仮面ライダーレギエル   作:さわたり

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レッシオルたちは日本語話してるの?という疑問があるかもですが、彼らは第二体に話しかけてるので、聞いてる者の母語に聞こえるようになってます。
というよりは意味とかを直接流し込まれたものを脳が補正してます。ミ゜とはなりません。意外と脳は優秀です。


第十八話「反駁は黄色」

脱獄直後の隠れ家は廃倉庫だった。特殊刑務所があるのは埼玉南部。北上し、熊谷にその隠れ家はある。

矢沢裕絵と矢沢裕香を連れてサタンたちが動いているとき、二人もそこに居た。

 

「……で、どうするの?これから」

 

「いわゆる悪事、続けんのか?」

 

二山ヨシオ、鋼誠。その手に、タオから奪還した教皇のキー、正義のキー。サタンことマシロはケタケタ笑うだけ。

 

「俺たちは天使のやり方を変えるだけだ」

 

そのそばで、アスモデウスはただ頷く。がりがり、誠は頭をかいた。

 

「そうかよ」

 

「……でも俺、あんま興味ないんだけどねそーゆー高尚なの。あんたたちはどうなの?」

 

視線を向けられ、裕絵がこれまた裕香を一瞥。少し離れた場所でサタンと話す顔を見て、ため息をこぼし。

 

「俺は裕香が幸せならそれでいいよ」

 

寂しそうに、笑って。

 

 

 

 

 

 

 

 

第十八話「反駁は黄色」

 

 

 

 

 

 

 

 

脱獄の騒ぎがひと段落した。いや、多くの面々がつかまっていないのだが、大きな動きがない。

コッフオルとレッシオルが姿を変えた……春子や翼曰く「地獄での姿になった」一件以降、だれも姿を現していない。一触即発のあの状態でも、結局コッフオルの霧で撤退されてしまったのだ。

即座に力を振るうわけではないようで、警察機関と関係はない湖冬、そもそも一般人の菜摘。この二人は戦いが起きそうになるまで自分の生活をしていてくれとの事だった。

 

「……ンン」

 

「おはよう、湖冬」

 

薄着の菜摘の体の所々が赤い。よく見ると、キスマークや噛み痕に見える。暖房の効いた部屋と肌着。贅沢な冬である。

 

「昨日の記憶、あんまないや……」

 

「あんなに飲んでる湖冬、久しぶりに見たかも」

 

起き上がる湖冬、自分の髪や服がいかにくちゃくちゃかを思い知り、窓に映る自分を見てくすくす。

 

「すごかったっぽいね」

 

「そりゃもうね、フフフ」

 

「ごめんねぇ……」

 

「まだ抜けてない?お酒」

 

「かも」

 

あくび。若干の頭痛と戦いつつ起き上がり、ふらふらとリビングへ躍り出た。

 

「……日向さんのこと、」

 

「やめて」

 

「っ、」

 

「……ごめん、あのおん……日向ちゃんの話、今したくない。」

 

「そっか」

 

留め具をはずし、まだ空いていなかった袋をハサミで開けて。8枚切りのパン2枚を、トースターにセット。

湖冬も手伝うというが、菜摘は強情。パンケーキを焼いて、さらに並べた。

 

「……いや待って、てっきり私スクランブルエッグかと。卵割ってたから」

 

「パンケーキミックス、賞味期限近かったからさ」

 

「おやつの時間に作ればいいのにー」

 

「今日はお出かけするでしょ?ほら、使えるときに使うのが効率的じゃん」

 

「それだすのズルいぞー!私の効率はやりたいことやるための近道だもん!」

 

「じゃあ僕のパンケーキ食べないの?」

 

「食べる!」

 

バターを塗ったパンと並ぶ小さなパンケーキ。のせて食べても案外食べられるが、やはり奇妙な感覚。

 

「炭水化物と炭水化物」

 

「焼きそばパンとかあるからさ」

 

「確かに……でも太りそ」

 

「胃に優しいものの方がよかったかな?二日酔いっぽいし……」

 

「んーん、私朝はいっぱい食べたい人なの分かるでしょ」

 

「まあそっか。エネルギーだもんね」

 

「んふふ」

 

「ふふふ」

 

ちょっとあほらしくなって、にこにこしてしまう、そんな朝。

食べ終えて、テレビをつけてだらだらする時間。最初はニュース番組だったが、10:00が近づくと、眼の色を変えて湖冬はチャンネルを変えた。

 

「あそっか、今日土曜日ってことは……メタクロ!」

 

「そゆこと」

 

『鉄騎十結!メタリオンクロス!』

『時代が交わり~、鋼は受け継~~がれ~!』

 

「今日アバンないんだ」

 

「最近ないね」

 

「そういえばセカンドはないんだっけずっと」

 

「あとブラストバーストもないね、メタブバは回帰路線二作目だからさ」

 

