このヘラヘラ騎士の寄り道にも祝福を!   作:名無しのガーディアン

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今回は毛色を変えて、ガーディアンテイルズ本編における騎士ちゃんの歩みをこのすば勢(今回はカズマのみ)が知るおまけ回です

タイトルの通り、騎士ちゃんが寝物語として語ってくれます


01-EX:女騎士の寝物語その1

「――なあ、ディアンの世界ってどんな所なんだ?」

「うん?」

 

 すっかり慣れた馬小屋の一角、藁をかき分け寝床を作っているディアンの耳にカズマの質問が投げ掛けられた。

 

「いや、今まで断片的にしか聞いてなかったからさ。色々と不思議な部分が多くて地味に気になってんだよな」

 

 先に寝床を整えた彼はぼんやりと小屋の天井を眺めながら、酒が入り先に寝入ったアクアを気遣うように声を潜めて呟いた。

 ディアンは藁で作った窪みの中に毛布を敷いてそっと横たわると、身じろぎしてカズマの方へと顔を向ける。

 そうすると、目の前にはよだれを垂らしながら寝息を立てるアクアの寝顔が現れ、そのだらけた表情に彼女はくすりと笑った。

 

「……そうだねぇ、一言ではちょっと言い表せないかな。たとえばカンタベリーとラー帝国じゃ雰囲気が全然違うし」

 

 どういう風に話せばいいかなぁ、などと考え込む彼女の様子にカズマもまたディアンの方へと顔を向け、そうだ、と声を上げた。

 

「そういや、確か旅をしてきたんだろ? 良ければどんな旅なのか教えてくれよ、本人から直接聞く冒険譚とか超ワクワクするじゃん」

「あはは、冒険譚かあ……確かにあれは冒険の日々だったなぁ。でも、改めてそう表現されるとちょっち照れくさいかも?」

 

 くすくすと囁くように笑い、ディアンは小さく息を吐くと過去を投影するように宙を見つめた。

 

「始まりは……そう、インヴェーダーの船が、攻めてきたあの日かな。あれは私がカンタベリーの騎士団(ガーディアンズ)の新隊員としてみんなに紹介されてた所だったんだよね」

 

「配属直後にそれってとんでもねぇな!?」

「私もそう思う……」

 

 その想像以上の波乱万丈っぷりに、さすがのカズマも驚いた。

 彼女は再び身じろぎして上を向くと、視線を下げて屋根の切れ間から見える星々に視線を走らせた。

 

「さあ、訓練開始だ! って時にいきなり地面が揺れてね。団長の所に来た隊員の報告を聞いて――見上げた西の空を、一面に覆い尽くすような巨大な船が浮かんでたんだ」

 

 静かにそう語る彼女の口調に、いつもの軽快さはない。カズマは「好奇心から嫌な事を思い出させてしまった」と少しばかり反省したが、ディアンは話をやめるつもりはないらしい。

 

「次の瞬間には辺りが爆発してね、気が付いたら私は空を飛んでた」

 

――あの時は混乱しててよくわからなかったんだけど、私は誰かに助けられたみたいなんだ。

 よく考えたら生身のままあんな高さから落ちて、無事で済むはずがないし……え? ここに来た時も落ちてたって? あれはまあ、クッションがあったからさ。

 

 それで城壁の上にふわっと降り立って、“あ、助かったんだ”って目を開けたら、私が今使ってる剣が足元に転がって来たんだ。

 慌てて顔を上げたら、視界の端に黒いマントを羽織った金髪の誰かが横切って――追いかけても見つからなかったんだけど、助けてくれたのはきっとあの人だと思う。

 

 その後はなんとか合流できたガーディアンズの先輩たちと一緒にインヴェーダーと戦って、危ない所をエヴァ団長に助けられた。

 あ、エヴァ団長ってのはガーディアンズの団長さん! 背が高くて凛々しい女の人なんだー、正直憧れちゃう。

 

