僕は敵に恋してる。 作:ヒドラ
01.ようこそヒーロー科。
「そういえばりゅーくん。りゅーくんって中三なんだよね?高校ってどこ受けるんですか。」
「雄英高校ヒーロー科。因みにもう受かってるよぉ。」
「へぇ雄英………雄英高校ヒーロー科!?」
それはある日におうちデートしていた時のこと。二人でソファに座っていた時にひぃちゃんが不意に尋ねてきた。ひぃちゃんが今まで見た事ないくらい驚いていたのは、きっと学科が学科だったからだろう。なんせ雄英のヒーロー科と言えばヒーロー志望の超名門校。未来のプロヒーローの育成機関の中でも最も有名な高校のひとつだ。当然受験は凄絶を極めたし、仮にヒーロー科ではない普通科に受かったとしても超が付く優等生だ。僕がそんな場所に受かったと言うのは多分ひぃちゃんも初耳だろう。
「えっ……りゅーくんって頭良かったんですか!??」
「ひぃちゃん……僕が頭良さそうに見える?」
「全然!!」
付き合ってそれなりに経ったからか、ひぃちゃんもだいぶ物言いに遠慮が無くなってきた。だから険悪になったかって言うと全然そんなことは無いけど。それにひぃちゃんの言う通り、筆記試験は壊滅的だったからね。実技試験が一位だったから首の皮一枚繋がっただけで、合格通知で『勉強頑張ろうな』ってまで言われたくらいだから。あとでその合格通知を見せてあげようね。
「でもりゅーくんがヒーロー科かぁ……りゅーくん、大丈夫?雄英って先生もプロヒーローばっかって聞きますよ?変な事したら多分捕まっちゃうよ??」
「ひぃちゃんは僕のことなんだと思ってんのぉ………」
「性犯罪者予備軍。」
いやほんとに発言に遠慮というか容赦が無くなってきて流石に傷付くんだけど。性犯罪者予備軍って……確かに初対面の女子高生にいきなり声かけて無理やり抱きしめたりキスしたりしたけどさ。その後僕の
けど流石に性犯罪者予備軍は……予備軍っていうか、もしかしなくてもこれスリーアウトでは?僕は見た目は良いから許されてるけど、汚いおじさんが同じことしたら今頃
「それにりゅーくん、お顔綺麗だし身体えっちなのは間違いないけど見た目はどう足掻いても
「うぅ……校風は自由なのが売りみたいだしぃ………」
「正直私は心配ですよ。りゅーくんが雄英に行って捕まっちゃうんじゃないかって。……りゅーくん、流石に前科は無いよね?」
割と本気で心配した顔をするひぃちゃんから僕は無言で目を逸らした。……ひぃちゃんに嘘は吐きたくないし隠し事もしたくないけど、それでも知られたくないのが数件。流石にバレないしバレてたら自殺するレベルのが幾つかあるっちゃある。けどまぁ流石に大丈夫。大丈夫……だと、思うよ?あー……ひぃちゃんがすごいジト目で僕のこと見てる。『何したんだこいつ』って見てるよぉ……
「ひぃちゃん……僕、雄英行って大丈夫かなぁ……心配になってきた………」
「大丈夫だよりゅーくん。もし捕まりそうになったら私がりゅーくんのこと守りますから。安心してください。」
「なんかやらかす前提じゃん……流石に大人しくはしてるよぉ………」
それこそひぃちゃんっていう彼女がいる今、校内で女の子に発情してちょっかいかけたりはしないし。僕がやらかすとしたらほんとそのくらいしか無いから。暴力沙汰とかはいくら痛いの好きとはいっても不良じゃないし、そんな血の気が多くないのはひぃちゃんも知ってるはず。
………ていうか、ひぃちゃんすごく僕のこと心配してくれるの嬉しいな。てっきり僕がヒーロー科行くなんて知ったら嫌がるしもっと怒ると思ってたけど。ヒーロー科行くのなんてプロヒーローになりたい子ばっかだし。彼氏が自分を捕まえるヒーローになりたがってるとかひぃちゃんも嫌なはずなのに。
「ねぇひぃちゃん……僕が雄英行くの、怒ってない……??」
「ん?別にですよ。」
「ほんとぉ……?てっきり、僕がヒーロー科行くの嫌じゃないかなって………」
