このヘラヘラ騎士の寄り道にも祝福を!   作:名無しのガーディアン

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ギリギリにならないとエンジンかからない癖を何とかしたいなぁ(書き上がったの投稿の5時間前)

これでChapter1は終了になります、章題でもつけようかな?
このすばアニメでやった範囲のある程度まで駆け抜けたら、10年後の浮遊城へ突入する予定です

地味に“ここ好き”してくれた方がいらっしゃったようで驚きました、面白い機能なんですけどあまり使う人居ないんですよね
ここ好きも感想もどんどんお待ちしております、特に感想は全返信しますので!


01-5 :女騎士、異世界で必殺技を編み出す

「二人ともやっと帰ってきた。んもー、スキルなんていつでも覚えられるのに、私の華麗な宴会芸を見ないなんて短い人生の大損失よ?」

 

 ギルドの入り口に見えた人影に気づき、カウンター席で水を飲んでいたアクアが立ち上がる。

 

「二人ともスキルは覚えられましたか……って、何があったんです? ディアがなんかお腹抑えてる上、盗賊の人が泣いてるんですが」

 

 めぐみんは帰ってきたカズマに胡乱げな視線を向けた。

というのも、二人にスキルを教えてくれると言っていた銀髪の盗賊女性――クリスがぐすぐすと泣いているからだ。

 なお、ディアンが腹を抑えているのは笑い過ぎただけである。

 

「ななななにが俺がやったって証拠だよ!?」

「その挙動不審な所ですがなにか。それで、一体何があったんです?」

 

 目を泳がせしどろもどろになるカズマからめぐみんが横に視線をずらすと、頬を紅潮させたダクネスが妙に緩んだ表情で頷く。

 

「うむ! クリスは盗賊スキルを教える際、彼女はこの男からパンツをはぎ取られた上、有り金全てをむしり取られて落ち込んでいるのだ。……なんたる鬼畜の所業、私の目に狂いはなかった!」

「うわ。」「ないわー」

 

 熱を帯びた彼女が語るそんな説明に、めぐみんとアクアが白い目を向け、周囲の視線の温度も急激に下がりカズマは冷や汗をかく。

 

「ス、窃盗(スティール)のスキルを教えて貰う時ちょっとした賭けをしてだな? 俺の財布を持つクリスにスキルを使って、取れたものをくれるっていう流れで、たまたまパンツを引き当てちゃって――」

「うう、ぐすっ……サイフ返すからパンツ返して、って言ったのに。それじゃ駄目だって、自分のパンツの価値は自分で決めろって、“さもなくばこのパンツは俺の家宝となり永久に奉られると思え”って」

 

「鬼畜男……」「ほら、昨日のヌメヌメプレイの……」

 

「ち、違うんです! いや確かに言ったけどただちょっと初めてのスキルに興奮し過ぎただけでしてェ!!」

 

 カズマがそう言って必死に弁解するも、あまり言い訳になっておらず周囲の視線は冷たい。ダクネスの後ろで彼女たちだけに分かるように舌を出すクリスにめぐみんは思わず大きくため息をついた。

 

「それで、二人は無事にスキルを覚えられたのですか?」

 

 そんな彼女からの助け舟にカズマはぱっと顔を上げる。

 

「お、おう、それはもちろん! 見てろ……【窃盗(スティール)】!!」

 

 カズマは腕まくりをし、何を思ったのかめぐみんへ向けて手を突き出した。手の中に光の塊が現れ、成功を確信した彼はそれを握り込む。

 

「こうやって、相手の持ち物をランダムに、奪う、スキル……」

 

 手の中に収まった感触に、彼の言葉は徐々に力を失い、やがては冷や汗を顔いっぱいにかきながらだまり込んでしまった。

 そして相対するめぐみんもまた、顔が徐々に赤く染まってゆく。

 

「あ、あ、あれ……おかしいな? 奪える対象はランダム――」

 

 カズマが恐る恐る握った物を広げると――それは、めぐみんが着けるにしてはやや大人っぽくもある黒い下着であった。

 後ろで見ていたディアンが込み上げて来る笑いに耐えきれず、痙攣しながらその場に崩れ落ちた。

 

「んふっ、だ、駄目お腹痛い……ひっひ!」

「何なんですか、カズマはレベルが上がって冒険者から変態にジョブチェンジでもしたんですか……? あとディアは笑い過ぎです」

 

