仮面ライダーレギエル   作:さわたり

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第十三話「独白、濡羽色。」

眼前、婚約者。

菜摘の頭は湖冬の顔でいっぱいになる。迫る手が狙う第二体解放装置。

 

「で、でも。いや、湖冬、君」

 

「……雨野君、逃げるぞ」

 

とっさに動いたのはタオだ。

 

「っでも!」

 

『コッフオル』

 

幻覚の煙幕を張り、姿を消す明路、春子、そして菜摘。彼は肩を掴まれ引きずられていったようである。慌ててあたりを探すルシファー、改め湖冬。空に舞うも、警察のトラックとバンが複数台。パトカーも2台ほど。全部を追って確かめるのは発見において効率的ではない。

 

「ルシファー様、現状」

 

「アモンはさ」

 

着地と同時、とさっ、と優しく落ち葉が舞い上がる。ルシフェルから漏れる声色は冷え、アモンやアスタロトに慣れた言い方をすれば、地獄の最下層、コキュートスのよう。

 

「はっ」

 

「アモンはなんで菜摘くんの方に行ったの?」

 

「お言葉ですが」

 

「いらない。私は質問したしそれ以外のことに今を費やすのは合理的でもないよね?意見ならいくらでもいっぱいちゃんと聞くよ。あとでね」

 

アモンは知っている。湖冬が合理性を他者に向けて武器にするのは怒りのさなかだけ。……当然だが、菜摘も知っている。

 

「申し訳ご」

 

「謝れとも言ってないよ?謝意を述べるのは大事だしそれが関係の円滑を産むのは確かだけどこの状況ではマイナスになるのわからない?」

 

「……雨野菜摘が貴女に擦り寄るであろうことを想定し防止に動きました。彼はあなたにふさわしく」

 

ルシフェルの手が伸びる。勢いをつけて、アモンの胸元。襟元。

……開いた手が止まり、震えながらその手を握りつぶす。吐息からすらも漏れる怒気を押し殺し、ルシフェルは続けた。

 

「その判断は私がすることだよね?レギエルって観点で見ても悪戯に敵対することの効率の悪さわかる?」

 

「……はい」

 

「分かってるならもう手は出さないね?」

 

「保証はできません。レギエルと貴女の関係は腹に据えかねています」

 

「なんでポッと出のアモンが首突っ込めると思ってるんだろう。まあ、君を殴ることは双方にメリットがないし、君を私のイチ感情を理由に解雇もしないよ。私達の仕事の上では引き続き信頼する」

 

ルシフェルがしゃがみ込み、膝をついたアモンをすぐ近くで見下ろす。

 

「でも嫌いになっちゃうよ?友人としてのアモンの評価が下がるのわかんない?」

 

「……」

 

「災難ねアモン」

 

「アスタロトも。アスタロトもさ、アモンと私を急かしたいのも分かったし君目線で私達が遅かったのは謝罪するよ。ごめんなさい」

 

「ルシファーさま何も」

 

「でもアスタロト。春子さんあんなにしたのは怒ってるからね私。戦いは避けられないかもしれないけどさ、今回はやり方として最悪の部類だからね?」

 

「反省してるわ。すっごく」

 

「……ならいいけど」

 

踵を返し、ルシファーは羽を広げる。

 

「手筈はすんだ?」

 

「ええ、既にSNS等で流れています。悪魔の姿に関して一部の科学的原理も」

 

「あっは!!天使達ってばミステリアスごっこがちょっとバラされて可哀想だわ。いいざまでしょ?」

 

「ありがとね、アモンにアスタロト。じゃあ行こうか」

 

悪魔2人と向き直り、さあ作戦開始である。

 

「日本政府に、地獄と第二体の存在を飲み込ませる!」

 

 

 

 

 

第十三話「独白、濡羽色。」

 

 

 

 

 

「……」

 

「……」

 

「ちゃんコフに会えた空気じゃないね」

 

沈黙を真っ先に割るのはいつも留一の仕事である。とはいえ、明路は「ああ」、春子は「そうね」、そして菜摘はうつむき。ろくに静寂がおさまらない。

別に和気藹々である必要はないが、それにしても普段を思えば異常である。話題となる内容は先ほど渡された書類にいくらでもあるのだが。

シェイド周りの、法改正の案についてだ。対処してきたレイフには意見を求められている。……その内容は、ルシフェルの登場によるものだ。

 

「菜摘くんは……休むといい。家に帰るのもいいだろうし、ここで休んでもいい」

 

「……帰ります。シェイドが出たら、……電話、ください」

 

