この写真! 浮遊城に誘って、仲間入りした記念のやつ」

「なんだか寒そうな格好してますね……」

 

 カズマたちが画面を覗き込むと、雪の中でディアンに肩を抱かれ自撮り写真に巻き込まれる女性が映っていた。

 何やら驚いた様子でレンズを見つめるその女性は、白のタンクトップにデニムのズボンという、異世界にも雪山にも相応しくない装いをしている。

 その色々と際どい服装をカズマが凝視していると、不意にディアンが「あっ」と声を上げた。

 

「そういえば、この子も今の私みたいに異世界から飛ばされてきてたんだった! 戻り方分かったかもしれない!」

 

「……え、何? そっちじゃ割とポピュラーな現象なの?」

 

 カズマが思わず尋ねると、ディアンは首を振る。

 

「ううん、キャサリン以外には聞いたことがないかな。確か……キャサリンはチキュウのカナダ? って国でトラックに撥ねられたら、いつの間にかシバリング山にいたんだって」

 

(何、その一昔前のテンプレ小説みたいなの……ってかカナダ? 地球人そっちの世界にもいるんかい)

 

 よりによってこんな格好で雪山に飛ばされてしまったというキャサリンなるカナダ人女性をカズマは不憫に思っていると、彼女は窓から外を覗き、何かを探し始める。

 

「こっちにもトラックがあればいいんだけど……あ、トラックは分かる? 馬の代わりに魔力で動く鉄の荷馬車みたいな。故郷でも都会以外じゃほとんど見なかったんだよね」

「鉄の馬車ですか、なんとなくカッコよさそうですが、そう言うのは見たことがないですね。馬車なら普通に……ほら」

 

(トラックねぇ……コイツの故郷、どこかの浜辺に自由の女神像とか埋まってねぇだろうな)

 

 砂に半分埋まった自由の女神像を前に「ここが地球だったんだ!」と泣き崩れるキャサリンをカズマが脳内に思い描いていると、めぐみんが窓の外を指差した先に2頭引きの荷馬車が通り掛かる。

 

「馬車かぁ。……よーし!」

 

 それを見たディアンはおもむろに左手を窓枠に掛け――。

 

「ちょちょちょちょお待て!? 何する気だ!!」

 

 その手を軸に体重を掛け腰を浮かせようとしていた彼女の右手を、カズマは反射的に掴んでいた。

 

「えっ? へへっ、トラックの代わりになるかなーって」

 

「危ねえからやめろ!? 巻き込まれる御者の人と馬もかわいそうだろ!?!?」

 

 そんな安直な考えに即断で自他の生命を賭けた彼女を、カズマは脳内で危険人物リストの二番目に書き加えた。

 

 ちなみに一番目はめぐみんである。

 

 

「……んもー、あに騒いでんのよ〜」

 

 そんなこんなで騒がしくしていると、カエルから引きずり出されて以降、風呂を上がってからもずっとグロッキー状態だったアクアがもぞもぞと動き出した。

 

「ふぁ〜〜っ、んん゙っ、よく寝たーっ!」

(ヤケに静かだと思ったらコイツ寝てたのかよ)

 

 大きく伸びをし、あくびまでする彼女にカズマが少々呆れを含んだ視線を向けると、当の本人はキョロキョロと周囲を不思議そうに見渡し始めていた。

 

「……って、あら? ここギルドの酒場じゃない。ねぇカズマ、ジャイアントトードの討伐はどうしたの? ひょっとして怖気づいちゃった感じぃ〜?」

は? 何言ってんだ、さっき――」

 

 きょとんとした様子でそんな事を言い始めたアクア。

 カズマははっとして、口をつぐんだ。コイツ、カエルに飲まれた記憶をさっぱり消しやがった、と。

 

「何言ってんだ、さっき無事に終わらせて帰ってきたろ。寝ぼけて忘れてんじゃねーの?(棒読み)」

「えーっ、そうだったかしら? う〜ん、そういえば、なんか嫌なものを見たような……って、あ、あら?」

「うん?」

 

 不意にアクアの視線がディアンとぶつかり、その目が点になる……どうやら、トラウマと一緒に彼女の記憶も飛んだようだ。

 

