周囲の男女が目を引かれるようなルックス。恐らく何かの撮影なのだろう。そう思わせるには十分すぎるほどの集団がそこにはいた。
「なんて人だろうね」
そんな声が聞こえてくる。街を行き交う人々は、皆必ずと言っていいほど彼らを見る。
「みんなこっちを見てますね♪」
「勝手に見させとけ」
その注目を集めている本人たちは、暢気にそんなことを言っている。注目を集める理由はやはり何点かある。まあ、明確ではあるが。
「.....。」
「どうしましょうねぇ♪」
1人は、クールそうなイケメン。もう1人は甘いマスクのイケメン。また別の1人はマスクで顔を隠した大柄の男。注目を集めない方がおかしい。
「この、会話の続かなさも、どうしましょうねぇ?」
そんな3人が、黙ってカフェでコーヒーを飲み続ける。3人の間に会話はなかった。
席に着いたのは30分ほど前。4人席に通してもらい、コーヒーを注文する。そこまでは自然な流れだった。しかし、そこからが問題だった。ルックスがよい2人がいることで、女性からの視線はやはり集まってくる。それは、当人も自認することではある。しかし、そこに大柄のマスクを被った男がいるとなると、また違ってくる。好奇の視線が降り注ぐ中、無言で30分。甘いマスクの青年、ビックスが言う。
「どんな下手なテレビ企画なんですかね?!」
日頃から、話すこともない。3人が集まることも、最近では稀になってきてはいるが、それ以前から、3人の間に会話というものは少なかった。そして今回のこれである。ビックスのバロメーターは溜まりきっていた。
「このままでは、良くないのではないですか?」
「.....是」
「キュールがいればいいだろう」
「彼女は今居ないんですよ」
つい、♪が取れてしまうほどのガチトーン。周囲の人からは、未だに好奇の目が向けられている。
そもそも、なぜこの3人がカフェでくつろいでいるのか。
「と、言うことだ」
「何も分かりません♪」
「こんなことに時間を割く理由がない」
「.....」
陽炎パレスに集められた男3人組。鳳の主戦力。その3人と対峙する長髪の男。
「上からの下らない命令だ。仕方ないだろう」
流し目で、自分で結った後ろ髪をちらりと見ながら言う。
「まさか、散髪に行くのにお前らを連れていけと言われるとはな」
そう、クラウスの散髪の付き添いである。長髪の男、クラウスは髪を切る気配すら見せなかった。いつまでも伸ばし続けるつもりか、と言われるほどに。しかし、彼は時間が無いの一言で終わらせた。それに業を煮やした上が、任務として鳳の3人に命令した。『クラウスの髪を切れ』と。
結果、待ち時間は近くのカフェで待つことになった。クラウス本人も、渋々ではあるが切るという判断をしてくれた。そのための待ち時間である。
「今後、同じようなことがあるかも知れません♪」
「....是。しかし、話す話題がない」
そして待っている間、大柄の男、クノーは微動だにせず。
「今、話題を振ったら消されたんですよ♪」
「あれは、話題なのか?」
クールそうなイケメン、ヴィンドは瞑想に耽っていた。
「話題ですよぉ!」
「そうか」
甘いマスクのイケメン、ビックスはコーヒーを飲んでいた。
そう、3人とも会話をする選択肢を取らなかったのだ。
「こうなったら、無理やりでも話しましょう♪」
現状を打破すべく、ビックスが言う。その内容は、灯のメンバーだったら1人しか取らないような手段ではあった。
「と、言うことです♪」
「意味があるのか?」
「あります♪」
「....お前のやりたいことであろう」
「とりあえず、やらなければこのままですよ♪」
ビックスの案を聞き、2人は顔を顰める。あまり気乗りするような内容では無いので仕方はないが。
「待たせた」
ビックスの案を実行しようとしている時、散髪に行っていた男が帰ってきた。
長かった髪をバッサリと切り、少しばかり若く見えるようになった。もともとの造形が良いだけに、周りの注目をより集めるようになってしまっている。以前まであったミステリアスな雰囲気が軽減され、爽やかさが出たのが原因だろうか。
「付き合わせて悪かった」
帰るか。と、言おうとしたところをビックスが止める。どうやら、クラウスも巻き込んで会話の少なさを改善するつもりらしい。
カフェを出て、駅の方へと向かう一行。4人が揃って歩くと、周囲の人々は少し避けて行くので人が多くてもスルスルと進んでいく。まるで、レッドカーペットの上を行くハリウッド俳優のように。
しかし、そんな4人に近付いてくる集団がいた。
「あ、あの...」
その集団は、クラウス一行と同じ4人組。統一感のある、大人しめな服装をしているが、モテているのだろうというような、そんな雰囲気を感じさせる4人だった。
「これから、お暇ですか?」
そんな誘い文句を言ってくる。どうやら、ナンパというものらしい。
「ええ、あとは帰るだけですよ♪」
答えたのはビックス。日頃、合コンなどのセッティングをしている彼にとっては簡単な受け答え。それでも、半分OKと言っているような返答に、女性陣は少し安堵の表情を見せる。
「少しお話しませんか?」
「ええ、いいですよ♪」
ビックスの返答に女性陣は跳ねて喜ぶ。しかし、ビックスは感じていた。ヴィンドからの圧、クラウスからの目線、クノーの無。
「料理がとっても美味しいところ、知ってるんです。」
そう言い、女性陣は前を歩き出した。そもそも、クラウスたちがビックスの快諾を止めなかったのには理由がある。先述の会話の少なさの改善に、帰り道でだれかしらが話しかけてきたら嫌でも応対する、と。クラウスも、鳳のボスとして引き抜きをかけられた上に、今回は付き添ってもらった側なので、チームの改善に協力することになった。
「ここです」
10分ほど歩いたところにある、パスタの看板が下がった店。その前で彼女らは足を止めた。クラシックな内装と音楽の店で、出てきたパスタもどれも良いものだった。普段から高級なものを食べなれている4人も、この店のコスパには驚いていた。
料理は美味しい。店の雰囲気も良い。が、会話は相変わらず少ない。女性陣は、積極的に話しかけようとするが、ビックスが上手く返すのに対し、クラウスは、返答するにはするが、的確に会話を終わらせる対応をとる。ヴィンドはある程度返事もするが、クラウスほど話すわけでもない。クノーに関しては、いつの間にかパスタを平らげ、店主の方へ行き香草に関してなにか話している。それをこっちでやって欲しい、そう思うビックスがいた。
唐突な食事会は和やかにぎこちない。会話は、あのカフェの時よりも増えている。しかし、依然少ない。
「これは、やり方を間違えたかもしれませんねぇ....♪」
笑顔を絶やさず呟くビックスの表情はどこか悲しげだった。
ナンパ物ってなんだよ。
途中文章が右往左往してすみませんでした。いつもより長くなったのはそれが原因です。
クノー、お前がいちばんだよ。