このヘラヘラ騎士の寄り道にも祝福を!   作:名無しのガーディアン

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うちの姫様が、一番えらい!(`;ω;´)
11章が神シナリオ過ぎてつらい……涙がダバダバ出ました
騎士ちゃん残留エンドが残酷すぎる……

そしてうっかりとイベント見てなかったせいで初回ロレインさんを花にしてしまったのが地味に心残りです……SSRパーフェクト未来ニコニコ様の実装を求みます
ココ……? うん、まあ、うん……あんな未来は嫌だよね、過去に戻ります……


01-4 :女騎士、異世界でスキルを習う

――見目麗しい女性と少女を粘液まみれにして街を歩かせた変態鬼畜男がこのアクセルの街に現れた。

 

 そんな噂を耳にした時、私は心が踊った。

 どういう訳か、この街では本来女に飢えた獣であるべき男たちに()()()()がある。

 そのためか治安も安定しており、市民にとっては良い事なのだが……私にとっては小さな不満だった。

 

 しかし、そのアクセルで絵に書いたような鬼畜が現れたのだ。こんな情報に、興奮せずにいられるだろうか……いや、無理だ。

 しかも聞けばこの男、私が探し始めてから日も変わらぬ内に新たな女をその毒牙に掛けたというからたまらない。

 

 それも、次にその変態性癖の対象となったのは立派な鎧を着た()()()だというではないか!

 

 女騎士! 女騎士を、ベトベトの、あられもない姿に……!

 それを聞いていても立っても居られなくなり、目立つことも構わずに聞き込みを開始した私は――その男がパーティメンバーを募集している新人冒険者である事を突き止めた。

 

 期待を胸に男へ接触を図った私は、この時まだ気づいていなかった――真に私を満たしてくれる存在が、この男のパーティにいると。

 

 


 

 

「――すまない、少々興奮してしまった。パーティ募集の張り紙を見てやって来たのだが、まだ募集は締め切られていないか?」

 

 ダクネスと名乗る頬を紅潮させた女騎士の言葉に、カズマの本能に根差した危機感センサーはバチバチに警戒を発していた。

 

「ちなみに、職業は何なのです?」

 

 横で聞いていためぐみんが首を傾げる。

 

「おっと、失礼した。私はクルセイダーを生業(なりわい)としている。それで、パーティメンバーの募集は……!」

「ええと、はい、あの確かにまだ閉め切っては、いませんけど……」

「そうか! ならば是非とも――!」

 

 ずい、と身を乗り出し急接近するダクネスにカズマは思わず顔を赤らめてのけぞった。

 

「いやあ! でもあの、うちのパーティはやめといた方がいいですよ! 知能が低すぎるプリーストに一日一発しか魔法を打てない魔法使い、リーダーの俺も最弱職の冒険者だし! 戦力は実質一人っていうポンコツパーティだし」

「一発は一発でも極大の一発です、誤解を招くような言い方はやめていただきたい!」

「誤解でも何でもないだろ! まあ、そういう訳なんで……」

 

 いきり立つめぐみんにツッコミを入れつつ、カズマがやんわりと断りを入れようとすると。

 

「問題ない! 私は筋力が高く、耐久力には絶対の自信があるのだが、生来の不器用さから攻撃がからっきし当たらなくてな!」

「いやそれ力強く言う事じゃないだろ。役に立たないじゃん」

 

 そう力説したダクネスに、彼は思わず真顔でそう言った。

 

「んっ……! いや、最初に言った通り、こと耐久力においては私の右に出る者はそう居ないと自負している! 故に私の事は仲間を護る鉄壁の盾として扱ってもらいたいのだ! 容赦なく!!!」

「盾扱いって……」

 

 ふすーっ、と鼻息荒く拳を握るダクネスに軽く引きながらも、カズマは背後の二人に相談を持ちかけた。

 

「……ぶっちゃけ、二人はどう思う?」

 