 それで私達はエヴァ団長に連れられて王宮まで行って、そこでカミラ女王陛下と――そして姫様と出会った。

 姫様はね、ちっちゃくて可愛くて、すっごく優しい良い子なんだ。

 なんかこう、一目見た瞬間から“この子は命に代えても護らなきゃ”ってなっちゃったんだよね。

 っと、それで陛下の転移魔法で一緒に城から脱出しよう――って時にアイツは現れた。拗けた角に、趣味の悪い杖を持った全身ローブの魔法使い……ダークメイガス。

 

 

「そのダークメイガスってのが原因でこの世界に来たんだったか」

 

 彼女がこの世界に来た経緯を語った際、その名前を聞いた事をふと思い出したカズマの呟きにディアンはこくりと頷いた。

 

「そう、刺し違えてでも首落としてやる! って意気込んで斬りかかったけど、角一本折っただけでやられちゃったんだよね」

「……ディアンってそういう所はなんかキマってるよな」

 

 剣も落としちゃったし、とぼやく彼女の口から出てきた“刺し違える覚悟”にカズマは価値観の違いをしみじみと感じた。

 二人の話し声を嫌ってか、挟まれて眠るアクアがもぞもぞと寝返りをうち藁に潜るように沈んでゆくと、彼女の後頭部に遮られていたカズマの視線が通る。

 仰向けのまま横目でアクアに視線を向けていたディアンはカズマと目が合い、くすりと笑みを浮かべた。

 その笑顔に、彼は不覚にも少しどきりとしてしまった。

 

「まあ、それはまだ先の話。いきなり王宮に現れたダークメイガスの魔法で、私達は吹き飛ばされちゃった。なんとか体を起こした時には、姫様の封印魔法でアイツは身動きを取れなくなっていたの」

 

 彼女は視線を空へ戻すと、アクアを気遣ってか少し声のトーンを落として話を再開する。

 

「その隙に女王様の転送魔法で城から避難したんだけど――」

 

 

 ――姫様の封印を振り払ったダークメイガスが、それに追従してきたんだ。転送魔法は高速移動が出来る反面、移動中はまともに動けないから私達はあっさり撃墜されちゃったの。

 

 まずはリンダ先輩とボブ、その次にエヴァ団長――そして、魔法はついにカミラ陛下を撃ち抜いて……姫様の悲鳴を聞いた時には転送魔法は解けて、私達も空に投げ出された。

 私はどうにか姫様だけでも護ろうと必死で抱き締めてたんだけど、いつの間にか気を失っちゃったみたいで……目が覚めたら、私は一人で森の中に倒れてたの。

 

 ただ、私の寝ていた頭のあたりにハンカチが敷かれていたから、姫様は無事で、何か訳あって離れたんだろうなって事が分かった。

 それで姫様を探して彷徨ってたらロレインさん――私達が拠点にしてる浮遊城の旅館の主が、声をかけてくれたんだ。

 

 

「ちょっと待った、旅館の女将さんが天空の城の主なの!?」

 

 天空の城と旅館の女将の繋がりがあまりにも意味不明過ぎてカズマは思わず声を上げてしまった。隣で眠るアクアが顔を顰めますます藁の中で縮こまるのを見て、彼は咄嗟に自分の口を手で覆う。

 

「うん? ロレインさんは浮遊城の主じゃなくて、浮遊城にある旅館の……いやどうなんだろう、あの旅館浮遊城のど真ん中にあるし」

「○ピュタの真ん中になんで旅館建ってんの……?」

「ラピュ○? そういえばよく考えたら変だよね。ロレインさんが何者なのか未だによく分かんないし……まあ、とにかく――」

 

 

 ロレインさんも一緒に捜してくれるって言うから、連絡先と姫様の特徴を伝えてからふた手に別れて探し始めたんだ。

 そうやって探す内に森の広場で倒れてる姫様を見つけたんだけど、慌てて駆け寄ったらいきなり足を引っ張られて木に逆さ吊りにされちゃったの。旅人を狙う傭兵崩れの盗賊のしわざだったみたいで、ちょうど仕掛けた罠を見に来たそいつらと鉢合わせになって。

