仮面ライダーレギエル   作:さわたり

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一応劇場版の体裁ですがフツーに間に入る話だしフツーにつながってるので読むといいと思います。


劇場版
劇場版仮面ライダーレギエル ヴァーミリオン・ウェディング上編


「ここに宣言しよう」

 

どこか妖艶さを背負う青年が微笑み、赤い建物のバルコニーで告げる。

 

「私のモノとなり、地獄を手中にする妻が欲しい!」

 

どこかうつろな目をした男女が、拳を突き上げ青年を見上げた。

 

「おっと……ちなみにだが私は女にもなれる!男も奮って参加どうぞ?」

 

風とともに、女性の姿に変わると、にこりと妖しく笑い。

最後に、また青年に戻り彼は告げる。

 

「我が名はルシファーにして、サタン!」

 

ニヤリと笑い、こう、付け足すのだった。

 

「地獄の覇者だ」

 

 

 

 

 

「……つまり、外国に拉致されたけど、クーデターを起こして、元首側の味方になったけど、後ろ暗いから秘密裏に表彰されて帰国……ってこと?」

 

「信じない?」

 

「……んー、フユ姉こういう意味不明な嘘つかないしなあ」

 

湖冬の前に座り込んで唸るのは池雪。湖冬の妹である。隣で父、海幸もさすがに頭を抱えている。とはいえ見る限りは騙った他人でもないし、過去の話は普通に合致するし、会話のセンスが湖冬のそれである。

実際のところ、嘘というのは真実を混ぜた方がやりやすいというものなのだ。

 

「ナツ兄は?」

 

「お仕事で打ち合わせ。横浜に居るよ」

 

「えー? 待ってそうだけどなフユ姉は」

 

「終わったらすぐ帰ってくるって言ってたしね」

 

「……菜摘君も、食べてくか?」

 

「あ、いいね。お父さん作る?手伝うよ」

 

「いや、いいよ。たまには娘にふるまいたいだろ」

 

席を立って背を向ける父。そのキッチンに向かう姿を見送り、姉妹は視線を合わせた。

 

「……改めてなんだけど、本当にごめんね」

 

「ほんとにね!」

 

「うん……」

 

「ナツ兄の落ち込みようとか、見てられなかったし!」

 

うつむいてそういう妹を見て、湖冬は少し複雑な表情。空気を柔らかくしようと、話題変更。

 

「ちなみにユキ、恋人とかは」

 

「ぶっ殺すよ!?」

 

逆効果である。

 

「ア、サーセン……」

 

「な~~によそれ!!」

 

「まったくもう……」

 

「アハハ、ごめんね」

 

「笑うな!」

 

「紹介しようか?」

 

「24の姉に紹介されても犯罪の空気出るだけでしょ!!」

 

「ごめんねホント」

 

「フユ姉はいいよねッ!赤ちゃんのときから!」

 

そう言いながらも、池雪はこのやり取りが久しく感じて、微笑んで涙を流し始めた。

 

「ほんっとに……もう……」

 

「……ごめんね」

 

「ホントだよ!!」

 

ごまかし気味にリモコンをいじり、テレビをつけて。クイズ番組を見始めたその瞬間に、臨時ニュースが流れ始める。目を見開く姉妹。

同時に、湖冬の携帯に通知が飛んで来る。

 

『緊急事態だ。』

 

『テレビをみたほうがはやい』

 

明路からの、急いで送っただろうその連絡。振り返るそのテレビ画面には、巨大な赤い城壁が映っていた。

 

『突如発生した城壁により、横浜市の一部が大きく隔離されています。現在ドローン等による侵入はすべて撃墜されており、周辺は警察が警戒態勢を取っています!』

 

「……は?」

 

「え?」

 

「これ、え、なに、どういう」

 

「……ごめんユキ、また帰ってくるから!」

 

「え? フユ姉!? ちょっと!?」

 

駆け出す娘に驚き海幸も振り返るが、湖冬はただ「ちょっと行ってくる」とだけ告げて去ってしまうのであった。

 

「えーちょ、マジ?」

 

「……湖冬がああってことは、菜摘君周りだろ。気にしないでやれ」

 

「いやでもさァ? 長女がいきなり飛んでった反応ォ?」

 

「まあ、湖冬なら大丈夫だろう。クーデターを主導したんだろ」

 

「それマジなのかなァ……」

 

 

 

 

「さあ、諸君、いかがかな?」

 