どちらかと言えば、オタク寄りの湖冬。あまりそちら側でもなかった菜摘も、気づけばメタリオンシリーズは半分以上見てしまった。

きっちり30分見れば、次は女児向けのアニメ、ビギニングシリーズ。こちらはなんとなく見ているだけだったのだが、ストーリーが非常に面白く、のめり込んでしまった。

何より、地獄でギリギリ電波をつなぎサブスクでメタリオンを見ていた湖冬と違い、菜摘はビギニングシリーズも三年分見ている。女児アニメでは彼が上手(うわて)だ。加えて。

 

「ほら見て!今の服!」

 

「は?え、この服、え、すっごい!」

 

アーティストとして服飾に絡むことも多い彼なのだが、ちょっとしたコラボが発生し、なんとアニメに登場。エンドロールの衣装デザインに、雨野菜摘の名前が刻まれる。

 

「え、やば!なんで言わなかったの!?」

 

「今の反応が欲しかったから」

 

満足げにコーヒーを流し込む。土曜朝のルーティンは終わった。

 

「入場何時だっけ?」

 

「14:15だね。外でご飯食べていこうか」

 

現在11:00。本日のデート先である水族館、その最寄り駅までは30分程度なので、今出れば食事含めちょうどいいだろう。準備はささっと終えて、二人は冬の東京に躍り出る。手をつなぎ、寒いねと言い合いつつどっちかのポケットの中を行き来。

息は真っ白く。

 

 

 

「あれ、気が進まないんじゃなかったの?」

 

「ちゃんコフも、なっちゃんも、ヘネみたいなことになってほしくないからさ」

 

「……あんたのお嫁さん、だっけ?」

 

「うん」

 

留一がPCを叩く。調査用の機器が接続されるのは、抽出機とアルカナキー。

こちらの次元のPCで使えるデータは持ち合わせていないようで、開発者の翼と八千代により隣での解説付きだ。春子は喜びたいが、理由が理由だ。しかし手伝えるならそれがいいと画面を指さし。四人がぎゅうぎゅうに集う、ちょっとかわいげある光景。

 

「アザゼル、君は……難儀な男だね」

 

「否定の言葉が出ない~」

 

「んん……」

 

「ここの仕組み分からないの?」

 

「抽出機は概念的解放口をこじ開けて、ちょっとだけ吸い出す装置だからな」

 

「んの概念的解放口って……」

 

「天使の第二体解放装置でも使われている部品さ」

 

抽出機のドアを模したパーツを、八千代がツンツン叩く。

 

「リンクのある別次元の体を完全な状態で移動させ、もう一つの肉体は格納して別次元に碇として留める……謎技術もいいところだ」

 

「抽出機って、要はアレよね?第二体を少しだけ吸い出して、第一体にへばりつけることで……」

 

「そうだ。そもそもこの次元の体を用いるから碇はいらない」

 

「で、そのリンクのある体を吸い寄せるの自体がぁ~~」

 

「ああ、ブラックボックスの概念的解放口を外からの付けたしで無理やり利用している」

 

「……第二体解放装置をいじりたいわね、もはや」

 

「ルシファー側の堕天使は第二体解放装置を持ち逃げするって感じかしら?」

 

「うん。ロックされるから使えないんだけど、悪魔の力の欠片を大量に詰め込んでこじ開けてるのさ」

 

「それが、不正解放機」

 

翼が置いた写真に、ルシフェルの使う機器が写されている。不正解放機はどこかアルカナキーに似て、またキーピックにも似た装置。

 

「ん?じゃあ待ってよ、サタンがアルカナキーを作ったなら、第二体解放装置にカギ穴があるのは変じゃない」

 

「あれは兵装追加用。開ける際に混ぜ込むことができるから、ほらなっちゃんがキー使ったら強制解放で、外付けじゃなく部位丸ごと違う見た目になるでしょ」

 

「じゃあ、もともとある拡張用の穴に合うように作った、ってわけね」

 

「不正解放機も、アルカナキーもね」

 

「技術者としてはなんかイラっとする脆弱性だな」

 

「「「わかる」」」

 

「……ま、ラファエルが何も考えずにこういうことするわけがないからねェー。実際天使側に何ら不調が発生してない。ウイルス的な技術、試さないわけがないもん」

 

「きな臭いわねェ……」

 

「天使連中はずっときな臭くないか」

 

「「「わかる」」」

 

意気投合したはいいが、進まない。曰く、春子が言っていた第二体を用いるタオ用兵装の開発が目標らしいのだが、やはり扱いづらい。

 

「抽出機そのままはリスクがね」

 

「そもそもガードの機能があるからね」『オーディン』

 

「ああ、はいはい」『ハングドマン』

 

キャッチした春子が意図を察し、キーを抽出機にセット。翼の言うパスワードを入力しても、自らのパスワードを入力しても、『融合解放』の声は聞こえない。『使用不可』と、同じテンションで返答が来るのみ。

 

「仮に可能にしても何も起きないとは思うけど、差し込んだ時点で何か誤作動があってもよくないし」

 

「ヒュ~、ユニバーサルデザイン!」

 

「それは違くないか」

 

