仮面ライダーレギエル   作:さわたり

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第一話と第三話の読み返しを勧めます。
あとアラハバキのデザインはリボルブオンしたギーツ系ライダーを意識したものです。


第十九話「鈍色の剣と糸」

「あれ、春子さん?」

 

「地島じゃない」

 

街中でばったり、思わぬ形の遭遇である。春子が出てきたビルはライブハウスがあるようで、春子の腕に着けているリストバンドや服の様子を見ればそこから出てきたのは明白である。

 

「春子さんロックバンドも好きなんですね」

 

「いかにも好きそうな格好だと思うけどね」

 

「このあとはどこに?」

 

「映画見に行く」

 

「ら、ライブ行った後にですか?」

 

「でもまだ昼じゃないのよ」

 

「まあ、確かに……」

 

時間はまだあるとの事で、二人はテキトーなカフェに入店した。

 

「地島も来る?」

 

「え、いいんですか?」

 

「平日昼だし空いてるでしょ。ほら、予約空いてる」

 

「ありがとうございます!」

 

「……あんたアキエルとして戦ってるけど、その息抜きってちゃんとできてるの?」

 

土田春子、23歳。地島湖冬、20歳。四年前の事だ。

 

「私は菜摘君さえいれば元気百倍なので」

 

「今日はいないわね"菜摘君"」

 

「きょうはお仕事のお話で……。菜摘君いないお家に居るのも嫌なので外出です」

 

「あそう。ってことは帰りで合流する気?時間いつなのよ」

 

「飲みにもいきそうってので結構遅くなりそうですね。菜摘君、けっこう飲めるのがこの前判明しちゃいましたしー」

 

少し不平ぎみに、ストローがぢゅっと鳴る。

 

「なら映画の後のショッピングにも付き合ってもらおうかしら」

 

「ショッピング。お洋服ですか?」

 

「そうよ。ついでにモールにゲーセンあるからそっちも行きたいわね」

 

今日の春子はおしゃれだがパンクな雰囲気漂う格好だ。ゲーセンでもブティックでもライブハウスでも違和感がない。

 

「春子さん、多趣味ですね……。プロレスとあと何でしたっけ、」

 

「あたし結構アニメとかも見るのよ」

 

「あ、じゃあ私布教いいですか!」

 

「アニメタならもう見てるわ」

 

「先回り!……でも、本当にすごいです。研究者、それも数少ないシェイド周りの研究者としてすごい方なのに、趣味までいっぱいで」

 

「楽しさに対して妥協すんの、あたし嫌いだし。時間も金も体力も用意しようと思えばいくらでもできんだから」

 

「強いなぁ……っていうか、筋肉もありますよね。スタイルいいですもんね」

 

「スタイルってあんたね……あんたのモデル体型の高身長がうらやましく思うことだってあんだからね!」

 

「え、そうなんですね?」

 

「そりゃね。あ、でも筋肉は実際つけようと思ってんのよ。磯羅が動けないときにあたしがいろいろできた方がいいし。あいつに筋トレについて教わってて。これが結構楽しいのよ」

 

にやりと笑いつつ、筋トレの最近の成果や、ちょっと気遣い始めた食事、その他いろいろ、趣味や最近のアレコレ。楽しみに余念がない人だなと、湖冬は尊敬のまなざし。広く浅くでもなく、ちゃんと真摯に楽しんでいるのだから。

 

 

 

 

 

 

 

第十九話「鈍色の剣と糸」

 

 

 

 

 

「どうよこれ、似合うか?」

 

鋼誠が、チョーカーを首に重ねて笑う。鏡を見ながら、言葉の先は鏡に映る男に向けた物。男が頷くのを鏡越しに確認すると、彼女は満足げに装着。

男こと、二山ヨシオが自身の法皇のキーと、鏡の誠を視線を行き来させる。

 

「お前の力、やたら強いからな」

 

「じゃなきゃ跡つけらんないだろ」

 

「跡つけたまま外出しろって? てかお前ハイネック着やがってずりぃぞ」

 

「いいでしょ俺が何の恰好したって」

 

「私もハイネック着たいんだけどよ」

 

「誠にはぶかぶかだと思うぞ、これ」

 

「じゃあ買おうぜ」

 

「カネはあるけどさ、外出てみろよ。……サタンどもに見つかるぜ」

 

トタンで守られた廃倉庫は風を通し、室内ですら息が白い。二人仲良く毛布にくるまりつつ、ぼろぼろの屋根を見上げた。

 

「私ら、どうすべきだろうな」

 

「さァね……とりあえず逃げるしかないだろ」

 

サタンたちの元から飛び出した『正義』の鋼誠と『教皇』の二山ヨシオ。コッフオルやレッシオルの様子を見て、「自分たちは人間としての思い出を忘れたくない」と感じたのだ。

別府アイとゼイネルの一件を思えば、善意で無理やり姿を戻されそうという懸念があり、二人は飛び出したのだった。

 

「あいつら、どこに居るかな」

 

「さあな。北上を続けるなら私らとは正反対ってことになるが」

 

「俺ら追ってる線もなくはないよな」

 

「……ラミレシアって戦力になるのかァ?」

 

「どーだろ。俺も結構危ういモンだが」

 

