仮面ライダーレギエル   作:さわたり

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第二十一話「蒼雷」

「……うまくいきそう?」

 

「ええ。連絡手段が乏しいので、第二体の準備は分かりかねますが」

 

「ま、そこは仲間を信じるしかねえな」

 

隠れ家で寝転がりながら、マシロが呟く。隣で桃色がキーをクルクルと回しながら、マシロを一瞥。そっと手を伸ばし。

 

「サタン様……その、」

 

「悪いが人間の体相手じゃあな」

 

「では人間の体を捨てます。」

 

「まだダメだ。俺達が人間の体じゃないと、今後も同じことをする時に……『苗床』たちに警戒されるだろ?」

 

「……はい」

 

「まあ落ち込むなって」

 

桃色の頭をそっと撫でるマシロ。唾を飲んでうつむき、桃色はなおもキーを握る。

 

「第二体の復活と、用意ができるまでの間、あなたが戦うための手段に心当たりがあります」

 

「聞かせてくれ」

 

 

 

 

 

第二十一話「蒼雷」

 

 

 

 

 

「なんか抽出機ってやつっぽい?」

 

「実際構造はかなり近いよ」

 

留一のいじる手元の装置を、ヘイナが覗き込む。曰く、タオイズムドライバーに取り付けるパーツらしい。

 

「タオの強化するんだっけ?」

 

「そ〜!」

 

「どう使うんだ?オレ様も使えるわけ?」

 

「いや、人間の体ないと無理だね〜。スキャン入るし」

 

「うげー」

 

「しかも第二体と使用キーが一致してないと使えないおまけつき。改善の余地の方が多いよ」

 

「そりゃ大層なことで。あんたは使えるの?」

 

「使えるよ。ただそれよりかは、なっちゃんに使わせてあげるほうがいいね」

 

「じゃ……モリガンやアモンか?」

 

んー。留一はやはり渋った反応だ。当然と言えば当然か、アモンはもとは敵だったし、菜摘に対し不満を勝手に抱いている。ルシファーの部下は湖冬的にも信用はしているものの……、という立ち位置。

 

「まあ、いざとなれば?」

 

「……オレ様にいっこ、提案がある」

 

首を傾げる留一をよそに、ヘイナは立ち上がって機器に刺さったままのキーに手を伸ばす。

帯電したそれをそっと触れて頷くと、彼は振り向いて。

 

「第二体を改造する天使の技術……それが使えるなら……」

 

「むしろ、それを生かした装備だけど」

 

「なら……アキミチの第二体と俺様の融合だってできるだろ」

 

「……!!」

 

「二人で一人みたいな感じでさ」

 

光明が、見えた。

 

「それをちょっとメインで考えてみるよ」

 

「助かるぜ」

 

「た〜……だ、君のキー、ちょっと様子が変だから……。しばらく借りてていい?」

 

「オレはなくても戦えるしな」

 

「あった方が強いのはそうでしょー?」

 

「マ、それはそうだけどな。でもいいよ。アキミチの助けになるんだろ?記憶なくす前に好きだったんなら、オレ様確実にアキミチのこと、また好きになるし」

 

「……ふふ、そーかも」

 

そんな二人のもとで、留一に電話が。見れば警視庁のお偉いさんで、唾をのんで応答した。

 

 

 

 

「まさか直々に……か」

 

明路がもらった連絡はも、同じく上層部からの物。内容は、「サタンことマシロたちの潜伏場所の発見」であった。レイフだが、明路の指揮する部隊ではない。

上層部への報告直後、すぐに明路らに連絡が来たという解釈が概ね正解だ。それは、警視庁本部からの、明路らへの信頼を表している。

 

「……」

 

手が震える。信頼の事実が、牙となって春子を守れなかった事実として突き刺さってくる。

だが未だそれを現実として受け入れきれていない彼も居る。

そしてヘイナの一挙手一投足が春子に重なることもある。それは、「お前の事は忘れたけど春子は生きているんだよ」とささやかれているようで。

守れなかった後悔すら、「お前が春子に覚えていてもらいたい独りよがりだろ」と自問自答が始まる。

 

「連絡、しておくか……」

 

携帯の連絡先から菜摘の電話番号を表示させつつ、しばしまた考える。彼らを巻き込むことは正解だったのか?

