仮面ライダーレギエル   作:さわたり

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劇場版仮面ライダーレギエル ヴァーミリオン・ウェディング中編

「……よくやるね」

 

「僕が一発で沈める方が苦しむこともないでしょ」

 

気絶した一般人をそっと寝かせながら、次々とやってくるプリンシパリティの方へ向き直るレギエル。疲弊の色も見せながら拳を振るう姿を、高台からルシファーとミカエルが眺める。

 

「ハネムーンは天界侵攻などいかが?」

 

そのそばに、着地。振り返るルシファーに話しかけたのは当代のサタン……要はシカムだ。その姿は紫と赤が渦巻くシェイドデビル。そのそばで、白と紫のシェイドデスもいかが?と繰り返す。

 

「私たちを手伝うって事?」

 

「目的のためにも天界にアワ吹かせたいんですよ、先輩」

 

「兄上、連中は……」

 

「いいよ。手伝って」

 

「兄上…………」

 

「天界の味方するなら……するでいいけどね、ミカエル」

 

「いえ……。大丈夫です」

 

踵を返し席を外すミカエル。その背を見送ったのち、()()はシェイドデビルを見て。

 

「っていうか、第二体消えたんじゃなかったのかい?」

 

「そこまでご存じとは。……準備が完了したんですよ」

 

「新聞いつも読んでたしね。そっか、とりあえず、解除してあげようか」

 

ルシファーが指をはじくと、バチバチと雷が通い、デビルとデスがぐぱぐぱと手を握って開いて確認。

 

「って、ことは」

 

「そのまま突き立てればいいさ」

 

「感謝いたします。」

 

双方、変身を解除。頭をさげるベルゼブブと、どうもと軽く告げるサタン。この城砦はルシファーが良しとすれば出られるようだ。去っていくその背中を眺め、ルシファーはただただにやりと笑うのだった。

 

「さァーて、おいで、私の花嫁候補たち」

 

 

 

 

「よし!」

 

「……大丈夫?」

 

「ああ……大丈夫だ」

 

明路は頭を抱えつつ、ゆっくり立ち上がる。

 

「俺は……何と言うことを」

 

「ぜんぶルシファーが悪いわ」

 

「ミチくん、いける?」

 

「……ああ」

 

ルシファーによる魅了を解いたのは、留一の開発した音波発生装置であった。

 

「バッテリー的な問題はあって二発目は撃てないんだけど……ま、とりあえずミチくんさえ解放できちゃえばこっちのものだよね」

 

「ああ。俺たちも向かうぞ」

 

「おっけー、レッツゴー横浜!」

 

「タオイズムドライバーは地島が持ってるから」

 

「合流だにぇ~~」

 

三人そろってバンに乗り込むと、伸び。よくもああしてくれたなと恥を感じつつ、明路はハンドルを握った。

 

「少し危険だが……この際仕方ない!飛ばすぞ!」

 

ペダルを踏み、爆走が始まった。

 

 

 

 

 

「だああ!!」

 

プリンシパリティたちを跳ねながら突き進む、アキエル。横浜は近く、すぐそこに城塞は見えていた。

 

「ああ、もう……多い!数が多い!」

 

「最後は俺一人になる!」

 

「誰君!」

 

「私がなるんだ!」

 

「ルシファーの嫁!?勝手になってよ!」

 

目の前ともなるとあまりに数が多い。参加資格のあるもの……要はプリンシパリティだから影響下の人類全員だが、それらは入ることができるが出られないという仕様らしい。

それでも押しかける以上すさまじい人数だ。

 

「ああもう!」

 

ゲビナビノを飛び降りて、その手にはアルカナキー。

 

『モリガン』『審判』

 

『強制解放。介入、開錠、解放……審判。その、結論』

 

湖冬のハイネックセーターに一瞬戻り、爆散。少しだけマントと翼で滑空するが、飛び掛かってくるプリンシパリティも居てろくに進めない。マントで身を守って突き進み、邪魔をするものは謝りつつも蹴っ飛ばし。