死人は居らず、城壁の真上に居たものは押しだされて内部に入れられたようである。城壁は、円形らしい。

城壁の高所より声をかけたのは妖艶さをまとう青年だった。内部に立つ者たちはみんなぽーっとした顔だ。

 

「む……。君は効いていないか。……シカムの奴(当代サタン)の……なんだったかな」

 

「シェイドって言いたいの?」

 

「人間はそう呼んでるんだったね」

 

青年が目線を向けた先、どこか熱っぽい群衆の中で、ただ一人。

菜摘だけが、正気の目線で青年を見ていた。青年は優しく微笑んで、その姿を女性のものに変える。

 

「嫁は男でもいいんだが……っと、普通の色仕掛けも効かないか」

 

近づこうとする群衆を諌めながら菜摘の元に寄り、すこし胸元を見せて誘ってみるがそれも効果なし。

 

「一般人にかけた何かを解いて」

 

「できない相談だね。……でも人間の男は皆デカい胸に誘われると思ってたんだけどね。ヒネた性癖?」

 

「……」

 

「あ! オンナいるんだな? そっちの方がデカい?」

 

一瞬湖冬の胸を思い浮かべて振り払い、黙れと突き放し。「オトコが好きなの?」なんて言いながら青年はふらふら離れた。

 

「目的は何なの?」

 

「んー、私の嫁探しと言おうか」

 

青年はにこりと笑った。

 

「私の妻にするにふさわしい者を見つけるんだ。人間だからって差別はしないよ、強い人間は強い。それだけ」

 

「ふざけ目的だね。……お前は……」

 

「何者かって聞きたいかい?」

 

菜摘は頷く。

 

「ルシファー……その初代にして……サタン、その初代さ」

 

「……どういうことだ?」

 

「こういうことさ!」『客星堕天』

 

青年はその腰に、第二体強制解放装置を現わす。見上げる菜摘も驚きつつも、第二体解放装置を出現。青年改めルシファーは、にやりと笑って。

 

「へェ、天使か……」

 

「そうだよ」

 

白く広がった翼で、菜摘はルシファーの目の前まで跳び上がる。助走が必要だった飛行もいい加減慣れてきた。

 

「何する気? お嫁さんが欲しいなら普通にアプローチしなよ」

 

「まずは見極めるとこからさ」

 

菜摘ににらまれた状態のルシファーが指を鳴らすと、物陰から、愁いを帯びた目と長い金髪の青年が現れる。白い衣や頭の円状の光が、それが何者かを示している。

 

「……一体、」

 

「頼むよ、ミカエル」

 

「ミカエル……!?」

 

ミカエルと呼ばれた天使は、うっすらうつむいたまま、手元に出現させた光の板を操作する。

 

「ええ、お兄様」

 

どこか陰のある笑みの彼は熾天使ミカエルであることを否定しない。そして、暗雲が突如立ち込め、菜摘は上空のそれを見渡す。

 

「一応言うと追っても無駄だからね。この城塞からは出られない。そういう結界なのさ」

 

「……」

 

赤黒い雷光が雲の中でどよめく。

 

「……お兄様、構いませんね?」

 

「ん。かわいい弟のたっての頼みだもん」

 

ミカエルが腰の剣を抜いて天に突き上げると、あふれ出た光が、雲へ向かう。それは無数の雷光となって地に降り注ぐ。

 

「お前、何をッ!!」

 

「私なりの慈悲です」

 

「何を言って、」

 

『強権行使』

 

「……!?」

 

「……これで、死ぬことはありませんので」

 

雷は、この城塞にも落ちてきた。その光は一般人たちにも降り注ぎ、まばゆい光がやんだのち菜摘は振り向く。

……無事だ。気絶すらしていない。皆、その場にいて平然としている。……不思議なバックルが、腰にあることを除けば。

 

『簡易解放』

 

第二体簡易解放装置。ミカエルはそうつぶやく。一般人たちが倒れ、灰色と銀の天使へその姿を現す。それはレギエルの変身と同じで、みな自分の力に戸惑う様子を見せる。

……しかし。

 

「私が娶るのは、強きものだ」

 

ルシファーのその言葉を聞くと皆理解し、お互いに争い始めるのであった。……同時に、ルシファーは満足げに城塞のバルコニーへ。

 

「ここに宣言しよう」

 

「……やっぱそうだよね」『解放』『降臨……置換……変化……聖なる、開幕』

 

彼の演説を聞き、さすがに焦る。菜摘がレギエルに変身しルシファーへと駆け出す。しかし、光と共にミカエルが先回り。レギエルが構えるその前で、剣を持ちつつ腰にバックルを出現させる。