無力感が今一度彼を襲い、それを振り払うようにかぶりを振って。

筋トレでもしようかと立つが、戦いが近いのなら温存が大事だ。モヤモヤしたものを振り払えぬまま、エネルギー補給のゼリーに口をつけるのだった。

 

「ミチくぅ~ん?」

 

しばらくして、部屋には留一のちょっと間延びした声。それでも、付き合いの長い明路には彼なりの緊張が伝わる。

 

「どうした」

 

「タオの強化装備、出来た」

 

「本当か!」

 

「うん。これなんだけどさ」

 

ショットガンサイズのそれを見せつけ、留一、ニコニコ。その名も「シェンブラスター」。

 

「これは……キーを差し込むのか?」

 

「ああ、そのパーツはタオイズムドライバーに取り付けるの。シェンブラスターに付けられるのはただの収納」

 

「……これで、タオのアーマーそのものも強化できるんだな?」

 

「うん、方法なんだけど……」

 

そんな話を始めたタイミングで、再び二人の元に連絡。内容は、二人の予想通りの物。目を見合わせて頷くと、「続きは話しながら」とのこと。

サタンたちの潜伏場所がある宇都宮まで、明路の運転が始まった。結局、菜摘と湖冬には連絡をして。

 

「なっちゃんたちは川口にいるっぽいから拾おうか」

 

「ああ」

 

今回はレイフの車も警察仕様のものではない。マシロの計画性や警戒心、それでいて突飛な行動をとる点を警戒し、気づかれづらくしているのだ。部下たちも、一般車両で少し道を変えて移動している。

 

「で、どう使うんだ」

 

「そこのパーツ外して、バックルの前に着ける。でキーを挿しこむ。細かいことはあとでヘイナに聞いて。しっかり教えてるから」

 

「そうか……」

 

件のヘイナは、いま別車両に乗っている。また後程合流する作戦なのである。回りくどいが、車内でアレコレ伝えておくためにも留一と明路は同じ車両がいいのだ。

 

「……シェン、とはなんだ?」

 

「ドラゴンボール読んだことないの?」

 

「神龍は分かるが……。という事はカミの、「神」(シェン)モチーフでいいのか?」

 

「仙人の仙……「仙」(シェン)も入ってる。神仙、っていう概念をモチーフにしてるってワケ」

 

「神仙、か」

 

「道教も、伏羲と女媧から始まる中国神話の影響があるのは事実だからさ。その上で、人間が(タオ)を見つける。そのために神仙の力を利用してやるんだ。なんか、イイだろ」

 

「ああ、イイな。タオは……人間の技術だ。神の力を利用した、人間の技術」

 

「……うん」

 

優しく微笑んで、留一はネフィリムの、隠者のキーを握る。

 

「にしても珍しいねミチくんがモチーフに興味を持つって」

 

「浅井さんの、事情を聞いて……あなたが込める意味を知っておきたいと思ったまでだ」

 

「そっか」

 

「……浅井さんは、満足か?今の状況というか、自分の、行く末、というべきか」

 

「いやァ……?」

 

「まあ、そうだよな」

 

窓の外を見ながら、留一は思案する。

 

「ハングリーであれ。バカであれ」

 

「……なんだ?」

 

「スティーブ・ジョブズの発言。ミチくん、ツッチーの一件でいくらでも思うことあるだろうけどさ。……それでも、自分がどうしたかったか、ハッキリさせておいた方がいいよ」

 

「フッ、説得力があるな」

 

「皮肉とか言えるんだねミチくん?」

 

「どうだかな」

 