 

「ああ、もう!」

 

「待てェェエエエ!」

 

「ルシファーには興味ないんだけど!」

 

「嘘をいうな!」

 

「聞く気ゼロだし!人の話聴かないで早とちりは効率悪い……って、言えた身じゃないか」

 

すこし菜摘との一件を思い出しつつ、マントで防御。防戦だけではやってられない。キーを抜き、もう一つを起動。

 

『ヘパイストス』『力』

 

『強制解放。介入、開錠、解放……力。その、理性』

 

モリガンの部位は戻り、今度はセーターの右腕がはじけ飛ぶ。赤と黒の腕は熱をまとった斧を出現させ、迫るプリンシパリティたちを叩き切りながら駆け抜ける。

 

「……多い!」

 

草むらでも斬りながら突き進む感覚。さすがに疲弊が強くなるという時、羽ばたきの音。そのまま地面に叩きこまれた拳は、アザゼルの力。白黒の時とは違い、白と緑の、シェイドフールである。

 

「留一さん!」

 

「ちゃんコフ!ドライバーある?」

 

「はい!」

 

タオイズムドライバーを投げ渡すと、シェイドフールがなぎ倒しつつ道を作り。その先に、二人は立っていた。改めてフールの投げるそれを明路がキャッチ。

 

「行けるか春子」

 

「当然でしょ」

 

『I’m waiting for you』

 

アキエルの投げ渡したタオブラスターとゴスペルブラスターも春子がキャッチ。にやりと不敵に笑う姿は、今は背の高いイケメンのヘイナ姿というのもあり妙な妖しさがある。

 

『ヘイナ』『ハイプリステス』『Get!』

 

「「変身!」」

 

構え、指紋を読み取り。現れるホログラムのコンソールは春子が指をはじけばすべて緑色に代わり、同時に光の、言ってしまえば畳のようなサイズのホログラムが飛び出して。

 

『Lightning……This is it!You are the KAMEN RIDER HEIGHNA!』

 

明路を通過し、光になった春子が融合。白と黒と、青と黄とついでに緑の仮面ライダーヘイナが姿を見せる。

訝しげながら多分ライバルだろうと駆け寄るプリンシパリティを前に、バチバチと帯電。

 

 

一迅。

 

 

雷撃が走った瞬間に閃光、爆雷。プリンシパリティたちがまとまって、人間の姿に戻って行く。

 

『いくらでもかかってきなさい』

 

「これっ!」

 

湖冬から投げ渡されたショットブラスターと持っていたシェンブラスターでプリンシパリティどもを撃ちまくり、駆け抜ける。それを脇目に、バンに戻りつつ、留一はキーをアキエルに投げ渡した。

 

「これ、私よりなっちゃんが使う方がいいから」

 

「……ありがとうございます!」

 

ヘイナの力がとにかく大きい。固まったら銃合体、ブラストブラスターで明路流に蹴散らし、包囲しようとすればシェンブラスターとショットブラスターで蹴散らし、肉弾戦なら閃光のごとき一撃で蹴散らし。

 

「ぺんぺん草も残らないってこういう事ですかね」

 

『雷がイオンを発生させて作物やキノコを成長させたりもするらしいわよ』

 

「そういう話なのか?」

 

軽口を叩く余裕も出てきた。プリンシパリティたちももはや敵ではなく、

三人は城塞に突撃し、侵入。完全に憔悴したレギエルのそばへ接近した。

 

「菜摘君!」

 

「……湖冬!」

 

とはいえ、アキエルを抱きしめると回復して言っているようにも見える。どちらかと言えば、一般人を殴り続けることに関するストレスだろう。

 

「参加、って感じでもないかな?」

 

「紹介するよ。婚約者」

 

「カップル揃って天使とはね。ま確かに私より胸は大きいかな?」

 