 

「……」『福音啓示』

 

ミカエルの手に、光が固まってカードのようなものが現れる。装飾品の多い第二体解放装置。……第二体()()解放装置にそれをかざせば、それは応えて。

 

『制御解放』

 

『火炎……雷光……激流……聖なる、降臨』

 

あまりにまばゆい光とともに、その姿を現すミカエル。変身、というよりは、本来の姿というべきか……。明路のレギエルスケッチを見たこともあり、その姿は鎧の戦士のように見える。

 

能天使(パワー)レギエルよ……あなたも権天使(プリンシパリティ)たちに混ざりなさい」

 

その手の剣より閃光が放たれ、吹き飛ばされたレギエルが地面に落ちる。

天使たちが殴り合い、蹴り合う恐ろしい風景に、レギエルは飛び込むこととなった。すでに第二体を壊されたものも居るようで、幸いそれは「資格なし」とされたのか、手を出されていない。

 

「……最悪」

 

襲い来る一般人相手にどの程度抵抗すべきか考えつつ、レギエルは構えた。

 

 

 

 

「それって」

 

「……魅了(チャーム)のようなものね」

 

「離せ……離せ……」

 

「…………クソが!!」

 

春子……といっても、その姿はヘイナのままだが……とにかく彼女は怒りと共に壁を殴りつけた。

演説を聞いたものはみなその効果内になるようだ。さらに、伝播力もそこそこあるらしい。とにかく、明路の腰には第二体簡易解放装置があり、ルシファーのもとへ行きたがっている。

 

「……」

 

「ツッチー、ここに居ても気分悪くするだけだよ」

 

留一の閉じた扉の奥、拘束され個室にいる明路から、目を背け春子は立ち去る。湖冬も複雑そうに眼を動かし、あとを追った。

 

「あ、来た」

 

「みんな……」

 

いつもの部下三人、こと……アモン、ベルゼブブ、アスタロトがそこに居る。加えて、モリガンとヘパイストス。

 

「調べはついた?」

 

「剥奪されてんネー、ルシフェルの権限あれこれ。ギャハハ!」

 

「ベルゼブブ」

 

「オッヒョ〜!アモン相変わらずこっわ〜い。でも不正解放機からキーボロボロこぼれ出たってことは『仮面ライダールシフェル』だっけ?にもなれないわけデ~~」

 

キーを投げて遊ぶ、わざとらしい態度のベルゼブブ。若干白々しく見られてもやめない。彼は、確実に湖冬を軽んじている。

 

「初代には名誉地位としての権限があった。政治的なことはあまりできないけど、多少の介入も武力行動もできるわ。なんたって人望があるもの」

 

「……アスタロトは、直接仕えてた頃がある身でしょ?」

 

「性格はなかなかお優しいわよ。ただ今更戻ってこられても、ねえ?」

 

「アモンはどうなの?」

 

「アモンはサー?湖冬ちゃんのこと好きだもんネー?」

 

「ベルゼブブ!」

 

「……。聞かなかったことにしてあげるよ」

 

「んひひ?恋愛とは言ってないのにナー?察してるの〜?」

 

「本題戻ろうぜ?」

 

いつになく、モリガンも真面目な様子だ。ヘパイストスの金古少年も、こちらはいつも通りだが真面目にうつむいている。

 

「現状、ルシファー様は戦えません」

 

「ルシファー様って言っていいかは微妙だけどね」

 

「でも俺はついていきますよ。湖冬様とお呼びしても?」

 

「マ、冥府内でこっちに発言力を増やしたのはほかでもねえ地島湖冬ルシファーだ。アタシもあんたに協力するぜ」

 

「ありがとね、ヘパイストスにモリガン」

 

嬉しげに微笑むのを見ると、ベルゼブブが、少しバカにする様子だ。

 

「ぼくは湖冬ちゃんについてくつもりはナイ。従うのはルシファーの椅子だからネ! とはいえ、初代も厳密にルシファーとサタン復帰でもないから従う義理はないし。あいつぼくの事舐めてるとこあって嫌いだったしィ」

 

「つまりどうするのだ」

 

「好きにする。あ、でもまあこれは使ってもいいよ」

 

キーを雑に湖冬に投げ渡すと、どうでもよさげにゴロゴロ。ベルゼブブはアモンからいらだった視線を向けられつつ、湖冬からはあきらめゆえかすべての不躾に無感情である。

 

「キーと言えばなんだけどォ、みんな気づいてるかしら」

 