そんな話をしていれば、川口はすぐそこ。道のわきに止めて、乗り込む二人を一瞥。湖冬と菜摘はペコっと頭を下げた。

 

「おはようございます」

 

「ああ、おはよう。調子は?」

 

「まあ、最高ではないですけど」

 

「それなりに」

 

菜摘も湖冬も、ちょっと困り気に笑って。明路はそれもそうかと呟いて。

どこか重い空気をまとったまま、車は進んでいく。

 

「……そういえばさ」

 

北上、菜摘たちの目的地が近づく中、静かな車内でふと留一が口を開く。

 

「仮面ライダーって、なんなの?」

 

「……ヒーローを指す言葉だと思ってくれればいい。急だな」

 

「いや、さっき私に由来聞いたでしょ?それで気になってさ。仮面ライダータオ……ね。その、漢字と横文字のくっついた独特な名前?」

 

「小学生の俺に聞いてほしいな」

 

「え、小学生の頃のオリジナルヒーローなんです?」

 

目を輝かせるのは湖冬だ。明路は少し笑って、違うよと軽く告げ。

 

「迷子の俺を助けてくれた、まあ、ライダーがいてな。彼のヘルメットが、仮面のようなんだ。少し尖ったデザインで、小学生の俺には仮面ライダーと、そう表すのがちょうどよかったんだ」

 

「明路さんの中での、ヒーロー像、なんですね」

 

「ああ、そうだな。……俺もそうありたいと、ヒーローのようで居たいと、そう思ってな……。フフ、春子がどう思ってるかはわからんが」

 

どこか懐かしそうに、寂しそうに、そして、自虐的でもある、笑み。その意図をなんとなく感じて、菜摘は強くうなずいて、言葉を贈る。

 

「なら、明路さんは絶対に仮面ライダーです。……少なくとも、僕にとっては、ヒーローですから」

 

バックミラーに写る明路が、すこし驚いて目を見開き、そして嬉しさを隠しきれずに微笑む。

 

「私も、アキエルとしてやってるとき、すごく支えててもらってましたし。……そういう意味では、春子さんだって、仮面ライダーです」

 

「春子は仮面ライダーに「ダサい」って言うかもしれないがな」

 

「でもツッチーノリノリで変身言うしライダーキックとか言ってたよ技の名前」

 

「ライダーショットの俺の命名法則に沿ってるじゃないか。……フフ、案外彼女も喜ぶかもな」

 

ふふっと笑って、少しにこやかな空気が残り。そのまま、熊谷北部の目的地前で車は止まった。

 

「……着いた。まず君たち二人が」

 

作戦としては、挟み撃ちに近い。

 

「はい!」

 

「頑張ります」

 

菜摘と湖冬が、車を降りて明路の方を向く。行くぞ、という瞬間の前、明路は、しばし考え込む様子を見せて、スケッチのようなものを出した。

 

「イマイチピンと来ない話だが……天使たちの見え方は認識で変わる、そうだな」

 

「はい。悪魔たちも同様で、あくまで違う次元にある力に乗り換えてる状態ですから」

 

「……ふむ、ではこのスケッチも役には立たないようだな」

 

明路は、留一越しにスケッチを渡す。……二人が見れば分かる。それは、レギエルとルシフェル、アキエルのもの。どこかタオにも似たその見た目は、バイザー風の外見。

……どこか、バイク乗りの恰好を思わせるものである。

 

「俺にとっても同様、そういうことだ」

 

「それって……」

 

明路は、優しく微笑んで。

 

「任せたぞ、仮面ライダーレギエル、仮面ライダールシフェル!」

 

「……!」

 

力強くうなずくと、明路は車を走らせていく。車内で、明路はどこか、すっきりとした顔であった。留一もそれを一瞥し、微笑む。

 

「俺は身勝手だったなと自身をよく振り返るが……それでも、彼らの助けになれている。そう思えたよ」

 