「攻撃が当たらないというのはちょっとアレですが、上級職であるクルセイダーというのはそうそう転がってるものじゃないですよ。盾役というのも職業的役割として適任ですし」

「タンクは大事だよ。私も前に出て戦うのが得意だけど、特別打たれ強い訳じゃないからあまり積極的に味方を庇うってのは難しいし。前の世界だと私も盾役を任されたこともあるけど、本職のタンクがパーティに加わるとグッと戦いが楽になったもの」

 

 意外と好感触な様子の二人にカズマは少し驚く。とはいえ、彼の直感は期待に満ちた目で見つめてくるこのクルセイダーに嫌な予感をバリバリに感じており――。

 

「ところで! あなたのパーティメンバーたちがドロドロの姿で歩いていたようだが! あれは一体何があったんだ!?」

 

 ずい、と目に危険な光を宿した彼女がそんな質問とともに再び詰め寄り、カズマはもう半歩後ろへ下がった。

 

「はい? えっとあの、それはジャイアントトードに丸呑みに――」

「丸呑みプレイだと!? 何という事、これは想像以上だ……っ! いや、年端もいかない少女までそのような目に遭うとは騎士として見過ごせない! やはり私が――」

 

 目がヤバイ。

 カズマの危機管理センサーは最高潮に達していた。

 

「あー、すまん。ちょっと今パーティメンバーも全員揃ってないし、今日色々あって疲れてるしで……この件は一旦持ち帰り、仲間と相談の上前向きに検討させていただきます……返事はまたの機会に」

 

 考えるのが面倒になった彼は返事から逃げた。

 

 そんなジャパニーズ流やんわりとした断りの言葉を受けたダクネスは少し面食らった様子で、ややバツが悪そうに引き下がる。

 

「……そ、そうか。疲れているなら仕方がない、いきなり押しかけて申し訳なかったな」

「いえいえ、ダクネスさんの冒険者としてのご活躍をお祈り申し上げます……っと、さあ二人とも行こうか!」

 

 そう言って彼女から踵を返したカズマに、ディアンとめぐみんはお互いに顔を見合わせてその後を続く。

 

 未だに宴会芸をしていたアクアはその場に置いて行かれた。

 

 

 

 翌朝――ではなく、カズマが目覚めると既に日は高く登っていた。

 地を這うようないびきをBGMに藁束の中から起き上がった彼は、大きく伸びをして周囲を見渡す。

 アクアは既におらず、彼がいびきの出処を探せば藁に深く埋もれて高いびきをかくディアンの姿があった。

 

「もう昼じゃん……。色々あったし疲れてるのは分かるけど、騎士なのに俺より寝起き悪いのはどうなんだ……おーい、ディアンさん?」

 

 見た目は綺麗なお姉さん、といった感じの彼女の割とだらしない姿にカズマは少々微妙な気分になりつつも、軽く声をかける。

 

「う、う〜ん……あれぇ?」

 

 声に反応して二、三度の身じろぎのあと上体を起こした彼女は、ぼんやりとした目をこすって周囲を見渡した。

 しばし不思議そうにしていた彼女だったが、やがて意識がはっきし始めるとぐっと伸びをして起き上がる。

 

「おはよぉ、カズマくん……」

「おはようってかもう昼だけどな。アクアはもう先に出かけたみたいだぞ。先に顔洗ってくるから、飯行こうぜ」

「りょうか〜い……」

 

 そう言って水場へ向かうカズマの後ろで、ディアンはテキパキと鎧を身に着け始めた。

 

 

 

「遅かったですね。もう先にお昼食べてますよ」

 

 ギルドの酒場へ向かうと、めぐみんがもぐもぐ肉を頬張っていた。

 

「なんか疲れが出たのか寝過ごしたわ。ディアンが俺より寝坊してたのは意外だったけど」

「あはは、私割と朝弱いんだよね。昨日は目覚ましかけ忘れたし」

 

