このヘラヘラ騎士の寄り道にも祝福を!   作:名無しのガーディアン

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えーと、お久しぶりです。
なぜこんなに間が開いたか……簡潔に言うと燃え尽きてました。
いやあ、毎週欠かさず更新できる人ってホントに凄いです……数カ月間隔もザラにあるようなクソザコ作者の私が無理くりにでも8週続いてたのは我ながら割と奇跡だったと思います。

無理するとしばらく気力が消し飛ぶのが分かったのでこれからは毎週はちょっと厳しいかも……。


02-2 :女騎士、堕ちた騎士と相対する

「よーし、準備できたよ!」

 

 森の奥から草を掻き分け出てきたクリスを出迎えたのは、兜以外の鎧を外して軽装となったディアンである。

 

「お疲れさま! どう、出来栄えの方は」

 

 彼女の問いに、髪に落ち葉をつけたクリスは自信に満ちた笑みでウインクとともにサムズアップしてみせた。

 

「ふふん、かーなーりの自信作だよ! 隠したお宝はダミー含めて30以上、アタリが出れば大儲け。でも気をつけて、今のこの森は致死性のモノこそないけど無数のトラップが仕掛けられたちょっとしたダンジョンだからね」

「おおっ、腕が鳴るねぇ!」

 

 そう言って薄い胸を張る彼女に、ディアンは目を輝かせながら森の暗がりへと視線を向けた。クリスは白い歯を見せてニッと笑う。

 

 魔王軍幹部の到来によって多くの冒険者たちが街に引きこもる中、この二人はかねてから約束していたスキル伝授及び、覚えたスキルを試すことも兼ねたちょっとした賭け事に興じていた。

 

「さて、始める前にもう一度ルールの説明! 制限時間は1時間だけど、罠で行動不能になったらその時点で終了。教えた罠感知とお宝探知でこの森を切り抜けて、得られたお宝はぜーんぶ君のもの!」

 

 参加費として形だけ一万エリスの徴収をしてこそいるが、隠した宝の総額からすれば微々たるもの。つまりこれはクリスの趣味と後輩の育成という実益を兼ねた投資であった。

 

「さ、準備はいい? ほらほら、感覚を研ぎ澄ませて、感知系スキルが活性化する感じを掴んで」

「よ〜し……」

 

 クリスの言葉に従いディアンは取得したばかりの罠感知スキルへと意識を集中する……すると、たった今踏み込もうとしていた森の入り口付近の地面が薄ぼんやりと光っているのを感じ取れた。

 

「……うん? って、これ」

 

 彼女が感知した事に気付いたクリスがいたずらっぽく笑う。

 

「お、ちゃんと気付いたね? そう、素直に進もうとしたら落とし穴にズドンってワケさ。まあここのは簡単に出られる高さだけどね!」

「どおりでここじゃなくて横の茂みから帰ってきたわけだー……」

 

 危うく幸先の悪いスタートを切りそうになったディアンは、頬を掻きながら苦笑いを浮かべた。

 

「スタート地点だからって油断は禁物! 慣れれば慣れるほど鮮明に感じ取れるようになるから、ここでしっかり感覚を掴むんだよ」

「りょうかーい。それじゃあ、やってみよっか!」

 

 そしてディアンは森の暗がりを進む。暗視スキルを頼りにすいすいと進みながら、彼女は「スキルがあれば今までの冒険も楽だったろうな」と思って一人苦笑する。

 ディアンは時折立ち止まっては意識を集中し、罠の気配を探る。

 

「……わっ、危なっ。すぐ横に吊り縄が」

「ふふ、スキルがあっても初めのうちは警戒してなきゃこうやって検知漏れが出るからね。そして罠の近くには大抵お宝を置いてるよ」

「どれどれ……あっ、袋が落ちてる」

 

 罠を避け周囲に意識を巡らせると、彼女は茂みに隠された小さな袋を見つける。中を確認すると1エリス硬貨が1枚だけ入っていた。

 

