仮面ライダーレギエル   作:さわたり

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第十一話「暗黒の客星」

「天使様、ガブリエルさんが……留一さんに」

 

「そうなるね」

 

一度説明したことだが、やはり飲み込み切れず菜摘には咀嚼の過程があった。しかしこんなに顔色が良くなるものかと、彼の表情を見て考える。

 

「なぜ、なんでしょうね」

 

「君に直接伝えたときの追及を避けたいんじゃない~?」

 

「そう、ですよね。でも、湖冬が生きてるって、確証は」

 

そう言いつつも、彼は疑う姿勢は見られない物言いだった。菜摘が「明路さんが言うなら」、で信じるのはわかる。明路が「浅井さんが言うなら」で信じるのもまあ分かる。

浅井留一は、最終的に出てくる「菜摘が自分を信じている」事実が若干ながら当惑すべき事実に思えた。

 

「……えと、ガブリエルが確信した物言いをしていたしね。アモンは殺しを必ずルシファーのもとに拉致する形で終えてた、ってさ」

 

「じゃあ、いま湖冬はルシファーのもとに?」

 

「うん、ガブリエルはそう言っていた」

 

これぐらいなすりつけてもバチは当たるまいと、留一は考える。

実際のところ、アモンをよく知っているのは自分である。どうせガブリエルも知っていることだが、わざわざ「浅井留一に言わせる」……要するに嘘をつかせるという点で、なかなかイイ性格をしている。

 

「ルシファーから奪還するにはどうすれば……」

 

「ルシファーだが。俺と春子はおそらく会っている」

 

「本当ですか!?」

 

「アモンを助けに来ていた。だがろくな会話はできず、ただ逃げられただけだ。敵意が断定できたわけではない」

 

「交渉のテーブルに着いてくれないならすることは決まってます。それに魔術師が……アモンが僕から湖冬を奪った事実は変わらない」

 

布団を握りしめる、菜摘。

留一には、ただただ「ああ、燃えてるね」と冷めたような感情が漂う。彼を応援したい気持ちと、彼に目的を達成させてはいけないという気持ちが渦巻き、ため息としてそれは出力された。

 

「外の空気吸ってくるよ」

 

「そ」

 

「なんだよ」

 

春子は未だにらむような様相。振り切りながら、彼は近くの公園にいた。ベンチで空を見つめ、ぼんやり思い出す、自分の過去。

そこに割り込むように、何をしてるのと挨拶。

 

「……レギエルはどこだい?」

 

「さあねー」

 

「はぐらかすなア。君も天使たちにアワ吹かせたいでしょ?」

 

「どーでもいいよ」

 

どこか幼げな青年が、その隣で笑う。

 

「ベルゼブブ、君は相変わらず気配を隠すのが下手だな」

 

「隠す必要がないからサ。威嚇だよ、威嚇」

 

ぶんぶんと羽音が耳元で騒ぎ出す。

 

「部下たち、追い払ってよ」

 

「おいおい?ぼくはいま人間だぜ?ただの偶然さ」

 

「フン」

 

「君はあくまで隠すね」

 

「そ~だよ」

 

「なんで?」

 

「さあね」

 

ベンチを立ち。

 

「どうしたの、昔は燃えてたじゃないのさ!」

 

なお声をかけるベルゼブブへとうっとおしそうに振り返った。

 

「今も燃えてるよ」

 

「ア、じゃあ身近に潜んで天使をぶっ殺すって事?」

 

「いーや、そんな暴力的な手段は好まない!私は愛に生きてるのさ」

 

「ヒュ~!説得力あるね」

 

「でしょ?」

 

「じゃ何してんのォ?」

 

「……いずれ分かるよ」

 

いつも通りけたけた笑いながら、留一はその場を去る。ベルゼブブはその背を、にこにこと見つめていた。双方笑顔ながら、内心は別物。ベルゼブブは『塔』片手に見つめ、その先の留一。手の中の『愚者』。

 

「相変わらずだネ、君は」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第十一話「暗黒の客星」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お帰り。遅かったわね」

 

「ブランコがまあまあ楽しくて」

 

「フリーダムなことだ」

 