「私だって、ミチくんになしにタオは……仮面ライダータオはないんだから。感謝してるよ」

 

「嬉しいよ」

 

「だからミチくん。君はわがままで行かなきゃ!」

 

「偽善的でもか?」

 

「やらない善よりなんとやら!無力感とかさ、君の行動原理はエゴだけど……君のエゴは正義といって全く差し支えないタイプのものだし!」

 

留一が思い浮かべるのは、菜摘たちのために尽力する明路の姿であった。

 

「……なら、今度のわがままも聞くだけ聞いてくれるか」

 

「もち」

 

その言葉を聞くと、明路は少しずつ涙を流し始める。ぎょっとする留一だが、すぐにその事情を理解した。

 

「俺は、ずっと……嫌だったとか、寂しいとか、そう言いたかった。…………春子の記憶が、なくなって。俺の事を忘れて……。俺は、俺はそれが寂しくてたまらない……!」

 

「ミチくん……」

 

「俺の事を覚えていてほしい!俺のことを知っている春子であってほしい!俺の事を、好きだと言ってくれる春子がいてほしい!」

 

「ミチくん、事故っちゃうぞ」

 

「……ああ、ああ。すまない」

 

涙を拭いて、車は止まった。留一はここで降りるのだ。

 

「ちゃんと、ヘイナにそれ話してあげて」

 

「……それは」

 

「恥ずかしいのはともかく、ヘイナは、ツッチーはそのこと喜んでくれるよ」

 

「…………検討しておくよ」

 

「アハハ!……じゃ、また」

 

「ああ」

 

留一を見送り、少しして、車にヘイナが乗り込んだ。

 

「行こうぜ、アキミチ」

 

「……そうだな」

 

「オレ様、留一からいろいろ伝言をもらっててさ」

 

「聞かせてくれ」

 

 

 

 

「……このスケッチなんだけどさ」

 

「歩きスマホ危ないよ」

 

「気を付ける」

 

立ち止まりつつ、湖冬はなにやら検索している。

 

「で、そのスケッチ……どうかしたの?」

 

「ここにあるレギエルと、ルシファー、あとアキエルと……タオの姿。なんか見覚えあって、脳内でこねくり回してたんだけど」

 

「うん」

 

「……このメットじゃない?」

 

湖冬が菜摘に見せたのは、ヘルメットの商品画像。もう十年以上前の商品だが、独創性が人気でいまだにユーザーも居るようだ。

そのメットには、MASQUERADE(仮面舞踏会)と刻まれていた。

 

「……これ、って」

 

「うん。お義父さんがデザインしたやつだよ」

 

「僕が生まれてから、そういうの、作りはじめたんだっけ……」

 

「明路さんを助けたライダーが被ってたのって……」

 

二人は目を見合わせて、嬉しそうに笑って。

 

「……ふふ、いこうか」

 

「うん、そうだね」

 

まっすぐ向かえば、そこにはマシロと桃色が立っていた。

 

「わざわざご苦労様」

 

「こんなに綺麗につられるとは思いませんでしたよ」

 

マシロの合図で、辺りに土や炎のドールたちが盛り上がり始める。完全に包囲を終え、マシロは楽しげに手を広げる。

 

「行きますよ」『アスモデウス』

 

「もちろん」『サタン』

 

桃色がマシロにしがみつき、そのキーを手渡す。マシロはケタケタ笑うと、二つのキーを持って同時に自らに突き立てた。

 

『デス』『デビル』

 

「……応用って事ね」

 

憑りつきと解放を同時に行い、その姿はアスモデウスとサタンの混ざる、シェイドへ。シェイドクロスとでも呼ぶか。クロスは得意げに近づき、湖冬はその様の次に遠くで見守る葵へ視線を送る。

 

「日向ちゃんらしくないね。他人にやらせるなんて」

 

「出来ること全部やる方が……失礼がない気がするでしょ?」

 