 笑いながらスマートフォンを指し示すディアンに、カズマは現代から持ち込むことができなかったスマホへの未練が蘇る。

 魔力式の彼女のスマホとは違い、どのみちすぐに充電が切れてしまうのではあるが。カズマは頭を振って未練を押し流すと、話題を切り替えることにした。

 

「そういえば、スキルってどうやって覚えるんだ? 冒険者なら色々なスキルを使えるって聞いたけど」

「あ、私も知りたい。スキルを覚えれば私でも魔法使えたりする?」

 

 彼が肉を咀嚼しているめぐみんにそう尋ねると、同じく冒険者であるディアンもそれに乗っかってきた。

 

「冒険者カードに習得可能なスキルが表示されるので、意思を込めてそれに触れれば習得できますよ。冒険者の場合、他の職業の方にスキルの使い方を教わればそれがカードの選択肢に出てくるそうです。具体的には使用するところを見ればいいのだとか」

 

 そんな説明を受けた二人は、自らの冒険者カードを取り出してまじまじと見つめた。

 

「なんつーゲーム的というか、システマチックというか。……じゃあ、俺もポイントさえ貯めればこの爆裂魔法を使えたりするのか?」

「爆裂魔法? 私のカードは花鳥風月ってのしか出てないけど」

「花鳥風月はアクアが宴会芸に使っていたスキルですね……そ ん な こ と よ り!

 

 最後の肉の欠片を一気に飲み込み、めぐみんは勢い良く立ち上がり椅子に足を載せてポーズを取った。

 

「お二人とも、爆裂魔法に興味がおありのようですね!? それはそうでしょうとも、当然の帰結となりましょう、なぜなら爆裂魔法は人類に許された最大最強究極無敵の大ッ魔法なのですから!!!」

 

 いきなり興奮し始めためぐみんにカズマはドン引きし、ディアンは興味深そうに耳を傾けた。

 

「想像してみてください、巨大なドラゴンが敵だとします、足元をチクチク攻撃して倒せると思いますか? 当然、爆裂魔法を顔面に叩き込むのが最適解となります!」

 

 キメ顔で人差し指を立てるめぐみん。

 

「例えば無数の軍勢を相手にしたとき、何をするのが正解でしょうか? それはもちろん、爆裂魔法ですべてを薙ぎ払うのが正解です!」

 

 両手を大きく広げ、天を仰ぐめぐみん。

 

「圧倒的な個を相手にするとき、あるいは多勢に無勢を覆すとき、本当に必要な魔法は爆裂魔法以外にありません! さあお二方、あなた方も我と共に爆裂道を歩もうじゃあありませんかっ!」

 

 力強く力説しながら差し出された手を、カズマは取らない。

 

「いやいや、落ち着けロリっ子。これとんでもねぇポイント要求されんじゃん、俺のポイントカエル1匹倒したときにレベル上がったけど2しかないんだぞ」

 

 彼が冒険者カードを指し示しそう言うと、めぐみんは衝撃を受けた様子で固まっていた。その視線は自らの胸部と、ディアンの鎧に包まれたそこを行き来している。

 

「……ろ、ロリっ子……? 我が、ロリっ子……」

 

 何やら落ち込んだ様子で机に突っ伏してしまっためぐみんに、カズマはディアンと目を見合わせ、肩をすくめてみせた。

 

「はぁ、なんか少ないポイントで習得できる便利なスキルってねぇかなぁ……お得感を感じるくらいの」

 

 机と一体化しためぐみんから顔を逸した彼は深くため息をついた。

 

「ええ、でもそんな超魔法が使えるなら欲しいけどなあ。インヴェーダーの船に一発かましてやれそうだし」

「やめとけやめとけ、魔法超特化型のそこのロリっ子ですら一発撃ったらぶっ倒れるんだぞ。戦士型のディアンやそもそもステータス低い俺が習得しても威力がいまいち出なかったり、最悪『しかしMPが足りない』で不発になるぜ――」

 

 少しワクワクとした様子のディアンに、カズマがそんな現実を叩き付けていると、彼らの座る席に二つの足音が近付いてきた。

 

