「そろそろだね」『受胎告知』
「うん、行ける!」『受胎告知』
「……行くぞ!」『I’m waiting for you』
「ええ!」『ヘイナ』
バルトチェイサーには二人乗りで、ゲビナビノとケツァド・イブクが並走し。四人が構える。
「「「「変身!」」」」
『『解放』』
『『降臨……置換……変化……聖なる、開幕』』
『ハイプリステス』『Get!』『Lightning……This is it!You are the KAMEN RIDER HEIGHNA!』
レギエル、アキエル、ヘイナ。三者がバイクを駆る。後ろでモリガンとヘパイストスも、シェイドジャッジメントとシェイドストレングスとしてキャンピングカーを乗り回している。
「行かせませんよ」
真っ先に立ちはだかるのはシェイドアスモデウス。サタンも向かってきており、そこに突っ込んだのはバルトチェイサー。銃撃で軽く牽制ののち、バルトチェイサーを激突。ものともせず向かってくるサタンに、降りながら蹴り込んでヘイナが応える。
「行ってて!」
「頼んだぞ!」
2対2!ヘイナにアスモデウスとサタンが向かってくる。アスモデウスの縄の一撃を避け、サタンの尻尾は腕ではじく。サタンは翼で風を巻き起こすがそれに惑わされはしない。二人相手に確実に銃撃を叩き込んだ。
「ま、想定しちゃいたよ」
「サタン様」
「ああ、分かってる!」
サタンの蹴りを回避、回避。続けて足払いをするがこれも簡単に回避され。
「舐められたものだな!」
銃を合体し反撃。ブラストブラスターの一撃が……当たらない!
「……まさか!」
そのまさかのようだ。アスモデウスの姿は見当たらず。撃っても撃ってもサタンには当たらない。
『……クソッ』
追い出そうとしても全く気配がない。春子が少し青ざめた声で、最悪と呟いて。
「一体どういうことだ?拒まれている場合アスモデウスは……」
「出てった直後にあたしらのもう一方に憑りついてるのよ。アスモデウスは第二体のレイヤーにへばりつく……明路、あんたの体にはあんた自身の第二体とあたしが居る!」
「俺と春子を行き来していると?」
『そうなるわね……』
サタンの攻撃も回避方向が読まれてしまう。くねる尻尾が確実に二人をとらえ、銃撃すらかわされ。地面を転がり受け身を取った先で羽ばたきが体勢を崩す。
『ヤバい、コレッ』
さらにシェイドアスモデウスの腕が一瞬出現。縄が放たれその脚をガードレールに固定する。
「当たらないッ!!」
「作戦負けだよ仮面ライダァ!!」
突き進み、尻尾を構えるサタン。
刻一刻と敗北が迫る中、ぼそりと春子がつぶやく。
『……き?』
「え?」
『あたしが、好き?』
「は!?何を言って」
『あたしのことが好きかって言ってんだよ磯羅明路ィィィ!!!!!』
何を言ってるんだと目を見開く明路。……それでも、彼はごまかす気になれず。ぐるぐるとした思考を一瞬でまとめ上げる。
質問の答えは、決まっている。
「当然だ春子!」
『ハッキリ言いなさい!』
「お前が好きだ!!」
『……ならいいわ。それでいい!』『ゼイネル』
「あ?」
サタンは一瞬戸惑うが、それでも尻尾を突き。
『ラヴァーズ』
自身の体に、恋人のキーを突き立てる、ヘイナ。……その能力は、おおかた察しがついている。
べりべりべりべり!そんな音をあげるように、ヘイナの体から何かがはがれていく。ゼイネルのキーが持つ力。
「だと思ったわ」
「……そうか」
「なっ」
「発動相手の想い人の形で、第二体を分離する!」
尻尾がついたのは、虚空。まるで二人に分裂したような動きを取る、仮面ライダーヘイナだったもの。