少しだけ呆れ気味の明路。何か訝しげな春子。勘が鋭い女の子だなと考える。後追いで来た「27歳に女の子ってどうなんだ」という思考はさておき、彼の案ずることは、言うべきかどうか。

自分の正体、悪魔であることに関しては言わないこと前提。気を揉むのはベルゼブブについてである。

 

「なっちゃん、ケガとかはもう大丈夫?」

 

「はい、ばっちりです!」

 

「さっすが」

 

「機嫌よくなさそうね」

 

「そう見える?」

 

春子なりに、助け船か。それとも出したからには言えよという圧力か。自身は隠し事が下手なのかもと、留一には少し悔しく思う面があった。

 

「別にないんでもないよ~」

 

「春子。気持ちは分かるが無意味に攻めるような物言いはやめろ」

 

「そう見えるかしら?」

 

皮肉めいた口調で告げ、タバコ吸ってくると足早に去る彼女。明路も腕時計を見るなり退散。しっかり菜摘にも頭を下げ挨拶ののち立ち去る。

残される、留一と菜摘。

 

「なっちゃん、私は悪魔なんだけどさ」

 

「第一声、それです……?」

 

くすくす。菜摘は見違えて態度が落ち着いている。だがそれで胸をなでおろすよりも、「身柄を握られてるからには、いずれ復讐以上に焦り始める」なんて考える自分を恥じる面は確かにあった。

 

「マーなんて言うかな、ばらしたくない事情とかいろいろあって。でも、うん。なっちゃんのこと信じるように頑張るさ」

 

「……でも、ほら。駄目じゃないですか。理由を外部に求めちゃ」

 

留一の視線が上がる。

 

「あの時言ってくれた、「自分のやりたいようにやるべき」って話。……あれ、留一さんが欲しかった言葉なんですよね?」

 

「……!」

 

思ってみたこともない、言葉だった。

 

「あ、ごめんなさい!僕失礼なことを……」

 

「他の人への肯定に、自分を肯定してもらいたいって気持ちがある、ねぇ~~。イグザクトリーだよなっちゃん。私はたぶん、下心で君の背中を押していたんだ」

 

「……。でも、いいと思うんです。下心でも何でも、あなたは僕を助けてくれますし、明路さんや春子さんだってあなたに助けられてます。偽善者とか、春子さんはキレるかもしれないですけどっ、やらない善よりやる偽善じゃないですか!だって、」

 

「……だって?」

 

「心情に目くじら立ててたら……効率、悪いですから」

 

にこり。湖冬の物言いを、そんな笑顔で言えるんだね、なんて。

その気持ちは自責と、それ以上の「やらなくては」で出力される。

 

「なっちゃん、ベルゼブブが君を狙ってる」

 

「ベルゼブブ?悪魔の?」

 

「アモンとはおそらく別行動。あいつは昔から自由だから。ルシファーとサタンの傘下だけど命令違反なんてしょっちゅうだし、個人的に天国側を恨む動機もある」

 

「い、いろいろ知ってるんですね」

 

「私は子供の時に覚醒してるからねー」

 

「でも、春子さんもかなり思い出してるのに知らないって言ってたことが多いですよ」

 

「ま、そのへんはたまたま!とにかくベルゼブブへの対処ですぐにルシファーやサタンが出ることはないってわけ」

 

眼を逸らし気味に。まだ隠すこともあるので、やっぱり胡散臭く映る。それでも

 

「ルシファーや、サタン……。あれ、同一人物じゃありませんでした?」

 

「初代はね。二代以降は襲名制なの」

 

「なるほど……。アモンはルシファーの配下、なんですよね」

 

「ああ。だから君はルシファーと戦う羽目になる。確実に。当代サタンの性格は知らないけどほぼ確実に動くだろうから、最悪そっちとも」

 

「前途多難ですね」

 

「バックアップはするよ。当然ね」

 

頷く留一と目を見合わせ、菜摘も同じく。しかし少しして、彼は首をかしげた。

 

「そういえば、お名前は?」

 

「悪魔は気軽に真名を教えないよ~~ん」

 

彼はあくまで冗談めかす。

 