「探したぞ」

 

 背中にかけられた凛とした聞き覚えのある声に、カズマは思わずぎょっとした。しまった――と思いつつ振り向けば、そこには昨夜の女騎士がもう一人銀髪の女性を伴って立っていた。

 

「疲れは取れただろうか? 昨夜の話の続きをしようじゃないか、私をあなたのパーティに――」

 

 当然の様にそう言って彼らと同じテーブルに座るダクネスに、カズマはやんわりと断った筈なのに伝わってねぇ、と心の中で悪態をつく。こうなれば、と彼は意を決して口を開いた。

 

「お断りします」

「んぁっ!? そ、即断ッ……だと……!?」

 

 直球のお断りに目を見開き、何故か頬を紅潮させて身悶えする彼女にカズマはげんなりとした表情を浮かべた。

 

「ダメだよダクネス、あんまり強引に迫っちゃ」

 

 何故か嬉しそうに悶える彼女にカズマがドン引きしていると後ろから銀髪の女性が笑いながら歩み寄って来る。

 鎧を着込んだダクネスとは対照的に、彼女は非常に軽装であった。

 申し訳程度に胸部を覆ったインナーの上から緑のポンチョを羽織った彼女は、身体付きもまた肉付きの良いダクネスとは真逆のスレンダーな体型をしている。

 

「ごめんね、ダクネスってば普段はいい子なんだけど時々変なスイッチ入っちゃうんだよねぇ……あ、私はクリス。この子の友達で、見ての通りの盗賊職だよ」

 

 よろしくね、と差し伸べられた手を握りながら、カズマは「金髪巨乳の女騎士と銀髪貧乳の女盗賊とかすごい対照的なコンビだな」と少々失礼なことを思い浮かべていた。

 

「君たちの事はダクネスから聞いてるよ。冒険者職なんだって?」

「ああ、はい。何かいいスキルを覚えられないかなーってちょうど話してたところでして……」

 

 この人は話がちゃんと通じそうだな、と内心ほっとしつつ、彼は期待を込めてそう言った。

 

「それなら、盗賊系スキルはどうかな? 習得に必要なポイントが少ない割に、冒険に役立つものが多いからオススメだよ!」

「へぇー! 確かに、盗賊系って忍び足とか罠外しとかそういうの覚えられそうなイメージがあるもんな」

 

 カズマがかつて遊んだロールプレイングゲームでの知識を元にそう言うと、クリスはニッと笑って親指を立てた。

 

「ご名答! そういう便利スキルを、今ならシュワシュワと何かおつまみを奢ってくれたらお二人さんにスキルを教えて進ぜよう!」

「安いな、よし乗った! すみませーん、この人にキンキンに冷えたクリムゾンビアと、おすすめのおつまみを!」

 

 

 

「さて、盗賊スキルなんだけど。まずは……」

 

 食事を終えたカズマたちはスキルを教えてくれるというクリスと向き合っていた。

 一体どんなスキルを教えてくれるのかと期待していると――。

 

「あれっ、クリスどこいった?」

「えっ、今まで目の前に居たよね?」

 

 気付けば目の前にダクネスと並んで立っていた筈のクリスの姿が消えていた。カズマとディアンがキョロキョロと見渡していると。

 

「――これが、潜伏スキルだよ」

「うおっ!?」

 

 背後から聞こえた楽しそうな声にカズマが驚いて振り返る。

 

「うんうん、潜伏が解けるのとほぼ同時に迎撃態勢に入られるとはちょっと予想外。……ちょうど良く、敵意感知も発動できたね」

 

 カズマがクリスの視線の先を追うと、隣ではディアンが剣の柄に手を掛けたまま目を丸くしていた。

 

「ふぅーっ……いきなり後ろを取られたから、てっきりそのまま釘バットが飛んでくるかと思って焦っちゃったよ」

「いや釘バットて、何に警戒してんだよ……」

 