「まあつまり、明路が使うのは無理って事?」

 

キーを卓上に戻しつつ、春子はため息。

 

「……普通の人間の第二体をどうこうするのは、『第二体と同じ次元のエネルギーを持った魂が受精卵の時点で融合する』とかじゃないとできないんだよ」

 

「一応、もう一個あるでしょ」

 

「まあな……。『天使が第二体を改造する』、だな」

 

「レギエルとアキエル……はぁ、またあいつらの技術の壁かよ」

 

「何か手出しが必要なのですか?」

 

四人が一気に振り返る先、神出鬼没、ガブリエルだ。

 

「いいところに来たじゃん」

 

「私は賛同しかねます」

 

「言ってる場合?サタンがやろうとしてるのは天使への攻撃が有力よ?」

 

「それはこちらの問題です」

 

「どうだかねェ~……キーを持って生まれたってことは、サタンのせい、てゆーか、サタンのおかげで僕らは人間界こと第一層にいるわけだ」

 

「わかりかねます」

 

「それとも、体よく追放を隠したのかな?サタンの新技術を試され、なおかつ……私オーディンや、アマテラス、モリガン、ヘパイストス。相応の発言力を持つ面々だ。消えれば天使側も制御しやすいな?」

 

「しかもクーデターへの対応としてごまかせるものも多いと来た。弁解は今しておくべきだと思うが」

 

悪魔四人に迫られれば、ガブリエルも感情を見せるというもの。ため息ののち、視線を流す。

 

「ミカエルに話してみましょう」

 

「そのあとはラファエルにも頼むよ」

 

「検討します」

 

霧散。春子が舌打ち、留一が頭を抱え、黒田二人が呆れ笑い。

 

「ガブリエル、僕めっちゃ苦手」

 

「「「わかる」」」

 

 

 

 

スカイツリー自体が、というのもあるが、そこに隣接するすみだ水族館もなかなかカップル向けである。魚の展示数が多いのもそうだが、飾りや、内装、照明がロマンチックになっている。二人ももっと若かったら、だれも居ない水槽の前でキスでもしていただろう。

 

「かわいいねこいつ」

 

「なんか……なに、砂食べてる?」

 

「こういうのって微生物食べてるらしいね」

 

「見えてるの?」

 

「クジラみたいに砂ごとなのかな?」

 

「あ、それ分かる。水ごとオキアミ食べるんでしょ」

 

「豪快だよね」

 

小さく、可愛らしい魚たち。また、近くのエリアはクラゲを売りにしているようだ。幻想的な風景で、何となく心が洗われる。

最近思い詰めることも多かった。特に、菜摘。大好きな湖冬とここに居られる、なんだか、涙がこぼれそうで。

 

「絶対、わけぎとも来ようね」

 

「うん、絶対ね」

 

手をつないで、ペンギンの水槽近くの椅子に座り。ペンギンたちの楽しそうな姿を眺め。そのぼんやりした空間だけでも、けっこうな時間、心地よく過ごせる。

そして突然、声が割り込み。

 

「かわいいよなァペンギンて……。俺も無粋っつーのは分かるんだけどさ、でもさ、気にもなるんだよなァ~~~~~ッ、ペンギンって美味いのかどうかさ」

 

二人の後ろに、また二人分の座る気配。

 

「サタン……!」

 

「マシロって呼んでよ、キラキラネームみたいじゃん悪魔(さたん)くんっつってさ」

 

「じゃあお隣は?」

 

更科桃色(さらしな ももいろ)。」

 

たがわず、アスモデウスの声で返す。

 

「……」『受胎告知』

 

「はァ」『客星堕天』

 

「ちょいちょいちょいちょいちょい、違う違う違う違う。俺らその気はねえよ」

 

「天使側と戦うつもりなんだろ」

 

「お前天使側なの?……ルシファーのダンナさん?」

 

意地の悪い笑い声と共に、マシロは吐き出す。

 

「クリスマス近いからカップルチケット、ってのはいいよなァ。俺たちカップルっつって入るのに手間取ってさァ。わざわざ二個身分証明書出したんだぜ、桃色」

 

「はい。」

 

「……いくつなの?」

 

「21歳です。」

 

「俺23ー」

 

「そういうのいいから、何しに来」「雨野わけぎ、」「!」

 

マシロの口から出た名前。一瞬のうちに最悪の想像が巡り、二人が振り返る。

 

「……いや、最近は夫婦別とかもあるし、嫁側ってのも多いよな……。しかも地獄の権力者だしな、片方。地島菜摘、雨野湖冬、雨野わけぎ、地島わけぎ。ん~全部語感悪くはねえな。やっぱ姓名判断で」

 

「わけぎに何の用?」

 

「待て待て待て解放機を出すなって!第一」

 

「サタ、マシロ様」

 

「今は様ダメ」

 

「……マシロ君。神経を逆なでする必要はないと思うのですが」

 

「焦らした方が効果的だろ~?……まあ言うとさァ」

 

二人の心臓がバクバク鳴る。いつでも戦えるように、心構えをして。

 