 

 

「顔写真ですか」

 

「ええそうです」

 

「そのものがシェイド犯罪行為を」

 

「何かしら、別の空間に対する誘拐をしたものと。推測の域は出ませんが、そもそも一般人である雨野菜摘を攻撃したのは確かです」

 

「一般人……ですかねえ」

 

シェイドの存在は公安警察においてはほぼ公然である。社会的に大きく出れない現状、レイフと公安がひそかに調べ対処するのが基本なのだ。

明路も、警視庁公安部門を訪ねることは少なくない。とはいっても、警視庁本部内のオフィスをその場限りで用意する、という機密性特化の形ではあるが。

 

「雨野菜摘は一般人です。公安の皆様にもそこに異論をはさむ余地はないと存じますが」

 

明路の物言いは力強い。

 

「そうですか。まあいいです、まずこの人物について洗いましょう。名前などは」

 

「不明です。変身能力を持つシェイドも居たため、それが完全に正しい顔とは言えかねます」

 

「なるほど。ひとまず行動範囲をもとに私服警官に調査をさせましょう」

 

行動は早い。ホワイトボードに出現場所を書き出し、大きくくくる。千代田区が中心だが、江戸川区や杉並区にもその足取りがある。

 

「雨野菜摘を追っているのですね」

 

「ええ。当然囮作戦はしません。戦闘を避けるために素性から調べるので」

 

明路の意志は固い。公安の美川警部に対し、ハッキリとした口調で出た。対し美川警部も明路もとい磯羅警部へ態度を崩さず続ける。

 

「分かっています。周辺地域に在住かはまだ判断しかねますね」

 

「どのように見つけたか分からない以上、移動時間から経路を割り出すのは難しいでしょう」

 

「ふむ……敵の名は?」

 

「名前、ですか」

 

「ええ。いわゆる悪魔と聞いています。何か伝承に残るヒントがあるかも知れません」

 

「こちらの資料に併記しています。能力等も」

 

春子の作った資料を受け取り、眺め始める。速読と言って差し支えないスピードだが、一瞬止まり、深刻そうに美川は「アモンか」と呟く。

 

「随分と高名な悪魔ですね」

 

「どの程度伝承通りかは測りかねますが、現在敗北続きです。確実に、強いと言えるでしょう」

 

火傷の治った腕を見ながら、明路は頷く。

 

「連絡がありました」

 

数分。美川警部が通信機を取り出す。

 

「早いですね」

 

「我々もシェイド関連犯罪は追っていますから」

 

「レイフの仕事では?」

 

「確証が持てていないので回していません。あなたがたのヤマになるのは直接的な対処になってからです」

 

「二山ヨシオの時などは完全にこちらに一任されていましたが」

 

「臨機応変ということですよ。ゼロの捜査内容は極秘です」

 

情報収集を行う公安警察のチーム、ゼロという通称も今使われている物か分からず、明路もそこに掘りこむ立ち位置の人間ではない。レイフの技術が極秘なのと同じだ。

 

「まだ目撃情報の段階ですが絞っていくことは難しくないでしょう」

 

マーカーを地図に引き、美川警部と磯羅警部がまた強い視線で決意を固める。

 

 

 

「レイフからお声がけ?」

 

「珍しいと思うかしら?」

 

「そもそも初めてだよ」

 

同時刻。土田春子は警視庁本部の科学捜査研究所にいた。今タオアーマーをじろじろ見る松本は、警察官ではなく研究者。科捜研の職員はそうである。例外はレイフ。春子は警部補と同等の地位があり、捜査権も持っている。組織の特殊性ゆえだ。

 

「で、用件は何?」

 

「追ってほしい男がいる。指紋がついてるかは分からないけど、こっちからはいろいろと情報を出せるわ」

 

「情報?さっきから要領を得ないねえ」

 

「レイフとしてはヒミツと言わざるを得ないことも多いのよ」

 

春子がタオに取り付ける装置は流線形のな異様なもので、松本はいぶかしげに指紋や痕跡の捜査を始める。

 

「その装置は何?」

 

「形而上の多次元形状変化を読み取ってるのよ」

 

「はァ?」

 

