陽炎パレスに住む住人は一人を除いて少女である。それ故に.....
「先生先生!このスイーツすっごく美味しいです!」
「そうか、また作る。」
「これ、何使ってるんですか?」
「ああ、それは...」
「これ美味しいね、また作ってよ」
「お前らの頑張り次第でな。」
クラウスは、一人頭を悩ませていた。
「さて、どうしたものか.....」
ここ最近、少女たちの技量はメキメキと上がっている。つい先日、かなり際どいところまでクラウスのことを追い詰めたご褒美として気まぐれで作ったパンケーキを振舞った。それに対する反応は言うまでもなく大感激で、その後の訓練にはかなり身が入っていたために定期的にスイーツを作ってきたのだが、どうにも本人曰く「あの店の味に何か少し追いつけない」や、「雲と雲の隙間のように差ができてしまう」など満足いくものを作れていない様子である。
「ふむ....」
さて、そんな今回悩んでいるクラウスの現在地は帝国の首都である。フロランタンというお菓子が美味しい店がこの付近にあると記憶していた彼は、変装してまで帝国に単身乗り込んできたのである。入り組んだ路地を数分進んだ先に。
「ここか」
煉瓦造りの外装に、こじんまりとした印象を受けさせる入口が出迎えた。店内は、外で受けた印象よりかは広いように感じられて窮屈感などはなかった。
「フロランタンを。」
注文を聞きに出てきた店主にフロランタンを注文する。店内で待っている間、サービスだといい店主は紅茶を持ってきた。程よい熱さで差し出された紅茶は、香りも立っていて心地いい酸味が口の中を満たしてくれた。
「お待たせしました」
といい、店主が持ってきたバケットには出来立てのフロランタンが入っていた。クッキー生地の上にキャラメルでコーティングされたアーモンドがたっぷり乗ったフロランタン。一つ一つが丁寧に作られているとわかる手触りと見た目で、食べた瞬間にザクザクとした心地のいい食感にキャラメルとアーモンドの風味がふんわりと広がってきて甘みがあとからゆっくりと包み込んでくる。
「ふむ....」
問題は、これを戻ってどうあいつらに作ってやるか。レシピや工程を頭の中で何通りも試しては取捨選択して帰路を辿っていく。
帰ってからはすぐにキッチンに立った。グレーテやサラに不思議そうな目で見られながらも、プロ並みの手つきでどんどんと進めていく。素早く丁寧に、これまで培ってきた技術をすべて使いながら作り上げたそれは至高の一品となっていた。そして、それを食べた少女たちの反応は.....
書くまでもないだろう。