 

 私達の姿を見て“亡国になったばかりのカンタベリーの姫と騎士だ”って気付いたんだろうねえ、何も出来ない私をいーっぱい馬鹿にして気絶してる姫様を連れてっちゃったんだ。

 そこからなんとか縄を外そうともがいてる内にロレインさんが通りかかってひとまず助かったから、もう一度ふた手に別れたんだけど……もうさっぱり見つからなくて。

 

 途方に暮れはじめた辺りで、えーと――そうそう、狩猟用の罠に掛かった一匹のわんちゃんを見つけたんだ。

 

 

「それが、前に写真を見せたシロちゃんだよ」

「あー、ツーショット写真だと何故かことごとくでディアンに齧りついてたあの角の生えた狼か……」

 

 表情を緩めてそう言った彼女に、カズマは何度か自慢気に見せられた巨大な――小学生くらいなら余裕で乗れそうな犬の写真を思い出す。

 大抵はディアンが無理矢理抱きついたり抱き上げようとしており、凄い形相のシロに腕や頭に噛み付かれている写真だった。

 

「一応甘噛みなんだよ、本気なら余裕で腕ごとちぎれるからね!」

「いやこえーよ……」

 

 ついでに言えば、時系列順に見せられた最初の写真ですらセントバーナード程も体高のあったシロが最新の写真では3割増し程大きくなっている事にカズマは戦慄した覚えがある。

 

「まあそのシロちゃんとの出会いがこの時。罠を外して、やれる範囲で怪我の治療をしてあげたらその場では逃げちゃったんだけど――」

 

 その少し後にその辺りを統括してるゴブリンのボスから襲撃を受けたんだよね。珍しい獣、つまりシロちゃんを捕えたのに私が逃したからって言って。まあ、これは私が悪いっちゃ悪いんだけど……。

 

 不意打ちで武器を落として大ピンチ、って時にシロちゃんが助けに来てくれたんだ。シロちゃんが撹乱して時間を稼いでくれてる間に剣を拾って、一緒にゴブリンのボスを撃退したの。

 

 

「それが私とシロちゃんに友情が芽ばえた瞬間だったね! まあ撫でようとしたら伸ばした手を噛まれたんだけど」

「だめじゃねえか……」

 

 なんとも締まらないオチに、カズマは脱力する。

 

「あはは。まあ私もそこでシロちゃんが“借りは返したぜ”とばかりに走り去っちゃうものかと思ってたんだけど、そこからずっと付いてきてくれたから多分あながち間違いじゃないとは思うよー?」

 

 そう言って、ディアンは素直じゃないもふもふの友達を思い出しながらくすくすと笑う。

 

「それで、新たな仲間を加えて改めて姫様を探そう! って意気込んでたらシロちゃんが私のポケットの匂いを嗅いで吠えたんだ。なんだろう、ってよく考えたらそこには姫様のハンカチが入ってるの」

 

 そこまで言われれば、カズマもなんとなく話が読めてきた。

 

「なるほど、狼ならニオイで――」

「そう! うちのシロちゃんってばホントに賢いんだよ、私が姫様を探し回ってたのに気付いて手伝ってくれたんだ。それでシロちゃんのハナを頼りに姫様を探してたら、なんと姫様を攫った盗賊たちが木に縛り付けられてたの」

 

「え? なにそいつら、お姫様に返り討ちにでもされた?」

 

 話がまさかの展開を迎えた事で、カズマは目を丸くする。

 

「それがさ、盗賊のレッサーパンダを拷も……尋問しようとしたら、細い目の女にやられたって言うんだよね。細い目って言われてまずロレインさんを思い浮かべたんだけど、もしそうなら連絡を――」

 

「待って待って、変なノイズが入ってて話に集中できないんだけど。レッサーパンダってもしかしてアレか? オレンジ色の毛をした小さい熊みたいな……え、アレが徒党組んで人襲うの?」

 