女性の姿に変わってくすくすと笑うと、ルシファーはミカエルとともにレギエルたちの元へ着地。また男性の姿に戻りつつその腰に手をかざし。

 

「ミカエル、いけるね」『客星堕天』

 

「兄上の仰せのままに」『福音啓示』

 

ミカエルがカードをかざす横で、ルシファーはそっと強制解放装置に手を伸ばす。不正解放機もなく、バチバチと音を立てながら、鎖もろともそのドアロックを捻った。

 

『制御解放』『火炎……雷光……激流……聖なる、降臨』

 

『超強制解放!』『堕落……腐敗……謀反……堕ちたる、終幕!』

 

まばゆき熾天使ミカエルと、男性的で、装甲の少ないルシフェルがそこに立っていた。他の悪魔たちの強制解放の装備をしていないのだ、当然と言えば当然。

 

一瞬目がつぶれようかという光と共に、ルシフェルの手に弓が出現する。駆け出すのはミカエル。光のひと薙ぎでアキエルとレギエルが吹き飛ばされ、壁に激突。かわしたヘイナへと、今度はルシフェルによる矢の雨が。

 

「っぐぁ!」

 

銃で迎撃しても限界というものがある。電撃を使って回避や防御もするが、それでも着実に浴びせられ、膝をつき。

 

「……まずいな」

 

『相当ね』

 

レギエルがよろよろ起きて湖冬から受け取った愚者のキーを起動する。それで事態が好転するとも思えないが、試さずに断定するのは論理的ではない。湖冬ならそう言う、というのが菜摘の立つ理由だ。

 

「さ~て、どうしたもんかな」

 

「私が仕留めます」

 

一歩ずつ迫るミカエル。剣に光をまとい、ヘイナによる銃撃も意に介さず突き進む。

 

「やめろォォ!!」

 

駆け出すヘイナ。ミカエルがゆっくりそちらを見た、その瞬間。

 

「……!?」

 

閃光が降り注ぎ、空を覆う膜が砕け散る。……結界だ。それを見たヘイナ、即座に判断。月のキーを地面に突き立て、幻覚の煙が晴れれば、ヘイナだけでなくアキエルとレギエルが居ない。それどころか、敗北し気絶した一般人も誰一人いない。

 

「……ラファエル」

 

ギラギラと輝く天使。降り立ったそれはミカエルと似た姿。レギエルとアキエルのようなわかりやすい違いはなく、形は違い色は同じという程度。

 

「久しぶりだね、ルシフェル。いや、サタン」

 

ラファエルの視線は厳しい。

 

「アザゼルには優しそうなのにねえ」

 

「アザゼルは君と違って戦争はしかけなかったよ。問題はミカエル、あなたです」

 

「弁明の意図はありません。私は兄上への負い目と罪悪感にほだされた天使です。弱いと笑っていただいて結構です」

 

「……弱さや罪悪感を刃にした者は恐ろしい強さを発揮しますね。サタン、あなたもそうでした」

 

「昔話はいいよ。来るの?」

 

少し鬱陶しそうなルシファーを見て、ルシファー様の敵だ!とプリンシパリティが襲い掛かる。ラファエルはそっと振り向いて、杖をこつんと優しくぶつける。

ずざざ、と膝をついて脱力するプリンシパリティ。戦意をなくし、ふらふらと端っこへ去っていく。

 

「さすが癒しの天使。しかしいいのかい?アキエルにわざわざ向かわせた意味がなくなってるけど」

 

「アキエルに行かせた?反逆勢力のアキエルとは何ら関係はありませんよ。備品を盗まれたウリエルは厳罰ですね。……しかし、敵勢力でもあるアキエルも証言はするでしょう」

 

にやりと笑い、ルシファーもなるほどねと呟いてくつくつわらう。

 

「君たちほんとに数万年前から変わってないね。本音と建前に縛られためんどくさい議会システム。……ぶっこわしたかったりしない?」

 

「しません」

 