恐る恐るそう尋ねてみるが、そうするとひぃちゃんは何かを考えるように空を仰いだ。……付き合ってみて分かったんだけど、ひぃちゃんは笑顔ではしゃぐことはあっても不思議な事にあまり怒ったりしない。女の子の日とかは流石に機嫌悪くなるし、何かの拍子にやきもち妬くとその場で
そのせいと言っては何だけど、僕はひぃちゃんが僕にして欲しくない事が分からない。自分を受け入れてくれる人が希少過ぎるのもあって、僕が何かひぃちゃんが嫌がることしてるのに我慢させてたら悪いから。そう思って敢えて話題にも出てなかったのに口にしたけど………
「まぁ、確かにりゅーくんが
「うぅ……それは本当にごめんなさぃ………」
「けど雄英行くのは別に怒ってませんよ。りゅーくんが私のこと裏切ってプロヒーローになるわけありませんし。」
………なるほどね?ほんとさり気なくすごい重たい事言うなぁこの娘は。信頼が重いっていうか……僕に任されたのが『雄英ヒーロー科に入学しろ』ってだけで『プロヒーローになってこい』って任務じゃなくて本当に良かったよ。もしそうだったら今頃は雄英に退学届を出してなきゃ行けなかった。そもそもヒーロー科の入学決まってるのに敵をナンパするなって話なんだけど……残念なことに今の僕にはひぃちゃんより大事で守りたい人なんて居ない。僕の中での優先順位なんて最初から決まってるんだ。
「大丈夫だよ。僕がもしヒーローになるとしたら、それはきっとひぃちゃんだけの
「………りゅーくん。もう私たち結婚しましょうか。」
「僕が高校卒業したらねぇ。よしよし。」
すっかり好き好きモードに入ってしまったひぃちゃんを抱っこし、血を吸おうと噛み付いてくる彼女の頭をなでなでする。こうした僕の発言もあってか、ひぃちゃんは僕が雄英に行くこと自体には肯定的だった。
ただそれでもひぃちゃんは僕が雄英で学校生活を送ることを心配していた。それは僕を失血死する寸前までぐったりさせた後でも改めて心配してきたほどで、その時は信用ないなぁって位にしか思ってなかった。けど、今はあれが決して杞憂なんかじゃなかったんだなって分かる。
何故なら………
「んーと、A組A組ぃ……ここでいいのかなぁ。お邪魔しま────」
「机に足を掛けるな!雄英の先輩方や机の製作者方に申し訳ないと思わないのか!?」
「思わねぇよてめぇどこ中だよ!端役が!!」
ここは雄英高校ヒーロー科。一年A組に配属された僕が教室の扉を開けると、真っ先に視界に入ってきたのは典型的な学級委員タイプの男の子とこれまた典型的な不良少年の戦闘現場だった。いや、まだ戦闘は始まってないんだけど。
巻き込まれるのも
「ぼ……俺は飯田天哉。聡明中学校出身だ!!」
「聡明中だぁ!?くそエリートじゃねえか!!ぶっ殺し甲斐がありそうだなぁ!!………あぁ?」
「げっ。」
まぁ名簿順だし仕方ない。そう思ってせめて巻き込まれませんようにと遠回りして後ろから席に向かったが、何故か席に着く前に勝己くんの視線が眼鏡くん改め天哉くんから僕の方に向いた。何なら向いたのはガン付けるような目付きだった。
……なんでいきなりガン付けられてんの。僕一応耳のピアスは髪かけて隠してるし、首のタトゥーは極道みたいにそんな目立つようなものじゃない。それこそ異形系の個性持ちの子の方が全然目立つレベルなのに。舌や
「人の顔みてげっ。は無いだろこら。つかてめぇヒーロー科の入試一位だったやつだろ。……寄りにもよって俺の後ろかよ。見下ろしてんじゃねえぞクソが。」
「すっごい流れるような罵倒。……見下ろしてんのはごめんねぇ。僕背ぇ高いから………」
「こら爆豪くん!やめないか!!彼女困ってるだろう!!あと君もだ!!」
いきなり絡まれて困ってたら、直ぐ様天哉くんが助けに入ってくれた。見た目通りに真面目でいい子だね。でも動きかくつくのは笑っちゃいそうになるからやめて欲しいんだ。しかも助けに来てくれたのはいいけど、なんで僕の方に勢いよく近付いてくんの。え、なになに。僕もうなんかやっちゃいました?