「おめでとう、最初のお宝だね!」

「うー、最初はこんなもんかぁ。よーし、もっと見つけるぞー!」

 

 

 そしてディアンはその後もずんずんと森を進み、罠を避けながら配置された宝を順調に見つけていった。

 やがて森の中程まで差し掛かった辺りで視界が開け、小さな広場へと出た所でディアンの持つ魔導具(スマホ)がアラームを鳴らした。

 

「ハイ、しゅうりょーう!」

「……あっ、もう時間切れ!? まだ半分くらいしか見つけてないのにー!」

 

 集中しすぎて時間の経過を忘れていたディアンは驚いたようにスマホを確認する。確かに1時間が経過していた。

 

「うんうん、なかなかスジがいいよ。途中からは歩きながらでも罠を見つけられてたし、想定より多くお宝を見つけられちゃった」

 

 ディアンが見つけた宝の数は15、ちょうど全体の半分である。

 クリスとしては3分の1ほど見つかる想定で、概ね元は取れるようにと計算して配置していたので、十分な成果と言えた。

 

「でも悔しいなぁ、全部お宝持っていくつもりだったのに」

 

 ディアンはそう言いながら戦利品の数々を確認する。

 数千エリス程度の硬貨に加え、ポーションなどの消耗品がいくつかあった。

 

「ふふーん、罠を目印にし過ぎたね! 残り半分は大体罠からあえて外した場所に配置してあるから」

「あー、罠に警戒し過ぎてお宝探知が疎かになってたのかぁ」

 

 自身のミスに気付いたディアンは残念そうに項垂れる。クリスはそんな彼女の肩をポンと叩く。

 

「そゆこと、まあ実戦ではそのへんも注意してやるといいよ。ってワケで、残った罠を外して回ろっか!」

「はーい」

 

 そう言ってクリスが手渡した罠の配置図にディアンが目を落とした――その時、地響きを伴う壮絶な爆発音が辺りに響き渡った。

 

「……えっ、な、なになに!?」

「この音って……」

 

 顔を見合わせた二人は、罠解除を後に回して森を駆け抜け――。

 

 

――そして、今に至る。

 

「は? 魔王軍幹部、ってまさか……」

 

 鳩が豆鉄砲を食らったような表情を浮かべていたカズマは、やがて緩慢な動きでその視線を煙の上がる廃城へと向けた。

 

「……あちゃあ、知らなかったか。一応掲示板にも軽く書いてあったと思うけど、そんな細かいところまで見ないよねぇ」

「マジ? 俺たち魔王軍幹部に喧嘩売ってたの……!?」

 

 冷や汗を顔いっぱいにかくカズマを見て、クリスは苦笑を浮かべて小さくため息をついた。

 

「うーん、魔王軍幹部ともなると私達で迎え撃つのはちょっと厳しい。これは街に戻って報告かなぁ……」

「ちょっと待ってください!」

 

 クリスの言葉に待ったをかけたのは、木の根本に力なく寄りかかるめぐみんであった。彼女は倦怠感を押して顔を上げる。

 

「この爆裂散歩はもう1週間は続けてます。今までなんのアクションもなかったなら別に問題ない、と言うことではないでしょうか!」

「えっ、1週間……って、こんなこと毎日やってたの!?」

 

 爆破テロを日課にしていたと聞き、流石にクリスもドン引きした様子で顔を引き攣らせる。そんな彼女に、めぐみんは冷や汗をかきながら必死に訴えかける。

 

「ええ、それはもう! 毎日かかさずあの廃城へ爆裂魔法を撃ち込んでいますが、未だに何も起こっていません。故に、ギルドへの報告は不要かと思われます! ええ!」

 

 それはもう、清々しいまでの自己保身であった。

 一同は呆気にとられつつも、一理なくもないとして一旦報告は保留となった。カズマのスキル習得も兼ねて罠外しを全員で行い、一同はアクセルへと帰還した。

 

 

 