 降参とばかりに両手を上げておどけるクリスの姿に、ディアンはホッとした様子で剣から手を離す。

 

「あはは、びっくりさせてごめんね? さて敵意感知に続けて罠看破やお宝感知みたいなのも教えてあげたいところだけど、この辺のパッシブスキルはここじゃ発動条件満たせないからまた今度かな」 

 

 彼女はそう言うと、準備運動とばかりにグリグリと肩を回し始め。

 

「さて、今から教えるのは個人的に一番のオススメだよ! 次は相手から持ち物を奪うスキルの……【窃盗(スティール)】!」

 

 クリスがそう声を上げて手のひらをカズマに突き出すと、その手の中に突然光の塊が現れる。彼女はそれを握り込むと、二人に見せるように手のひらを広げて見せた。

 

「……あっ、俺の財布!?」

 

 その手の中にあるもの――中身の詰まった小さな巾着袋に見覚えがあったカズマは慌ててポケットの中身をひっくり返すが、やはり見つからない。その様子にクリスは得意げに笑う。

 

「そう、スティールはこんな風に手も触れずに相手の持ち物を奪いとる事ができるんだ。運が良ければ武器を盗んで無力化できたりもするし、色々と応用も効くよ」

「うおお……分かりやすく凄え。ええと、カードの項目から選んでタップすりゃいいんだったかな?」

 

 スキルをいたく気に入った様子のカズマは、その場で冒険者カードを取り出して【窃盗(スティール)】の項目を指で触れる――するとカードから眩い光があふれ出し、彼の体へと吸い込まれていった。

 

「おお……これで、習得出来たのか?」

「へぇー、そんな風に習得するんだ……。あ、ねぇねぇ、ちょっとそれ私に使ってみてよ!」

「え、窃盗スキルをか?」

「うん、食らったときの感触がどんな感じなのかなって」

 

 興味津々な様子でカズマの手元を覗き込んでいたディアンが両手を広げてそんな事を言い出した。

 カズマは少し考えてから先程見たように彼女に向けて手を伸ばし。

 

「それじゃ、いくぞー。……【窃盗(スティール)】!」

 

 カズマの手の中に光が生まれ、次の瞬間にはずっしりとした重みが彼の手の中へと飛び込んできた。

 

「うおっ、あっぶね!?」

 

 彼は思わずそれを取り落としそうになり、慌てて両手で持ち直す。

 

「うわっ、ほんとにいきなり消えるんだ。これはどうやって抵抗すればいいんだろう……あ、私の本体返してー」

「本体って……これが?」

 

 手を伸ばすディアンに彼が首を傾げながら兜を差し出すと彼女はそれを素早く被り直した。

 

「久し振りに会った人に兜脱いで話し掛けたら私だって気付いて貰えない事がよくあるんだ。だからそれが私の本体!」

「なにそれ悲しい。……っと、教えてくれてありがとなクリス。俺の財布返して貰える?」

 

 カズマがそう言って手を出すと、クリスは不敵な笑みを浮かべた。

 

「初めてスキルを成功した記念、って事で、私と賭けをしない?」

「……賭け?」

 

 彼が首を傾げるとクリスは腰に結び付けた短剣を指し示した。

 

「そう、君は窃盗スキルを私に一度使う……それで得られた物をプレゼントしようじゃないか。失敗すれば君は財布を失うけど、運が良ければこの40万エリス相当のマジックダガーが手に入るよ! どう?」

「おお……! それは美味しいな、よし、乗った!」

 

 財布には数万エリスしか入っておらず、もしダガーを引き当てれば大儲けである。彼が早速窃盗を仕掛けようと腕まくりをすると、クリスはくつくつと笑いながら手を広げる。

 

 その手のひらには手頃な石がいくつか握られており……その意味を察したカズマが冷や汗を垂らした。

 

「ふふ、そう簡単に行くかなあ?」

「おい、それは少々酷なのではないか?」

 