「確か
「うん。雄英は校則が自由でいいよねぇ。……仮に禁止されてても今さら消せないんだけど。」
「っ……!!確かにそうか!!けどせめて制服はちゃんと着たまえ!!ネクタイとかボタンとか、せめて服装くらいはヒーローとして正しくあるべきだ!!刺青とか晒すのは良くないと思うぞ!!」
さすが絵に描いたような堅物くん。本領発揮とばかりによく喋るね。……まぁ実際、出かけ際に噛んでもらうためにボタンとかは胸元まで外したし?ネクタイに至っては付け方分からないから最初からぐちゃあってしてるし。これでも耳のエグい量のピアスは髪で隠してるからいいものの、舌とかへそにもピアスあるって知ったら天哉くん失神しそうだな。
とはいえ自慢げにタトゥーとか晒すのは確かに良くないか。そう思ったから僕は制服のボタンは正してみせるが、やはりというかネクタイはやり方がよく分からない。分からないものはどうしようも無いと思うんだ。
「ねぇねぇ天哉くん……ネクタイの仕方わかんない。ネクタイやってぇ??」
「ッッッ!?!??!?」
「なぁに驚いてんのぉ。服装どうこう注意してきたのは天哉くんでしょぉ。」
そこで僕は素直に天哉くんを頼ることにした。ずいって歩み寄って身体を差し出し、ネクタイやってって首元を差し出すと天哉くんは困惑したようにまた顔を逸らす。だから僕は彼の両手を握ると、僕の首元まで運んでみせた。困ってる人を助けるのはヒーローとして当然の責務だよね。服装程度でどうこう言ってたんだし、この位のささやかな手助けはしてくれていいと思うんだけどな。直せって言ったのは天哉くんだしね?
「あっ……あの、だな。飛虎くん……こういうのは、せめてもう少し段階を踏んでからじゃないと────」
「男同士なのになぁに言ってんのぉ。……それとも、天哉くんって男の子の方が好きぃ??」
「!??………なにっ!?はっ!!」
あーやっぱり。僕ちゃんとズボン履いてるのに。さっき勝己くんに絡まれてる時に『彼女』とか言ってたからまさかと思ったら。天哉くん、僕のこと女の子だと思ってたんだ。顔や身体付きのせいで間違われやすいとはいえ、くん付けで呼んでるからてっきり気付いているかと。天哉くんは女の子もくん付けで呼ぶんだね。……もしかしなくても育ちがいいのかな。どっかのプロヒーローの血筋だったりして?雄英ってそういう子も居そうだもんね。
とにかく誤解が解けたのか、天哉くんは大急ぎで僕のネクタイを正すと綺麗な直角に腰を曲げた。ほんと姿勢のいい礼をすること。
「しっ……失礼した!!てっきり女性だとばかり!!」
「んーん、よく間違われるから平気だよぉ。こちらこそネクタイやってくれてありがとうねぇ。またお願いねぇ。」
「あ、あぁ……ってまた!?毎回僕がやるのかい!?」
だって服装どうこう言うのなんてきっと天哉くん位だし?それに、そう言いつつも断らないところを見るに嫌ではないんでしょう?或いは単純にお人好しか。ヒーローってお節介な世話焼きが多いからね。そういう点でもきっと、天哉くんは将来はいいヒーローになるよ。……そういう事にしておいてあげる。
それにこう言ったら意外かもだけど、僕は天哉くんみたいな委員長系の子は結構好きだよ。ああいうのは爛れたことに免疫無さすぎて反応が面白い子が多いから。……育ちがいい子を穢すのって独特の背徳感があって良いよね。現に天哉くんは覚束無い足取りで、耳を真っ赤にしながら僕の身体を触った手を見つめてる。一連のやり取りが毒過ぎたみたいだね。あー……ひぃちゃん居ないせいで色々と抑制が効かなくなってる。ちゃんと我慢しなきゃ。
(は、肌柔らかかった……!!男……!?あれが??花みたいな匂いした……恐るべしヒーロー科………!!)