不敵に笑う、春子と明路であった。……そう、ヘイナの姿ではない。土田春子の、金に染めた黒髪の、あまり高くない背の、少しにらんだように見える目つきの、土田春子。
「だああ!!」
「はッ!」
とっさの事態にアスモデウスもサタンも対応できない。二人の拳を腹に喰らい、サタンが吹っ飛び。構えなおす春子と明路の双方に、ヘイナの装備がはがれた状態になっていた。
同時に。装甲のない部分にスーツが伸びる。白と青の明路、黒と黄色の春子、そう言うべき構図になり、緑の光は双方に灯って。
春子にフード、明路に牙の装飾が追加。ヘイナを真っ二つにして、タオを少し足した。……そんな姿である。
「これは仮面ライダー何?」
「そうだな……まあ、そちらはヘイナでいいだろう。形態名は……ヘイナ、シングルモードとか」
「あたしがそうだとして、あんたはなんなのよ。あんたもヘイナシングル?」
「……そう、だな。まあ、シングルモードは確定として」
明路は仮面の下で寂しげに笑い、そして前を向いて告げる。
「仮面ライダーゼイネル、だな」
「……フ、間違いないわね」
一瞥すれば、バックルの方はヘイナについている。自身の持つキー、『恋人』は腰の横にある携帯スペースにしまい、サタンへと駆け出した。
「っは!」
ゼイネルがシェンブラスターで銃撃し、ヘイナがタオブラスターとゴスペルブラスターの二丁拳銃。追い出されたアスモデウスも2人同時に狙い撃ち、よろよろとひるむ。
「ってめえ!」
「てめえはこっちのセリフ!」『ラミレシア』『Ji-Du-TAO! Justice!That Equilibrium!』
ゴスペルブラスターから放たれる刃の弾。裂かれて裂かれて後ずさるサタンに、ゼイネルの銃撃!さらにくるっと立ち位置を変えてヘイナの連続銃撃。
「っでえな!」
「そこです」
縄を放ち2人を拘束するアスモデウス。しかしくるっと立ち位置を変えればそれは接近したサタンを縛る拘束具になり。
「ッ!申し訳ありませんサタン様」
「テリトリーに入った俺が悪い」
思わず手放した縄はゼイネルとヘイナの足にくくりつけられたままで、回し蹴りが放たれればそれはムチ!
「俺ン相棒の武器だ返してもらうぜ!」
「ちょうど邪魔だったのよ!」
縄を掴んだ瞬間足を引き体勢を崩させ。すぐ奪い返し立ち上がるサタンに、ゼイネルがブラスターを突きつけている。
「ガラ空きだ素人!」
一撃!サタンが怯み、向かうアスモデウスはヘイナが連射を当てている。立て続けに構え。
『Confirmed and Authorized. As you know, it's HISSATSU』
ヘイナがタオブラスターをバックルにかざし、同時にバチバチと雷光が通い始める。それはゼイネルも同様。その光は銃に集まり、同時に二人の装甲から青と黄が抜けて白く。
銃を持った腕のみ、それぞれの色が残る。
「「ライダーショット!」」
ヘイナの乱射を防ぐサタンとアスモデウスに、ゼイネルの射撃が叩き込まれ、吹き飛び、最後にチャージした一撃を同時に放つ。
『
爆発。……しかし、そこにマシロも桃色も倒れていない。
「……これは」
「逃げられたか」
「ま、連戦の余裕はないでしょうね」
「ああ」
『
変身を解除し、向き合う春子と明路。少し、いろいろな言葉を言い淀んで、お互いが選んだのは抱擁だった。
「……春子」
「うん」
「俺はお前が好きだ」
「あたしも、あんたのことが好き」
「……よかった」
微笑みと共に、抱きしめた少し小さな体を見て。……ああ、春子だ。安心して、明路の笑みはさらに優しいものになる。
「これは重大な違反行為ですよ」
「こっちのセリフ!」
「下がりなさい」『福音啓示』