見るからにとぼとぼとした様相で、立ち去る背中。見送った3人の作戦会議が始まる。

 

「ルシファーがちゃんコフ。この認識はいいね」

 

「同時に地島はレギエルのベルトを狙っていた」

 

「理由は不明だが……想像はつく」

 

頷く留一。……愛、ゆえだ。

浅井留一ことアザゼルには、心当たりやそれに類する感覚がある。

 

「彼女の目的がなんとも言えない以上、あまり放置もできない。しかし、彼がレギエルとして戦うことは俺たちには本意ではなかった……」

 

「……ああ、クソ!素直に喜ばせなさいよ……!」

 

湖冬か、果てはこの状況か。怒りを吐露する春子を見て明路は彼女のそばへ。

 

「ひとまず喜ぼうと言いたいが彼抜きに万歳をするのも違う。全て解決したらいくらでも喜ぼう。俺たちで食事でも行こうか」

 

「ええ……そうね」

 

「結局どうする?ちゃんコフに任せてなっちゃんの変身能力?でも奪わせる?」

 

「仮にそうなって。その際に欠けた戦力は……はっきり言えば俺はタオでどうにかするつもりだったが」

 

「どうだろ」

 

留一が視線を下ろすのは法改正についての資料だ。

 

「その法を見れば歴然か。……実際はシェイドへの対処はルシファー達を中心に行うという形を取っている」

 

「政府的にはちゃんコフ信用はしないだろうからレイフ解散は無いとはいえ……」

 

「そもそも地島は真面目にやるでしょうね。雨野がやろうとしてたと知ればなおさら」

 

「ああ、俺たちの仕事は無くなるという形だ」

 

「あれ?ミチくんポストにこだわるタイプ?違うでしょ」

 

「俺が問題視してるのは、できるとしても全て地島くんに押し付けることだ。それも国単位でだ」

 

「お得意の無力感かしら?」

 

「そうだ。俺が個人的に、そして自分勝手に、俺自身の無力感を晴らしたい」

 

そういうとこが好きなんだ。今の緊急事態でさえ、春子はそんなことを考えてしまう。

 

「確実に雨野と地島の関係に揺れが起きる。ほっときゃすぐイチャコラし始めるだろうけどすぐ喜べないのがあたしはなんか嫌。雨野に気を使うのも嫌。地島のこと笑って話せないのも嫌」

 

「ま、私は君らがやるならついてくよ。技術的な証明はしたいところだし」

 

「決まったな。政府への意見はレイフ上層部から伝えてもらうとして、俺たち実働部隊に対処が一任された状況はまだ法的に変わっていない。手っ取り早いのは地島君への交渉だろう」

 

「でもちょっと待ってよ。現状ちゃんコフ人類の味方説で動いてるけどさ、アモンとアスタロトを見るに黒田達と接触あったってことにならない?」

 

留一の視線の先は、春子のデスクに置かれた腕時計。抽出機である。黒田2人が売り捌いていたアイテムを、アモンもアスタロトも持っていた。ベルゼブブも。

 

「俺も思ったが、地島君の顔を思い浮かべてみろ。その上で抽出機を持たせる。なんと言う?」

 

「『使えるものは使った方が合理的ですよね?』だね」

 

「『泳がせておいた方が効率的ですから』かもしれないわね」

 

「彼女には考えがある。それは確かだ。まあ想像で断定し信用し切るつもりもないが、先程の資料のシェイド犯罪者に関する話で黒田に触れているようであった」

 

「しらばっくれる気はない、ってのは確かかな」

 

「おそらくな」

 

「じゃ、やっぱ方針は決まった感じかしら?……問題は雨野だけど」

 

「彼にその意思を問う他ない。彼が正義のために戦いたいのなら、俺はそれに協力したい」

 

「あれ?意外だね。ミチくんは『君は戦うな』って言うかと」

 

「力や意志があるのに前に向かえないのは一番もどかしい。俺は自分の身勝手と一緒にそれも理解した」

 

「あんた、なんか顔スッキリしたわね。前に比べて」

 

「そうか?」

 

「かっこよくなったわよ」

 

何言ってんだあたし。そう思うより先に、明路の笑顔とありがとうが飛んでくる。目を見開く春子をよそに、明路は菜摘に連絡を取ると告げて外へ。

 

「大胆ですねお嬢様」

 

「次おちょくったら感電死させるわよ」

 

「ごめんって。キーはしまってよツッチー」

 

「ったく。……タバコ行ってくる」

 