 拷問と言いかけた事はひとまずスルーしつつも、流石に聞き流せなかった単語にカズマは頭の中にファンシー&スプラッタな光景を思い浮かべてを遮った。

 

「マイナー種族なのによく知ってるねぇ、ちなみに他の二人は人間だったよ。見た目はもふもふしてて可愛いんだけど、凄く口が悪くてさ。別に私は何言われても平気だけど、あの時は姫様の事まで言い出したから流石にちょっとムッとしちゃったんだよね」

 

 軽く言ってはいるものの、それが彼女にとってとんでもない逆鱗であるとその横顔からありありと読み取れた彼は“冗談でもお姫様について悪く言うのはやめておこう”と心に誓った。

 

 そんなカズマの内心に気付く事もなく、ディアンは寝床から引き抜いた藁を硬くもしなやかな指先で弄びながら話を続ける。

 

「それ以上情報が得られそうになかったから、またシロちゃん頼りに姫様を探して森を進んだんだけど――」

 

 シロちゃんについて進んで、森の中にあった古い遺跡の中に入った辺りで遠くから姫様の声が聞こえて来たんだ。

 慌ててそっちへ駆け寄ったら、地響きを立てながら大きな何かが近付いて来て――それは盗賊たちが乗った機械兵器だった。

 いつの間にか縄から抜け出して、姫様を捕まえる為にそれを取りに行ってたみたい。

 

「ついにロボットまで出てきたか……ホントに何でもアリだな」

 

 ディアンの語る冒険譚、その冒頭だけでも既にトンデモな部分が多すぎてカズマはため息をついた。

 

「アレは私も流石にびっくりしたよ。装甲が硬いしパワーもあるし、なんか鉄球振り回してるしでなんとか姫様を守るのでもう精一杯」

「それで、そのロボットはどうやって倒したんだ? 剣一本で戦うにはちょっとしんどそうだけど」

 

 ファンタジー世界に騎乗ロボットを持ち出すなんて反則もいいところだ、などと思いながら彼が訊ねる。

 

「シロちゃんがね、いつの間にか近くの木の上に登ってたの。それで私もピンときて相手をその木の近くに誘導したら、シロちゃんが操縦席に飛び込んで大暴れ! 機械兵器は暴走して遺跡の壁にどーん、ってぶつかってうんともすんとも言わなくなったんだ」

 

「いや狼大活躍だな!? ちょっと賢すぎない?」

 

 カズマのそんな言葉に、ディアンはむふーと自慢気に鼻を鳴らして満面の笑みを浮かべた。

 

「でしょー? シロちゃんは凄いんだよ。それで盗賊は捨て台詞吐いて逃げてって、ようやく姫様と落ち着いて再会できたんだ」

 

 

――姫様に話を聞いたら、ロレインさんは旅館へ案内するって言いながら遺跡の中へ連れ込まれたって。怪しいと思って問い詰めたところに、ちょうど私達がやってきたみたい。

 その遺跡は迷いの森の奥地にあるから詳しいことは知られて無いんだけど、ロレインさんは迷い無くそこまでたどり着いた。

 一体何が目的だったか調べてみよう、っていう姫様に連れられて遺跡の最奥部まで行ったんだけど……そこには、台座に突き刺さった一振りの剣があったの。

 

 

「……そう、まるでおとぎ話に出てくるような“選ばれし者だけが抜く事ができる伝説の剣”みたいにね」

「おお……なんか露骨に盛り上げて来たな。それで、抜けたのか!?」

 

 深き迷いの森の奥地にある遺跡に眠る伝説の剣。そんなロマンの塊のような話に、カズマは思わず上体を起こしてディアンに訪ねた。

 

「ふふ、実は……抜けちゃいました!」

「おおっ……! それじゃあ、実はディアンは選ばれし勇者、とか?」

 

 そう言っていたずらっぽく笑う彼女に、彼は少しだけ期待の眼差しを向ける。空から落ちてきて仲間となった騎士が、実は伝説の英雄。

 一応魔王退治を目指す彼としては心強いと言うものであった。

 