「わけぎちゃん、俺なら連れてきてあげられるよ」

 

「……え?」

 

「ほ、本当?」

 

「本当です。」

 

「あんたがこっちに来たのも、アモンとかがこっちに生まれてあっちに行ってこっちにくるのも、俺が確立した……てよりは簡単に使えるようにした技術だ。可能、ってのはわかるだろォ?」

 

「じゃあ、わけぎを「ねえ」

 

菜摘が食いつこうとするのを湖冬が制する。マシロに向ける視線、コキュートスに例える凍りついたその目。

 

「そっちのメリットは?」

 

「……確かに、君らの目的は?」

 

「俺らが湖冬嬢相手に策なしで行くわけないでしょォ? あるよ俺らにメリット」

 

「何?」

 

「そもそも俺たちは天使の体制を変えたいだけ。俺たちはレギエルのスタンス次第でどう転ぶかわかんないから手っ取り早いのに訴えただけ。……で、あんたらは案外ガブリエルに批判的姿勢だった、って」

 

「ふぅん?」

 

「気が早くない?そんな奴信じるのやだな僕」

 

「俺より合理を信じろって」

 

「矢沢姉弟のあれは」

 

「レッシオルとコッフオルとして完全に化現してもらっただけ。本人たちの要望だぜ?」

 

「……持って帰らせて」

 

「時間はいくらでも待ちますので。」

 

「行こう、湖冬」

 

「うん」

 

「おいおい、ペンギン見ねえのォ?」

 

「もう見た」

 

足早に立ち去った二人を見送り、アスモデウスこと桃色がマシロの腕を掴む。

 

「あー……カップルごっこはいいよもう。受付通ったンだから」

 

「そうでした」

 

パッと離す桃色。終始無表情。

 

「どう思う?あいつら受けそう?」

 

「微妙かと。」

 

「俺もそー思う」

 

「どうしますか?」

 

「まあ様子見だけど今受けなかった時点で望み薄いし次の手構えとこ〜ぜ」

 

「了解しました。」

 

さて、やることを済ませたら水族館堪能!

案外、ワクワクとした様相で魚たちを眺めるのであった。

 

 

 

「で、楽しんだのね」

 

「はい」

 

コッフオルが堂々とソファにかける横で、レッシオルは体育座りの姿勢。

 

「帰宅連絡はしました。……夕飯の準備などに気を回せないものですか?」

 

「悪かったわね。人間の機械はまどろっこしくてよく分からないのよ」

 

「レッシオルもですか?」

 

「うん」

 

「……ならいいのですが。今から準備を頼んでも?……私たちは、昨日しましたので」

 

「仕方ないわね」

 

席を立つ、コッフオルと、その後を追う、レッシオル。ふと桃色の前で立ち止まる。少女の目を見下ろし、ボソリと。

 

「サタンは、君に応えてくれると思えない」

 

「……理解して、納得しています。」

 

「そう」

 

「それと」

 

ぎちり、その手が強く『死神』のキーを握る。

 

「今日、コッフオルの身体に伺っても?」

 

「……ダメ。今日はしないし、しばらく君に感覚を盗み見られないで、妻と寝たい」

 

「そうですか。」

 

少し紅潮した頬を隠し、性の悪魔アスモデウスはソファに背中を預ける。

 

 

 

「……うっわ〜災難ねマジで」

 

「はい……」

 

春子の同情を肩に受けつつ、湖冬はため息。隣の菜摘ともども、今日の水族館での一件をレイフに持ってきたのだった。

 

「でも本当なんだろう?ルシフェル、キミがここに来た技術を簡易化したのが彼ってのは」

 

翼が続けて投げる。

 

「そうです。……ただ、わけぎはここで育てるので行き来が容易な必要はなくて」

 

「サタンに人質に取られてると考えることは?」

 

「自然じゃありません。地獄に行く難度は結局私も彼も同じですし、そもそも私の拠点には護衛としてバエルとベリアルとマルコシアスが居ますし」

 

「メンバー仰々しいわねマジで」

 

「結局それ、呑むの?」

 

「……一応言うと、僕は呑みたくないです。ちゃんと政策を出して批准させるんじゃなくて、地獄の法が曖昧なところで口約束結ぶって怪しくないですか。っていう、理屈と一緒に普通に嫌って気持ちがあります」

 

「完全に菜摘くんと同意見です。それこそ取引を盾にわけぎを人質として、私たちが武力扱いされそうなので」

 

「なるほど。まあ、私もあまり呑むべきとは思えないな。サタン氏の天使排斥姿勢はいいんだが、無駄に暴れて簡単に転覆できるとも思えない」

 

意向は一瞬で固まった。

 

「そう言えば、留一さんは……」

 

「別の部屋で黒田八千代と機械いじってる」

 

「明路さんは捜査ですか?」

 

春子は少し複雑気味な顔で頷く。

 

「別府アイの護衛と同時にね。まあやっぱほら、明路はレイフお抱えの戦闘要員だし。捜査力には結構な評価もあるもの」

 

「最近、忙しそうですよね。僕顔合わせられてないです」

 

「あたしもよ。あいつ各地の警察署で寝泊まりしてるらしいのよ」

 

「ああ……ほんとに忙しそう……」

 

自分達もやっぱり手伝うべきでは?でも捜査には邪魔だよね?