 早く返せと彼女が伸ばした手がカズマの持つ薄い布を奪い取る横で、脇腹を抑えながらヨロヨロとディアンが立ち上がる。

 

「ご、ごめんごめん。だってパンツばっかり取れるなんて、“盗賊”スキルじゃなくて下着泥棒だなって思ったらおっかしくて……」

 

「その理論だとお前今パンツ被ってるって事になるの忘れんなよ」

「ええっ!?」

 

 彼の言葉にショックを受けた表情でディアンは兜に手を当てた。

 

 

「こ、公衆の面前でこんな幼げな少女の下着を剥ぐなど、真の鬼畜! こ、これはやはり私がパーティに入り見張る必要があるな!」

「女騎士はもう間に合ってます」

 

 鼻息荒くパーティ加入を迫るダクネスに“No Thank you”を手で示すカズマの姿に、アクアは首を傾げる。

 

「ねえカズマ、その人クルセイダーなんでしょ? 欲しかった前衛の上級職なんだし、断る理由は無いんじゃないかしら」

 

 そんな彼女の感想に彼は“まずい”と焦りを膨らませた。

 めぐみんやディアンもダクネスの加入に肯定的であり、今の所難色を示しているのはカズマ一人である。いくら名目上パーティリーダーであるとはいえ、他の全員と意見を違えて押し通る訳にもいかない。

 

 彼はテーブルに両肘を置いて手を組んで深くため息を吐くと、表情を可能な限り引き締めて口を開いた。

 

「ダクネス、君に聞いて欲しい事がある。とある理由から、俺とアクアはこうみえて本気で魔王討伐を目指しているんだ」

 

 真剣な目でそう宣言したカズマとその隣で肯定するように頷いたアクアに対し、一同は意外そうな声を漏らす。

 

「この先、俺達の冒険は更に過酷なものになるだろう。特にダクネス、防御力が高いだけで攻撃が当たらないなんて、すぐ魔王軍に捕まるぞ。囚われの女騎士なんて、口に出せないような目に遭う役どころだろ」

 

 彼の言葉に深い同意を示すようにダクネスは頷いた。

 

「当然期待している。捕まってエロい目に遭わされるのは昔から女騎士の仕事だと相場は決まっているからな。それだけで行く価値はある」

「は?」「えっ、なにそれしらない」

 

「……何かおかしなことを言ったか? あなたも女騎士であるなら当然の期待、もとい覚悟の上なのだろう?」

「えっ、なにそれこわい」

 

 ダクネスの口走った言葉にもう一人の女騎士も困惑した。

 唖然としていたカズマは首を振り、聞かなかった事にする。

 

「相手は魔王、この世界全てを相手にする最強の化物だ……そんな奴を相手に喧嘩売ろうって俺達に無理して付き合う事もないんだぞ! めぐみんも、この若さで命を捨てる旅に付き合う必要は――」

 

 彼がついでとばかりにめぐみんにも脅しをかけると、彼女はテーブルを強く叩き立ち上がり、椅子に足を掛けて杖を掲げた。

 

「我が名はめぐみん! 紅魔族随一の魔法使いにして、爆裂魔法を操りし者! 最強を名乗る魔王と相見えるならばそれは本望、我が究極の破壊の力で我こそが最強であると証明して見せましょう!」

 

(駄目だ、駄目な子に限ってやる気が凄い……!)

 

 カズマが頭を抱えて居ると、隣に座るアクアが不安げな表情で彼の服をくいくいと引っ張った。

 

「ねぇカズマ、今の話聞いてたらちょっと腰が引けてきたんですけど……魔王討伐以外に何かもっと楽な方法ってない?」

「お前は一番やる気を出せ? お前ん所のルールだろうが」

 

 何一つ思い通りにならないカズマはがっくりと肩を落とした。

 

「魔王軍、この世界におけるインヴェーダーかぁ。困ってる人は見過ごせないし、帰る手段が見つかるまでは私も手伝うよ」

「……あなただけが頼りです、マジで」

 

 変わらぬ笑顔でそう言ってのけるディアンがこの上なく頼もしく感じたカズマであった。

 

 

〘緊急クエスト! 緊急クエスト! 冒険者客員は至急正門へ集まってください! 繰り返します――〙

 