「ん〜、どうなんだろ? 抜けはしたけど、力は開放されてないみたいだし、まだ剣に認められてないというか……」

「……なんだそりゃ、認められたから抜けたんじゃないのか?」

 

 そんな曖昧な答えに、カズマは気が抜けたように再び藁の中に体を横たえた。ディアンは曖昧に笑いつつ頬を掻く。

 

「私も、あの時のことはちょっと現実味が薄くて。白昼夢か何かだったんじゃないかな、って今でも時々思うんだ」

 

 

――剣に触れた瞬間、私と姫様は宇宙にいた。

 

 下は小さくなった大地、正面にはインヴェーダーの巨大戦艦。

 目の前には、カミラ陛下によく似た女の人が立っていた。

 その女の人はリリー女王。姫様や陛下のご先祖さまにあたる方で、いくつかの事を教えてくれたんだ。

 

 未知の敵による世界の危機は予言されていたこと、そして私が触れた剣こそ、その予言に対抗する為に歴代の勇者たちが準備してきた“チャンピオンソード”であり、本来の力を開放するには運命に選ばれし強者たちから認められる必要がある事を示してくれたの。

 

 

「そして最後に“カンタベリーの森にある古い旅館を訪れる事で運命は拓かれる”とだけ教えられて、私達は元いた遺跡に帰ってきた」

「うん、凄い王道! って感じなのになんで旅館が来るんだよ。そこはほら、なんか古い祠とか神殿とかこう、あるじゃん?」

 

 冒険譚として普通に楽しんで聞きつつも、所々に入る妙なノイズにカズマは少々微妙な気分になってしまう。そこに関してはディアンも同じらしく、苦笑いを浮かべた。

 

「まあ、それは割とみんな思うみたいだねえ、旅館だし。それで、旅館を目指そう、ってなった時にロレインさんが現れたの」

 

 “お姫様は用済みです”なんて言いながら、ロレインさんは魔法で姫様を弾き飛ばした。

 地面に落ちたチャンピオンソードをロレインさんが拾った辺りで、私とシロちゃんが同時に攻撃したんだけど……バリアに阻まれて全然効かないんだよね。

 それで手も足も出なくて、もう駄目だってなった時、姫様が投げた石がロレインさんの頭に当たって隙ができた。

 今なら当たる、って咄嗟に斬りかかったら予想通り攻撃が入って……致命傷を負ったロレインさんはその場で倒れて、なんとか勝つ事ができたの。

 

 

「まあそれでリリー女王の助言通り、森の旅館までたどり着けたんだけど……今度はインヴェーダーの軍勢が押し寄せて来て、旅館を取り囲まれちゃったんだ」

「もうなんか、1日のうちにそれだけの事があってよく生きてたな。就任初日に国が大変な事になるわ、空から墜落するわ、親切そうな人に裏切られるわ、敵の軍勢に囲まれるわ」

 

 修羅場に次ぐ修羅場を語るディアンに、カズマは「物語でももう少し緩急つけるぞ」と呆れ気味に言った。

 

「あはは、ぶっちゃけ私もそこで『あ、死ぬわ私』ってなったからね。強い敵一体なら案外逃がす隙くらいは作れたりもするけど、数の暴力はまとめて薙ぎ倒せる力の差がなきゃなぶり殺しだもの」

「まあ、切り抜けたから今があるんだろうけど……どうやったんだ?」

 

「旅館に使える物が無いか探すよう頼んで中へ入ってもらってから、入り口を封鎖してシロちゃんと二人で旅館前へ陣取ったら、後はもう何か奇跡でも起きないか祈るしかなかったね」

 

 主君の為に当然の如く自らの命を全掛けする彼女の言葉に、カズマはその価値観の違いから思わず閉口する。

 

「もうかなりヘトヘトだったし、その戦いはシロちゃんにフォローされっぱなしだったのはよく覚えてる。それも割とすぐに限界が来て、『せめて姫様だけでも』って思ってたら――地面が揺れ出したんだ」

 

 ディアンはそこで言葉を切ると、カズマに視線を向けた。

 