ミカエルが、レギエルとアキエルの前に現れ剣を振るう。放たれる閃光。それをガブリエルが防ぎ。
閃光を放って姿が変わる。少しだけ形が違うミカエルのような姿である。ぱちんと指を鳴らせば、風が吹いてミカエルに絡みつき。ミカエルは第二体制御解放装置をいじりつつガブリエルを見た。
『制御解放』『火炎……雷光……激流……聖なる、降臨』
「……弱体化のつもりですか」
「
「驕ったものですね、ガブリエル」
駆け出すミカエルに、ゲビナビノがぶつかる。すこしあとずさるだけだが、レギエルが進むだけの時間は稼いだ。アイコンタクトで恋人を見送ると、アキエルがミカエルに向き合う。
「どきなさい」
「そっちがどいて」
アキエルの蹴りとミカエルの斬撃が衝突。双方はじかれるが押されるのはアキエルの方だ。体勢を崩すアキエルに斬りかかる、ミカエル。
その身体をキャンピングカーがぶっ飛ばした。
「よし来たァ!」
「相変わらず乱暴ですね……」
シェイドジャッジメント。赤い布だけで体が構成され、鈍い金色の兜がくつくつ笑い、その両手に槍。その横で、鋼の体に紅い光が通うシェイドストレングスが立つ。
「助太刀感謝しなルシファー様」
「今は初代に奪われてるけどね」
「ま、いいから行きましょう」
ストレングスは自らの体から剣を引き抜いて攻撃。ミカエルがそれを弾き飛ばすが続いて斧を引き抜いてぶん投げ。そこに気を取られれば、ジャッジメントの突き。
立て続けにアキエルの蹴り。それを喰らって、ようやく怯んだ。
「行けるかァ?これ」
「ルシファー様、作戦は」
「ゴリ押そう」
弱点があるわけでもなさそうだ。後ろのガブリエルはデバフに忙しそうである。もうやることは倒れるまで殴るだけ。
「だああ!」
「……っと」
課題はそれまでに攻撃を読まれ切らないことだ。すでに猪突猛進のジャッジメントはすべて避けられている。
「めんどくせえがしゃあねえ!」
とはいえ軍神モリガン。ミカエルの攻撃をマントで全て防ぎ、反撃を確実に突き立てた。後ずさり、そこへストレングスがハンマーを生み出し叩きつけ。その二人へ、掌底を当てると。
「邪魔と言っているのです」
閃光と共に吹き飛ばす。追撃とばかりにアキエルが蹴り込むが、剣でガード。マンネリ打破に、アキエルはひるがえった空中でキーを起動する。
『アモン』『魔術師』
『強制解放。介入、開錠、解放……魔術師。その、起源』
着地と同時に左腕が爆散。燃える拳を叩き込み、炎は脚に渡って火炎の蹴り。さらにジャッジメントがその炎をもらい、槍に纏わせ。
「サモア……だから、レッシオルどもか。連中のとこにこういうダンスあったよなァ?」
「ファイアーダンスです」
言及する通りのような舞で、まばゆい炎による視線分散。そこに、ガントレットを装備したストレングスが拳を叩きつけ。それは防ぐが、アキエルのまっすぐな火炎の拳はかわせず。
「……なるほど」
ひるみつつも斬り上げて反撃。アキエルが地面を転がり、ふらふら立ち上がる。そこに、シェイドを押しのけたミカエルの追撃が3連続。アキエルはそのまま地面を転がるが、横に切る一撃は前転で回避。がら空きになった側面から、炎の左手でミカエルの顔面を掴む。
「……ッ」
『第二体抑制解放・魔術師強制』
「うおああああああ!!!」
「離しなさい」
「嫌!」
「……」
「ガブリエルが、ラファエルが、心配してるの分からない!? 仲間の信頼を失うことが、どれだけ理に反することか、」
「では。……では、肉親を想うことも『理に反する』のでしょうか? レギエルに斬りかかるあなたを覚えていますよ」
「……っ!?」
一瞬生じた隙に斬り上げ。アキエルは受け身を取りつつ、キーを差し替える
『アスタロト』『星』