 

『ま、毎日毎日毎日毎日ッ……お、俺の城にッ、毎日欠かさず爆裂魔法をブチ込んで来やがる頭のおかしい大馬鹿者は、(だァれ)だァッ!!!』

 

 ――からの、コレである。

 

 全冒険者への緊急招集を受け、正門へと集合したカズマたちを待ち受けていたのは怒り狂う魔王軍幹部の姿であった。

 その荒れた感情を示すかのように雷雲を背負い、稲光りに照らされて鈍く輝く鎧の騎士。その頭部本来あるべき場所ではなく、その騎士の腕に抱えられている。

 

「アレは……デュラハンか」

 

 幹部の姿を見たダクネスがそう呟く。

 騎士の乗る馬にもまだ頭部は存在せず、その姿からこの魔王軍幹部の正体が『首なし騎士(デュラハン)』である事が見て取れたのだ。

 

「爆裂魔法……?」

「この街で爆裂魔法を使えるやつといったら……」

 

 正門に立つ冒険者たちがざわめく声を聞き、カズマは無言で頭を抱える。張本人であるめぐみんといえば、脂汗を顔いっぱいにかきながら杖を握りしめて震えていた。

 

 彼女は街で悪い意味での有名人であり、日課の爆裂魔法による騒音や振動の苦情を受けたのは一度や二度ではない。

 執拗にまとわりついて来る視線の数々に言い逃れはできないと踏んだめぐみんは、キッと顔を上げて毅然とした様相を取り繕いながら冒険者の群れを抜け歩みを勧めてゆく。

 

 事情を知るディアンは苦笑を浮かべ、めぐみんの共犯者であるカズマとアイコンタクトを取る。

 めぐみんに付き従うようにその後を進み始めたディアンに、カズマは凄く嫌そうな顔をしながら彼も思い足取りでその後へと続いた。

 

「ちょ、三人とも……!」「え、なになに?」

 

 魔王軍幹部のもとへ歩みを進める三人の様子に、慌ててダクネスも同行する。そして仲間がまとめて移動するのを見て、アクアもまた釣られてついて行き。静かに見守るデュラハンの目の前に、カズマのパーティが勢揃いすることとなった。

 

『ほう、貴様らが……』

 

 それぞれの武器を手に取り集まった5人の冒険者たちを前に、彼は厳かに口を――。

 

『貴様らが、ッ……! 俺の城に毎日毎日爆裂魔法魔法を打ち込んでくる大馬鹿者かぁッ!?!?

 

 開こうとして、煮えたぎる怒りに威厳は即決壊した。

 

『俺がァ、魔王軍の幹部だと知った上で喧嘩を売りたいなら堂々と城へ攻めてくるがいい! 俺も元騎士として堂々と迎え撃ってやるさ、それなのにねぇ、なんでこんッな陰湿な嫌がらせするの?! どうせ駆け出しの街の雑魚なんて相手にする価値もないと放置してれば、毎日毎日、ポンポンポンポンと……! (あったま)おかしいんじゃないのか貴様らァ!!!!』

 

 怒りにより大きな身振り手振りを伴った濁流の如きクレームの嵐は、聞けば聞くほどごもっともな内容であった。

 どうするべきかとカズマが考えていると、めぐみんは覚悟を決めた様子で一歩進み、名乗りを上げた。

 

「我が名はめぐみん! アークウィザードにして、至高にして最強の破壊をもたらす爆裂魔法を操る者っ!」

 

 杖を構えて宣言する彼女に対し、気の抜けたような視線を向ける。

 

『“めぐみん”ってなんだ、馬鹿にしてんのか』

「ち、ちがわい!! 我は紅魔族にしてこの街随一の魔法使い! 城に爆裂魔法を打ち込み続けたのは……そう、こうやって魔王軍幹部たるあなたを誘き寄せる作戦、まんまと掛かりましたね!」

 

 そう言って虚勢を張るめぐみんに、後ろで構えるカズマは呆れたような視線を向ける。

 