「いやァ?ペイドヴァラの名前は聞いたことあるぜ。凶悪で乱暴な悪魔っつってな」

 

「思ってるような奴じゃねえよ。俺は……ペイドヴァラは実際思ってる何倍もお利口さん」

 

「ンだよ。ラミレシア様が怖ェか?」

 

自虐も含んだ物言いで、笑う誠。ヨシオはどうだかな、と濁した物言いをしたまま体を震わせる。

 

「大したことねえって話だよ、俺の前世(ペイドヴァラ)はさ」

 

「そーかよ」

 

お前の(ラミレシア)はどうなんだよ」

 

「前の前のルシファー時代に大暴れしてた」

 

「ああ、あれな……。てことは結構なワル?」

 

「ぽいな。だからこそ、そーゆー自分がもろとも悪いことが許せなかったっつーのもあるし」

 

「それで暴走したんだっけ?」

 

「暴走じゃねえよ」

 

「暴走だろ。強盗犯に火炎瓶ぶつけるのは確実にさ」

 

「人の首吊りあげて殺しといてよく言うぜ」

 

「ふ、ハハハ、確かに」

 

「あはは、っは。……クズ二人の逃避行だ」

 

誰か追っては来てないか。小屋の外を見ながら、二人は笑っていた。

 

 

 

 

「理解。言及、我々の行動『対象』、。追跡犯罪者の。誰によって?:ルシファー様」

 

「お願いね」

 

焦点の合わない目で湖冬と春子の方を向くと、こくり。アラハバキは相変わらずだ。春子はアラハバキをすこし不気味に感じると同時に、隣のモリガンは非常にわかりやすく感じた。

 

「あたしはこいつらと動けばいいのね」

 

「きっと手伝ってくれると思うので」

 

「よろしく。『友好性の提示』」

 

「よろしく頼むぜェ~」

 

「まあ、とりあえずお茶でも!」

 

湖冬が四人分の暖かい緑茶を置く。

 

「仲良くなった方がいいですから」

 

「まァそうね。……えーと、モリガンでいい?」

 

「いいぜ、ヘイナちゃん」

 

多少からかうように、モリガンが言う。

 

「……」

 

「……何か気まずい事でも?」

 

湖冬、春子の耳元へ問いを渡し。対し春子はあまり気遣わずデカい声で続ける。

 

「いや昔モリガンに口説かれたことがあって」

 

「……はい?」

 

「感情:軽蔑。モリガンに『提言・疑問』。お前は」

 

「待て待て待て待て女食う趣味はねえよ。ヘイナ、お前は無性だったろ。ちょっと男寄りの」

 

「……」

 

緑茶をすする春子。湖冬は意外なような、そうでもないような、という態度で彼女を見る。

 

「アタシの誘いをあんな蹴り方した奴、そういないぜ。だからさ、アタシ面白くて」

 

「クーフーリンと勝手に重ねないでちょうだい」

 

「なッ……。……ま、なくはねえけどよ」

 

「理解。」

 

「春子さん、モリガンとどういう形で……」

 

「あたし……まあ言ってみればケルト系の悪魔だったから。天使が追いやったころは生まれる前だったし、自分が神様って感覚はないけどね」

 

「惜しいなァ?自分が神としてあがめられるあの感覚、忘れられねえよ」

 

「……同感:『少量』」

 

「ふゥん……」

 

「じゃあ何、多少コッフオルのやったことにも共感できるわけ?」

 

「どォーだか。貴重な第一層での経験を投げ捨てるのはヤだぜアタシは」

 

「部分的同意」

 

緑茶をすするモリガン。第一層、いわゆる人間界。モリガンは服装や手元のゲーム機を見る限り、こちらをエンジョイしているようだった。

 

「なあ、ヘイナ。アタシの庇護とケルヌンノスの武力があればあんたは家系なりの」

 

「いい。興味ないわ」

 

「……ま、そんなこったろうと思ったよ」

 

言いつつも残念そうに外を見るモリガン。雪が、降り始めた。

 

 

 

 

「鋼鉄技術研究所……なんか聞いたことあるな。ドローンとか作ってた?」

 

「正解。娘の私の逮捕があんま公表されてなかったみてーだし……ま、親父たちに迷惑は掛かってねえよな」

 

雪を眺めるのは、誠とヨシオもそうであった。

 

「面会とかなかったのか?」

 

「私が拒否ってた。親父のドローン使って勝手に暴れてたのにどんな顔向けろってんだよ」

 

「そのへんの自覚はあったんだ」

 

「少なくともやり方は間違ってたよ」

 

「じゃあいいの?俺の事殺さなくて」

 

目の前で笑うのは、紛れもない殺人犯である。起き上がった誠は寝転がるヨシオの元へ近づき、そっとしゃがみ。ヨシオの上に乗ると、その首に手をゆっくりかける。

 

「じゃあ、死ぬか?」

 

「えー、どうしよっかなァ……」

 

ハイネックを下ろせば、ヨシオの首には赤く痛ましい痕。……誠が手を重ねると、その赤い跡はぴったりと当てはまって。

きち、きち、ゆるい音とともにその手に力を込めて。荒れるヨシオの息。

吐き出される息を、誠はその唇で全て、直接吸い込む。口への侵入者を迎える余裕は酸欠中の彼にはない。まるで魂を吸うかのような口づけは数時間ほどにも感じる数秒。

 