アモンがすぐさま頷く。問う湖冬の前で、アモンはキーを自らの手に突き立てた。……何も起きない。

 

「さっきの雷光で制御されてるのか何なのか分からないけど、私達また抽出機に差し込まなきゃいけなくなっちゃったのよね」

 

「……災難だね……それは」

 

「ただそのへんにあふれてるプリンシパリティぐらいなら余裕で相手取れるぜ」

 

「……モリガンとヘパイストス、任せていい? 暴徒になったプリンシパリティを倒して元の人に戻して。魅了は持続するみたいだから警察の人と組んでやってね」

 

「了解です」

 

「うーっす」

 

立ち去るふたり。アモンとアスタロトもどうするべきか判断を仰ぎ、湖冬は一つのお願いを向けた。

 

 

 

 

 

「……任せちゃっていいの?」

 

「留一さんの方が自信あったりします?」

 

「アハハ、戦いはもうなまっちゃったかナァ~~!」

 

「なら私が行った方が、」

 

「効率的って? アザゼル相手に言いおるな君は」

 

「フフ、私ルシフェルですからね一応」

 

準備を終えた湖冬の手には、二人から借りた魔術師と星のキー。アモンやアスタロトは地獄の法的な状態などを調べてもらうために残した形になる。

そんな湖冬が腰を掛けるのは、バルトチェイサーだ。

 

「あたしは今の……第二体だけの体では変身できない」

 

「私は~、そんな戦い慣れてない」

 

「じゃあ、やっぱ一番効率いい作戦ですよね」

 

ニヤリと笑いながら、湖冬はタオイズムドライバーをその腰に装備した。

 

「……変身!」

 

『Taoism……Human power without god's hand』

 

『Fitting……OK. Five senses assist is ready』

 

指紋の登録は済ませてある。樹脂が一瞬で硬化し、黄色のタオ、フィメルモードへ。春子が使う時と同じ、女性体格の形態だ。頭部はフードのようなもので、やはり春子のものと同じ。

 

「行ってきます!」

 

バルトチェイサーに乗り込むと、留一、春子、アモン、アスタロトに見送られて、そいつは駆け出した。霞ヶ関から横浜へ、短い旅の始まりだ。

 

「譲るもんかァァ!」

 

「お前もルシファー様のところへ行くんだな!?」

 

さて、変身していなくてもアキエルとしてのその第二体は察知されるようだ。プリンシパリティたちが襲い来る。心苦しくも銃撃しつつ前進。しかし対応しきれない数が迫ってくる。

 

「……なら!」

 

『ベルゼブブ』

『Ji-Du-TAO!Tower!That Collapse!』

 

ゴスペルブラスターにキーを挿しこみ、発射。放たれるのはハエの群れ型の光弾。敵を追跡し、ばらけた複数人を散らす。要は散弾で、倒さずとも振り払えばいい今には向いている。

 

「行かせるか!」

 

「おっと……」

 

前方に並ぶプリンシパリティたちもハエ弾で蹴散らし進むが、その先でスクラムのように組まれてはやりづらい。

ダメージは少なくてもいい。より広域に怯みが必要だ。

 

『アスタロト』

『Ji-Du-TAO!Star!That Awake!』

 

「ホンットにごめんなさい!……でも、こうするのが一番確実だから」

 

発射したのは毒ガス爆弾だ。第二体を軽く蝕むそれは薄く広がり、致命傷ではないが全員がせき込み始める。それさえ誘えればいい。タオブラスターに持ち替えると、前方に銃撃しつつ、バルトチェイサーで突撃!

 

「ぐあ!」

 

「っづぇ!」

 

「ああああ人轢いてるのすっごいヤだァ……」

 

言いつつもやめないのが、割りきりの激しい湖冬らしい。

 

「待て!」

 

「かかれ!」

 

「うおっとととと……」

 

止めるためのプリンシパリティたちの次の策!それはバイクに掴まること。

プリンシパリティの間でも足を引っ張り合いつつではあるが、まずは湖冬を沈めることが目的のようだ。共通の敵がいると、人間は強い。

バルトチェイサーから飛び降りて、着地。

 

「もー……あなたたちとは敵対する必要性ないんだけどなー」

 

「黙れ!ルシファーの妻となるのは私だ!」

 

「俺だああああ!」

 

「まあ確かに顔カッコいいけど菜摘君以上には見えないんだよねー」

 

相手はド素人だ。複数人相手でも、対応は簡単。しかし倒すのが目的でもなく、いちいち相手取るのは……。

 