 けたたましい鐘の音と、拡声魔導具からの声が街中に響き渡る。

 食堂にいた冒険者たちが揃って支度をするのを見て、カズマたちも顔を見合わせて立ち上がった。

 

「何だ何だこの騒ぎ……魔王軍でも攻めてきたのか!?」

 

 正門へ向かう道すがら、町の人々が慌ただしく建物の中へと引っ込んでいく様子に、カズマは緊張した面持ちを浮かべる。

 

「いえ、この時期ですと多分……あ、もう正門は人でいっぱいですね」

 

 めぐみんの言葉通り、集合場所である正門にはアクセル中の冒険者たちが物々しく武装して空を見上げていた。

 その一団に加わったカズマが他の冒険者たちの見る方角へ目を凝らしていると、何やら緑色の霞のようなものが近づいてきている。

 

「モンスターの群れ……街を襲うつもりか!?」

 

 迫りくる無数の点にカズマは思わず生唾を飲み込む。

 

「あちゃあ、ガトリングのチャージまだ終わってないんだけどなー」

 

 そう言いながらもポーチを叩いて古びた剣を取り出し構えるディアン。装備に不安があっても街の危機への戦意を燃やすその姿にカズマは頼もしさを感じ、自身も短剣を握りしめた。

 

 そんな二人の後ろに、大きな籠を持ったアクアがやって来る。

 

「あれ、言ってなかったっけ? キャベツよ、キャベツ」

「……は?」「……え?」

 

 目を点にする二人に、アクアは背負い紐の付いた籠を押し付ける。

 キャベツ? 何だこの籠、と困惑する二人を置き去りにするように、周囲の冒険者たちは気合を入れ始めていた。

 

 緑色の霞はその間にもどんどん距離を詰めており、やがてはその輪郭が彼らの目にも見えてきた。緑色の丸い何かが飛んでいる。

 

キャベ、キャベ、キャベーッ!

 

 鳴き声すら上げるそれは、どこからどう見てもキャベツが群れを成して空を飛んでいるとしか表現できなかった。

 

「なにあれーっ!?」

 

 大抵の事には動じなさそうなディアンが、目を皿のようにしてあんぐりと口を開けて驚愕する。それも無理のない事だと、カズマは目の前の不条理に天を仰いだ。

 

「この世界の野菜は活動的なの。特にキャベツは収穫期が迫ると栄養の濃縮された体で飛び立ち、草原を抜け、海を超え、人しれぬ秘境の彼方で朽ち果ててゆくの。それを、こうして捕まえて食べちゃおうって訳なのよ」

 

「なんだそれ、意味わからん」

「……ピーマンもこんな風に街を襲うのかな」

 

 アクアの解説に、異邦人たるカズマとディアンは宇宙の真理を脳内に叩き込まれた猫のような表情を浮かべる。

 アタック・オブ・ザ・キラー・ピーマンなる謎の単語をつぶやくディアンの背後から、ギルド職員が声を張り上げた。

 

「今年のキャベツは出来がいいようなので、一玉一万エリスで引き取ります! じゃんじゃん捕まえちゃって下さいねー!」

 

「「「「「うおおおおおお――っ!!!」」」」」

 

 気合十分に駆け出す冒険者たちとの温度差に、カズマは風邪を引きそうな気分となった。

 

「危ないッ!」

 

 そんなカズマの前に、黄色い影が躍り出る。何事かと思うのと同時に鉄板を叩くような音が響き、彼の前には目を回したキャベツが落ちてきた。

 

「無事か? 私の後ろに隠れているといい」

「あっ、ああ……」

 

 笑顔を見せるダクネスに、カズマは不覚にもキュンとした。

 

「こりゃ町の人も引っ込む訳だ……そういやキャベツって重いもんな、この勢いでぶつかったら普通にあぶねぇわ」

 

 周囲で冒険者たちとぶつかり合うキャベツの群れに、カズマは密かに戦慄する。その目の前でダクネスは大剣を抜き放つ。

 

「……いい機会だ、今こそあなたにクルセイダーとしての私の力を見せてやろう。やあああああっ!」

「え? おい、待っ――危なっ!」

 