「悪魔のつけた傷跡を見てんのよ」

 

「マジで何?おちょくりに来たなら帰ってよ」

 

「そういう風に見えんの?」

 

強い視線を放つ春子の様に気圧され、松田はやれやれと捜査を進める。

春子はしばしの思案ののち、あたりを警戒。レイフが何と戦っているのか、その口から語ることにした。

 

 

 

 

「……あれれ?よく見つけたネ」

 

「君は高いところが好きだったからねえ」

 

ベルゼブブは東京スカイツリーでのんびり地上を眺めていた。

 

「人間の肉体に収まってるとサ、やっぱり不十分で。飛べないんだよね~。せいぜい跳ぶくらい?」

 

「そうかい」

 

「天使は飛べるのカナ?」

 

「飛んでるさ」

 

うらやましーなー。あしをぱたぱた言わせながら、ベルゼブブは留一の方を見る。

菜摘と別れ、真っ先に彼はここへと向かったのだった。

 

「なーに?ぼくを手伝ってくれる?」

 

「まさか。私は人間の味方だよ。1から10まで」

 

「相変わらず!ウフフフ……。じゃあ用事は?」

 

「……」

 

逡巡。

明路と春子は、それぞれの形でアモン探しに本腰を入れた。当然シェイド犯罪者ゆえだが、そこには「湖冬を助け出す」という目標があり、そこには少なからず「菜摘のため」があった。

留一は、考える。

菜摘が戦うのをやめることに、一瞬だけでも、ためらう自分が恥ずかしい。愛に生きられるなら、それに越したことはないじゃないか。

自分が、そうしたかったように。

 

「アモンの居場所を教えてもらおうか」

 

ベルゼブブはにひりと笑う。

 

「君らしいネ。本当に君らしいよ……アザゼル」

 

 

 

蹴り壊す扉、その戸から光が差し込み。空虚なオフィスをただ照り、明路と菜摘は慎重に進む。

灯田(とうだ)レイジ。アモンを前世とする人間の名。

彼が職場とする「株式会社トモシビ」はやはりペーパーカンパニー。そこに、何ら活動のあとはなかった。

 

「何かあるか?」

 

「いえ。すぐに家宅の方へ向かいましょう」

 

「そうだな」

 

シェイドアモンが触れた痕跡を解析、翻訳し、指紋として捜査。戸籍情報と顔写真がかみ合い、あとは公安の領分。行動範囲から、自宅とオフィスを行動の拠点としていることは確かだった。

決め手になったのは、ベルゼブブが吐いた「他のシェイドとの通達に使う場所」。完全に、動きの動線を絞ることができた。

 

「現在の時刻と位置から、自宅の周辺にいる可能性が高い」

 

「ええ」

 

レイフの隊員たちがすぐさまオフィスの捜査に着き、明路たちは移動を開始する。まあ、当然邪魔は入るが。

 

「やっほーい」

 

「ベルゼブブか!」

 

「浅井さんが遭遇した……」

 

「ありゃりゃ、驚かないのネ」

 

「来ることは概ね想像通りだし。……行きますよ」

 

「ああ!」

 

『受胎告知』

 

『Taoism……Human power without god's hand』

 

第二体解放装置が現れるそばで、ゆっくりとタオイズムドライバーが巻き付く。

 

「「変身!!」」

 

『降臨……置換……変化……聖なる、開幕』

 

『Fitting……OK. Five senses assist is ready』

 

タオの体の情報が読み取られるその横で、菜摘はドサリと倒れ込む。レギエルが見据えるベルゼブブ。その手に、塔のキー。

 

『ベルゼブブ』『タワー』

 

その身に突き立てひねり、混ざり合うことで白黒の肉体が生まれる。シェイドベルゼブブ、大地を蹴って一瞬で眼前に。レギエルは防御間に合わずそのままにタックルを叩き込まれた。

 

「っぐあ!!」

 

「っは、遅いネ」

 

ぶんぶんと蝿が騒ぐ音。足についた翅がその原因らしい。

 

「……っく」

 

装着を終えたタオの援護射撃をかわしつつ、迫るベルゼブブ。レギエルは割って入り、その蹴りを拳でもって受け止めた。

 