『強制解放。介入、開錠、解放……星。その、再起』
腰がはじけ飛び。尻尾のように飛び出た蛇の顔が毒の煙を吐く。しかし、アスタロトという相手はミカエルも戦ったことがあるようだ。すぐに口をふさぐような動きを取る。
「それで終わりと思うなよォ!」
ジャッジメントの槍には火がある。思いっきりふるってやれば、煙が爆発。ミカエルが吹っ跳んだ。空中で六枚の翼を広げて体勢を立て直し。急降下斬撃。ジャッジメントが防ぎつつも地面に叩きつけられ、うめき声をあげた。
「モリガン!」
「心配する暇ァねえだろ!」
「……っ」
「オラッ効率的なやり方選べや!」
「ちゃんと避けてね……!」
モリガンもろとも、毒の煙を浴びせ。着火は、弓を生み出したストレングスが担当する。
「俺も一応炎の神なので」
「さあどうなるかね」
マントにくるまるジャッジメントもろとも爆炎がつつみ、二人が吹き飛ぶ。ジャッジメントがふらふら転がるよそで、ミカエルが立ち上がる。
『第二体抑制解放・星強制』
隙なら十分に作れた。アスタロトの腰の翼と、背中の翼で舞うと、そのまま蛇の牙がミカエルの腕をとらえ、毒を叩き込む。
「……どけなさい」
腕を振る力でアキエルが吹き飛ばされ、受け身を取りつつその手のキーを起動する。
『ベルゼブブ』『塔』
『強制解放。介入、開錠、解放……塔。その、崩壊』
着地と同時に地面を蹴って跳ねる!一瞬で眼前に寄るこの動きもミカエルは気にかけることなく、剣ではじき返す。しかしアキエルもそのままあきらめるわけではない。
「……なるほど」
跳ねまわり続け、目で追えない速度。……しかし、ミカエルの目は人間のそれではない。数秒ののち発見し斬撃。斬られながらアキエルは笑っていた。
「はあああ!!!」
ストレングスが短剣を持って迫る。
「……!」
想定外のようで、とっさに防御。瞬間、ストレングスはワイヤーを出してミカエルを固定する。
「まさか……!」
「俺ごとどうぞ」
「ヘパイストス……!」
『第二体抑制解放・塔強制』
「だあああああああッッ!!!!」
まっすぐ前へ跳び、空中で姿勢を変え。
そのまま、ドロップキックをストレングスもろともミカエルに叩き込み。吹き飛んで仲良く地面を転がる姿を見て、さらにキーを抜いて第二体解放装置に手をかざす。
『第二体抑制解放』
駆け出し、空中で前転。そのまま右脚を突き出し、起き上がったミカエルにそのまま叩きこむ。
「……っぐぁ」
始めて上げたうめき声。
同時に、ミカエルが閃光を放ち爆散。第一層の人間ボディが倒れ込んだ。
「……あ、やばい、かも……。」
勝因、デバフとゴリ押しと起き攻め。アキエルは立っていることもできず、どさりと倒れ込む。同時に、デバフ担当のガブリエルも膝をついて息を荒くした。
「……これ、借りてくヨ」
そんなアキエルの元に、見下ろす影。幼い姿の青年、飯塚カケルことベルゼブブこと飯塚カケル。三つのキーを持ち、ため息をついた。
モリガンも立てないようだが、持って行けとキーを渡す。
ベルゼブブは軽い態度で受け取り、付いてきていたアスタロトとアモンを手で招き、キャンピングカーに乗り込み発進。
「……ッ」
ルシフェルの前というのもあり、プリンシパリティたちが押し寄せている。ラファエルが沈静化してもなお間に合わない。レギエルが、ルシフェルにたどり着く前に疲弊し始める。
そこに、キャンピングカーが突撃!大量に跳ね、さらにドリフトで一気に吹っ飛ばす。
「え、ちょ」
「死なないんデショ~?」
「第二体が消えればケガも消える」
「ま、『効率的』よね」
三人が降りて、それぞれのキーを起動する。
『アモン』
『アスタロト』
『ベルゼブブ』
