知らぬ間に巨大組織のトップ3になっていた件について 作:ないものねだり
そこからはとんとん拍子である。半年後には、教会の元締めである教国から《異端》として全世界へ通達された。
これも用心棒の娘──セアが持ってきてくれた確度の高い情報である。そう言う事に関して、それなりの期間雇われ商売をしていたセアの情報は信用出来る。笑うことしか出来なかった。
しかし、本来ならこう言う組織は大体数年経てば手配書などからも消えるのが当たり前である。あの《教会》と《帝国》から目の敵にされ、存続できる組織などいるはずがない。
だが、数年経っても《暗闇》の名前は消えることはなかった。むしろ、無駄に巨大化していた。
《暗闇》が帝国の研究所を破壊したとか、教会の神器を奪ったとか、とんでもない話が舞い散っていた。
そして決まってそう言う話は、それが明らかになる前に、それなりの頻度で会うようになっていたレーラとシトラから報されていたから、もう《暗闇》の話は信じるしかなかった。
そして、二十を過ぎた頃、理解した。もうどうしようもないのだと。
──そして、今。目の前に片膝を付き、淡々と報告書を読み上げる黒装束を見遣る。
「──以上が、連邦政府を設立する流れです。では、この計画に異議が無ければ、こちらにサインを」
「あぁ……うん、分かったよ」
取り出すのは、本来なら商談に使う羽ペンだ。これを買うのは結構な出費だったが、私は気に入っている。
なめらかな書き心地はやはり良い物だ。現実逃避しながらつらつらと語る。
「なるほどね。やはり実質的な支配地は必要だろう。ちなみに……レーラは承諾したのかい?」
思ってもないことを述べる。いつの間にか私は組織の第三席とやらになっていた。重要な決定には私のサインが必要らしく、今ではこう言う者が秘かに私の元に来るのが当たり前。
お陰で、レーラが何をしてようとしているのかなんとなく分かるようになってしまった。あることないこと言って、どうにかぽく見せるのも慣れたものである。
「は、これは《二席》様発案のようでして、レーラ様も承諾はされております……一応お伝えしておくと、レーラ様はあまり良い顔はされておられなかった、とだけ」
「まあ、レーラはね……とことん危険を嫌うから、気持ちは分からなくもないさ。
……それじゃあ、もう良いよ。私も個人的な用事あるんだ」
「──承知致しました」
黒服君は滲むように消えた。毎度違う人が来るのだが、どうやら様子を見るに彼ら黒服君達はレーラの管轄のようである。
なんか状況にピリピリとした怪しい雰囲気を感じるが、そもそも私は部下も目的もない完全な巻き込まれ人である。何を求められても困る。
ため息を付くと、扉がキィと鳴る。光が目に入った。思わず目を掌で覆う。
「リゼアさん、食事出来たそうですよ」
セアであった。澄んだ宝石のような声に、ハッとするような蒼髪。小柄な体は、麗人と言うより幼い令嬢と言った方がピンとくる人も多いだろう。
ちなみに申し訳ないやら怖いやらで、《暗闇》の事実を伝えていないのが無駄に罪悪感なのが最近の悩みである。
「……あぁ、うん。ありがとう、今行くよ」
微妙に申し訳なく、ぎこちない笑みを見せながら、私はゆっくりと椅子から立ち上がった。