「なんていうか、私みたいな合理主義者になっちゃったね」

 

「何が言いたいの?」

 

「菜摘君は芯がある子の方が好きだよ」

 

「……人を怒らせるのが上手なのね!!!」『サンファロエ』『テンパランス』

 

駆け出すサンファロエ。さすがに不利だろと、くつくつ笑うサタン。しかし、湖冬も菜摘も、ただただ不敵に笑っていた。

 

「私は一応、ルシファーとして日本政府と交流があるんだよ」

 

「僕だって警視庁直々の協力者だからね」

 

「有事ならこう言うことだってできるんだよ。おまえの作戦なんてお見通しってこと!」

 

車から、ヘリから、草むらから。防具を身に着けた自衛隊員たちがドールを蹴散らし始めた。

 

「おいおいおいマジかよ」

 

「……クソッ!」

 

「口汚くなったね、日向ちゃん!」

 

「地島ちゃんは相変わらず余裕ぶっててムカつく!」

 

サンファロエはまっすぐ湖冬へ。クロスはサンファロエの様子を見つつ菜摘に迫る。

二人はすぐさま構え。

 

『受胎告知』

 

『客星堕天』

 

「「変身!」」

 

『介入 by Fallen!開錠 by Start!解放 with Brave!愚者 a.k.a.Fool!その、無謀。そして光と闇!』

 

『堕落……腐敗……謀反……堕ちたる、終幕!』

 

レギエルが拳を放ち、それをクロスが受け止める。単純に、息の合った二人の知能が襲い来る。レギエルの攻撃は的確に防御されている。

挟まれていない分防御はしやすいが、完全に攻め手に事欠いている状況だ。構えにらみ合うそちらに対し、サンファロエは暴れ散らかしている。

 

「死んでよ!早く!!」

 

「やだ」

 

蹴りや拳を斧でいなし、しかし迫るドールまで来ると防御の手が間に合わない。レギエルとクロスとは違い、こちらは攻めに傾いた戦いだ。

ルシフェルも蹴りや剣で応戦し、サンファロエも怯んでいる。

 

「……フゥーッ、フゥー、」

 

「本当に品がなくなったね」

 

「品があったら雨野君は私を見るの!?」

 

「さあ。少なくとも目は背けられずに済むと思うよ」

 

「正妻の余裕かましてんじゃないわよ!!」

 

「その言い方は正確じゃないかな。菜摘君は側室を作らないし」

 

「ああ言えばこう言う!」

 

「黙ったら黙ったで怒るでしょ」

 

ギャーギャー騒ぐもう一方の戦いを、脇目にアスモデウスは眺めている。

 

「……愚かな女」

 

「日向葵の話?」

 

「ええ。結局は性、子孫を残すための欲求です。正直であっても執着するべきではない」

 

「君は誰にも執着はしないの?」

 

「ええ、誰相手でも同じことですよ。……というか、日向葵をかばうようにも聞こえますが」

 

「ま、僕の事はあきらめてほしいかな」

 

「それは困ります。愚かなぐらいがわかりやすくてちょうどいいのですから」

 

「ま、そーいうこと」

 

殴り掛かるクロスの攻撃をかわし、タックル。しかしそれも回避され、反撃の蹴り上げ。それも確実に防御するが、響く者は響く。

戦い続けてジリ貧になるのがどちらかは、明白だった。

 

 

 

「どうする、助けに行く?」

 

「そうね……放っておくと、ルシファーは勝ちそうね。……じゃあ、今行って潰すのが得策かしら」

 

レッシオルとコッフオルが、少し遠巻きに戦いを眺めている。お互いを見て頷いたかと思えば、その足取りはレギエルたちの方へ向かう。しかし、その横から、声がかかり。

 

「行かせないよ~」

 

「アザゼル」

 

「……堕天使だったくせに、結局天使に屈した阿呆が何の用?」

 

「だから言ったでしょん?行かせないって」

『Taoism……Human power without god's hand』

 

