スパイたちの日常   作:固床式

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Caseティア

あの後、いつもよりも彼女たちの攻撃をあしらうことが出来ず苦戦したクラウス。そうは言ってもいつもなら15秒だったのが20秒に伸びただけなのだが。

そんなクラウスだが、今の彼····いや、彼女はちょっとしたピンチに陥っていた。

「さて、どうしたものか」

クラウスの体は今グレーテのものだ。中身はクラウスだが外見はグレーテ。先程の襲撃で体が汚れてしまったものだからシャワーでも、と浴室に来たはいいがこの状況なのを失念していた。やはり、少しばかり異常なこの状況にクラウス本人も未だに混乱しているようだ。

「帝国のスパイよりも厄介になってきたな」

弟子たちのおかしな方向への成長。かつての師、ギードも僕をこんな感じで見ていたのか。そう考えてしまう。

「あら?先生、どうしたの?」

後ろから声をかけられる。クラウスが苦手としている灯メンバーだ。

「シャワーを浴びるべきか悩んでいただけだ。そういう君も、いつもは大浴場なんじゃないのか?」

「今日ばかりはどうしてもこちらに来たかったのよ。」

そういう彼女の瞳に嘘は感じられない。だからこそ、理由が気になる。

「今、グレーテは貴方の体で過ごしているわ。その体で、襲撃し汚れてしまった。もう、何が言いたいかわかるわよね?」

「ああ。」

グレーテは僕を好いてくれている。が、目の前の少女のせいで性的なアプローチが多い。そのことを考慮すると、彼女は今後のため、と言って風呂場で暴走してしまうかもしれない。しかし、体自体は僕の体だからどうしても大浴場だとみんなに見られてしまう。いや、見せたりしてないだろうな。リリィが倒れるぞ。

「そういうわけで私もこっちに来たのよ。そういえば先生もグレーテの体だったわね、私が流してあげましょうか?」

「そうしてくれるのはありがたいが」

「グレーテの顔の痣については知ってるわよ。見せてもらったし。」

師匠だもの、と一言小さく呟くティア。お前のせいでこんなことになったような気がしないでもないが、という言葉を飲み込んでクラウスは頼むことにした。

「僕はずっと目を閉じている。体を汚したまま返すのはさすがに気が引けるのでな。だから、頼めるか。ティア」

そう頼むと彼女は笑顔で「任せなさい!」と答える。彼女の男性観は曲がっているが、こういった素直なところを出せば普通の恋愛も出来ると思うのだが。

「脱がすわね」

そういい、身につけていた宗教学校の制服を手際よく脱がしていくティア。僕は手出しする訳にもいかないので全てを任せる。やがて脱ぎ終わったのか、ティアが「ほら、行くわよ」と背中を押してくる。途中、後ろから「女のオーガズムを教えてあげるわ」という戯言が聞こえた気がするのは気のせいだろうか。

「洗うわね」

そう一言宣言し、手際よく全身を洗っていくティア。スパイとして生きてきて、ここまでの無防備を見せたのは生物兵器奪還作戦後のソファでの一時以来、か。

「僕は、お前たちメンバーに助けられているな。」

そう、一言呟く。それに対してティアは少しばかり驚いたような呼吸をし、そして微笑むような雰囲気で答えた。

「当たり前じゃない、私たちだもの!」

灯の少女たちをまとめあげる指揮官、ティアの嬉しそうな声を聞きながらクラウスは言う。

「ところで、どこに手を伸ばしている?」

「あら、ここまで来て何もしないのは逆にありえないじゃない」

僕は、彼女を浴槽に投げた。

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