「あはは、いつの間にか作戦って事になってるねぇ」「後ろにみんなが控えてるからって強気に出てやがる……」

 

 デュラハンもまたそれが虚勢である事を見抜いたらしく、鼻で笑うと馬の手綱を引いた。

 

『フン、まあいい。俺はお前ら駆け出しの雑魚如きを相手にするためこの地に来た訳ではない、今しばらくあの城へ滞在することとなるが……二度と爆裂魔法は使うな、いいな?』

 

 それだけを告げ、意外にもそのまま踵を返そうとする彼に、カズマ安堵の息を吐く。

 しかし、それで素直に済ませない問題児がめぐみんだった。

 

「無理です。紅魔族は日に一度、爆裂魔法を撃たねば死ぬのです」

『おい何だそれは、適当な嘘をつくな!? 人がせっかく慈悲をかけてやってるというのに貴様は……! どうあっても爆裂魔法をやめる気はないと言うのであれば、覚悟はできておろうな?』

 

 首なしの騎士が威圧を込めて凄んで見せるが、彼女は言葉を翻さない。その頑なさに、彼は抱えた頭の眼光を鋭く光らせる。

 

『……魔に身を堕とした身ではあるが、俺は元騎士。弱者をなぶる趣味はないが、少々度が過ぎたな貴様は』

 

 滲み出る殺気にディアンとダクネスがそれぞれ反応する中、めぐみんはむしろ余裕の笑みを浮かべながらマントを強く翻した。

 

「ふ、余裕ぶってられるのも今の内です。こちらには対アンデッドの専門家がいますからね! さあアクア先生、お願いします!」

 

 振り返ると同時に指名されたアクアは一瞬きょとんとした表情を浮かべたが、やがて自分が頼られたのだと気付くとにやにやと嬉しそうに笑いながら進み出てくる。

 

「全く、しょうがないわねーっ! 魔王軍幹部だかなんだかしらないけど、アンタのせいでまともなクエストが受けられないのよ! このアクア様の前に現れた事を後悔させてあげるわ!」

 

 黒いオーラを滾らせるデュラハンの前で彼女は杖を構える。

 

『ほう、貴様はアークプリーストか。判断は悪くないが、駆け出しに祓われるほど、俺の抱いた怨みは浅くない……それに、もう遅い』

 

 彼はそう言うと、闇を纏った手でびしりと指差した。

 

『汝に死の宣告を。一週間後、貴様は死ぬ』

 

 呪言とともに指先から迸った暗黒の閃光は、めぐみんへと真っ直ぐに向かい――その前にディアンが立ちふさがる。

 

「危ない――ッぐ!」「――ディアっ!?

 

 閃光はディアンの全身を包み込み、怪しく明滅する。庇われためぐみんは闇に覆われた彼女の姿にうろたえたように叫んだ。

 

「この……!」

 

 闇のオーラに纏わりつかれながらも、彼女はガトリング砲を呼び出して突撃しながら弾丸の嵐を放つ。

 

 ……しかし。

 

『ほう、怯まず立ち向かうか。だがその程度では、な!』

「……っ!?」

 

 無色の魔力弾はデュラハンを覆う闇のオーラによって減衰し、鎧に弾かれた。

 ディアンは自身の攻撃が大した効力をもたらさない事に驚き目を見開くと、直後に襲ってきた大剣の一撃をかろうじてガトリング砲の砲身で受ける。

 

あぐっ……!?」「ディア!! ……っ!」

 

 彼女はその強烈な一撃に弾き飛ばされ、体を地面に強かに打ち付ける。慌てて短剣を構えるカズマだったが、目の前に大剣が突きつけられると、彼は思わず尻もちをついて後退る。

 

「えっ、えっ!? あわ、あわわ……!」

「っくぅ、出遅れたッ! おのれ、攻撃するならば私に頼む!」

 

