無理やり終わらせた。
酔っ払いと深夜テンションの2人が生んだ物
都心部にある対外情報室のとある施設。そこに集められた3人の男。
「君たちには、とある任務に当たってもらう」
その3人と対峙した男性が淡々と告げる。
「とある芸能事務所の調査だ。」
普段ならばチームごとに割り振られるであろう任務。しかし────
「そこで、アイドルとして活動してもらう」
「ん?」
「はい?」
「は?」
都心某所────
「君たちか、今度オーディション受けるって3人は」
恰幅の良い人物が告げる。彼はこの事務所のトップ。所謂、社長である。
「ワシは───」
「ところで、オーディションはまだ始まらないのか?」
「いやぁ、どんなことするんでしょうね♪」
「.....お前ら」
対外情報室が今回調査対象として主力を3人も送った事務所。もともとは小さな事務所だったのが、ここ最近で急激に力を付けて大手とも言われるまでになった。テレビを付ければ事務所所属のタレント、アイドルが出演しているほどに成長した。その急成長ぶりに目を付け、先行して潜入させたのが今回の3人である。
世界のスパイたちのトップの実力と美しさを持つ男、クラウス。
若手ホープ達が集まる新進気鋭のチーム、鳳を纏めるツートップのヴィンド、ビックス。
本来ならば、国内の内偵など担当している場合では無い。しかし、先日には大きな国外での仕事を終えたばかり。3人が所属するチームはそれぞれ休暇期間になっている。しかし、トップレベルの実力を遊ばせている時間は無い為、国内での任務を割り振ったのだ。
「それで、オーディションは何をするんだ?」
クラウスが尋ねる。すると、言葉を遮られた社長は少し困惑したように答える。
「ああ、簡単な歌を歌って貰った後にダンス、アクロバットが出来るかどうかを見させてもらうよ。ルックスは120点だからほぼ合格みたいなものだけど、アイドルかタレントかの判断材料としては見ておきたいからね」
「なるほど、承知した」
社長の言葉を聞くなりクラウスは前に出た。そして────
オーディションは滞りなく終わった。歌もダンスも、もちろんアクロバットも難なくこなした3人は即合格即デビューが約束された。社長は「最初からこのレベルなのはもはや逸材どころじゃないよ」と最早呆れ気味に呟くことしかできていなかった。会場となった事務所のレッスン場は、ちょっとした騒ぎになり収拾に多少の時間を割いてしまうほどに3人は騒がれた。
しかし、そんなことがあっても3人とも一流のスパイ。やることはやっている。
「あの事務所は白だ。何も無い。」
「何も無い?」
報告に来たクラウスに対外情報室の男が問い返す。
「何も無い、とは結論が早いな。その程度の事務所の内偵をこちらが見誤った、ということか?」
「いや、恐らく本当に真っ白なのだろう。テレビ業界自体まだまだ発展途上の業界なだけに、真っ当なやり方で売っている。真っ当すぎるが故に逆に訝しんでしまった、ということだろう」
内偵という任務が故にオーディションに参加した為か、内部事情や所属タレントたちのプライベートまでも報告書に書き上げて報告してきたクラウスに対外情報室の男は
「ハッハッハッハ!それは面白い。ならばさらなる任務を言い渡そう」
「なんだ」
急かすクラウスに男は告げる。
「せっかくだ。デビューライブくらい堂々と成し遂げてきたらどうだ。もしかしたら事務所に接触しようとする輩がいるかもしれないからな」
「つまり、歌い踊り愛想を振りまけ、と?」
「そうだ」
陽炎パレスにて────
「めんどうです♪」
「断る」
「任務だ。行くぞ」
嫌々ながら出ていく3人を見送りながらグレーテとモニカは談笑している。
「ボス、あんなに嫌そうなのは初めて見ました...」
「まあ、クラウスさんよりも他の2人の方が嫌そうにしてたけどね」
2人は呟く。
「「気になる...」」
日々が少しばかり過ぎ、約2名に任務の内容がバレてライブのチケットを抑えられたり、それぞれが違うグループに入れられると思っていた矢先に新グループとして売り出すと告げられたりしたり。なかなかに異常な事態を乗り越えいよいよライブの日になってしまった。
そのライブ当日、件の3人はと言うと
「「「.......」」」
黙り込んでいた。異様なスピードでダンスも歌も習得していき事務所の告知から数日でライブ日程が決まり、国内でも3本の指に入る大きさの会場でデビューライブを迎えた。社長がドン引きしながら見ていたレッスンの日々(3日)、灯の2人にライブがバレてチケットを即抑えられ広められないように口封じをした日々(5日)、リハやタイムスケジュールを確認するためにスタップを入れて動いた日々(2日).....ほぼレッスンをしながら口封したライブ準備は万全であった。しかし、3人の気分は全く優れなかった。1人は面倒臭さ、1人はナンパを許されない、1人は対外情報室の男への苛立ち。それぞれがそれぞれの気持ち(苛立ち)を抱え、ライブへと向かう。
そして、伝説のデビュー引退ライブが始まった。
おまけ
1人は、クールだった。表情1つ変えずに歌も踊りも完璧にこなしている。時々、瞬間移動にも思えるスピードで移動しては汗もほぼかくことなくとても冷静に歌っていた。
1人は、笑顔だった。笑顔を振りまき、場の雰囲気を明るくする。女性を虜にするような笑顔で、観客のボルテージを上げさせ、どこからか取り出したマイクで綺麗な歌声を響かせていた。
1人は、美しかった。中性的な顔立ちに長い髪の毛で、どこか不思議なオーラを纏いながら、時折笑みを浮かべその笑みを見た赤髪の少女が倒れて行ったりと空間を支配するようなライブを運んでいた。
3人組のグループとして、事務所発足史上最大のデビューライブは、笑わない少年と笑顔の絶えない少年と美しい青年の即引退宣言とともに幕を閉じた。
1日限りのユニットは、ひとつのライブで解散してしまったが夢を残して消えた。また、このライブ以降約2名のクールなスパイに表情が出ることが多くなった....そんなことがとある建物に住む少女たちの間で数日話題にされていた。
読んだ人へ。
2024年になって2時間後くらいにこんなもの生み出してるのはなにかのバグですか?