立ち去る春子。その背に小さく手を振り、そして糸が切れたように留一、ため息。

 

「ごめん。正直……僕はちゃんコフに肩入れしちゃうなァ。愛ゆえに突き放してでも守るべき時って、絶対にある」

 

愚者のキーを握り、1人呟いてただ俯く。

 

 

 

「ルシファーに対処しなさい。理想は彼女らが地獄に帰ることですが」

 

「僕は嫌です。湖冬と分断されたくなんかありません」

 

明路との電話を終え、菜摘はガブリエルを若干睨み付ける。

 

「しかし意外です。あなたの戦う動機はアキエル絡みだけかと」

 

「悲しみで闘うなとお説教したのは誰だと思うんです」

 

「私としては喜ばしいのですよ。あなたが磯羅明路に自ら戦いたいと宣言したこと」

 

「それはどうも。実際のところ、湖冬が安心して暮らせるようにしたいだけですけどね」

 

「アキエル、いえ……ルシフェルの方がいささか強いかと思いますが」

 

「倒せるとしても戦わなきゃいけないって、安心した暮らしではないですよ。少なくとも全部湖冬に任せるのは、僕は嫌ですし」

 

「立派なことです」

 

ガブリエルが姿を消す。静寂。落ち着いて初めて、菜摘は脳内がまとまってきた。そうだ、湖冬と話せる!!湖冬と会えた!!湖冬は元気だ!!

その事実が、何よりも嬉しいと沸き上がる。きっと分かってくれるだろうと言う希望すら湧く。

 

「あ、居た居た」

 

コンビニに行こうかと外に出れば、湖冬がふりふりと手を振り。マフラーとコート。寒がりの彼女らしく、秋と言うより冬らしい格好だ。

 

「湖冬……!!」

 

脳内で爆発する様々なあれこれ。口も回らず、視線がぐるぐるする中、湖冬は落ち着いている。菜摘が慌てても、彼女はいつもにこにこして動じない。相変わらずだ。

 

「わ、綺麗だね?すごい、これ最後に掃除したのいつ?」

 

「え?あ、車……昨日だよ」

 

「だよね!すごい~、へへ……」

 

嬉しそうに笑うと、運転席のドアを開けた。鍵ある?その問いに若干困惑しつつも菜摘は鍵を出した。助手席に座りながら、菜摘は婚約者の顔を見る。

明路の運転する助手席は座ることがあるので、三年ぶりというのは微妙な状況。そもそも湖冬自体まともに会うのは三年ぶりと言えるが。

 

「君は、僕がたたか」

 

「しー……。私とまず話したいのがそんなこと?」

 

「……生きてたんだね」

 

「うん。アモンの行動はね、明確に『スカウト』だったよ。当時のルシファーの命令だったけど」

 

車が動きだす。湖冬らしい、ゆっくりした安全運転。ごく普通かつ交通ルール超厳守の明路、若干粗いけどやっぱり交通ルール超厳守の春子とも違う、合理性の塊のようなリスク回避運転だ。

 

「世襲制なんだっけ。じゃあ、僕から君を奪ったのは先代ルシファー?」

 

「そう!ついでに言えば私から君を奪ったのもそうなるよね」

 

「そいつはどうなったの」

 

「アモンと一緒にぼこぼこにして監獄だね!」

 

「随分仲いいんだね」

 

「悪い人ではないよ。悪い人ではないだけだけど」

 

「ふふ、そっか。仲良くするよう努力するよ」

 

「んん~~難しいと思うな!」

 

「え、そうなの?」

 

くすくす。笑いながら頷く湖冬。ああ、この笑顔が見たかった。ずっと、見たかった。

 

「そういえば、結婚式……どうする?」

 

「しばらくは無理だと思うな~。職種的にも安定はしないし」

 

「僕も同意見。そもそも、したい?」

 

「お義父さんは……なんて言っただろう。してほしがったかなー?」

 

「ん~、父さんは……幸せならそれでいい、とかやりたきゃやれって、感じかなぁ」

 

「だよね。私のとこもそうだと思う。しない選択肢も普通にあるし……」

 

「あ、っていうか、湖冬!お義父さんとユキちゃんとは会った?」

 

「あ、まだ!!会いたいけどいきなり連絡してもビビられるだろうし、いろいろ落ち着いたらだと思う」

 

「んー、まあまた改めて一緒にね」

 

「……うん」

 

「……湖冬?」

 

「んーん!」

 

軽くかぶりを振る。あまり見慣れない道を行き始めるあたり、よく行っていた豊洲のららぽーととかではなさそうだ。しばらく身の回りの話をして、話題を戻そうとなったころ。

 

