知らぬ間に巨大組織のトップ3になっていた件について   作:ないものねだり

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理念

 「……なるほど、ね」

 

 乾いた声しか出なかった。とめどない焦りが湧き出る感覚に、逆に口元が弧を描く。

 感情を抑えるように腕を組むと、真っ正面からシトラを見据える。

 

 「明日が転換点よ! 変えるの!! 《帝国》と《教会》に支配され凝り固まった世界を!!」

 

 「それは……レーラの考えと……」

 

 『違うのではないか』。シトラが言う言葉に違和感を感じる。薄々感づいていた事だが、出来るなら否定したかった。

 

 私が理解していたのは、世界の変革などではない。連邦政府を樹立することにより、体面上《帝国》と《教国》と《連邦》で三竦みにまで持ち込む。そうすることで、これまでの帝国と教会の覇権争いはなりを潜め、世界は安定する。

 

 これがレーラの考えであったはずだ。もう逃げてなどいられないだろう。レーラとシトラの対立。ならば、私が信じる方は決まっていた。しっかりと前を向き、そして一瞬息を呑む。

 

 シトラが爛々と輝く瞳で私を見詰めていた。どこか強い覚悟を感じさせる瞳で、彼女は私を捉える。

 

 「そうね!! レーラには申し訳ないわ! 重ねて、貴女にも本当に申し訳ないと思っているわ!! けどね!」

 

 シトラが声を高々と鳴らし、そして私が身構えた、その瞬間だった。

 

 ──途轍もない爆音が耳を打ち付ける。バゴンとも、ドガンとも捉えられる、大きな大きな音。

 

 一瞬遅れてガラスが割れた。風が吹き抜ける。大地が揺れる。

 

 席に座っていた十数人の人間達は目を丸くし、だがやはりここに座る程まで財を貯め込んだ者達だ。すぐに席を立ち上がると荷物をまとめ始めた。

 そして駆け込んできたのは黒いタキシードを纏った初老の男。慌てた様子で声を張り上げる。

 

 「──お客様方! 一旦この場所からの待避をお願い致します!! どうやら霹路通り辺りが爆発の中心との情報です!」

 

 近い。霹路通りと言えば、この店から徒歩15分も要らないだろう位置だ。

 そして、その通りには聞き覚えがあった。何を隠そう、私とセアが今現在止まっている宿屋《ミリト》が存在している場所である。

 

 迅速に待避する客達に、無視される私達。

 これからどうするのか。シトラは関係があるのか。先程の話しを聞いていた私は軽く疑いの念を込めてチラリとシトラを見る。

 

 シトラは無言で、文字通り開いた窓から見える、もくもくと立つ()()を注視していた。

 

 「……シトラ、霹路通りにはセアが今いるはずだ。私はセアの安全を確認したい」

 

 「そうね! それと謝っておくわ!!」

 

 返答はすぐだった。先程よりもなお色の強い赤色をその瞳に宿し、シトラは私を見遣り、そして手を振り上げる。

 一瞬の停滞。余りにも突然の発言に意図を掴みかねる。何をするつもりなのか。それを問おうとし、そしてシトラは叫ぶように宣言した。

 

 

 「本当にごめんなさいね、リゼア!! ──死んで貰うわ! 今、ここで!!」

 

 

 そしてシトラは。目を大きく見開く私を無視し、息を吸うと──手を振り下ろした。




二人のリゼアの認識ですが、実はレーラからもリゼアは目的を同じくするとは思われていません。
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