菜摘と湖冬は同じことを考えたようで、目を合わせつつお互い「だよなあ……」という様子で頷き。

 

「ツーカーだな君たち」

 

「つー……」

 

「かー……?」

 

「え?分からないのか?私の人間界知識って古いのか?……いや待てよ?確かに黒田として過ごした30年そこら……聞いてない気がする!」

 

「以心伝心って意味よ」

 

「さすがアラサー」

 

「ドラえもんで知っただけ」

 

「あっ、そう……。ああ、そういえば雨野菜摘。君に返そう。いや元は私のものだが」

 

唐突に翼が投げ渡したのは、吊られた男のキーだった。

 

「これ……いいの?」

 

「やっぱダメと言ったら返ってくるのか?」

 

「そんなわけないでしょ」

 

「じゃあ君が持ってろ。あとこれ、浅井留一からの伝言だ。一緒に役立ててくれ」

 

翼が続けて紙を渡す。開いて見てみれば、留一お手製のかわいらしい絵と共に、フォールンブレイバーの解説。初めて知る機能についてだ。

 

「直接じゃないんですね。……熱中してる感じです?」

 

「まあそうでしょうね」

 

「でしたら……私たちはこれで。サタンの件はもう少し検討しつつも、蹴る方向で考えておきます」

 

「そうね。こっちでもサタンの出方に対応できるよう準備するから」

 

「ありがとうございます!」

 

二人揃って頭を下げると、退出。似た物カップルなのだなと、春子はあらためて思い知る。

この前のデートの一件からお互い都合が悪く、春子と明路は全く会えていない。今日はため息をつく人間が多い。今春子もそうであった。

 

 

 

 

「寒いねえハニー」

 

「そっすねェダーリン」

 

白い息を吐くアイ。隣のゼイネルは、仮面をつけたような姿とはいえやはり人間とは仕組みが違うのか、震えつつもその息は無色透明。

隣の明路もカフェオレを飲みながら、ため息をついた。

 

「でもいいんすか刑事さァん、私たちの護衛ずゥとさせちゃってェ」

 

「君たちは矢沢兄妹……。コッフオルとレッシオルと行動をしていた時期があるだろう。あちら側から来たのもそれが理由だろう」

 

「良い囮ってこと?」

 

「好きにとらえてくれて構わない」

 

「まァ、磯羅サンのことスからァ、優しさですよねェ」

 

「ハニーに同意見」

 

「調子が狂うな……」

 

砂糖たっぷりのカフェオレを流し込みつつ、三人はベンチで一休み。何故かカップルに挟まれる明路の構図である。

 

「別府。……お前はゼイネルの事が好きか?」

 

「はァ?え?」

 

「ハニーは僕の事大好きだもんね~!」

 

「え、ちょ、マ……好きス、けどォ……」

 

恥でうつむく別府を一瞥、ふっと笑って。

 

「他人の恋愛をからかう奴の感情が少しわかったよ。まあなんだ、参考にしたいんだ。お前たちのなれそめについて聞かせてくれ」

 

「え~~~~めちゃくちゃイヤァ」

 

「ああ、不快ならいいんだ。あまり詮索されたいことでもないだろうしな」

 

「僕ねー、けっこう早いうちに覚醒しちゃって。そのせいでいくつだっけ?10歳ぐらいから一緒に居て」

 

「……っス。あ、別に不快じゃないんで、続けるんスけど……。まあ、なんつか、それで、人が見てないとことかで喋ったり、後電話のふりして喋ったり……。」

 

「でもこの子中学ぐらいでオタクとしても覚醒しちゃってさァ!!」

 

「え、その話もするんスか?ちょ、ま、」

 

待っててねと言いつつゼイネルが明路に検索ワードを告げ、ブラウザに打ち込ませる。スマホ画面に映るキャラクターは、ゼイネルにどこか似た物。

検索ワードは、「アニメタ 禅定寺リン」

 

「ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ!!!」

 

「あ、おい、大丈夫か!?著しく精神を傷つけていないか!?」

 

「大丈夫大丈夫いつもの発作」

 

「ほ、発作?」

 

「オタク用語。恥や喜びにうめいて叫ぶこと。……でさ、夢女子って言葉磯羅さん知ってる?」

 

「いや、分からないが……」

 

「ちょいちょいちょいゼイネルそれマジでモラル違反ではァ!?」

 

「でも僕らの関係説明するためには必要でしょ?え~っと、じゃあ磯羅さん、ガチ恋って言うのは」

 

「まあ、おおむね分かるが」

 

「まあキャラに対する恋愛感情を持ってるファンがいわゆる夢女子で、自分が相手の恋愛対象になる類のそうさ」

 