「ならいいや。どうする?交戦の事実はどっちから作る?」

 

「作りませんよ」

 

閃光と共に羽ばたき、ラファエルがその姿を消した。

 

「……お前相変わらずめんどくさいところでやってたんだね」

 

「ええ、まあ」

 

兄と弟。少しだけそんな様子で言葉を交わして。

 

 

 

 

 

「状況を整理する」

 

横浜の神奈川警察署の場所を借りて、明路はホワイトボードを用意した。一旦湖冬の配下達も合流し、結構な人数である。

アモンと菜摘を同じ部屋にしたのは割と不本意なようで、湖冬はしきりにそちらを気にしている。

 

「まず、初代ルシファー兼初代サタン……まあルシファーとする」

 

「ぼくのルシファーはビノリエルだけどネ」

 

「お兄ちゃんやめて話を拗らせないで」

 

「……こほん。ともあれ、このルシファーがなぜか復活を果たした、と」

 

「はい」

 

律儀に手を挙げたアモンに、明路は「灯田君」と声をかけ発言権を与える。

 

「その理由についてはおおかた察しがついている。そもそも初代は消滅しておらず、まあ、魂のようなものを監獄……といっても、手のひらサイズのカゴのようなモノだが。それに入れられた上で、湖のようなものに沈められていた形になる」

 

「気になるのは、名誉的な地位を与えられている点だ」

 

「そこは私から。いいわね?」

 

アスタロトこと美国に対し頷く。

 

「復活は絶望的だったのよ。ミカエルに討ち倒されて、主を失った我々はすぐに交渉に出たわ。……我々視点での保護。彼ら視点での幽閉。双方のバランスをとった平和的な取りまとめだったのよ」

 

「俺たち神は悪魔扱いを脱して居ませんがね」

 

「ヘパイストス。逸らさないで」

 

「ともあれ、そこでバランスを取っていたところに謎の復活ということか」

 

「この際HowはいいからWhyが気になるわね」

 

春子の方をモリガンが一瞥。口を開いた。

 

「まあ負い目がずっとあったんだろうよ。きっかけは……今回のこの、シェイドの騒動だろうな。当代サタンと当代ルシファーが招いた混乱を我が物にして流れを作る。……そういうチカラが初代さんにあるのはその通りだけど」

 

「で、政治的にはどうなってるの?」

 

「うーんと、名誉地位ゆえに議会が咎めづらいのと、地獄にいる……特にマルコシアスとかが初代のことすごい尊敬してて。私の権限剥奪はここでやっちゃったんだと思う」

 

「ミカエルは……」

 

「私がお答えします」

 

ガブリエルご登場だ。まあまあな人数が顔を顰めるあたりあまり歓迎ムードではないが、それでも重要な情報源だ。

 

「ミカエルはルシファーに負い目がある、それは確かです。初代の拘束をどう解いたかはわかりませんが……アズラエルの力でも借りたのでしょう。後ほど問い詰めます」

 

「再三だが、政治的な部分はどうなんだ?」

 

「ルシファーが名誉地位とはいえ現在の地獄のトップを掠奪しつつあるのは確かです。ミカエルとの同時行動も首脳同士の決定事項としてしか扱えませんでした」

 

「天界もそういうスタンス?」

 

「こちらもしがらみが多いのです」

 

湖冬、ため息。菜摘もそれを一瞥し続ける。

 

「しかも当代サタンがあちらに味方してるからね。……天界とこの世界をメチャクチャにする気なのは確か」

 

「まあそこで私を『天界の叛逆者アキエル』を仕立て上げて向かわせた。ってことでしょ?最後ラファエルが来たのは?」

 

「アキエル。あなたは拉致されたレギエルを見ましたね?」

 

怒りの眉をひくつかせながら、湖冬は端的に「うん」と答えた。

 

「私もそれは見ています。天界側と反体制側の意見が一致。これを地獄及び天界の議会は内部による工作とは捉えないでしょう」

 