「かはっ、っが、ひ、」

 

二山ヨシオは笑う。

 

「は、はは……」

 

鋼誠は泣く。

 

十数分、無言。起き上がったヨシオが、外を見る。

 

「動こうぜ」

 

「……おう」

 

倉庫をあとにして、歩き出す先。特に行く先も決めないまま、ただただ逃げる。

 

「こっから、どうするよ」

 

「さぁな。警察に自首でもするかァ?」

 

「黒田サンはそれやったらしいね」

 

「……ま、ない手ではないよな。サタンにやられるよりは絶対にマシだぜ」

 

「でもさァ……なに、アレじゃん」

 

「なんだよ」

 

「俺ら離れ離れだろ」

 

「そりゃそうだろ。これだって絶対できねえし」

 

誠はチョーカーをずらして見せる。そこにも、赤く強烈な跡が残っていた。

雪を傘で防ぎつつ、見つけたのは無人の工場跡。閑散とした工業地帯はちょうどいい。寒い室内に転がり込んだ時、ひそやかに声がかかる。

 

「発見。……すぐにした。認識。『第二体名:ペイドヴァラ』『第二体名:ラミレシア』」

 

「お前……誰だ」

 

『アラハバキ』

 

「自己紹介。」

 

「こいつも前世持ちかよ」

 

鉄骨の上に座るアラハバキはカクついた動きで床に立ち、ふらふらと二人に接近する。

キーを構える誠とヨシオ。アラハバキは首を振る。

 

「敵意『該当なし』。行動:今からお前たちと会話をする。します理解要請『至急!』」

 

「……自分は敵じゃないって?」

 

「そう。」

 

「ルシファー側か?サタン側か?」

 

「双方。」

 

アラハバキの表情は動かないし、その目は相変わらず焦点が合っていない。

 

「……どっちかのスパイってことか?」

 

「状態:様子見。……わたくしは欲しい。信仰;(primitive)」

 

「は?」

 

「要はアレだろ?昔の栄光が欲しい系の。……サタンのぶら下げるエサだ」

 

「助かる(早いため)。理解、空腹である場合、つり上げを理解して利用する場合、『釣り餌に対する認識より引用』」

 

「は?」

 

「え?」

 

「……」

 

「あー、とにかく目的を言えよ。あんたは何がしたいんだ」

 

「伴う友好による構築『関係』。」

 

「俺らと仲良くするって事?」

 

「私ら野望に興味ねーんだけど」

 

「『前提条件:第一層支配』の撤回を認識にすることの要求をする。」

 

「あ?」

 

「サタンは支配をする気はない?」

 

「違う。サタンは行う『支配』。天使も同様。……そのため、わたくしアラハバキは提示します」

 

「……サタン側に付いといた方が天使の横槍もなくて済むだろう、って?」

 

アラハバキが頷く。二人は目を見合わせ、少し待ってくれとヨシオが言う。今一度アラハバキが頷くが、そこに「見つけたのね」と割り込む声。戸を開けた春子と、アラハバキが挟み撃ちの形。

 

「なんで連絡しないのよ」

 

「発見時刻:」

 

「見つけたばっかりって事?あそう」

 

視線も合わなければ、感情を感じない動き。今話していたこともバレづらいのがアラハバキの武器でもある。

今すぐ、春子との味方のフリもできるわけだ。

 

「あんたたちはサタンに狙われる。あたしたちが保護するから、キーを捨てて。別にすぐにムショってわけじゃ無いのよ」

 

「春子さん。……保護されるわけにはいかねんだよ」『ラミレシア』

 

「ま、俺は刑務所で当然だったし、そもそもあそこの暮らしも嫌いじゃないんだけどね」『ペイドヴァラ』

 

「……ったく」『Taoism……Human power without god's hand』

 

明路はケガで倒れている。自分がやらねばという決意と共に、タオイズムドライバーを装備した。同時に、アラハバキもその手のキーを起動する。女帝だ。

 

「……」『エンプレス』

 

「……変身」『Fitting……OK. Five senses assist is ready』

 

「行くぞ」『ハイエロファント』

 

「ああ」『ジャスティス』

 

シェイドアラハバキは白黒の姿。岩や粘土を焼き固めたような見た目だが、それは下半身だけ。上半身は極めてシンプルかつスマートなものだ。

同時に、誠は腕に、ヨシオは首にキーを突き立てる。モノクロシェイドである。

 

「……」

 

「はっや!」

 

無言のまま接近。アラハバキはシェイドラミレシアに向かう。放たれる強烈な蹴りもその大剣で防ぐのがやっと。同じモノクロシェイドだが、やはり技量に差というものはある。

 

「そこ!」

 

タオの銃撃をかわしつつ、糸を飛ばすペイドヴァラ。一見的外れだがそうではなく、それは距離を置くための作戦。片手でラミレシアを抱えると、一気に引き上げ移動。ついでにその勢いで、大剣がアラハバキをかすめる。

 

「……」

 

「行くわよ」

 

アラハバキは頷き、駆け出して追う。ラミレシアとペイドヴァラは屋根下の鉄骨の上に登り、タオの銃撃を剣でガードしつつ、様子見。

 