「結婚式、ていうか。同級生とかで、思い出す話なんだけど……さ。その」

 

「調べてるよ、シェイド周りに関してはさ。……まあ、ちょっと、意外だったけど。日向(ひゅー)ちゃんに関しては」

 

「気づいてた?」

 

「うっっっっっすら察してたけどねー。私の事みて菜摘君はあきらめてくれると思ってた」

 

日向葵、菜摘と湖冬の中高の友人にして、節制のアルカナ、悪魔サンファロエを前世に持つ女性。

菜摘への恋情ゆえに、彼に襲い掛かった、犯罪者。

 

「正直悲しいよ、僕」

 

「……そりゃ、私もだよ。友達だったし。てか、恋人の菜摘君を置いとくとイチバンの親友だったはずだし」

 

「……あー、その」

 

「着いたよー」

 

ごく普通の住宅街。静かで人があまりいない公園。近くの駐車場に止めると、少し歩こうか、と散歩のお誘い。他愛のない話ののち、座ったのは公園のベンチだった。

 

「ここは?」

 

「会わせたい人が居るんだよね」

 

LINEをいじって、秋の空を見上げる。冬前、とも言える11月だ。

静寂。少し手も重ね、優しい空気が流れ。それでも湖冬は息を吸い。

 

「……菜摘くん。第二体解放装置を出して」

 

「ごめん。できない」

 

「お願い……手荒いことなんてしたくないよ……!」

 

「僕もされたくない!君に手荒なことをさせたくない。誰が相手でも」

 

「なんでガブリエルの言いなりになるの?」

 

「僕の意志だよ」

 

「そう思わされてるだけだよ。そうじゃなかったとしても、やっぱり菜摘くんが戦い続けてるのは、嫌だ」

 

「……」

 

無言でお互い目を逸らしあう。そんな2人に、「修羅場?」と少年が声をかける。

 

「え、その……」

 

金古(かねこ)くん。えーっと」

 

「アモンから色々聞いてますよ」

 

「もしかして」

 

「まあ悪魔やらせてもらってます」

 

落ち着いた態度で少年は菜摘を見る。

 

「この人が?」

 

「金古くん。力のキーの持ち主」

 

「元の、持ち主ですよ。預けてるんで」

 

「あっ!返すね」

 

湖冬はハサミのようなパーツを取り出すとそっと右手で触れ。ぼうっ、と右手とパーツの間に炎が起こる。

炎を掴んで引き抜けば、それはアルカナキーの形を成していた。

 

「ありがとうございます。ちょうど俺、天使に一発食らわせたくて」

 

「何する気?」

 

いきなり凍りつく空気。黒いメガネから覗き込む目線がまるで芯から軽蔑するように金古少年に突き刺さる。

 

「レギエル殴る気はないですよ」

 

「では俺でも殴ってみるか?」

 

突然かかる声。明路のそれである。春子もキーを持って車から降りる。追跡していたようだ。「まあ仕方ないよね」と、湖冬は小さくつぶやいた。

 

「そういえば言い忘れてましたけど明路さん。タオ完成おめでとうございます!留一さんにも伝えといてくださいね」

 

「ああ、そうするよ」

 

「で、今は何をしてるの?」

 

「菜摘くんを説得中です」

 

「戦わないようにか?」

 

「いーえっ」

 

にっこり。先程の金古に向けた視線とは全く違う、暖かくやさしい笑みだ。

 

「地獄で生活してもらおうと思います。こんなとこで天使たちの傀儡にはさせません!」

 

転じて真面目な顔で見つめる。その目は、アキエルとして戦う時と同じ、覚悟や慈愛の目。

 

「俺もガブリエル氏を理解しているわけではないが……彼女の指令は確実にこの社会の平穏を守るためのものであった」

 

「ま胡散臭いのは確かだけど……」

 

その声に割り込む、かちりと言うスイッチを押す音。

 

『ヘパイストス』

 

パワーのキー。その声を吐いたのは確実に、金古の持つキーだった。音がした方を見て、少しして、首を傾げる明路。

 

「ギリシアの……神だぞ。悪魔では」

 

「アモンも。……アスタロトもベルゼブブも!……元々は神でした」

 

金古少年は手のひらのキーを回しながら続ける。

 

「ルシファー様は7人のキーを使い、頭、胸、右腕、左腕、腰、右脚、左脚。その全てに悪魔の力を宿します。レギエル、君の強制解放を全身でおこなっているようなものです」

 