「……非効率」

 

迫ってくる敵を蹴り飛ばし、かわしつつまた蹴る。使い慣れない銃型の武器だが、間近で撃つ武器にしてしまえば剣と同じようなもの。間を縫いながら進むも、やはり避けづらい

 

「手っ取り早いのはこれかな」

 

『アモン』

 

『Ji-Du-TAO!Magician!That Beginning!』

 

「熱いけど我慢してね!」

 

熱弾を放つ太陽のキーとの違い、それは火炎放射という発射方法だ。あちちと声をあげながら、プリンシパリティたちが後ずさっていく。

 

「よーし……」

 

概ね撤退させたようだ。まだ向かってくる敵も足元に火でも向ければあちちと呟いて逃げていくのだった。

 

「あ、バルトチェイサーも大丈夫そう……」

 

よっこいしょという掛け声とともに持ち上げるその横に、いつの間にかガブリエルが居た。

 

「人驚かすの好きなの?」

 

「わざとじゃないんですよー」

 

「うわッ!!」

 

その横にいたラファエルにはさすがにデカい声を出すが。湖冬はため息をついて、バイクにまたがる。

 

「茶化しに来たなら帰って」

 

「舐められてますね、ガブリエル」

 

「舐めてるっていうか嫌いなだけ」

 

「……でも、今日は少し変だと思いませんか?」

 

ラファエルの問いに振り返り、仮面の下で湖冬が眉をひそめる。

 

「降臨、今日は二人なんだね。それだけ?」

 

「降臨とは何かにもよりますが、すこし想像とは違うと思いますよ」

 

ラファエルは、そっと湖冬の手に触れる。

 

「……!?」

 

そう、触れる。伝言を伝えるためのそれと違い、第一層のための、第一体を用意していることに他ならない。

 

「何が目的?」

 

「ミカエルが寝返りました」

 

「はァ!?天界独裁政権の最高権力者が!?」

 

「言い方ひどいですねー。あなた達だってそうでしょうに」

 

「ルシファーの法案もサタンの法案も一存では決まってないよ」

 

湖冬はバイクを降りて、天使二人の前に立つ。

 

「で、ミカエルが裏切ったってのは……」

 

「そのままの意味です。突如復活した初代ルシファー兼初代サタンのもとにミカエルがなびいたのですよ」

 

「ミカエルに対処はできないの?」

 

「そちらがルシファーにあたえていた名誉権限がここに来て邪魔をしています」

 

「首脳会談みたいになってるって事?」

 

「しかも行動対象は人間界ですからねー。われわれは……そこに対して、特別な権限を」

 

「ハッキリ言いなよ。人間を軽んじてるから第二層に何しても取り締まる気がないって」

 

「それは違います」

 

「ああ、そっか。自分らのものだから悪魔に手を出されるのは嫌で」

 

「違いますッ!」

 

声を荒げたのはガブリエルだった。少し驚き、そして微笑むラファエル。取り繕い直すと、ガブリエルは向き直った。

 

「現状、我々の安易な手出しは天界への影響が大きすぎます。……ひいては、人間界にも」

 

「ですが……『元ルシファーによる天界へのクーデター』ならどうでしょうね」

 

「……何が言いたいの?」

 

「人間界を、救ってください」

 

タオの目の前で、ガブリエルは、第二体解放装置を突き出した。タオの装備を解除した湖冬が、訝しげに近づき。

 

「……それ、って」

 

「武力管理を担当するウリエルはたまたま居眠りしていました」

 

「…………いいの? いつもの人間と違うアピールはしなくて」

 

「あなた相手にしてどうするのです」

 

珍しく、ガブリエルが微笑んだ。湖冬もクスクスと笑い、ラファエルはちょっとだけ困り気味に笑い。

 

「分かったよ」

 

「……意外と、人間界が大変だったら突飛なこともするんですよ。ガブリエルは」

 

「余計なことを付け足さないでください」

 

「フフ、ごめん」

 

その様を見て、少し考え込む様子の湖冬。

かつて戦っていた時は、第二体解放装置は不思議な力で出現させるもので、手に持つものではなかった。

 

「偉そうだけど、上から目線なら上から目線なりに……庇護は考えてるってことね」

 

「……」

 

そんな湖冬の元に、爆走キャンピングカーが接近。何事かと思えば、ヘパイストスがその扉を開けた。

 

「道交法守れ……は今回なら緊急回避だね」

 

「んなこと目くじら立てたら効率悪いだろォ~?」

 