「どう逃げるよこれ」

 

「窓だろ」

 

一瞥。窓へ駆けだすタイミングを計る二人を気遣うことはなく、タオはキーを起動した。

 

「落下のタイミング見てね」

 

『ヘイナ』『ハイプリステス』『Ji-Du-TAO!High Priestess!That Lightning!』

 

ゴスペルブラスターにキーを差し込むと、鉄骨に発射。外したわけではない。鉄骨はその名の通りの材質なのだから、電気はよく通るのだ。

 

「あっづ!!」

 

「離れろヨシオ!」

 

「分かってる!」

 

飛び降りつつすぐさま糸でぶら下がり。……いやだめだ、この糸も電気を通すらしい。

 

「いっで!!」

 

「あぶねえな……」

 

落下しつつ大剣で糸を切り、二人そろって地面を転がり。二丁拳銃スタイルで、休む暇なくタオの銃撃が襲い来る。

 

「突っ切るぞ!」

 

「OK!」

 

ラミレシアの大剣はもはや盾のような扱い。銃弾を防ぎつつ、ペイドヴァラはラミレシアの後ろからタオに向かって糸を放った。

 

「当たんないわよ!」

 

タオ、回避。だがハナから目的はそれではない。一気に糸を引き上げ、剣の横振りが高速で近づく。

 

「……!」

 

春子も予想していたが、シンプルに速度故に対応不可。腕で防御姿勢を取り迎え……る必要はなかった。アラハバキのドロップキックが剣を迎え撃ち、双方はじき飛ばし。体勢を崩したのは二人分のパワーを得物ではなく体で止めたアラハバキの方。剣を拾って駆け出すペイドヴァラ。タオも駆け出す。

 

「させねえよ!」

 

白黒の騎士ラミレシアが間に挟まり、タオにつかみかかる。

 

「っく……」

 

「久しぶりだなァ春子さんよ!」

 

「誠……クズ男に引っかかったわね」

 

「っは、『彼は私が居なきゃダメだから……』ってか」

 

「っふ」

 

「くく。ま、アイツは私が居ないとダメだし、私もそうだ。あいつもクズだし、私もそうだ。邪魔ァさせねえよ!」

 

ぐっと押しのけ、タオを蹴り込み。受け身はとるが、シンプルにパワーに差がありすぎる。剣抜きでもタオが押される。

 

「いまもショッピングしてんの?休日」

 

「してるわよ。ゲームもライブもプロレスも全部してる」

 

「多趣味でいいね」

 

蹴り込み、タオ、砂を巻き上げ後ずさる。

 

「……どおおりゃあ!」

 

デスマッチ流の反撃、春子が掴んだのは廃棄蛍光灯。LEDの強化ガラスのものだったようで、シンプルな殴打に。二発目はラミレシアに蛍光灯を掴まれ、動けない。

 

「食らうかよ」

 

「どうかしら」

 

瞬間、ゴスペルブラスターを発射。一瞬通った電気が光を放つ。このLED蛍光灯はガスへの放電ではなく中に発光ダイオードが並んでいるものであり、割れても欠けても発光はするのだ。

融合解放はあくまで融合。人間の肉体故に目くらましがきく。

 

「っつぁ!」

 

「おらァ!!」

 

急なことに驚き、離すか、強く握るか。賭けだったがラミレシアは強く握る方だった。握られたままの蛍光灯に、春子は思いっきりソバットを叩き込み、破片がさらに目くらましになる。

 

「食らえ!」

 

「いって……」

 

さらに拾ったパイプ椅子を叩きつけて、怯み。一瞥したアラハバキたちは拮抗した状態だった。今ここでどうにかせねば。タオはそのベルトにタオブラスターをかざす。

 

『Confirmed and Authorized. As you know, it's HISSATSU』

 

「ずおらァ!!」

 

タオブラスターをベルト横にマウントすれば、充填されたエネルギーが移動。マスク内HUDに視線を向け、その黒目を判定し、強化する部位を選択する。視線を利用した最新技術だ。

充填されたのは右脚。

 

「ライダーキック!」

 

再見(Zain-Jian)!』

 

放つのは首を狙ったいわゆる延髄斬り。腕が挟まりふさがれるが、それでもぶっ飛ばして壁にぶつけるだけの威力はあった。アラハバキたちの方へ援護射撃を送り、若干アラハバキに形成が傾く。

 

「……やめとけよ。あいつ、裏切るぜ」

 

「あ?何よ」

 

壁に背中を預け、よろめいたまま吐き出す。ラミレシアを一瞥し、タオは向き直った。

 

「バカバカしい。ちったァまともな嘘つきなさいよ」

 

「……ま、そーいう反応だよな」

 

それもそうかと思いつつもずるずる身を起こし、ラミレシアが構える。話したところで信じられないのも織り込み済みで、アラハバキは話したのだろう。

 

「俺はあんたらにはつかないぜ」

 

一方でアラハバキ側。大剣を蹴りに止められながらペイドヴァラは吐き捨てた。

 

「……」

 

「なんか言ったらどうだっつの」

 

毒づく間にも、蹴りは激しさを増す。ペースを取り戻しつつあるのだ。

 