金古少年ことヘパイストスこと金古少年。力のキーを投げ渡し、受け取った湖冬はハサミのようなパーツにかざし。炎になりパーツの中に飲み込まれる。

 

「王であるルシファーとサタンの力を除き、俺含め5。モリガン、ヘパイストス、アモン、アラハバキ、ベルゼブブ。全て神々だった者です。彼女は自らの力を象徴としている」

 

「だいぶ仰々しいけどそういう感じ」

 

「……まさか、レッシオルとコッフオルは!」

 

頷くヘパイストス。明路が思い起こすのは、博物館で見た展示。

東南アジアの悪魔信仰?違う。一切の文句のつけようのない、「神々への信仰」である。彼女が、コッフオルが再びと思い描くのもむべなるかな。

 

「悪魔って、言うのは」

 

「天使たちが神々を蹂躙して悪魔という枠に押し込んだだけ、だね。ミカエルたちの信じる『主』という“何か”の名の下ね。本質的に、天使と悪魔。そして神々は同じ存在ってことなの」

 

少し怒り混じりに吐き出す湖冬。改めて優しい目を菜摘に向け、歩み寄る。

 

「ねえ、天使たちに押し付けられた使命は捨てて地獄で一緒に生活しよう?悪魔は悪魔が悪魔の法で裁くし、それが天使に許されるはずないよ」

 

「僕は人間界の話をしてるんだよ。人間界で悪さする人を人間として僕が裁く……いや、法に裁かせる」

 

「相手は悪魔だよ」

 

「悪魔というだけの人間。僕も天使というだけの人間だよ!君だって、同じ立場なら言うでしょ?天使の力、どうせ手に入れたら利用した方が合理的だって」

 

「っは、あはは!言うなあ、うん、言う」

 

「だよね、へへ」

 

「じゃあもう、力づくしかないね」

 

『客星堕天』

 

スッと、腰に手を当てる。そうすれば、そこに「あったことに」なる。鎖が巻き付いた、赤く染まった装置。第二体()()解放装置。同時に湖冬の背中に黒い翼が広がる。

レギエルのそれに似た腰の装置。普段アルカナキーが刺さるそこに、先程のパーツが刺さる。ハサミのようだが、刃の部分は2本の曲がった針のようで。言えば、キーピックだ。

 

「そういえばインタビュー映像見ましたよ、明路さん」

 

「……」

 

「変身!」

 

『超強制解放!』

 

瞬間、湖冬の肉体が血を撒き散らし、肉片として爆散する。びちゃびちゃ赤い雨が降る中、湖冬が居たそこに居る。

菜摘が見ればその立ち姿で湖冬とわかる、堕天使。ルシフェルである。

 

『堕落……腐敗……謀反……堕ちたる、終幕!』

 

4枚の翼がさらに広がり、また畳む。湖冬だった肉片と血が全て粒子になって消えゆく。地獄の開幕の中、ルシフェルはゆっくり菜摘に迫る。

 

「雨野君!」

 

「これは僕の決着です!」『受胎告知』

 

「違う!!君が彼女と相思相愛であること、君にやりたいことをしてほしいこと、地島君を説得したいこと。全て別だ!そして俺は今戦う!それだけだ!」

 

「言っても止まらないでしょうねあなたは!変身!」

 

『解放。降臨……置換……変化……聖なる、開幕』

 

「分かっているじゃないか」

 

『Taoism……Human power without god's hand』

 

タオイズムドライバーを巻き、トランクケースを置いたタイミング。ちょうどそのタイミングで、声が降ってくる。

 

「これはどう言う状況かな?」

 

「黒田翼、八千代……!!」

 

金古が見上げて呟く先。男女が仲良く並んで座っている。

 

「どうしますか、叔父上」

 

「手加減は失礼かもね。ま、様子見をしつつ」

 

女の、戦車のキー。

男の、吊られた男のキー。

同時に声を上げた。

 

『スレイプニル』『チャリオッツ』

 

『オーディン』『ハングドマン』

 

「な……んだと!?」

 

明路が見上げ、即座に変身開始。隣で春子はシェイドハイプリステスへ。降りてくる2人を前に構え。

黒田2人、改め、翼、そして八千代はその手にキーを突き立てる。

その身の中から湧き上がる何かと融合し。タオのカメラに映る変身の姿。白黒の怪物。6本の腕のシェイドスレイプニルと、杖を構えた、シェイドオーディン。

 

「さあ、近いですよ叔父上」

 

「ああ、ラグナロクを起こそうか!」




次回、「告白、蘇芳色。
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