 後ろで見ていたダクネスが、クリスの仕掛けた後出しの仕掛けに対して抗議の声を上げる。しかし、カズマはそれに首を横に振る。

 

「これも勉強代だと思って納得するぜ、それに当たりが抜かれてないってだけでも良心的だしな……って事で、【窃盗(スティール)】!!」

 

 彼は気合とともに手を伸ばし、二度目の窃盗を発動する。手の中に現れた光に彼は手応えを感じ――。

 

「――ひゃっ!?」

 

 目の前で妙な声を上げたクリスと、何より握ったものの軽い感触に彼は首を傾げた。

 そして、何を取ったのか手の中の物を広げてみせる。

 

 ――そして。

 

「これは……当たりも当たり、大当たりだああああっ!!」

 

 白く柔らかな三角形を天に掲げ、咆哮した。

 

「いやあああああああっ、パンツ返してええええええ!!!」

 

 ズボンを手で抑え、想定外の羞恥に悲鳴を上げるクリスの目の前でカズマは興奮のまま純白のパンツを振り回す。

 

「っぷ、あっはっはっはっは!!!」

「笑ってないでアナタも説得してよおおおおおお!!!」

 

 状況を見守っていたディアンはそんな喜劇的な光景に思わず吹き出し、静かだった路地裏は一転、悲鳴と咆哮と爆笑の三重奏が響きわたった。

 

 


 

 

「浮遊城まで御足労頂き、感謝します。アイシャ殿下」

「そう畏まらずともよい、カンタベリーの騎士よ。此度は我が国の宰相の判断でそちらの国民には悪い事をしてしまった」

 

 ディアンの失踪から二週間近くが経過した今。

 カンタベリーとラー帝国両国による同盟の調印はつつがなく執り行われ、浮遊城を訪れた使節団は浮遊城を物珍しげに見渡している。

 

 私の後ろで不安げに控えていた姫様の様子に耐えかねて、私はようやく重い口を開いた。

 

「我々が派遣していた騎士(ディアン)の件ですが……」

「……うむ、我々も全力を尽くしたつもりではあるが、残念ながら見つける事はかなわなかった。代わりに見つかったのが」

 

 アイシャ殿下が帝国の兵に目配せをすると、ディアンに同行していたマリアンたちが沈んだ顔で歩いてきた。

 その先頭に立つ、泣き腫らした目をしたサキュバス族の女性――ディアンの相棒であるユズが布に包まれた長物を抱えてこちらへ歩いてくる。

 

 ユズは姫様の姿を視界に入れた瞬間、そのつぶらな瞳から大粒の涙をポロポロと溢した。

 

「姫様ぁ……相棒が、ディアちゃんがぁっ……!!」

「きっと、ディアは大丈夫……だから、泣かないで、ユズ」

 

 姫様はその場にしゃがみこんだユズをそっと抱きしめると、包みを開けるように促した。ユズはしゃくりあげながらも頷き、テーブルの上にその包みを広げた。

 

「…………っ!!」

 

 テーブルの上で顕になったそれに、散々覚悟を決めていた私達は息を呑んだ。姫様の目にじわりと涙が浮かぶのを見て、私の胸は張り裂けそうなほどに強く傷んだ。

 

「これらが、観光区へと続く路地の一角に落ちていた。特にこちらは姫君と団長殿しか実物を見たことが無いと聞くが……どうだ?」

「……ええ、どちらも、間違いないと思われます」

 

 テーブルの上で鈍く輝く一振りの剣は、かつて姫様がディアンに下賜した名剣“リベラ”そのものであった。激しい戦闘を物語るように大きく刃こぼれしたそれを、私は直視しかねていた。

 

 そして、それと並べられたもうひとつは――黒く捩れた一本の角。

 

 あの日私達が対峙し、太刀打ちできなかったインヴェーダーの首領と目されている“ダーク・メイガス”のそれであった。

 

「敵は恐らく、彼女が孤立する瞬間を虎視眈々と狙っていたのであろう」

 

 ぽつりと、アイシャ殿下は呟く。

 