「えーと、どなた?」

 

 会話らしい会話もなかったとはいえ、半ば放心状態のアクアと魔力切れで体が上手く動かせないめぐみんを入浴介助したのはディアンなので割と恩知らずだなぁとカズマは思った。

 

「おいおい忘れたのかよ、お前が危うくカエルに噛みつかれかけた所をその人が助けてくれたんだろ?」

「そうだったかしら、カエルに……カエル? ゔっ、頭が」

 

よし! この話はここまでにしようか!」

 

 アクアが冷や汗をかきはじめたところでカズマは話を強引に打ち切った。記憶が戻ってうっかり嘔吐でもされたらたまらない。

 

「あー、なんだったら、改めて自己紹介しとこうか?」

 

 すっかりと記憶が飛んでいるアクアのためにディアンがそう提案すると、カズマも頷いた。

 

「そうだな。なりゆきでここまで来たけど、よく考えたらちゃんとした自己紹介してなかったよな。道中は……ちょっと会話する気分になれなかったからな」

 

 魔力切れのぬめぬめぐみんとSAN値直葬状態のべとべとアクアを互いに背負った二人の往く公衆浴場への道は沈黙に満ちていた。

 

「でしたら先鋒は私から行かせてもらおう!」

 

 がたり、とめぐみんが立ち上がる。

 

「先程は制限された身体ゆえに不本意な形で紹介されましたが、今度こそちゃんとした自己紹介をさせてもらう! 異界の騎士よ、とくと聞くがいい!」

 

 テーブルの横に立ち、いつの間にか装着したらしい眼帯を二本の指で強調しながら彼女はマントをバサリと翻した。

 

「我が名はめぐみん! アークウィザードを生業(なりわい)とし、人類に許されし至高の破壊魔法、爆裂魔法を操る者! 強大無比な力と引き換えに我が身を喰らう禁断の力を(なんじ)も欲するか? ならば我と共に黄泉の門を叩く覚悟をせよ、強き力には代償が付き物である」

 

 ポーズを決めながら力強く口上を言い切っためぐみんにディアンは拍手と歓声を以て迎えた。

 

おおーっ、それイイねぇ!」

「……ふっ、この紅魔族の伝統的挨拶に理解を示すとはアナタ中々に高度なセンスをお持ちですね!」

 

 カズマからすれば何度見てもふざけているようにしか見えないめぐみんの口上であったが、ディアンにはウケたらしい。

 

 そんな場の盛り上がりに高揚したのか、それに続けとばかりにアクアが立ち上がり、尊大な佇まいで胸に手を当てた。

 

「んじゃあ次は私ね! 私はアクア、アクシズ教団が崇める御神体、この地上に降り立った高貴なる水の女神――」

「を、自称しているちょっと頭が可哀想な女の子なんだよー。みんな優しくしてやってくれな? あ、俺は冒険者のカズマです」

 

 堂々と女神であると名乗り出るアクアにカズマが横から茶々を入れると、それを見る二人の目が生暖かいものとなる。

 

「ちょっとカズマ!? 私は自称でも何でもなく、正っ真正銘の女神なんですけどお!? ちょっと二人とも信じて! 信じてよお!!」

 

 皆の態度にドヤ顔から急転直下涙目となったアクアをカズマがドウドウと諫める。最終的に夜にシュワシュワ(クリムゾンビア)を1杯奢る約束で機嫌を直したアクアは安い女神であった。

 

「さあて、それじゃあ最後は私だねー!」

 

 彼女は椅子を引き立ち上がると、腰からすっと何か――おそらくは剣を抜き放ち、顔の前で立てるような仕草を見せる。

 ここが酒場だからか、本当に抜いたわけではないが。

 

「私は騎士(ガーディアン)、ディアン。国と民を護る事を君主に誓ったカンタベリーの剣にして盾」

 

 ここまで接してきて緩んだ表情しかしてこなかった彼女が初めて見せた凛とした真剣な眼光に、カズマは少しどきりとしてしまう。

 