 壁が消えて飛んできたキャベツを避けたカズマが止める間もなく、ダクネスは叫びながらキャベツの群れへと吶喊(とっかん)する。

 群れ成し飛び交う緑色の弾丸へと、暴風を伴って振るわれる大剣はただの一度もその身を捉えることがない。

 

「逆にすげぇ、あんなに一杯居るのに掠りもしねぇ……って」

 

 感心すらしながらダクネスを眺めていると、彼女は緑色の砲弾幕に晒されて悲鳴を上げていた。慌てたカズマが助けに行こうとすると。

 

んあっ!♡ ぐうっん!♡ ……なんたる衝撃、こんな危険に皆を晒すわけにはいかなイィん♡ 騎士として、皆の盾にぃんあっ♡

 

(なんか悦んでらっしゃる――――ッ!?)

 

 明らかに嬌声を上げているダクネスに彼は確信する。騎士道云々は建前でコイツはただのマゾなのだ、と。

 

「って、うおっ!?」

 

 いつの間にかカズマの顔面コースへ迫っていたキャベツが、横から来たディアンによって切り払われる。

 

「余所見してたら危ないよ?」

「あ、ああ……すまん助かった」

 

 汗を拭い剣を握るディアンの姿に、彼は本物の騎士はカッコイイなぁと頭の中からドM騎士道を消し去った。

 

「……ふーっ、武器を新調したいなぁ。この剣じゃ切れ味悪いしリーチも短いし。何かいい武器があればいいんだけど」

「あー、それ凄いボロボロだしな。俺のを貸したいところだけど、長さ自体はそっちの剣のほうがまだあるんだよなあ」

 

 古びた剣にため息をつくディアンに、彼は準備不足を痛感する。

 

 せめて明日なら、クリスから貰った(身ぐるみ剥いだ)お金でメイン戦力たるディアンの装備だけでも整えられたのに。とカズマが思っていると、当の彼女はダクネスを見て何かを思案している。

 

んああっ!♡ ……もっとだ、もっと強く! もっと激しく! ぶつかってこおおおおい!!!」

キャ、キャベ……?!』『キャベェェ……!!

 

(……同じ騎士としてあんなのが居たらそりゃ嫌だよな)

 

 既に剣を捨てノーガード状態のドMクルセイダーの姿にカズマがディアンの内心を推し量る間に、彼女はダクネスへ駆け寄った。

 

「ねぇダクネス! ちょっと提案があるんだけど……」

 

 

「前言撤回、騎士道とか糞くらえだわ。何やってんだあいつら」

 

 カズマは目の前で繰り広げられる光景に「もう帰って寝たい」と軽く現実逃避を始めていた。それもそのはず。

 

「ガーディアンッ、ハリケェェェエン!!!!」

 

「おほおぉぉおおお!!!!♡ しゅごい、しゅごいのおおお!!♡」

 

 ダクネスの足首を握ったディアンは、そのままぐるぐると回転しながら人間竜巻へと変わっていた。

 

 いわゆるジャイアントスイングというよりまるでハンマー投げのような動きを見せる彼女の怪力にカズマはドン引きしつつも、その回転に巻き込まれ墜落して気絶してゆく無数のキャベツをいそいそと拾い集めてゆく。

 

「ダクネス、まだ行ける!?」

「まだまだいけるぞ!♡ もっとだ、もっと速くやってくれ!♡」

 

「オッケー! いくよーっ!」

「んほおおおおおおお!!!!♡ ディアンしゅごい!♡ こんにゃの初めへぇええええ!!!♡」

キャベェェェエッ!??!?

 

 回るディアン、廻るダクネス。巻き込まれるキャベツ。

 

 この異世界を象徴するような珍妙極まる光景に、カズマはげっそりとした。

 

「お、おい、アレヤバくないか」「あれは紅魔の頭のおかしい――」

 

「もうヤダこの異世界……あれ?」

 

 周囲のどよめく声に振り返ると、魔力の渦を纏っためぐみんがキャベツの群れへと向けて杖を構えていた。

 

「光に覆われし漆黒よ、夜を纏いし爆炎よ。紅魔の名のもとに原初の崩壊を顕現す――」

 

「おい待てめぐみん何やってんだ!? やめろォ!!」

 

 おもむろに爆裂魔法の詠唱を開始している彼女の姿に、カズマは慌てて声を張り上げる。

 しかしめぐみんはその制止には応えず、不敵な笑みを返した。

 