 瞬く間に蹴散らされた仲間たちの姿に驚き立ち竦むアクアの横を抜け、ダクネスが皆の前に両手を広げ立ちはだかる。

 しかし、デュラハンは鼻で笑うと剣を納めた。

 

『……フン、おとなしく引き下がればよいものを。仲間同士の結束の固い冒険者ならば、むしろこの方が良い薬になるだろう』

 

 やがてガトリング砲を杖に立ちあがったディアンは、歯を食いしばりながらデュラハンを睨み付ける。

 

『紅魔の娘よ、貴様の大切な仲間は迫り来る死の恐怖に怯えやがて死に至る事になったぞ。貴様が意地を張ったせいでな』

 

 めぐみんの目に動揺が浮かぶのを見て、彼は酷薄に笑った。

 

『これより一週間、仲間の苦しむ様を見て自らの行いを悔いるがいい。っくはは、素直に俺の言う事を聞いておけば――』

「つまり貴様は、死の呪いを解いて欲しくば自分の言う事を聞けと、そう言っているのだな……!?」

 

 ダクネスが強く拳を握りしめ、歯を食いしばりながら悔しさの滲み出る表情でそう叫んだ。

 

『……うん? おお、まあ……?』

「やはりか……! このまま彼女を連れ帰り、解呪を盾にあ〜んな事や、こ〜んな事をっ、するつもりなのだろう!?」

 

『えっ』「えっ」

 

 彼女の言葉にデュラハンとディアンの声が綺麗に重なる。

 

「見ろ、あのデュラハンの情欲に濡れた眼光を……あれは捕虜とした女騎士に凄まじいハードコア変態プレイを要求してくるような変質者の目だ……!」

『……ぇ?』

 

 興奮した様子のダクネスの垂れ流す言葉に、デュラハンは困惑したように後退る。

 

「彼女も女騎士となった時点で、そういった事は織り込み済みだろう……しかし、私は仲間が一人そんな目に遭う事を赦しはしない!」

 

 呆気にとられる彼の前へダクネスは一歩進み出る。

 

「せめて私も一緒に連れて行くがいい! 私達は誇り高き女騎士だ、身体を自由にできたとしても、心まで自由に出来ると思うな!」

 

 衆目の前で不当に変態呼ばわりされ狼狽えるデュラハンの前へダクネスは興奮した様子で歩み寄ってゆく。

 

「さあ、行くぞディア! 私と共にあらゆる責苦に耐えて、女騎士の誇りと言うものを魔王軍に見せつけようじゃないか!」

 

「いや行かないけど」

 

 キラキラした笑顔で振り返り手を差し伸べる彼女の言葉に、ディアンが真顔で拒否を示す。ダクネスは笑顔のまま固まり、やがて信じられないものを見るような目でディアンを見た。

 

「ど、どうしてだ? 城に囚われ、魔王の手下にいいようにされる女騎士なんて最高に燃えるシチュエーションではないか!? カズマもそう思うだろう!?」

「俺に振らないでくれる?」

 

 いきなりキラーパスを受けたカズマが真顔で受取拒否すると、ダクネスは困惑した様子でデュラハンとディアンの間へ視線を行き来させ、やがてハッとしたように顔を上げた。

 

「そうか、ディアンは異国の騎士だったな……にわかには信じ難いが、文化が違えば、そういうこともあるのだろう。――デュラハンよ、悪いが予定変更だ、私だけでも連れて行くがいい!」

 

『来んでいいし今すぐ古今東西全ての女騎士に謝れェ!』

 

 そんな彼の絶叫にカズマとディアンはなんとも言えない表情を浮かべるのであった。

 

 

『と、とにかく! 俺の城に爆裂魔法を撃ち込むのはやめろ。そして紅魔族の娘よ、そのまともな方の女騎士に掛けた呪いを解いてほしくば、俺の城へ来るがいい』

 

 大きく咳払いすると、デュラハンはダクネスをなるべく見ないようにしながらそう言い放つ。

 