「クソが……!」

 

糸を使って一気に距離を取る。すぐさまに駆け出して追ってくるアラハバキに対し、辺りを行き来して回避。トリッキーな動きには慣れていないということか。攻撃はできないが、かわすには十分だ。

 

「……」

 

まどろっこしくくなったか地面を蹴り、振動を巻き起こし。ふらついたペイドヴァラに今だとばかりに駆け出し。

 

「まあ、そんなこったろうと思ってたぜ」

 

ぐ、糸が引っかかった。煩わしがってもがけど絡まっていくだけ。さらに糸を放ち、背中に装備してた半ばお飾りの武器、杖もぶん投げ絡め。

 

「…………。」

 

「誠ォ!」

 

「わかった」

 

タオの腕を糸がとらえ、生まれる隙。ラミレシアが、駆け出し、その際に振り返る。

 

「……春子さん、あんたは私の分まで楽しんでくれよ。ファッション」

 

銀のヘアエクステを外し、春子の足元に投げ置き。それからひと呼吸おいて、ペイドヴァラの元へ。タオの銃撃が当たる前に、糸を遠くに飛ばした。

 

「あいつ……」

 

「……要請します『迅速な救助』」

 

「え?あ、ごめんなさい」

 

拾ったエクステをしまい、駆け寄る。ほぼ同時に走る音が響き、息を切らせたモリガンが見上げる。

 

「はァッ、疲れ……え、なにこれ」

 

「ペイドヴァラの仕業よ。助けてあげて」

 

「要望。」

 

「あ、そゆこと」『モリガン』『ジャッジメント』

 

シェイドモリガンは兜と、あとはマントと布の塊のようなシェイドだ。その武器は二本の槍。

糸をパッと切ると、落下するアラハバキをキャッチ。自身のキーを引っこ抜き、人間の姿に戻った。

 

「何があったんだよ」

 

「戦闘。」

 

「だろうよそりゃ」

 

モリガンがアラハバキに構っている隙に、春子は外へ。寒空の中携帯を取り出した。繋ぐ先は湖冬。

 

『もしもしー』

 

「……手短に言うわ。鋼誠がアラハバキの裏切りに言及した。流れ的に嘘だと思うけど、一応」

 

『まあ、ない話じゃないですね』

 

「そうなのね」

 

『アモン、アスタロト、ベルゼブブ。……この三人は行動原理がわかりやすいから大丈夫ですけど。それ以外の面々は全員裏切りを想定してます。どう倒すかも、考えてます』

 

「そりゃまた、ずいぶん用意周到ね」

 

『事態にはなんであれ備える方が効率良いので』

 

「……了解、切るわ」

 

携帯をしまい、白い息。湖冬は優しく善良な人間だが、どこか恐ろしく冷めた部分もある子だ。

 

「何してんだ?」

 

「何でもないわよ」

 

「そうかよ」

 

モリガンだ。後ろの方にはアラハバキもいる。モリガンは春子の隣に背中をかけて、少し思案。言葉を吐き出す。

 

「なあ、ヘイナ」

 

「春子」

 

「……。なあ春子。本当にあたしと一緒にやる気はないのか?ルシファー様との相談しながらになるが、ダグザたちと連絡でも取りながら」

 

「あたし、惚れた男が居るのよ」

 

「な……」

 

一瞬目を見開いたかと思うと、モリガンはくつくつと笑う。

 

「なァ~~~ら最初に言えっつーの!じゃあそれからだなまずは!」

 

「あんた口説く時毎回「自分の武力が欲しくないか」って方面で行くのやめたほうがいいわよ」

 

「分かってねえなァ。あたしになびく男は大体この強さに惚れこむんだ」

 

「じゃあ普通にタイプじゃないわあんた」

 

「あーあー、傷ついたぞ~~~~~?」

 

「あんた女も口説くイメージなかったけどね」

 

「ヘイナァ~~……。さっきも言ったけどお前は今女だけどな、」

 

「いやあたしヘイナの時も自己認識女寄りだったからね」

 

「はァ!?一人称オレ様なのに!?」

 

「そうよ。恋する乙女」

 

「自分で言うかね。……ま、めちゃくちゃに上手く行かせろや」

 

「そうね。……あいつが治ったらあたし、いろいろ言わなきゃ。最近ちゃんと顔合わせられなくて、ろくに話せなかったし」

 

「……そうしろ」

 

「推奨:迅速な活動の再開。思います。」

 

割り込むアラハバキ。それもそうねと、春子はバルトチェイサーにまたがる。隣でアラハバキがバイクに乗り、モリガンがその後ろに。捜索再開である。

春子の胸には当然、強く決意が宿って。

 

 

 

「なァ俺らどうするよ」

 

「さーな……」

 

路地裏の影に座り、ため息。薄汚れ室外機に背中をかけ、二人は自分の首に触れた。

 

「……カネはある。溜め込んでた金は隠したままだったからな」

 

「俺は……なくはないだけ」

 

コンビニのサンドイッチを分け合い。二人口に放り込み。

 

「私、料理作れねえんだよ」

 

「俺はできるぜ。まあ場所ねェけど」

 

「お前の料理食ってみたいな」

 

「マズいぜ」

 

「マジかよ」

 