「いやいやいや何笑ってんの!? この状況で撃ったら――!!」

 

「終焉の王国の地に、力の根源を隠匿せし者。我が前に統べよ!」

 

 膨大な魔力が彼女の杖先へと収束する。周囲の冒険者たちの危機感知力も()る者で、既に退避を始めていた。

 

 例外と言えば――。

 

「だ、ダクネスーっ、そろそろいいかな!?」

「ま、まだだ!♡ もっとこれを味わっていたい!!♡」

 

 やや切羽詰まった様子で伺いを立てるディアンに、続行を要請するダクネス。

 

「そんなこと言ってもそろそろ手が――あっ!」

 

んぁあああああああああああっ!?!?♡」

 

 ズルっ。ついにディアンのてが滑り、ダクネスの身体は()()()()()()()へと撃ち出された砲弾のように飛んでゆく。

 

 呆然とそれを見送るディアンとカズマ。そして――。

 

「エクスプロージョンッッッッ!!!!」

 

 凶悪なまでの漆黒の魔力本流がめぐみんの持つ杖から放出される。周囲に反動の暴風を撒き散らしながら、爆裂魔法は()()()()()()()へと真っ直ぐに直進してゆき。

 

ぉおおっ!?♡♡♡♡」

 

 その群れへと生身で吶喊するダクネスへと直撃し、アクセル校外の空へ大輪の華を咲かせた。

 

「……汚ねぇ花火だ」

 

 カズマの口から呆然と漏れた無意識の一言が辺りに響いた。

 

 

「流石クルセイダーね、あなたの鉄壁の防御には無数のキャベツたちも攻めあぐねていたわ!」

 

 臨時報酬を得ることとなった冒険者たちでいつも以上に賑わうギルド酒場にて、アクアは興奮したように言った。

 

「ふっ、私など、硬いだけの女だ。それを最大限に活かしてくれたディアンこそ、素晴らしい騎士だったと思うぞ?」

「そうですそうです、二人の騎士が互いの力を合わせたど派手な必殺技! あれを見て、私も負けてはいられないと思いました!」

 

(爆裂魔法飛んできたのは半分あいつらのせいか……)

 

 妙につやつやとしたダクネスと、楽しそうに語るめぐみんを見ながらカズマはやたらと旨いキャベツ炒めをもそもそと食べていた。

 

「あはは、楽しかったねぇ! でも手を離しちゃってごめんね」

「いいや、あれはまさに神憑り的なタイミングだった。まさかこの身に爆裂魔法の直撃を味わうことができるとは……!」

 

「アレに直撃して生きてたのはちょっと人間としてどうかと思う」

 

 爆裂魔法の直撃を受け花火となった彼女に、「これは死んだな」と正気になって青褪めたカズマであったがどっこい生きていた。

 それどころかアクアの治癒魔法を受けたとはいえ、元気に夕食を共にするダクネスのタフネスに彼は驚きを通り越し少し引いていた。

 

「アクアさんの魔法も大活躍だったよねー! 傷付いた冒険者を癒やしたり、捕えたキャベツを魔法の冷水で鮮度を保ったり」

「カズマも潜伏スキルで潜みつつ、油断したキャベツを窃盗(スティール)で捕まえて凄かったわ! よっ、華麗なるキャベツ泥棒!」

「カッコつけた畑荒らしみたいな呼び名やめてくれる!?」

 

 やんややんやと騒がしい夕食の席で、アクアが笑う。

 

「しっかし、私達のパーティも中々豪華な顔ぶれが揃ったわよねー! 後衛はアークプリーストの私にアークウィザードのめぐみん、前衛にクルセイダーのダクネスと冒険者にして異世界の騎士ディアン! こんな充実した駆け出しパーティはそう居ないわ!」

「錚々たるメンツです、これは魔王討伐も夢じゃありません!」

 

 笑い合う面々を眺めて、カズマは深くため息をついた。

 

(アホ女神に一発屋魔法使い、攻撃が当たらないドMクルセイダー)

 

 彼はまともな運用ができそうにない三人を順に見やり、最後にクリムゾンビアをあおりながら笑うディアンへと目を向ける。

 

(唯一まともだと思ってたけど、よく考えたら馬車に飛び込もうとしたりしてたよな。いつもヘラヘラしてて何するかわからん異世界の騎士が唯一の戦力かぁ……)