「そんなのアリなわけ?」

 

「嘘はついていません。反体制勢力であるアキエルが、ルシファーの元へ突撃し、その事実としてレギエルの拉致を認識した。現在任務にあたっている能天使を阻むのは……」

 

「公務執行妨害?」

 

「日本国の文化に合わせて言えば」

 

「っていうかシェイドってなんで日本にしかいねえんだ?」

 

「モリガンさん今そこに尺割けないからあとでね」

 

「アザゼルお前、何か知って……」

 

「娘が詳しい」

 

「えっお前娘って「はいはい脱線しないよー!」

 

湖冬せんせいが手を鳴らして静止。話の続きを促した。

 

「嘘はついていないと言うが、それでいいのか?」

 

「無い事実を作るよりは事実をかいつまんで話す方がマトモでしょう」

 

「ガブリエルとラファエルの権力で天界の議会に飲ませる限界がそこ、ってことね」

 

「案外貴様もめちゃくちゃなことをするのだな」

 

アモンの発言にも、「滅相もありませんよ」と無表情で答えた。

 

「で?次の一手は?相手の不正はでっち上げられたのだろう?」

 

「自衛隊とか出せりゃいいんだけどにゃ~」

 

「この前はドール相手だから動員できただけね……第二体への攻撃は通常兵器ではだめ」

 

「タオの量産は……」

 

「金と材料と時間と人員と空間があるなら名案だねぇ」

 

「僕たちが戦う形になる……のかな」

 

「そうなりますね。ルシファーおよびミカエルとの戦闘です。私とラファエルはウリエルやミカエルと違い戦闘要員ではないので権限を振るいづらいのですが、ミカエルやルシファーの力を抑える役割ならしがらみなく行えるかと」

 

「本当にめんどくさい……システムで……」

 

「直接の被害者かつ能天使であるレギエル、依然として裏切り者扱いのアキエル。あなたがたは表立って戦いやすいでしょう。……そして、人間である磯羅明路。あなたも」

 

「……待ちなさいよ、悪魔のあたしたちは?」

 

「クーデターとなります。勝てば法的な勝機もありますが……」

 

悪魔たちは目を見合わせて、まずアスタロトとベルゼブブがニヤリと笑う。

 

「……ぼくたちは忘れんぼだから」

 

「キーを盗まれても気づけないわァ」

 

席を立つと、ソファにはアルカナキーが置かれている。

 

「ベルゼブブ……」

 

「勘違いしないでよ。……マジでお前のためでは無いからな」

 

若干睨みつけ、ベルゼブブが去る。アモンはそれを見てなお、ルシファーの元に立ち、まっすぐ魔術師のキーを突き出す。

 

「あなたと地獄を共にする覚悟です」

 

「……ありがとう、アモン」

 

キーを受け取り、湖冬の視線はモリガンとヘパイストスに向かう。愚問とばかりにモリガンは笑い。

 

「武神なめんな」

 

「俺もこういうのには慣れた身なので」

 

逆に湖冬にキーを要求。その手には抽出機を装備している。湖冬はいいの?と問うが、今度ははっきり「愚問だぜ」、「愚問ですよ」と言い放ち。

 

「じゃ、一旦返してもらうぜ」

 

「ありがとうございます」

 

背伸びをして準備体操、暴れるぜとばかりに退室。その様子を見て、春子も立ち上がった。

 

「明路が戦うのを無言で見てるわけないでしょ」

 

「……しかし」

 

「しかしもだってもでももないわよ。あたしはやる。非効率かもしれないけどね」

 

「どちらにしてもリスクがあるなら……モチベーションがある方を選ぶのは、合理的だと思います」

 

菜摘はそう言って笑い、湖冬は「それ言おうと思った」と、くすくす。

 

「効率よくやるの、十分に満足するためですから」

 

「……春子の意思がそれなら、俺はそれに付き合うほかないな」

 