「……ま、今後作る機会もないでしょ」

 

「そうだな」

 

白い息。サンドイッチを食べ終わり、暖かい飲み物を口に含む。誠の手は、そのミルクティーのペットボトルに暖まって。息も透明。

ぐっと、腕を引き寄せ。ヨシオの口にミルクティー味が押し付けられる。

 

「私は、お前が居ればいいよ」

 

「……そこまで言われる筋合いのある人間かね俺」

 

「さァな。首輪をつけられてからはずっとこうだよ」

 

「……そう」

 

「お前はどうなんだよ」

 

「俺の人生は死ぬための人生だからなァ」

 

ホースを拾い、腕に適当に巻きつけ。自分の腕を見ながらも、その視線の先はもっと遠い。過去の自分。

二山ヨシオは、一瞬たりとも未来を見ていない。

 

「まあ、誠となら、一緒に死ねるかな」

 

「じゃあ、殺してやろうか」『ラミレシア』

 

「……剣はダメだよ」

 

「じゃあ、いい」

 

キーをしまい……いや、しまうことはなかった。こつこつした足音が近づき、ヨシオも教皇のキーを取り出し、立つ。現れたのはそれにそぐう相手だった。

 

「よっ」

 

サタンことマシロ。にやにや薄らに笑みを浮かべながら反対側のパイプに腰を掛ける。

 

「お前たち、俺らにつく気はないんだっけ?」

 

「そうだけど」

 

「でもルシファー側でもないんだろ?」

 

「そういうの関係なくやりたいんだよ」

 

「少なくとも自由なのは俺たちの方だぜ?」

 

「……。」

 

しばし、ぐるぐると考え。そのヨシオの横で、誠がいぶかし気にマシロを見る。

 

「……サタン、あのピアスは?」

 

「あ?……まあ、今日は気分じゃねえって話だよ」

 

「そうか」

 

「で、なんだっけ、人間としての記憶、失いたくねえの?」

 

「……そうだが」

 

「ま、大丈夫だよ。俺今第二体ブッ壊されたから悪魔の姿なれねえし」

 

ケラケラ笑い、近づくサタン。その手に悪魔のキーはない。

 

「……。なあ誠」

 

「……逃げるぜヨシオ」

 

「分かってる」『ペイドヴァラ』『ハイエロファント』

 

「待ちなさい」

 

すぐさま糸を飛ばし、立ち去る二人。ギリギリ、ギリギリで、サタンの体から飛び出るシェイドアスモデウスがかわされる。

その手にこそ、デビルのキーがあった。運命の輪を使ってバイクになる、節制を使ってドールを呼び出す。……悪魔のキーで何ができるかはもはや言うまでもないだろう。

 

「逃げられたな」

 

「逃げられましたね」

 

「追うか」

 

「はい」

 

アスモデウスは腹からキーを引き抜き、桃色へと姿を戻す。

 

「アスモデウス、俺の演技上手いからバレないと思ったんだけどなァ~」

 

「次は、サタン様のファッションも学びます」

 

「そう?頼むわ」

 

捜索を始めたマシロの元に、すっと着地。太陽から降って来たように、黒い髪の女性が先を見る。

 

「我が追えばよいか?」

 

「いや、警察の方に気を回してくれ」

 

「あいわかった」

 

そのまま陽光に紛れて消える女。……アマテラスである。

 

「あいつもやっぱ権力狙いだよな」

 

「そもそも、隠すまでもなく公言していますから」

 

「案外弟どものためかもな」

 

「……ツクヨミも、スサノオも、権力に固執する方には思えませんが」

 

「姉がどう思ってるかはまた別問題だからなァ」

 

辺りをうろつき、マシロが空を見る。

 

「……お前は初代サタンからずっと仕えてたんだろ?」

 

「はい」

 

「……俺が、シカムがサタンになるよう手を回したのはなんでだ?俺を気に入るなんかがあったのか?」

 

「決まっているじゃありませんか」

 

ふふ、と。珍しく桃色が、アスモデウスが笑みを浮かべる。

 

「あなたがめちゃくちゃエロいと思ったからですよ」

 

 

 

「逃げ切れると思うか?」

 

「無理だろうな。コッフオルとレッシオルがあっちにいる時点で不利もいいとこだろ」

 

「だよなァ」

 

ボロ布のつまれた、リサイクル品の倉庫。身を投げ出した二人があきらめ気味に息を吐く。

 

「どうする?」

 

「……死のうぜ」

 

ぎちり、ヨシオが誠の首を絞める。涙を流しながら誠は微笑んだ。

首を絞める感情、絞められる感情、手の感触。なにか、なにかが呑み込めた気がして。そして同時に彼の中で何かが粉々に破壊されて。その身を誠にすり寄せる。

 

「あ……」

 

少し離れた場所で、桃色が鼻をヒクつかせる。

 

「匂い、します」

 

「さっすが、お前の嗅覚」

 

「……いえ、これに関してはちょっと別ですね」

 

「? まあ、こっちだろ?ここで……」

 

桃色の視線を頼りに向かおうとするサタン。その腕を、ほかでもなく彼女自身が掴む。少女そのものの外見を思うと兄弟か何かなビジュアル。

 

「……ダメです。行かないでください」

 

