知らぬ間に巨大組織のトップ3になっていた件について 作:ないものねだり
食事を終え、先に食べ終わっていた二人を横目で眺める。
今、シトラが表向きに傭兵事業の展開を行なっていることもあってだろうか。セアの傭兵時代の辛み悩みを肴に、酒を傾けながら談笑していた。
する事もないので軽く見ながら私も杯を傾けていると、見ていることに気が付いたのか、談笑最中のシトラがこちらを突然向き直る。次の瞬間、にこにこした笑みで立ち上がった。椅子がずれ、カタンと音が鳴る。
「こっちのリーダー、それでですね、なんとこう言ってきたんです。『テメェら──」
それと同時。饒舌に話していたはずのセアが突然口をつぐむ。瞳がブレる。異常を感じた私は、すぐに立ち上がるとセアの近くに駆け寄った。
「セア、セア……聞こえているのか?セア?」
目の前で手を振ってみる。無視。ぼんやりとした瞳がクラクラと揺れ、やがて一点を見詰める。
その青に理性が灯ったのを感じ、再び声を掛けた。
「セア、何を──」
そして、一瞬の間。流れるようだった。椅子を引くと、彼女は止める間もなくカツカツと足音を立てて出口へと向かう。出口にいた店員は頭を下げてそれを見送った。
支払いは終えているから、確かにそれに間違いはない、ないが──悟る。
「──シトラ」
「ええそうね! 申し訳なく思うわ!! 加護の範囲を貴女まで拡張したの!! 一時だけどね! でも、安心して欲しいわ!!」
「……何を安心しろと」
「聞きたいことがあるのでしょう?! そしてあの娘は『無関係』なのよね!! なら! それならよ!! 捲き込むのは不義理に当たるわ!!」
「……む」
……良く考えると、そうである。頭が冷えた。
咄嗟の対応は苦手なのだ。要するに、余りにもこちらが考え無しだったので、シトラが配慮してくれたわけである。
「ありがとう、助かったよ」
「そうね! 自分の非を認めて素直に感謝できるのは貴女の美点よ!! 誇りなさい!!
だけどね! ちょっと疑問があるの!!」
なんであろうか。談笑で溢れるこの場所で話すに適切な質問なら何でも答えよう。いや、私を加護に『含めた』のだったか。
なら、先程の無礼を兼ねて何でも答えようではないか。
そう意気込んでいたところ、不可思議な問が投げかけられた。
「──貴女、ちょっとレーラに不義理かもしれないわね!!
初めてセアとあったのだけど、話を聞いてると相当な時間あの娘と過ごしてるみたいじゃない!!しかも、何も知らせずに!!そんなにあの娘は大切かしら?!」
「……んん? そう、だね? 私とセアはそれなりの期間一緒に行動しているよ。
それに、セアは勿論大切だ。知らせてないのは……そう、いつか知らせるつもりだよ」
『レーラに不義理』とは、これいかに。まあそれは置いておいて、セアに知らせてないことは罪悪感でしかないのだが。いつか、時が来れば話すつもりである。そう、一度別れるときとかどうだろうか。なかなか驚いてくれそうである。
そんな想像をしながら答えると、シトラは快活に反応する。
「余計なお世話ってやつかしら! 分かったわ!! 不必要な事で他人の旅路に手を加えるのは、私の道理に反するの!! この件はこれでおしまいね!!」
「うん、よろしく頼むよ」
「了解したわ!!」
一区切り。だが、シトラは止まることはなかった。こちらへ促すように視線を向ける。
なら、それに乗らせて貰う。シトラを捉え、ゆっくりと口を開く。
「今度は、こっちから質問させてもらおうかな、シトラ。君は一体、なんの為にここに来た?」
「それは、既に知らせを知ってて言ってるのよね!!」
「……ん、そうだね。だけど、一応の確認の為に聞いてるだけだから、そこまで深く考えないでくれるとありがたいかな」
キラキラとした笑顔で言われると、まさか『聞いてない』なんて言えない。
そして、シトラは『それならいいわ!!』と言うと、バッと手を広げて叫んだ。
「──明日午後のリリガリア独立!! その為のお膳立てを、私はしに来たのよ!!」
シトラ目線だとレーラとは対立中、リゼアとは半敵対状態という認識です。