 

 こんな状況で魔王討伐なんて本当にできるのかと、カズマは強い不安を覚えずにはいられなかった。

 

 


 

 その日、私達は浮遊城の一角にある森の奥へと入り込んでいた。

 仲間の息遣いと草木を踏みしめる音だけが響く静寂の中で、不意に横から小さな悲鳴と鈍い音が聞こえてくる。

 振り向けば、横を歩いていた姫様が蹲っていた。

 

「姫様!」

「だ、大丈夫ですか!?」

 

 私たちは木の根に足をとられて転んだ姫様を慌てて助け起こす。

 同行していたメイが確認したところ、膝を擦りむいてしまっているらしくかわいらしい膝小僧からはじわりと血が滲んでいた。

 私は取り出した水筒の水で傷口を洗い、清潔な布を巻きつける。痛みに顔をしかめる姫様に、私は背を見せてしゃがみこんだ。

 

「私が背負います、さあ姫様……」

 

 しかし、姫様は小さく首を振ると自分の足で立ち上がる。

 

「……大丈、夫! 行こう、エヴァ」

「わかり、ました」

 

 私達は姫様へより気を配りながら、そのまま森を進んだ。

 やがて、森は開けて小さな広場のような場所へと出る。

 

 広場の中心には大きな岩が埋まっており、その上には――。

 

「――――――」

 

 岩の上に静かに座して瞑想するその少女の姿に思わず息を呑む。

 白を基調とした衣を身に纏ったその少女の背からは、金色の毛並み豊かな八本の尾が風になびいていた。私は意を決して口を開く。

 

「――お久しぶりです、仙人ナリ様」

 

 私の言葉に、少女――仙人様はゆっくりと目を開ける。

 

 ――狐の仙人、ナリ様。

 いつだったか、ふらりと単独行動に出たディアンが連れ帰ったのが彼女だった。

 見た目は幼い少女だがその実情は悠久の時を生きた、仙人と呼ばれる神にも近い存在だという。実際、時を超えたり姿を変えたりといった凄まじい力を使ったのだとか。

 

 浮遊城を訪れてからはこうして自然の中で修行を行う他、変化して子供たちに混じって遊ぶ姿を見かけたりするくらいだが……。

 

 あまり力を貸してくれないと思うとは実際に接してきたディアンの言葉だが、今は藁にもすがりたい思いだった。

 

「あれれー? ニンゲンのみなさん、お呼びですかぁ?」

 

 想像よりずっと当たりの良い、にこやかな笑みすら浮かべるナリ様に、私は少し拍子抜けする。ふわりと岩の上を飛び立ち、音もなく地面へ降り立った彼女を前に私達は静かに跪いて頭を垂れた。

 そんな私達に対して、ナリ様は少し感心したように息をもらした。

 

「……ふぅん、ニンゲンにしては礼儀正しいじゃん。浮遊城の森にも獣は居るのに、非武装出来るなんて不用心じゃなーい?」

「仙人様に失礼があってはなりませんから。それにそちらのメイは武林武術の達人です、そこらの獣程度であれば危険はありません」

 

「ま、いいや。苦しゅうない、(おもて)を上げーぃ」

 

 (おど)けたように出された許しに、私達は顔を上げる。

 

「で、この狐の仙人様に何の御用?」

 

 ……おそらく最初の態度は私達を試していたのだろう、ナリ様から先程までのにこやかな笑顔は消え、退屈そうにこちらを見ていた。

 

「仙人様に、お願いがあって来ました」

 

 私が口を開くより先に、焦れたように姫様がそう答えた。

 それに対してナリ様はす、と目を細める。

 

「ふぅん、言ってみて? 何なりとお申し付け下さーい♡ とはいかないけどね。ニンゲンってば、願いを叶え過ぎると増長しちゃうもの」

 

 その言葉で、ディアンから聞いた話を思い出す。

 奇跡のような施しを受け増長し、もう一人の仙人様の怒りを買った村の人間たちの話を。

 

「ディアを……私たちの大切な人を、探して欲しいんです……! お願いします、私にできる事なら、何でもします!」

 

 絞り出すような、途中から涙混じりとなった姫様の言葉に、ナリ様は小さくため息をついた。

 