「マジでやめろ非オタに話すとかお前おいマジでダメだろマジで掟破りすぎるドン引きだよドン引きだよドン引きィ!!!」

 

「やめてハニー死ぬ死ぬ首絞めないで」

 

ベンチを飛び出しゼイネルの背後に回るアイ。その様を見て、明路はくすくすと笑う。

 

「楽しそうで結構だが離してやれ」

 

「げっほ、死ぬかと思った……」

 

「私も死ぬかと思いましたがァ!?」

 

「キャラや作品の愛し方はファンそれぞれだというのは分かっている。地島君は特撮好きだし、春子もプロレスが好きだからな」

 

「オタクって潜んでるもんだね」

 

「ってか弁明すると私いろいろあってェ……本当に色々あって夢女子ではないんスよもォ」

 

「フツーに推すようになったよね。まあ、あんなことがあればね……」

 

「何か……」

 

「ごめん、これは僕の口からはとても……」

 

「さーせん、私もちょっと、これはァ……マジダメっス……」

 

「ああ、いいんだもちろん」

 

思わぬ何かを掘り起こしそうになり、空気が淀む。そこに、嬉しくない清涼剤が飛び込んだ。

 

「いた。人間の顔、見分けるの難しいわ……。光が弱すぎて、色がよく見えない」

 

コッフオルが見下ろす。民族的な服装は南国仕様のそれで、寒空に肌を晒し下品に言えば下乳すら晒す服だが、息は白さひとつ見せず。しかも裸足。隣の褐色肌の青年レッシオルも同様だ。

 

「……何をしに来た?この前は結局撤退していたが」

 

「様子見してから戦うことにしただけ」

 

「公的手段に出てみたりはしないか?」

 

「僕たちは、人間界への理解は甘い。……それでも、わかるよ。島一個をよこせは、無謀。天使の庇護下でね」

 

「あなたってば賢いわ」

 

「やめてよコッフオル」

 

矢沢兄妹にあまり重ならない、べたつき方。明路はいろいろな感情を含んだ視線を泳がせるが、おおむねそれは「嫌さ」にまとめられる感情だった。

 

「俺たちを攻撃するのは何故だ?」

 

「邪魔するから。」

 

「なにの邪魔だ」

 

「今から、ゼイネル連れてく」

 

「え?僕ヤだよ」

 

「無理やり連れていくわ。結局あなたのためにもなるわよ」

 

「ダーリンに近づかないでもらっていいッスかァ?」

 

「人間ごときが口をはさむ話ではない」

 

「おい今ハニーに何て言った」

 

「……はァ、めんどうなのにこだわるのね」

 

光を放ち、その姿が神々しく変わる。同時に、レッシオルも光に包まれる。

目を見合わせたアイとゼイネルが融合し、シェイドの姿に変わり。明路ともどもレッシオルの放つ熱波を回避。ベンチをぶっ飛ばすあたりかなりやる気だ。

 

「待ってあげるわ。鎧をまとうならそうしなさい」

 

ナメられたものだが、ナメられるのは良いことだ。それを利用するのが効率的。アキエルこと湖冬の戦いから学んだ話である。

 

『Taoism……Human power without god's hand』

 

「変身!」

 

『Fitting……OK. Five senses assist is ready』

 

樹脂と光による硬化はやはり迅速な変身にいい。ゼイネルは防戦どころか攻撃を喰らいっぱなしで、一刻も早く助けが必要だった。連絡をしつつ、タオもレッシオルへと向かう。

 

「フン」

 

「……だめか」

 

銃撃は大して効いた様子もなく、熱波は塊のようになって、投げつけられる。ギリギリでかわしつつ、突撃とタックル。レッシオル、対応が遅れ、突き飛ばされるが、着地と同時に地面に熱を放出。タオも危機を感じ離れ、後はまた遠距離熱波が始まる。

 

「ダメだ効いてない!」

 

「どこスかァ!」

 

ゼイネルばらまく矢の攻撃も、コッフオルの場所をあぶり出すのに役立っていない。効いていないのか、「居そうな位置」すら幻覚なのか。

時折コッフオルの放つ蹴りが、激しくえぐりこむ。

 

「……くそッ」

 

キーはみな出払っている。ゴスペルブラスターの強みも使えない。レギエルやルシフェルの到着まで持たせることができても、まず二人が勝てるのか?