その腰にベルトを装備し、不敵に笑う。威嚇射撃をしつつレッシオルたちの前に歩み出る彼は、アタッシュケースを地面に置いた。

 

「……コッフオル」

 

「ええ、あなた」

 

姿を神のそれに戻す二人、いや二柱を前に、留一はタオイズムドライバーに手を当て、大きく構える。

 

「……変身。」

 

『Fitting……OK. Five senses assist is ready』

 

ドローンから射出された樹脂が光によって硬化し、青のタオがその姿を現す。

 

「さてと……力借りちゃうよ、トメ子」『ネフィリム』『ハーミット』

 

『Ji-Du-TAO!Hermit!That Appetite!』

 

ゴスペルブラスターにセットし、同時に銃口ではなく銃上部に差し込んだキー、そこから牙を模した刃が生える。

食い尽くすかというような、荒々しい様相のそれを構え駆けだした。

 

「でぁあああ!!」

 

普段の様相と案外違って、留一は荒々しく飛び掛かる。威力含めても押すには至らないが、そこはもと天使。食いつき、無視はできない対象として太陽月の夫婦に噛みつく。

 

「こいつ……!」

 

レッシオルの陽光をもろにもらうがそれでも駆け抜けてひたすら斬りつける。コッフオルもいい加減イラついて、幻覚を広げた。

 

「なンにもアップデートがないと思うなよ」

 

タオが指をはじくと、ドローンが起動。空中をカメラとレーダーでとらえ、タオ自体のUIにもレーダーが現れ。最後の決め手は使い手の感覚頼りだが『気配』。

蹴り込むコッフオルに、タオは先手で斬りつけた。

 

『Confirmed and Authorized. As you know, it's HISSATSU』

 

「ライダースラッシュ!」

 

腰にタオブラスターを装備したまま発動し、エネルギーは光を放ちつつ腕へ。その連撃が叩き込まれる。

 

「っぐ……」

 

「油断してりゃそうもなるよ」

 

「よくも……コッフオルを……!」

 

「よくもって言われてもね」

 

駆け抜けた彼は熱波を放つ瞬間に、スライディングで回り込み。背中へ斬撃を叩きつけた。

 

「はいもう一回言うよ。油断してりゃそうもなるよ!」

 

「じゃあもう油断しない」

 

「出来れば一生しててほしいけどね……」

 

次の熱波は全体に向けたものだ。さらに局所的かつ一瞬の霧で、半ばワープに見える使い方で、コッフオルも迫る。同時に相手どればさすがに厳しく、二人の蹴りを正面からもらってしまう。

 

「いっでで……」

 

「終わりじゃないよ」

 

さらにレッシオルの高熱をまとった拳。ぶっ飛び、受け身も取れずにタオは地面に投げ出された。

 

「相手が悪いよ相手がー……」

 

ぼやく余裕があるあたり、無事なようだが。

 

そんな彼のもとに、二人分の足音。

 

「時間を稼いでくれて……ありがとう」

 

「オレ様からも最大限の感謝」

 

「ん、いーってこと」

 

コッフオルとレッシオルがいぶかし気に視線を向ける先で、明路は留一からタオイズムドライバーとタオブラスターを受け取った。

ヘイナは、シェンブラスターを担ぎその横を歩く。

 

「……いいんだな、ヘイナ」

 

「むしろ……アキミチこそいいのかよ」

 

「ああ、もちろんだよ。……俺は、俺のために提案してるんだ」

 

「ならよし、行くぞ!」

 

「ああ!」

 

ヘイナが差し出したのは、シェンブラスターから外したパーツ。決意を固め、彼はそれをタオイズムドライバーの上にセットする。

 

『I’m waiting for you』

 

「ほらよ」

 

「ああ」『ヘイナ』

 

その手には、女教皇のキー。大きく構えそれを握り、ヘイナも腕を伸ばす。

 

『ハイプリステス』『Get!』

 