「彼女は……ディアは、間違いなく特別な星の下に生まれた騎士だ。奴らが目の敵にする理由が何となく私にも見える」

「……ええ、我々も彼女が特別であると感じています」

 

 今の状況を作ったのは、他ならぬディアンだ。彼女がいなければ、現状はもっと悪くなっていたに違いない。

 アイシャ殿下はリベラの欠けた刃に手を這わせると、目を伏せた。

 

「もし、彼女が喪われたのであれば――」

「――ディアは生きてるもん!」

 

 言葉を遮るように破裂した姫様の声に、私と殿下は顔を上げた。

 視線の先には、目に一杯涙を貯めた姫様が拳を強く握り締めている姿があった。

 

「あの時電話でエールをありがとうって、すぐに戻るって、言ってたもん……! ディアは、一度も約束を破った事がないんだからぁ!」

 

 ぽたり、ぽたりとカーペットへ落ちる雫を前に、私達は言葉を失った。私は、心の中では、もう、彼女の生存を諦めていた――しかし、姫様は、まだ信じているのだ。

 アイシャ殿下は、姫様の前に歩み寄ると口元に笑みを浮かべた。

 

「そう、だな。彼女の強さは私もよく知っている……何より、彼女の亡骸を見た訳ではないのだから……希望はまだ失われていない」 

 

 殿下は立ち上がると、表情を引き締めた。

 

「大規模に、とは行かないが。我々も引き続き彼女の捜索を続けようと思う。彼女は我々にとっても、インヴェーダーどもの間者を排除する要因となった英雄の一人だからな」

「……ありがとう、ございます」

 

 帰国するラー帝国の一団を見送り、私達もまたディアンを見つけ出す事を強く決意したのだった。




・最初から興奮状態のダクネス
既に女騎士が餌食になっている=自分と重ねて既にハッスル。

・寝起きの悪い騎士ちゃん
イベントで眠って大いびきかいて、起きたら一緒にいた人がいない……な印象がある騎士ちゃん。
でも起きるときはぱっと飛び起きてすぐ活動できる。

・兜が本体
兜をつけてない騎士ちゃんは騎士ちゃんじゃない(暴論)
過去に送るのも兜だし、幻影で出てくる幼児騎士ちゃんも兜はコレ。つまり、騎士ちゃん=兜。兜が騎士ちゃんの本体。
初期兜が好きなので★5騎士ちゃんのコスはJK騎士ちゃん固定。進化前をコスとして無料配布して欲しい、100石までなら出すから。

・ユズ
サキュバスの冒険家にして、騎士ちゃんの相棒。
新規プレイヤーにコスチュームと共に配布され、苦楽を共にした愛着あるプレイヤーも多いであろうキャラ。
騎士ちゃんと共にサキュバスカフェを経営したり、騎士ちゃんとの冒険の様子をストーカー(SSR)に見守られたりと固有イベントも多い。
それを逆手に取る形で10章でプレイヤーに強烈な印象を残した。
ライターは人の心とかないんか?
・アイシャ
スチパン世界なラー帝国の第七皇女。
インヴェーダーと繋がった宰相がカンタベリー難民を強制収容&強制労働させていた所を持てる権限を使って騎士ちゃんを現場監督に取り立てたりしてホワイトな労働環境へとカイゼンした。
基本的に宰相より立場が弱いらしいけど、インヴェーダーとの繋がりを暴き、意を決して叛旗を翻しカンタベリーとの同盟まで持っていってくれた人……だけどプレイヤーからの印象は「カイゼンより開放しろよ」になりがち。

・ダークメイガス
プロローグでカンタベリーの王宮を直接襲撃してエヴァ団長とチビ姫様の姉のカミラ女王を撃墜し離れ離れにしたり、9章で騎士ちゃんを時空の狭間に追放したりと大暴れしているガーディアンテイルズ第一シーズンのラスボス。
原作よりもかなり頑張った騎士ちゃん、属性相性悪いのに。
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