 おそらくは彼女の居た騎士団流の自己紹介なのだろうなと彼が考えていると、やがて彼女は握った空気の剣を天高く突き出し、ポーズを決め――。

 

そして! 怨敵インヴェーダーによってこの世界へ飛ばされてきたこの身は無知蒙昧にして天下不滅の無一文! 愛剣もどっかになくした身元不明の自称騎士です! どうぞよろしく!」

 

 へらへらした顔でそんな情けない事をのたまった彼女に、カズマは思わずずっこけた。

 

 


 

 

 姫様の就寝を確認した私は、浮遊城に滞在中の面々の中でも特にディアンと親しい者たちを旅館の食堂へと集めていた。

 

「そんな、何かの間違いじゃないの? 師弟は結構気まぐれだし、ちょっとどこかへ寄り道してる途中で何か用事が出来たとか……」

 

「いいや、あの嬢ちゃんは滅茶苦茶なところはあるが、やるべき事はきっちりと終わらせるタイプだ。皇女との話し合いのために仲間を呼びに行く、その途中で姿を眩ませるなんてことは考えられん」

 

 不安気なメイの言葉を、クレイグが頭を振って否定する。

 

「……それに、いくら何でも連絡もないままなんてどう考えてもおかしいよ。やっぱり何かあったのかも」

「それはそうなんだけど、仮に何かから襲われたとしてもディアが簡単にやられるとは思えないのよねぇ」

 

 ラビ、ファビの姉弟はそう言って同時にため息をついた。

 チャンピオンソードの導きに応じた彼女が旅を始めてから既にいくつもの季節が流れている。しかし、彼女が辿ってきた旅の密度は常軌を逸していた。

 行く先々で大規模な騒乱に巻き込まれては、仲間や現地で見つけ出した協力者とともに問題を薙ぎ倒し、時には新たな仲間を連れて帰還する。

 

 ……かつて記憶を喪った私は勇者教に勇者として祭り上げられそうになった事があるが、彼女のような破天荒な人間こそ、まさにおとぎ話に出てくる“勇者”そのものだ。

 ……あの発作のように時折ふざける癖と、あの何も考えてなさそうなへらへら笑いにさえ目を瞑ればだが。

 

「そう、だな。私としても、ディアンが何者かに襲撃されて敗北したとは思えん。純粋な戦闘能力そのものより、生き延びて勝機を掴む能力こそあいつ最大の武器だ」

 

 私がそう言うと、部屋の中にいた皆の大半が頷いた。

 皆、彼女とともに戦闘をくぐり抜けてきた者たちだ、何かしら皆覚えがあるのだろう。

 と、その中で一人、遠慮がちに手を上げた者がいた。

 確か、少し前にシバリング山で彼女が保護した――。

 

「キャサリンか、何か思い当たる事でもあるか?」 

「いえ、すみません。そうじゃないんですけど……あの、団長さん、お姫様にこの事、お伝えしてないんですよね? 近々使節団と一緒にマリアンさんたちも帰ってくるみたいだし、早いうちに言ったほうがいいんじゃないでしょうか?」

 

 彼女の質問に、私の心臓は大きく跳ねた。

 

――それは、非常に頭の痛い問題だ。

 家臣として、姫様にはきちんと説明すべき事柄ではあった。しかし、いま姫様が最も心を寄せて頼りにしているのがディアンなのだ。

 

「すまない、頭では分かってはいる。しかし、ディアンが居なくなったと姫様が知ればどれほど嘆かれるかを考えると、躊躇してしまってな……ひょっとしたら、使節団が立つ前にラー帝国軍が――」

 

 がちゃん、とガラスの割れる音が静かな食堂内に響き渡る。音の発生源へと視線を向けると――。

 

 そこには割れて床に散らばった――以前ディアンが姫様への土産として持ち帰った、砂漠の名産品の――ガラス細工の水差しと、その傍で呆然と立ちすくむ姫様の姿があった。

 

「ひっ、姫様! お、お怪我はございませんか!?」

 

 私は思わず立ち上がり素早くガラスの破片から姫様を遠ざける――いや、そうではない、それよりも重要なのは。

 

「ねぇ、エヴァ……今の話って、本当?」

「姫様……それ、は」

 