「あ?なんだだよ」

 

その視線は強く、まっすぐ。

 

「この匂い、二人いま『して』います」

 

「……お前が言うってことは」

 

性の悪魔アスモデウス、頷く。

 

「どんな理由や立場があっても、それを邪魔するのは絶対に、どの宇宙の価値観でも無粋で、最悪以外の何物でもありません。」

 

「……あっ、そ」

 

「アキエルの嫌いなところはたぶんこういう瞬間に割り込んでいきそうなところです。効率を盾に」

 

「ふっくく……急にディスるなよしかも想像で。ウケるだろ」

 

置かれたドラム缶の上に座り、二人は、空を見上げる。人間の体は不便だと。寒そうに手をこすりつつ考える。

 

「なあこれ、何時間になるよ」

 

「さあ?手短になるといいとは思いますが、すぐ済ませるのはまた違いますし。」

 

複雑な奴なもんだと、マシロは行儀悪く足を組みながら考える。

コーヒーを口に含みつつ、桃色の動きが止まるのを一瞥。……30分ほど経っていた。食べかけのお菓子を置き、ぷらぷらい浮いた足を着地させ。ため息。

 

「申し訳ありません、サタン様。……失敗です」

 

「は?どういうことだよ」

 

「いきました、二人とも」

 

「……あのな、何が悲しくて俺はそんな」

 

「違います。目的失敗ですよ。逝ったんです」

 

ずかずか進み、開ける扉。倉庫の巨大な扉が開いて、光が差し込む。二つの人影が照らし出され、影が伸びて。

マシロが、その意味を理解して、唇をかむ。

 

「私を殴って構いません。お好きに罰してください」

 

「……。いいよ。お前の矜持だったら俺はそれでいいと思うぜ。恩ってもんがある」

 

踵を返す、マシロ。桃色は、これも、また一つの交わり方なのかなと、自分の首に触れて、考える。

 

「失敗は、取り戻しますので。」

 

 

 

 

……死んでいた。

 

鋼誠と、二山ヨシオは、幸せそうに首を吊って、死んでいた。

 

 

 

 

「お体、大丈夫でしょうか?」

 

部下が問うのに、明路は静かにうなずいた。包帯まみれの彼は、寒空の下。死後一時間ほどと判定され、降ろされたその二人の遺体の顔に、布がかぶせられる。

 

「……それを、選ぶんだな」

 

地獄でどう扱われるかはわからないが、湖冬曰く人間界こと第一層に来るのは本当に難しいことだし、そもそも同時に死ねば同じところで同時に迎えられるわけでもない。

そもそも元地獄在住の悪魔。面倒な処理もある。一緒に死ぬのが、今後のために得策とは言えないのである。

……それで物事を判断する二人ではない。二人の目に、未来は一瞬たりとも写っていなかったのだ。

 

「……」

 

明路は立ち尽くし、丁重に運ばれる遺体を見つめる。遺族への連絡を指示しながら、明路は、手袋で事件現場にゆっくり触れる。

首を吊ったのは、ペイドヴァラの糸ではなくただの布をより集めた縄だった。

 

「俺は……お前たちのような、犠牲者を……」

 

いや、果たしてそれでいいのか?と、視線が落ちていく。

今、日本の法とレイフの力だけで救うことができたのか?ただ、考えることしかできない。

 

どさッ!

突如落下音と激突音。ちりを巻き上げ引きずられているのは、タオだった。目を見開く先、黄色のタオは、明らかに春子が変身したそれだった。

 

「春子!」

 

「来ないで!」

 

銃を向けるが、その敵は熱の塊となりタオに激突する。

 

「っぐぁ……!」

 

「だが……!!」

 

「決闘の邪魔をするでない」

 

一瞬でその姿は明路の前へ。膝蹴りをぶつければ、全身の傷が叫びそのまま膝をついた。

 

「フン」

 

「お前ェェーーッ!!」

 

銃撃をすべてかわすのは、神々しい光の存在、アマテラス。

息を上がらせながらタオが後ずさった。しかも、その横から足音。レッシオルが、迫る。

 

「手伝うよ、太陽神仲間だし」

 

「決闘の邪魔はだな」

 

「古臭い、価値観」

 

熱波を放ち、タオにぶん投げる。立てないタオは、もはやそれを受けるしかなく。

 

『ジャッジメント』『エンプレス』

 

その一撃を、蹴りと槍が防ぐ。

 

「オラァ!西と北の大先輩に挨拶せんかァ!」

 

「……モリガンに、アラハバキ」

 

「命令。付与しましょう『敬称』。さんをつけろ(端的表現)、、」

 

「右に同じくゥ~」

 

駆け出す二人がレッシオルの方へ。立ち上がったタオを見て、改めて、アマテラスが駆け出し、そこへ、羽音と打撃。また邪魔かと心底うっとおしそうに見上げれば、レギエルである。

 

「ルシファーの夫よ、我は貴様の」

 

「僕君と話す暇ないんだよ」

 

フォールンレジスターの一撃。だが不意打ちでもないなら食らう義理はない。その全てを鏡で受け止め、熱をまとった一撃が振りぬかれる。

 

「いてて……」

 