その疑念の答えが出る前に、ケツァド・イブクとゲビナビノのエンジン音。

 

「行くよ」

 

「うん」

 

レギエルとルシフェルが駆け抜け、それぞれレッシオルとコッフオルの元へ。レギエルはハナからフォールンブレイバーで金色の姿だ。

レギエルの放つ拳は熱波に押し返され、さらに閃光を放つとレギエルがひるみ。

 

「人間、惑わされ過ぎなんだよ。いろんなものに」

 

蹴り上げを叩きつけられ、地面を転がり。同じくコッフオルと戦うルシフェルはアスタロトの毒ガスと爆炎による連鎖攻撃。しかし霧は濃くなっていくばかり。向かう蹴りに対応はできても、対応しかできない。両者、膠着。

 

「雨野君!」

 

レッシオルの追撃からレギエルを突き飛ばし、自らも回避。銃撃を放てど放てど、熱波に防がれ。レギエルが立ち上がったのを蹴り飛ばし、レッシオルはタオの頭を掴み。

床に叩きつけ叩きつけ叩きつけぶん投げて。仮面が割れて、血と共にさらされる、明路。その苦難と無力感の涙。

 

「っはぁ、っぐぁ……」

 

吐き出される、血。レギエルが振り返り、駆け寄ろうとするのを明路がかぶりを振って止める。

 

「お前……!!」『オーディン』

 

レギエルが、吊られた男のキーを起動する。留一が書き残したのは、愚者解放堕天のこの姿で、さらに解放する手段。シンプルで、引っこ抜いて空いたフォールンブレイバーのスロットに差し込む、という機能。曰く、安全性の確認が取れたとの事。

 

『吊られた男』『連続解放!Come on!その、試練』

 

顔が菜摘に戻り、しばしの間レッシオルの攻撃を回避。頭部がはじけ飛び、赤黒いレギエルの顔へ。その右目は緑で、左目は覆い隠されている。左目にかぶさるように、翼のような部品が二つ並んでいる。

 

「そこか!」

 

その機能、シンプル。見える、狙うべき弱点が!

パンチをフェイントし、拳ではなく蹴り。膝を狙うと、レッシオルは呻いてしゃがみこむ。

 

「いっだいな……!」

 

「湖冬!」

 

「おっけー!」

 

一言でその意図を察したようだ、レッシオルは湖冬に任せ、コッフオルの方へ。ルシフェルの援護をしていたのはゼイネルのようで、ボロボロになりながらも矢を撃つ。

そのゼイネルをかばい、レギエルが立つ。

 

「フギン、ムニン!」

 

名を呼ぶと、左目の羽根がカラスに変わる。カラス二匹があたりを舞い、レギエルは感覚を研ぐ。

 

「ゼイネルそことそこ!!」

 

「あいあいさー!」「うっス!」

 

放つ矢、当たらない。そこにはいない。……承知の上だ、レギエルは、候補を絞ったに過ぎない。見えたその場所へ拳を放てば、霧が晴れ、コッフオルの脇腹へぶち込まれる。

 

「古傷を……!?」

 

オーディンの能力、弱点をその目で見る力。

 

「ほいさァ!」

 

さらにゼイネルの追撃、追撃。コッフオルは血管をビキビキさせた怒りの吐息とともに霧を放つ。

蹴り、一撃。防御はやはり甘いようで、レギエルは胸を押さえてうずくまり。

 

「っ、ぐ……」

 

さらに、霧の中に後ずさるのはルシフェル。熱波をモリガンのマントでガードしつつも吹き飛ばされたようだ。怒りに震えるコッフオルはレッシオルともどもルシフェルに蹴りを叩き込む。

 

「がは、あぐ……」

 

レギエルが膝をつき、タオが血を吐き、ルシフェルが転がる。今動けるのは自分だ、ゼイネルを自らを奮い立たせ、矢を放ち、放ち。

 

「当たると思うの?」

 

「食らえ」

 

「っぶねえ!」「ないすハニー!」

 

かかと落としを分離して回避。再融合し、蹴りを放ったコッフオルをゼロ距離で射貫き。少し膝をつきつつも、その反撃は苛烈。かわすのがやっとというところで、レッシオルの熱波を込めた拳。

 

吹き飛ばされた先、明路のパトカーに激突し、ふらついて、立ち上がろうとして膝をつく。心配して寄ろうとするタオだが、体を引きずるその姿を見てアイは来ないでと告げ。

シェイドゼイネル、なおも立ち上がる。ダーリンと生きる日常もハニーと生きる日常も捨てるわけにはいかない。

 

 

ぐしゅり。

 

 

その腹を、鋭いものが貫き。

 

「え……?」

 

自分の手が血まみれなことに気づき。何より、アイが呻くのに、ゼイネルは自身が痛くないことに気づき。まさかと震えながら後ろを射れば、その鋭いものは、

 

 

サタンの尻尾は、

 

 

ずるっと引き抜かれ。シェイドゼイネルがふらつく。

 

「あ~あ、ブレちゃった。即死じゃないし痛いっしょ?」

 

「お前……サタン!!」

 

立ち上がったレギエルが怒りを抱え、殴り掛かる。

 

「どう?呑む気になった?」

 

「お前、のんきに何言ってんだよクズが!!今何を」

 

「あれェ?ンな気にすることかよ。たった20年分の記憶だぜ?それだけで力を取り戻せるんだぞ」

 

「な…に、言ってるんだ?」

 

「マ、ゼイネルは別人格だっけ?でもさァ、変身能力も不完全だろ?こんな瞬きぐらいの時間、人間なんかの女と遊ぶぐらいならちゃんと目ェ覚ます方がいいって」

 