「必要なことには立てるよ」

 

ケタケタ笑うモリガンは運転席。ヘパイストスと同時に湖冬の方を見て、ぎょっとする。そのまま睨みつける先はガブリエルだ。

 

「……そいつらは」

 

「手を組んでる。別に敵じゃないよ」

 

「まあ、ルシファー様が……、湖冬様がそれでいいというのなら。俺はそれで」

 

ヘパイストスは言いつつも不機嫌そうだ。察してか、ガブリエルたちはふらっと姿を消しなおヘパイストスはため息。

 

「来てくれたとこ悪いんだけど、モリガンたち連戦だったでしょ?アモン達と交代して。事務的な対応してる場合でもなさそうだし」

 

「あ、来てくれたとこ全然悪くないんだわ」

 

「ご覧ください」

 

「なんでぼくマデ……」

 

部下の悪魔三人、仲良くソファに座っていた。

 

「ならちょうどいいね。はい、これ返すよ」

 

「ならこっちだな」

 

アモンとアスタロト、ベルゼブブのキーを返し、モリガンとヘパイストスからキーを受け取る。

 

「じゃあ、行こうか」

 

「そうだ、アタシら先陣切って多少は道空けといてやるよ」

 

「ですね。目的地が横浜である以上、こっから先ほど人口密度すごくなるんで」

 

「お願いするね。アモンにアスタロト、頑張って。いちおうベルゼブブも」

 

「了解しました」『アモン』

 

「はァい」『アスタロト』

 

「ヤぁ~~だ」

 

アモンとアスタロトが立ち上がり、その手の抽出機にキーをセット。暗証番号を打ち込んむ

 

『マジシャン』

『スター』

 

『『融合解放』』

 

炎が揺らめくような赤のアモン、シェイドマジシャン。毒々しい緑のアスタロト、シェイドスター。キャンピングカーの上に立つのを確認し、モリガンはにやりと笑って爆走を再開した。

 

「さーて、追うとしようかな」

 

固まって動くとそれはそれで狙われやすく目立ちやすい。プリンシパリティ程度の強さなら、適度に一人で散らす方が楽という判断で見送った形となる。

 

改めて、彼女は第二体解放装置を腰に当てた。すると一瞬でベルトが巻かれ。真っ白い翼が懐かしそうな彼女に、帰ってきたガブリエルが声をかける。

 

『受胎告知』

 

「お忘れなく。あくまで、天界側の緊急の措置です」

 

「はいはい」

 

深呼吸。左腕を腰に構え、右手を斜めに突き出す。ゆっくりと右手を横にずらしていき、そして。

 

「……変身!」

 

右手を左手のすぐ近くに持っていき、バックル側面のドアロック、開錠。手を広げた瞬間湖冬は倒れ、そこには天使の光。

バルトチェイサーの車載カメラは、オレンジの体躯の天使をしっかり見つめていた。

 

仮面ライダーアキエルだ。

 

「三年ぶりだな」

 

「これを使うのは初めてでしょう?」

 

「一応はね」

 

戦車のキーを突き立てれば、バルトチェイサーはいかついバイクへ変身。ルシフェルとして普段乗り回すゲビナビノである。

 

「タオはあとで返さなきゃね」

 

バイクにアタッシュケースをのせ、改めて横浜へ発進!ゲビナビノが唸り声をあげた。




次回、中編


今回、非常に新登場が多くて複雑ですので何が新登場かまとめます。レギエルの作風的に無粋な気もするけど分かりづらくなっちゃうしね。

・ミカエル
存在は示唆されてました。レギエルに似た姿はまあ予想できた方も居るでしょうが持ってます。

・プリンシパリティ
雑魚です。権天使の事なので、能天使ことパワーのレギエル達よりは地位が下です。

・仮面ライダータオ フィメルモード(湖冬)
春子以外の変身者は初ですね!登場自体久しぶりです。ショットガンでの一撃スタイル明路、二丁での連射スタイルの春子と並べ、一丁で近接を混ぜながらキーの能力で着実に戦う湖冬というスタイルになっています。

・仮面ライダーアキエル
常々示唆されていた、湖冬の天使としての姿です。12話はアキエルの橙とレギエルの緑ですね。

・シェイドマジシャン
初登場時点でモノクロシェイド(体に直接キーを突き立てるやつ)のシェイドアモンだったので初登場。モノクロシェイドでは分からなくなっていましたがもとは赤です。

・シェイドスター
上に同じく。シェイドアスタロトでの登場だったので弱体化です。
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