吹き飛ばされた彼の援護に向かい、タオの銃撃。ヘイナの電撃は第二層の力ゆえ、悪魔や神々にも効きやすい。

 

「ふ、ハハハ!なかなかじゃな?」

 

だが、電撃の本質は熱による攻撃。太陽の神アマテラスはあくまで高笑いのまま駆け出し、その剣を振るう。

 

「っぐ!」

 

砕け散る仮面。ふらついたタオへ迫るのをレギエルが阻むが、その全てをいなされる。放つ拳も回避して、タオに向かって剣を振るい。

 

「っぶ!!」

 

「!?」

 

毒霧、と言えばいいか。春子は、口にたまった血をアマテラスへと吹きつけた。

 

「どこにおる!」

 

辛苦了(Xin-Ku-Le)

『ヘイナ』『ハイプリステス』

 

がむしゃらに斬ったタオは抜け殻。空中にひるがえるのは、白と黒のシェイドヘイナだった。

 

「そこか!」

 

着地を狙い放つ斬撃を、レギエルがその腕で防ぐ。

いい加減うっとおしくなり、レギエルを思いっきり蹴り上げ、斬りつけ、斬りつけ!さきほどまで防いだ分のエネルギーすべてを熱に乗せ、吹き飛ばした。

 

「雨野君!」

 

「明路、さん……は、動かないで!」

 

銃を握る彼に、吐き出しそうなほどの無力感。ヘイナが駆け出すのを、その背中を、ただ見守るしかできない。

 

「食らえ!」

 

拳を放つ、いや放たない!フェイントそのままに全身が電気に変わり、辺りを伝い、激しく行きかう。

 

「止まったか!」

 

脚を止めた一瞬、駆け出そうとするヘイナをその目に捕らえ、また引っかかる、ヘイナのフェイント。その手のタオブラスターから放った弾丸が、アマテラスを襲う。不意打ちへの対処が苦手という弱点を掴んだ。

 

「行くわよ!」

 

レギエルと目を合わせ駆け出す。同時に放った拳はかわされ、しかしそれが狙い。電撃のスピードで、それは彼の手元に落とされていた。

 

「これでいいんだな春子!」

 

『Confirmed and Authorized. As you know, it's HISSATSU』

 

電気を流し誤作動を起こしたタオイズムドライバーは、変身解除状態でも必殺技を構えた。明路の銃撃がアマテラスに直撃する。同時に、明路が腕をかばって苦しんだ。

 

再見(Zain-Jian)!』

 

「っぐぁ!」

 

苦しみうめく、その怒りに任せ、アマテラスは剣を振り下ろす。ヘイナの体に大きく傷をつけ、ふらふら後ずさる彼女を追う。

 

『第二体抑制解放・Strike!愚者強制。Ready!?』

 

「させるか!」

 

レギエルの拳がアマテラスの頬に叩き込まれ、ぶっ飛び。壁に叩きつけられたそこに迫れば、熱の斬撃に吹き飛ばされ。両者背中を壁に預ける形に。

 

その隙に、ヘイナがその身を奮い立たせ、立ち上がる。

……立ち上がるのを、頭を掴んで阻む。幻覚の霧と共に、桃色がそこに居た。

 

「お前は……」

 

「し……ズレますので」『サタン』

 

 

その手の悪魔のキーが鳴いて。頭をぐっと引っ張り、抵抗するヘイナ、春子の首に。

 

 

『デビル』

 

 

……それは付き立てられた。

 

 

「……は?」

 

「まさか、おい、待て、」

 

「ああ、大丈夫ですよ。あくまで、肉体のリンクが切れるだけなので。仕上げが重要です」

 

桃色が振り向くと、マシロ。警察官から奪ったであろう、拳銃がその手に。

シェイドヘイナと、春子で姿がブレる、その頭にぐりぐりと黒い金属は押し付けられて。

 

「やめろォオオオオオオ!!!」

 

タオブラスターを持とうとする手は、折れてまともに動かない。無理矢理身を起こすレギエルともども駆け出し。

 

 

 

「ァ、あきみち……助けて……」

 

 

 

乾ききった破裂音と、硝煙の匂い。

 

どさりと、『土田春子』だけが血を流す。

 

「……は?」

 

「……おい、春子。なあ、なあおい、おい!!」

 

その身を揺らしても、赤色と共に、冷えたからだが揺れるだけ。

 

「……っ、は、ヵ、」

 

「フゥーッ、フゥーっ、ゥゥウウアアアアアア!!!!」

 

息すらまともにできない、現実に見えなくて涙すら出ない。明路は、ただ眼を見開いて。

視線を落とし、レギエルの咆哮が怒りと共に響く。駆け出し、事態を飲み込めず呆然とするヘイナの足もとからそのキーを取る。

 

『ヘイナ』『女教皇』『連続解放!Come on!その、霹靂』

 

「絶対にお前を殺す!」

 

『アスモデウス』『デス』

 

「やってごらんなさい」

 

一度菜摘に戻ったその顔は、笑顔にすら見える、爆発。弾け飛び、ヘイナに似た巻き角から雷撃を解き放ちながら、レギエルが拳を構える。

対し、桃色。その顔は耳まで裂けているようにすらみえる笑みで、キーを自らの腹部へ付き立てた。




次回、「天色に突き抜けて」
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