「天哉くん動きカクカクしてて面白かったねぇ。……勝己くん、どうかした?僕のことじぃって見て………」
「こいつやべぇ。」
明らかにドン引きした様子でそう漏らすものだから『怖くないよ』と勝己くんに手を振って警戒を解こうとする。けどそうしていた時だった。教室に明らかに学生じゃない人が入ってきて教壇に立った。多分先生。雄英の先生ってプロヒーローがするって言ってたけど、たしかイレイザー・ヘッドとか言ったかな。知名度はマイナーだけど個性を抹消する個性を持つ、僕みたいな個性に依存しきった相手には厄介な相手だ。が、オフだと随分と気怠げなんだね。プロヒーローのこういう一面が見れるのも雄英の面白いところだよね。本名は相澤消太って言うらしい。ちっっっさい声で自己紹介してた。
「……よし。もう全員揃ってるな。ならお前ら、今すぐ
「え!?入学式とかは………」
「プロヒーロー目指すならそんな悠長なことしてる暇ないよ。」
と思っていたら予想外に
「じゃあ勝己くん。一緒に更衣室行こっかぁ。」
「寄るんじゃねーよカスが!!距離感バグってんのか死ね!!」
「めっちゃボロくそ言うじゃん……泣くぞぉ………」
勝己くんに手を伸ばしたところ暴言でめちゃくちゃ威嚇されたので僕は泣く泣く一人で更衣室へと向かった。髪色と警戒心つよつよなせいで勝己くんのことを『チワワみたいだな』とか思ったけど、口にしたら絶対怒るのは既に短い付き合いながら分かったので黙っておく。
ていうか嫌われるのいくら何でも早くない??僕まだ勝己くんには何もしてないはずなのに……席近いから仲良くしたいんだけど。天哉くんにも喧嘩売ってたし、全方位に無差別爆撃敷く性格なんだと思いたいね。僕が特別に嫌われてるんじゃなくて。
しかしこんな入学初日から最初にグラウンド集合なんて、一体僕達に何をさせるつもりなんだろうね。こう言っちゃ何だけど、僕って体力ないし運動も苦手なんだけど。
「では、これより個性把握テストを始める。」
「個性把握テスト!?……って、なんですか!?」
「お前達もやってただろ?個性使用禁止の体力テスト。要はあれの個性使用可能版だ。……
僕らが運動着に着替えてグラウンドに集まってすぐ。消太先生は僕のことを片手でちょいちょいと手招きした。なんで寄りにもよって僕なの。なんて思ったが、実技入試成績の
現に僕の事を忌々しげに睨む勝己くんに小さく微笑んでみせたら目を逸らして舌打ちされた。泣きそう。先生が『早く来い』って目で訴えてるから行くけど。仲良くしようよぉ……
「飛虎。お前、中学の時ソフトボール投げ……何メートルだった?」
「んぅ。えっとねぇ……大体十mくらい?」
「……………そうか。んじゃ個性使ってやってみろ。思いっきりな。」
到底見過ごせない間の後に先生はそう言うと、何やら機械を内蔵したソフトボールサイズのボールを僕に手渡してくる。絶対内心で『力よっっっわ』って思ったでしょ。ほかの子もちょっとザワついてるもの。身体能力に関しては多分だけどマジで普通科の女子以下だからね?
とはいえ、個性を使っていいと言うのなら話は別だ。僕は右掌を強く握った後に手にしたソフトボールに『落下』の個性を用い、ソフトボールにかかる重力の方向を地面から果ても見えぬ空へと斜め方向に書き換える。
その状態で投げるという動作を挟むことなくソフトボールを手放すと、ボールは宙でゆっくりと加速。徐々に勢いをつけ、空の果てに向けて一直線に落下する形で流星のように飛翔する。すると横で消太先生が『測定結果:∞』と記録された端末を他の子に向けて見せていた。
「……先ずは自分の最大限を知る。それがヒーローの素地を形成する合理的手段だ。」
「無限!?ソフトボール投げで出る記録じゃねえぞ!??そんなのアリかよ!!なんだ今のボールの動き!?」
「多分私と似たタイプの個性だあの綺麗な人!!私もきっと同じこと出来る!!」
そうすると瞬く間に他の子は通常の身体能力では有り得ない記録に沸き立ち、個性を思い切り使えるというヒーロー科の実態に興奮気味にはしゃぐ。まぁ普通の子は日常的にそうガンガン個性を使うことは表向きでは禁じられてるし、気持ちは分からないでもない。僕は人に見えないところで気軽に使ってるから落ち着いてはいるけど。分かるよ面白そうだよね。
それでも毎年こう言ったリアクションは取りがちなのか、消太先生は僕が
「因みに総合成績最下位の者は
「除籍……ッ!?初日からいきなり!??」
「生徒の如何は
その理不尽極まりない宣告に、ヒーローにさほど興味のない僕でも頬を汗が伝う。……入って終わりじゃない事は承知していた。きっとヒーロー科に入ったら授業が大変だって事も。それでも初日から除籍処分。個性込みなら最下位はまず有り得ないとは思うが、それでも思い知る事になる。このヒーロー科は入った後もなお入試のような
………ひぃちゃんが僕が雄英に行くのを心配したのは正解だったみたいだ。ここで三年間、果たして障子並の強度のメンタルしか持たない僕は生き残れるのか。理不尽というこの学校の
名前:
【個性】落下
飛虎の身体が触れたもの、或いは飛虎自身の重力の方向を書き換えることで指定した方向に落とす。
誕生日:よく変わる(?)
身長:191cm。
血液型:AB型。
好きなもの:淫行と肉体的な被虐。
トガちゃんは彼氏に浮気された場合…
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問答無用で刺し殺す。殺さなくても刺す。
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浮気相手を刺しに行く。ついでに血も奪う。