明路と春子が部屋を出て、残された菜摘、湖冬、留一。そしてガブリエル。向かおうかと準備をする三人に、ガブリエルは少しだけ細い声を出した。

 

「……ミカエルを、裁いてあげてください」

 

「それは私たちの仕事じゃないよ」

 

「……。」

 

「仲間にせよ友人にせよ、戦えないなら正面から向き合うの、裁判とかで処遇を決めるときでしょ」

 

「君ら、昔からこういう時に目を背けがちだしねェ~~……」

 

頭をかいて、留一はつぶやく。

 

「ラファエルは冷徹に裁きを下したけどさ、私に友人としての言葉もかけてたよ。……ガブリエルもそんぐらいやっていいんじゃない?」

 

「…………。検討、します」

 

ガブリエルを残し、三人はその部屋を出た。

真っ白い光が、太陽の光とぶつかっている。ガブリエルは外を見て、いつも平坦な眉を、少しだけ決意を込めて寄せるのであった。

 

 

 

 

「もごっ!」

 

留一の口元を掴み拘束する腕。真っ先に進んでしまったメンツに残され、菜摘だけがそれに振りかえった。

 

「……日向葵!」

 

髪を弄りながらナイフをクルクル回すのは、ひどくクマのできた葵だった。服装も少しばかり派手なモノがごちゃ混ぜに。気分転換がことごとくうまくいっていない様子だ。

相変わらず短い前髪もぱっつんに切りそろえ、姫カット、ボリュームは多いがそれに似た様相。

 

「留一さんを放せ」

 

「じゃチューしてよ。くひひ、あは」

 

「私をナメすぎ!」

 

組みほどかれて、地面に叩きつけられるが、同時にキーを地面に突き刺し。土のドールが留一を押しのける。

 

「菜摘君、私のものになろう?」『サンファロエ』

 

「……」『受胎告知』

 

双方がにらみ合う中、こつこつと軽めの足音。少しうねった黒髪の青年が、菜摘たちの間に割り込む。

 

「……誰?あんた。邪魔する気?」

 

「邪魔するっつってもあのルシファーとかいうのでしょ?まあスタイルいい高飛車なチャンネーって意味では好みだけどさー、ちょっと立場が堅苦しそうだよね」

 

軽い態度で、青年は葵の方を向いて笑う。

 

「誰かって聞いてるけど?」『テンパランス』『融合解放』

 

「この状況だと相手のパーソナリティより聞くものあると思うよオレは」

 

シェイドテンパランスに姿を変えて歩み寄る葵を前に、青年は振り返る。菜摘に視線を流しているようだ。

 

「あんたが追い詰められてる感じ?逃げる?あんたが立ち向かう?」

 

「……任せるわけには、」

 

菜摘の発言を遮るように、ゴソゴソと何かを出して。キーか何かかと思うとそうではなく、グリップのような、オイルライターのような不思議なアイテムだった。

 

『ホホジロザメ』

『アクアリウムバックル!』

 

起動と同時に、線が腰に通って輪郭を成して、モニターのついたバックルを成した。側面にグリップを差し込みながら、口元に手を運ぶ。

 

『Catch』

 

「あなた、一体」

 

「俺が誰かって話だっけ?……ま、ビロウって覚えててよ」

 

「ビロウ……?」

 

「本名じゃないっスからね?」

 

「え、えと……。……任せても、大丈夫ですか?」

 

「多分!」

 

青年の様子を見つめる菜摘。青年は飄々とした態度で葵の方を向いている。

 

『boom!boo!bo!bo!bo!boom boom boom !』

 

ソナーが響く待機音声の中で、牙を示すようにガブガブとジェスチャー。同時にグリップをぐりぐりひねるとエンジンを吹かすような音が鳴り響き。

青年の肌が灰色に変わり、歯は鋭い牙になり、首元に裂けた切れ目はエラのようで。

 

「変身!」

 

『Riders No.018(zero one eight). Carcharodon carcharias.……ホワイトファング!』

 