「よいしょ!」

 

跳ね飛ばされるのはレギエルの拳の方。跳び蹴りがさらに後を追い、タオの弾丸を跳ね返しながらレギエルを蹴り倒す。

 

「っく…………!!」

 

「ならば!!」

 

『Ji-Du-TAO!Sun!That Sunrise!』

 

「避けろ雨野君!!」

 

太陽のキーをゴスペルブラスターへセット。合体させたショットブラスターから熱波を放った。

同時に、ベルゼブブに蹴られた勢いでそのまま飛翔。跳んで追うベルゼブブだが、脚の羽根は虚しく空を切り、そのまま地へ。熱がその身を焼き、膝をつく。

 

「あらラっ」

 

「逃がさないよ!」

 

『ペイドヴァラ』『教皇』『強制解放。介入、開錠、解放……教皇。その、束縛』

 

さらにレギエルの腰がはじけ飛び、赤と黒のそれが姿を見せる。放つ糸が確実にベルゼブブをとらえていく。

 

「ああ、もう~~~!よいしょッ!!」

 

無理やり引きちぎりジャンプで逃げようとするがそれを許すわけもない。空中でジャンプはできない。タオはバックルへとショットブラスターを近づける。

 

『Confirmed and Authorized. As you know, it's HISSATSU』『a.k.a. FINISH of Sun』

 

「あぎゃ!これはまずいカモ……」

 

「喰らえッ!!!」

 

ジャンプ力の高さがそのまま仇となる。熱波から抜け出し、続いて放たれる必殺射撃。放たれたときは既に空中。飛んでるのではなく跳んでるというまで。回避は絶望的。

 

「あれ、もしかしてッ」

 

仮にまあ、着地が間に合ったとしても。

 

『第二体抑制解放・教皇強制』

 

「だめっぽいネ……!!」

 

糸がその身を覆うのだが。そのまま火球がぶち込まれ、反動で転ぶタオ。明路のカメラ越しの視線には、キーを取り落し倒れ込む人間姿のベルゼブブが映った。

 

拜拜(Bye-Bye)!』

 

「よし……」

 

「僕、自宅の方に行きます!!」

 

「ああ、任せた」

 

「首尾は?」

 

入れ替わるように現れるのは春子。明路は仮面をはずし頷き、キーの方へ。警官たちに連れ去られるベルゼブブを横目に手を伸ばしたとき、放たれた衝撃波がその手を阻む。暴風から身を防ぐ程度の、その程度の衝撃は。

しかし、取り損ねたアルカナキーは、邪魔の主の手元にあった。

 

「……お前は!」

 

「ごめんね」

 

赤と黒が彩るその姿。六枚のごちゃついた翼が広がるその堕天使は、間違いなくルシフェル。

 

「待てッ!!」

 

呼びかけには答えず、ただ飛び去る。疲れも出て膝をつくタオを春子が支え、その姿をただただ見送るのであった。

 

 

 

 

 

「自宅を調べられましたが、どうにか逃げました。しかし……足がつくのは確かです。今後はいささか行動の範囲も狭くなるかと」

 

「ううん、ありがとねアモン」

 

「お褒めを頂き恐縮のいたりです」

 

渋谷のビルを見下ろし、意味深な悪役ごっこ。アモンとルシフェルが、夜の不夜城の街に照らされ。

 

「ところで……レギエルですが」

 

「何?」

 

「…………いいえ、なんでも。立て続けで恐縮ですが。我々への反目を理由としてベルゼブブを送り返すつもりのようでしたが……警察に好きにさせてよかったのですか?」

 

「君が手を下したかったの?」

 

「いえ、ですが……」

 

「だってさほら、結果的に私たちの邪魔ができなくなったんだよ。それなら任せとかないと」

 

赤黒く、闇と形容されそうな姿で、フフフと笑うルシフェル。そこに、案外妖しさはない。素直にも感じる態度で、脚をぷらぷらさせつつルシフェルは続ける。

 

 

「じゃないとさ、効率悪いじゃん?」

 

 

 




次回、「緑の隔世」
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