「やめてよー、わたしが泣かしたみたいじゃん。ま、知らない相手でもないしそれくらいならいいよ。あんま得意じゃないけど」

「ほ、本当ですか!?」

 

「言っとくけど、専門外の術だから期待しないでよねー」

 

 そんな彼女の答えに、姫様の表情がぱっと明るくなった。私達が見守る中で、ナリ様はどこからともなく赤い宝玉を取り出す。

 

「さて、全くあの子はどこほっつき歩いてるのかなーっと!」

 

 仙人様が宝玉を掲げると、それは頭上で眩い光を放ち回転する。

 ……しかしナリ様は顔をしかめ、やがて宝玉はその手に戻った。

 

「うーん、見えて来ないなぁ。わたしの術じゃ感知できない所に居るか、もしくは死んじゃってたりするのかもね」

「そんなっ……!!」

 

 メイが悲鳴のような声を上げる。私も内心穏やかではいられないが、予測していなかった事では無い。……それよりも、姫様だ。

 

 呆然とした表情ではらはらと涙を零す、胸が痛くなるような姫様の姿にナリ様は深くため息をついた。

 

「んもーっ、最初に言ったけどわたしはこういう術が得意じゃないの! わたしの術じゃちょっとした結界程度でも感知できなくなるし、まだ死んだとは限らないんだからね!」

「そう、なの……?」

 

 ナリ様の言葉に、姫様は顔を上げる。

 

「そうなの! そもそもこういうのはガラムの得意分野なんだから、そっちに頼んでみればいいんじゃないかな?」

 

 細い腰に手を当ててそう言うナリ様。

 

「ガラム様、ですか。以前、浮遊城へ来訪されていましたが」

「……ああ、“自称海賊”の娘にゲロ吐きかけられた時ね。ガラムは普段各地を放浪して徳を積んでるんだけど、あまり人前に出たくないからってずっと術で身を隠してるんだよねー」

 

 だから自分では追えない、と彼女は言う。

 

「ま、そういう事だからあとは自分たちで頑張りなさい。それじゃわたしは修行に戻るから、邪魔しないでね?」

「はいっ、ありがとうございました! そうだ、何かお礼を」

 

「別にいいよー。まあどうしてもって言うなら、今度きつねうどんでもご馳走して貰おうかなー?」

「街へいらした時に、必ずそうさせていただきます」

 

 岩の上へと戻り瞑想を始めたナリ様を邪魔しないよう、私達はその場を後にした。我々の目標に、仙人ガラム様との接触が加わった。




・合体技
ガーディアンテイルズで☆5の戦士キャラ三人以上or遠隔キャラ三人以上で編成したときに使える特殊な技。
なお、演出が面白いだけで実用性はあまりない。
戦士合体技の弾丸役とかダクネスがきっとやりたがる。
このクロスオーバー書き始めた当初からこの合体技を始めとしたダブル女騎士のアレコレは思いついてました。
滅茶苦茶やりがちなやつと滅茶苦茶にされたいやつのコラボ。
あとR-18含め6作くらい投稿してきましたが、♡連打や汚い嬌声をこんなに使ったの何気に初めてです……。

・ナリ
「お呼びですか? 何なりとお申し付け下さーい! って、嘘ぴょーん、引っかかったね?」好き。
見た目は幼い子供だが、長い時を生きている。
時を戻したりすらできる強力な力を持つ八本の尾を持つ狐の仙人にして、設定レベルで浮遊城に居着いているであろう数少ないSSRの一人。
通常攻撃で遠隔防御ダウンデバフを撒いてくる、つよい。
年齢制限に引っかかって貰えないクリスマスプレゼント欲しさのあまり、良い子じゃないからプレゼントをもらえない悪ガキに混じってプレゼント工場を襲撃したりもする。なにやってんの仙人様……。

・ガラム
ナリと同期のイケメン狐仙人様。
万病を癒やす井戸を作り疫病を癒やし、飢えた虎に食料の湧き出る袋を与え人を襲うのをやめさせ、干ばつに苦しむ村に湖を作り救った。
にもかかわらず、村人にそれはもう酷い裏切りを受けて闇落ちし、村を滅ぼしたりした。
イベントで彼を操作していたプレイヤーも、村人たちのあまりの酷さにガラム様の側についた。滅んじまえあんな村!
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