その上にスーツと装甲が重なれば、服は水に変わってびしゃびしゃと散った。黒い体に、灰と白の鎧。鎧は胸や肩、腕の上半身に集まっており、その手には白く鋭い爪。

深い青の目が、らんらんと光る。

 

「その、姿は?」

 

「この姿がビロウっつーの」

 

サメそのものを着たような暴力的外見の戦士、仮面ライダービロウは、ゆっくりテンパランスへ向き直りポーズを決める。

 

「誰が捕食者か教えてやるよ!」

 

「めんどくさいわね……」

 

駆け出したテンパランスを前に、突撃。一撃目はビロウの引っ掻きである。ひるむテンパランスへ連続で1、2。確実に決まっているのを見届けて、菜摘は「任せました」と残し去っていく。

 

「待って雨野くん!」

 

「オレにはかまってくれないわけ?」

 

「どけって言ってるのよ!」

 

「悪いけどそうもいかなくてね!」

 

ビロウはテンパランスの攻撃をかわし、その手の爪、いや、牙でもって確実に攻撃を叩き込んでいる。

 

「どぉぉぉおおきなさいよォ!!!」

 

水たまりを蹴って放つドール。しかしビロウは驚く様子を見せるが、その正体が水だと分かれば抵抗もせず。

水が触れた瞬間、ドールが渦を描き、ばちゃばちゃと散る。

 

「あのね、ビロウは水中戦も想定された装備なの。見た目で分かんないかね」

 

「うるさいわね!」

 

火を起こして、炎のドールがとびかかる。ちょっと困り気に距離を取り、「近づくのはマズそうだな」とぼそり。その手に、緑のグリップを持ち出す。

 

『マコンブ』

 

『Grab』

 

今度はバックルの左手側にセット、捻って捻って唸らせる。

 

『boom!booooom!boo!boo!bobobobobobooooom!』

 

左手側には固定されないようで、そのまま外し右手に持ち替え、訝し気なテンパランスを前にグリップを構えて。

 

『Saccharina japonica……get!』

 

グリップから緑の刃がまっすぐと伸びる。昆布を模したらしきその剣で炎のドールたちを叩き切っていき、テンパランスへも一撃を加える。とはいえ追撃はかわし。

 

「さてと……」

 

『boo!boo!booooooom!boom!boom!boom!』

 

今一度右手側のグリップを吹き鳴らし、接近。その予備動作で、レギエルやタオの必殺の一撃のようなものだと察せる。土のドールをかき集め。

 

『Double Attack!……ライダースプラッシュ!』

 

「おら……よッ!!」

 

思いっきり横に薙いだ一撃はドールをまとめて吹き飛ばすが、そこにテンパランスはいなかった。

 

「ありゃりゃ、逃げられちった」

 

変身を解除した青年は振り返って、「ま、任せるか」と呟いてそこをあとにするのだった。




次回、下編。

・ラファエル
ミカエルに変身態があるならもちろんこっちにもあります。

・ルシフェル
詳細は下編で。

・仮面ライダーアキエル 審判解放
モリガンで解放した姿です。ルシフェルでもよく使ってますがマントの便利な能力ですね。

・仮面ライダーアキエル 力解放
ヘパイストスで解放した姿です。アキエルが基本形態なら、メインウェポンになるぐらい無難ですよね発熱する斧って。

・仮面ライダービロウ
レギエル読者は別界隈の人も多いのでわからないと思うんですが、ライダーは終盤ごろやる映画に次回作主人公が先行登場する文化があります。

・シェイドフ-ル
本編ではシェイドアザゼルとしての登場でしたね。白と緑というカラーリングですがまあレギエル意識ですね。

・シェイドデビル
初登場時点でシェイドサタン。紫と赤のワルっぽいデザインです。

・シェイドデス
初登場時点でシェイドアスモデウス。白と紫でちょっとすっきりしてます。
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