 ――聞かれて、しまった。

 いや、これはいずれ伝えなければならない事だ。

 でも、だって姫様のお耳に入れる前にディアンが見つかる可能性も……いや、そんな事がただの言い訳に過ぎない事は分かっている。

 しかし、私は――。

 

「そんなの、うそだよね? 今日、ディアはもうすぐ帰ってくるって、エヴァ言ってたもんね? エヴァ、私に嘘ついたことないもん、ね?」

「……、それは」

 

 その縋るような眼差しに、私の心臓は潰れたように痛む。

 何か言わなければ、ちゃんと伝えなければ。そう頭では思っても、私の口は思うように回ってくれない。

 

 やがて、私が黙っている事で察してしまったのか、姫様の愛らしいお顔がくしゃりと歪んでゆく。

 その目にはじわりと涙が溜まり――ああ、私はどうしても、姫様のこんな顔を見たくなかったのだ。

 

「……水差し、割ってごめんなさい」

「あっ、姫様――」

 

 咄嗟に伸ばしたその手は、虚しく空を掴んだ。

 私の足は凍りついたように動かず、たっ、と踵を返して寝室の方向へと駆けてゆく姫様の小さな背中を、私は呆然と見送るしかなかった。

 姫様の姿が闇に消えると、伸ばした手は自然と落ちた。

 

 ――ああ、どうか神様。どなたでも構いません。

 

 私が言った言葉が嘘にならぬよう、姫様がこれ以上涙を流す必要がなくなるよう――どうか、ディアンが無事に見つかりますように。

 今の私にできる事は、そう祈る事だけしかなかった。




騎士ちゃん「使ったコップですか? ちゃんと洗いますけど……」

・リベラ(騎士ちゃんの愛剣)
うっかり紛失した騎士の魂。

・異世界(産の)スマホ
なんとガデテル世界、スマホや車のような現代文明のごときテクノロジーが当たり前のように存在する。
騎士ちゃんもスマホを持っており、行く先々で現地の変な人達と連絡先を交換している。
この世界線では記念写真とかも割と頻繁に撮ってる。

Amazonkamazon
豊作の神カマエルによって運営される巨大企業。
かつて焼け落ちた世界樹を再生するための資金源。
注文した商品はドローンで届く。

Facebookフェイスブレイク
ガデテル世界のSNS。
騎士ちゃんは行く先々でフレンドを作ってる。

・キャサリン
トラックに轢かれて異世界転移したカナダ人の女の子。
よりによってシバリング山に出てきてしまい悪い人達に出会って、ガデテル世界の洗礼を受けた。
異世界転移者なのに特典とか一切貰ってないが、テレビで見たサバイバル番組の知識を頼りに何とか生き抜いてきた。

・無知蒙昧にして天下不滅の無一文!
コップを洗わなかったせいで(?)異世界転移した人のネタ。
騎士ちゃんも素敵な青い石の力で死に戻りができる。
騎士ちゃんが一文無しなのは失踪の少し前、自分の暗殺に失敗し目の前で契約解除されたスナイパーを雇うため衝動的にお財布の中身を空にしてしまったから。
姫様にまたお小遣い貰わなきゃ。

・自称騎士
国交のない未知の国家から来た騎士だから仕方がない。

・メイ
シェン市で騎士ちゃんとともに拳法の修行をした女の子。
シニヨンがかわいい。

・クレイグ
騎士ちゃんがダンジョン王国で出会った、長年諦めずに勇者を志す人格者のおっさん。
大悪魔に殴られてもピンピンしてるカチカチタンク。

・ファビ&ラビ
魔法学校で騎士ちゃんと出会った交換留学生な魔族の姉弟。
学校で暗躍していた絵画に宿る悪霊の悪あがきから騎士ちゃんたちを庇って石にされた事がある。
騎士ちゃんたちが石化解除薬を持ってくるまで、お涙頂戴物語として語りぐさとなり有料で展示された。
弟ファビは治癒魔法使い、姉のラビは魔法学校の生徒なのにステゴロ使いでしかも将来の夢は世界一の格闘家。
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