『我が配下を蹴散らし俺の前に来れたならば、その呪い解いてやろう。だが、果たして貴様らにたどり着く事ができるかな?』

 

 それだけ言うと彼はマントを翻しつつ首なし馬に脚を入れ、足早に去ってゆく。それによって場を支配していた緊張感が消え去ると、険しい顔をしていためぐみんはゆっくりと歩き出した。

 

「おい、どこへ行くつもりだ? そっちの方角は……」

 

 一人歩き出しためぐみんにカズマが慌てて声をかけると、彼女は振り返って儚げに笑みを浮かべた。

 

「決まっているでしょう、例の城へ向かいあのデュラハンに直接爆裂魔法を叩き込んでディアンの呪いを解かせるのです」

「はあ、お前一人じゃその辺の雑魚に一発魔法撃って終わりだろうが。しゃあねえから俺もついて行ってやるよ」

 

 そんな言葉に、めぐみんの表情が少し明るくなる。

 

「待て、私も同行しよう」

 

 カズマがため息まじりにその横へ立つと、デュラハンに拒否されていじけていたダクネスも立ち上がった。

 

「二人だけでは危険だろう。それにあのデュラハンには、私が女騎士のなんたるかを教えてやらねばなるまい……!」

「……まあ、前衛が俺だけじゃ不安だし、ダクネスが敵を引き付けてくれればいくらか戦いやすくなるか」

 

 なにやら妙な使命感に燃えているらしいダクネスに引き攣った笑みを浮かべつつも、カズマはそれに頷くと大きくため息をつく。

 

「城が魔法軍幹部の居城だと気付かなかった俺にも責任はある。ディアは戦いの傷を癒やしながら、呪いが解けるのを待っててくれ」

 

 彼は振り返る事なく、ディアンにそう語り掛ける。

 結果として、自分たちのやらかしの負債を全て彼女へ押し付ける形となってしまった事を、彼自身気にしていた。

 戦力を考えれば怪我を押してでも着いてきて欲しい所ではあったが、流石の彼もそこまで面の皮が厚くはない。

 

 三人は互いに視線を交わし、決意を固めて城への道を歩き出した……と、その時であった。

 

セイクリッド・ブレイクスペル! ついでにヒール!

 

「「「……え?」」」

 

 背後から聞こえて来た声に振り返った三人が見たのは、アクアの杖から放たれた清浄な光がディアンを包み込み、その体から黒い靄が抜けていく姿だった。

 

「ふふーん、デュラハンの呪いなんてこのアクア様にかかればちょちょいのチョイよ! どう、私だってたまにはプリーストっぽいでしょ」

 

 そう言ってドヤ顔を浮かべるアクアの横で、ディアンは己の傷と呪いがきれいサッパリと消えた事に目を丸くしていた。

 

 結果として魔王軍幹部の襲来を被害無く終えられたことに沸き立つ冒険者たちを横目に、決死の覚悟が肩透かしに終わってしまったカズマら三人は釈然としない気分になったのであった。




騎士ちゃん「デュラハンってやっぱ闇属性だよねえ……」
(無属性→闇属性 与ダメ-30%&被ダメ+30%)

姫様パートちょっと思いつかなかったので一旦保留。

チラッと増えた感想が一気に減って中々のダメージだったり……私自身構成失敗したなーって自覚もあるんですよね。
タイトル的にもコンセプト的にもこのすば世界に迷い込んだ騎士ちゃんが主人公の筈なんですが、実際にはカズマに主役を食われてる感じしかしません。
……騎士ちゃん側に視点を置き続けるには、彼女の人格情報が私の中に足りない感じがあるんですよね。
故に情報の濃いカズマから視点が奪い返せない。
「ガデテル10章最高すぎる」「某このすば二次創作めっちゃ好き」「俺もやりたい……!」と勢いだけで始めちゃったおバカさんな私ですが、これからもお付き合いいただけると嬉しいです。

よろしければ感想いただけると、私の心の支えとなります。
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