「下から突き上げるような衝撃にひっくり返ったら、周りの地面がめくれ上がって――気がつけば、旅館が空を飛んでた」

「……は?」

 

 目を点にして疑問符を浮かべる彼に、ディアンは満足げに笑う。

 

「旅館の基礎部分からでっかいプロペラが四つ飛び出して、こう、びゅーんと空を飛んでったの」

 

「え、旅館が?」

「そう、旅館が」

 

「空を? ヘリコプターみたいに?」

「うん、飛んでた」

 

 あまりの意味不明さにカズマは「マジかよ」と天を仰いだ。

 そんな彼の反応に、ディアンはクスクスと笑った。

 

「私も流石に想定外すぎてびっくりした。シロちゃんと並んで放心してたら旅館の窓が開いて笑顔の姫様が身を乗り出して来たのをみて、やっと『助かったんだ』って思えたよ」

 

 そう言うと、彼女もまた身動ぎをして視線を夜空へと戻した。

 

「そうして空を飛ぶ内に、旅館は大きな雲へ突っ込んで……その雲の中にあったのが浮遊城ヘブンフォールドなんだ」

 

 やっぱりラピ○タじゃんという言葉を飲み込み、カズマは深くため息をついた。

 

「なんていうか、色々と訳がわからん……」

「だよねぇ、私も実際そうだったもん。その後も遺跡に横たわってるはずのロレインさんが旅館から無傷で出て来たり、浮遊城のアンドロイドたちに取り囲まれたりでもう何が何やらだったなぁ」

 

「こっちも情報の整理が追いつかねぇ……」

 

「まあとにかく、こうして私の初めての冒険はゴールを迎えて、伝説の剣に加えて浮遊城という拠点まで手に入っちゃったわけ。それからロレインさんが仲間になったり、少し休んでカンタベリーに降りて生き残りの人を探したりで大忙しだったよ」

 

 そこまで話し終えると、ディアンは大きくあくびをしながらぐっと伸びをした。

 

「ふぅ、ちょっと話し疲れちゃった。この続きはまた今度にするね」

「先は気になるけど、ぶっちゃけ情報量多すぎて胸焼けしそうだわ」

 

 カズマも彼女のそれが移ったか、大きなあくびをしながら言う。

 

「これで序盤も序盤だもんなあ。思ったより面白かったし、めぐみんあたりも聞きたがりそうだ」

「じゃあ、次からは他のみんなもいる時に話してもいいかもね。それじゃあ、おやすみぃ……」

 

 彼女はそう言うと、藁の中へ体を埋めて目を閉じた。

 カズマもそれに返事を返すと、藁の中で今聞いた冒険譚に思いを馳せながら眠りへついた。




騎士ちゃんと星を眺めながらささやき声で寝物語を聞かされたいだけの人生だった……

・リンダとボブ
騎士ちゃんの先輩たち(★1キャラ)。
赤髪の女性リンダ先輩と、髭面のボブ。
リンダには先輩をつけるがボブはボブである。
浮遊城入手後の生存者探索で二人まとめて発見された。

・白き野獣
ストーリー上で必ず仲間となる色々と不遇な獣。
ガーディアンウルフという北国に住む狼の子供で、密猟者等に追われる内にカンタベリーの森まで来た。
人間不信気味だったが騎士ちゃんに命を救われ、チビ姫さまを守る姿を見て同格の存在と認めて力を貸してくれた。
ゲーム本編だと加入イベント後は10章までほぼ出番がない。

・マッドパンダ傭兵団
喋る二足歩行レッサーパンダ【マッドパンダ】、赤髪の女【リーダー】、そして【デニー】で構成される傭兵団。
リーダーは名前なのか役職なのか不明。
傭兵を名乗ってはいるが、やってることはほぼ賊。ガデテル世界に来たばかりのキャサリンを騙したのも主に彼ら。
憎めない悪役っぽい感じを醸し出してるが、割と普通に極悪人だと思う……。巨大ロボを扱う技術力を持っている。
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