バックルに装填。そのまま両手をベルトに重ね……。

 

「「変身!!」」

 

その手を広げる。パーツがバチバチ音を立て、明路の体をエネルギーが通う。数個の赤いウィンドウがホログラムとして飛び出し、全てが警告文を浮かべる。

 

「……第二体にアクセスできない……? ッッ、やっぱり融合は」

 

「アキミチは大丈夫なのか!?」

 

「エラーがあれば弾かれるだけ!ミチくんの体に異常があればすぐに中断されるよ!」

 

「ならいける!」

 

「来るなら早くしてよー」

 

余裕綽々で眺めているレッシオルと少し苛立つコッフオルを前に、ヘイナは雷に変わりホログラムに飛び込む。そしてドライバーを介し次々にホログラムに突撃し、バチバチと音を立て。

 

「……まさか!」

 

「そのまさかだよ!」

 

「ハッキング……!」

 

ホログラムは全て、緑に変わった。

オールクリア、問題解決である。一瞬飛び出て不敵に笑うと、今一度バックルに飛び込む。

 

『Lightning……This is it!You are the KAMEN RIDER HEIGHNA!』

 

バックルから飛び出した板状のエネルギーが明路を通過し、その鎧がまとわれていく。

白黒のボディスーツの上、六角形の装甲は青と黄の二色に光り、緑色が全身に差されている。それは、雷光を思わせる姿の戦士だった。

 

「仮面ライダー……ヘイナ!」

 

留一は砂を払って立つと、迫るレッシオルに視線を促し行きなよと合図。ヘイナ……仮面ライダーヘイナは駆け出し、電撃の拳で迎え撃つ。

衝撃が当たりをめぐる。……互角だ。

 

「で……ヘイナ、私の仮説はあってた〜?」

 

『……そうね、ドンピシャで正解。オレ様は……いや、』

 

 

『あたしは、』

 

 

『あたしは!記憶をバックアップとしてキーに残したのよ!』

 

その声は、土田春子、そのもの。少し涙ぐんだ声で、明路は問う。

 

「俺のことは、覚えているか」

 

『当然よ。この前買ったゲーム進めてる?』

 

「星5のラストミッションに勝てん」

 

『ッフ、なら熟練者“土田春子”の協力が要るわね!』

 

レッシオルの二撃目を腕でガードし。蹴り上げ。胸元に当たり、怯むそこへ、銃撃。

シェンブラスターによるものだ。さらにショットブラスターも向け、ショットガンサイズで二丁拳銃スタイルの連射。

 

「バカね、私を忘れてた?」

 

「そちらこそ迂闊に近づくあたりが学ばないな」

 

『バカにわかるよう言えば、バカはあんた!』

 

銃を合体させ、ブラストブラスターへ。即座に背後のコッフオルに放つそれは、明路の一撃スタイル。

 

「クソっ!」

 

「馬鹿の一つ覚えか!」

 

そして今度は分割。電撃が張って位置を取り、二丁拳銃スタイルの連射でぶち当てる。

レッシオルの蹴りもブラストブラスターからの電撃が迎え撃った。

 

「コイツッ!」

 

「死ね!!」

 

いい加減苛立ち、レッシオルも熱波を放射。コッフオルの断続的な霧による接近も重なり、挟み撃ちを喰らった。

 

「……くっ」

 

『明路!』

 

「いや、大丈夫だ。……それに今は体を共有する状態。君も気にした方がいい」

 

『そりゃどうも。……来るわよ!』

 

レッシオルの拳とコッフオルの蹴り!咄嗟にガードするがそれでも後退り、コンビの連続攻撃に押される一方。

それでも隙を見つけ、電撃の速さで双方に銃撃を当てた。

 

『今!』

 

「ああ!」

 

『Confirmed and Authorized. As you know, it's HISSATSU』

『Ready!HEIGHNA’s lightning bursts now!』

 