「お前人間をなんだと思ってるんだよッ!」

 

「24年しか生きてねえガキがわめくんじゃないよ。ったく……スケール小っさ。大丈夫だぜゼイネル。次はもっといい恋ができるからな」

 

煽り、ではない。

それは、ただ、好きな子に振られたとか、好きな子が転校しちゃったとか、そんな男子高校生を慰める声で。

 

血を吐いて、地を這って。シェイドゼイネルが明路の元へ向かう。

 

震えて涙をたたえる彼を見上げ、ずるりと、アイが転がる。明路に抱えられる姿勢になりながら、か細い息を吐き出し。ゼイネルの涙はもはや声にもなっていない。

 

「……か、ァ、磯羅、さん……」

 

「ダメだしゃべるな、今、救護班を、呼んだ、落ち着いて……」

 

「もう、ダメ、ス……体、なんか冷たいしィ、痛くてェ、眠いんスよ……」

 

「そん、な……」

 

明路がこぼした涙が、血と混じってアイの服を汚して。

震えた手で、アイは『恋人』のキーを突き出す。

 

「託す、ンで……、あ、でも、ゼイネルにも、貸したげてください、ス……はは」

 

「ああ、ああ、受け取ったよ、受け取ったよ。」

 

キーを握る手を、明路は強くつかむ。アイの目は、もう焦点が合っていない。

 

「土田さん、ちゃんと……受け止めてあげてェ、くださいス。大丈夫、私ィ……公式カプ、好きンなりがちだからァ。……はるあき、推したんで、くっつきますからァ……」

 

「ああ、分かった、しっかり分かったよ」

 

声は、どんどんと細くなり。手を強く握り、明路は頷く。

 

「……ゼイネル。ああ、なんて言お……まァ、いいや。」

 

「アイ…」

 

「愛、してます。……ダーリン」

 

それを最期に、アイの吐いた白い息は、吸われることはなくなった。

 

「……」

 

たたえた涙を飲み込み、冷たいハニーの唇に口づけ。本来の姿に戻されたゼイネルは、禅定寺リンへ姿を変え、その手に弓を握る。

 

「磯羅さん」

 

「ああ」

 

駆け出す先、サタン。アイを奪ったそいつへ向かうが、コッフオルとレッシオルがそれを阻む。

 

「邪魔すんなッ!」

 

レッシオルの拳とコッフオルの蹴りを回避。懐で矢をぶち当て、霧に消えるコッフオルを一瞥。ゼイネルは矢を上空へ放ち、大量の矢になったそれがコッフオルの場所を暴く。

 

「幻覚と熱波のぶっぱで勝てると思ってんのか!!」

 

矢をつがえる先、コッフオル!……を、一瞬で変えその一撃はレッシオルに突き刺さり。

コッフオルとレッシオルが今一度迫るその瞬間、変身。ゼイネルの姿が浅黒い美女になる。

 

「な、」

 

「テグオル……!」

 

「娘の顔した奴、蹴れないよなァ!?」

 

雨野菜摘の時とは違う、『浅さ』を感じていた。それは的中して、どちらもその動きが一瞬止まる。ゼイネルはすぐさまレッシオルに頭突きをぶつけ、矢を放つ。

 

そしてコッフオルの懐には、タオが、……いや違う。その顔を晒してわかる。仮面ライダータオではなく、磯羅明路がその銃を構えていることが。ショットブラスターが、コッフオルに押しつけられる。

 

「ど素人が」

 

『Confirmed and Authorized. As you know, it's HISSATSU』『a.k.a. FINISH of Lovers』

拜拜(Bye-Bye)!』

 

その銃弾は光の矢をまとい、ぐりぐりとコッフオルを吹き飛ばす。そしてレッシオルも熱波を射貫き落とされ、ゼイネルのパンチにノックダウン。血を吐いて膝をついた明路が、ゼイネルにショットブラスターを投げ渡す。

 

「でああああ!!!」

 

レギエルのパンチに怯むサタンの脳天に銃を振り下ろし、サタンの首がガクンと揺れる。

 

「磯羅さんさっきの奴どうやるの!」

 

「準備済みだ!引き金でいい!」

 

「おっけー、サタンてめェは死ね!死んで僕も死んで地獄でまた殺す!」

 

拜拜(Bye-Bye)!』

 

「ゼイネルゥ~~!感謝しろと俺はァ!」

 

「黙れクズッ!」

 

サタンの頭部を吹き飛ばし、爆発、爆発、爆発!!

マシロの姿に戻り、転がるそいつに向けて弓を引き、レッシオルが間に入る。同時にコッフオルもかかとを踏み鳴らし。

霧、サタンもコッフオルもレッシオルも、その場にはいない。

今更、救急車とパトカーの応援が届き。

 

「……ハニー」

 

血だまりに背を預けるその身体は、寒空にゆすられて冷え切って。

 

サイレンの音とゼイネルの慟哭だけが、その場に取り残された。




次回、「鈍色の剣と糸」
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