今一度ベルトに手を重ね、必殺。

電撃が全身を巡ると、最後はその足に収束して。

 

『「ライダーキック!!」』

 

飛び蹴りを、レッシオルにぶち当てる。後退りする夫の元にコッフオルが向かうが、必死の焦りこそ隙。銃撃を連続でぶち上げてて転がすと、また構え。

 

「『ライダーパンチ!!』」

 

今一度、レッシオルに雷撃の拳が叩きつけられる。

1、2歩。後退り。最後には膝をつくと、陽炎が吹いて。

 

「ごめん、コッフオル……」

 

拜拜(Bye-Bye)!』

 

爆破!

その場には何も残されず、コッフオルが呆然とその様を見ていた。

 

「よくも私の夫をォォォ!!!」

 

『今から同じとこに行ってもらうわ。別に消えるわけでもないでしょ。……あたしの記憶や……』

 

「別府アイの記憶と違って……!!」

 

『Confirmed and Authorized. As you know, it's HISSATSU』

『a.k.a. FINAL FINISH of High-Priestess』

 

ヘイナのキーを外してブラストブラスターに装填。霧の中に消えるが、電気とレーダーはその場所を正確に捉えていた。

 

「『ライダーショット!』」

 

拜拜(Bye-Bye)!』

 

放たれる一撃、膨大なエネルギーは一本の針のように、コッフオルを貫通。数秒ののち、月光のような白い光とともにコッフオルは弾け飛んだ。

 

「……行くぞ」

 

『ええ』

 

そのまま駆け出し、クロスの方へ接近。押されて膝をつくレギエルの援護に入り、怯ませ。

 

「あっちも2人で1人かよ」

 

「分が悪いでしょう」

 

「……逃げっか」

 

「ちぇっ」

 

サンファロエも距離を置くと、水と炎のドールをぶつけ蒸気発生。煙幕の中ですでに姿を消していた。

 

「……タオ、ですか?」

 

『仮面ライダーヘイナよ。……まあタオの進化版でいいわ』

 

「その声……!」

 

『合成だけど、あの声に寄せた。……土田春子、完全復活よ』

 

「記憶、戻ったんですね……!」

 

菜摘と湖冬を前に、少し得意げなヘイナ。留一も、遠巻きにだが嬉しそうにそれを眺めているのだった。

 

『そうね、まあ相手は逃したし祝杯とは行かないんだけど……』

 

「……っ、っう、ぅ」

 

「え?」

 

「あれ?」

 

『……明路?』

 

「いや、俺は、ひぐ、おれはだな、」

 

『泣いてるわけ!?』

 

しばし驚いたのち、栓が外れたように春子も大笑いして。留一も菜摘も湖冬もにこにこと笑って。

 

融合した第二体の中で、春子も少しだけ微笑んで泣いた。




次回、「始まりは灰色で」

……

「私の嫁探しと言おうか」

「お前は……」

「ルシファー……その初代にして……サタン、その初代さ」

世界を巻き込んだ婚活が始まる!

「どういうことだ?」

魅了(チャーム)のようなものね」

「私は女にもなれる!男も奮って参加どうぞ?」

そして……。

「ハネムーンは天界侵攻などいかが?」

「天界側の緊急の措置です」

「はいはい」『受胎告知』

新たな戦いが、遅い来る。そして始まる……地獄の戦い!

「非常に不服だが……アモンの名の下に宣言しよう」


『客星堕天』


「変身!!」

仮面ライダーレギエル特別編
ヴァーミリオン・ウェディング


レギエルにおける仮面ライダーの定義ははっきりしてて、「明路が仮面ライダーと認めたか」なんですね。
ちなみに劇中で示したデザインは概ね「明路にどう見えているか」という観点になっています。
序盤は全部明路の視界に入る描写やカメラの描写(後程明路が見た)にしようとしてますが途中で力尽きてます。
次回は劇場版相当の作品!またちょっと遅くなりそうです。
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