「……アモンはともかく、いいの君たちは」
「アハハ!……勝てそうな方に乗っただけダヨ」
「行きましょ」
『マジシャン』『スター』『タワー』
『『『融合解放』』』
「アスタロト行けるか!」
「もちろんよ!」
「妹が楽しそうでおにーちゃん満足」
「うるさい」
ガスをばらまき駆け抜けるアスタロトを見届け、アモンが炎をばらまき爆発。さらに、プリンシパリティたちをジャンプ台に、ゴムボールのように跳ねまわるベルゼブブ。
道は、開いた。
「……やるじゃないか」
にやりと笑ったのはルシフェル。赤い門をくぐって城塞に三人が突撃するのに、レギエルがついていく。
『アザゼル』『愚者 a.k.a.Fool!その、無謀。そして光と闇!』
さらに形態を変え突撃。ルシフェルはまっすぐ弓を引き、命中。レギエルを吹き飛ばした。
「っぐァ!?」
「……天使の力相手は有利か」
「相変わらずの分析力だねアモン」
「お久しぶりです」
火炎を放って蹴りかかるマジシャンを軽く払い、ベルゼブブの蹴りを矢で撃ち返し。
「あいテテ」
「君も相変わらず。どうだい? ちょっとは仕事にやる気を出せるようになった」
「前のルシファーには仕えてて楽しかったヨ」
「おお! そりゃよかった」
「今のルシファーは困りものだけどネー……器じゃない」
「地島湖冬? 彼女は面白そうな子だったけどね。ルシファーには向かないのかい?」
少し考える、ベルゼブブ。にやっと笑って、薄黄色のシェイドタワーが頷く。
「マ、悪いヤツじゃないよ」
「そうかい」
「ぼくは悪いヤツの方が好き!」
飛び掛かり、空中で足踏みのように連続で蹴りを叩きつける。ルシフェルはそれを右腕で軽く防ぎきると。軽く押し上げて三発の矢を同時発射。吹き飛んだタワーを一瞥すると、迫るスターに視線を向け。
「相変わらず強いのねぇ」
「君はいっつも余裕ぶるね。変わらなくて安心したけどさ」
くすくす笑いながら、ルシフェルは軽く矢を連発。空を舞って回避するが、さらに矢が翼を貫き撃墜。毒ガスを爆破するいつもの作戦も、見飽きたとばかりに軽く回避。倒れたアモンを踏みつけながら、アスタロトを見て。
「私はね、愛というものがよくわからないんだ。あーいや、無感情とかではない。……天界に戦いをしかけたときも、可哀想だとか、力を貸さなくちゃと、そう思ってちゃんと行動した。でも、誰かにちゃんと愛を向けたことがないんだ」
「……そのくせ魅了で洗脳するんだな」
「いま私が話してるよ」
蹴りかかるレギエルを矢で吹き飛ばす。確実に、シェイド相手よりもダメージが大きい。
「私の弓は対天界で作ったんだ。天使相手にはよく効くよ。……で、話の続きだけど。そう、アスタロトがうらやましいって話だよ。君の愛に満ちた性格が羨ましい」
「あら、じゃあ私をお嫁さんにしてくれるのかしら?」
「君アモンの事が好きだろ」
「なっ」
「ベルゼブブには兄として、深い愛情。……しかしアモンへのそれを見るに、身近な者が恋に発展するのかね」
ハエを向かわせるタワーには一瞥もくれず、強く矢を引いた一撃。爆散し、飯塚カケルの姿で地面に手をつき。
「あなたと一緒になりたい者などごちゃまんと居ると思いますが」
「でも私が好きになれるかは別でしょ? 強いプリンシパリティが居れば気でも変わるかなと思ったけど……。私の立場や苦悩を知るもの、……か」
「苦楽を共にした私はいかがかしら?」
「本当に余裕ぶるのが好きだねェ。財務をやってるとそっちの方がいいのかい?」
軽く矢を放って毒を放たせず。そのまま連続で矢を放ち続け、スターも弾け飛び。ユズルの姿を見て、今度はレギエルを見る。
「……あ。そうだ」
「次は何言う気?」
にこりと笑って、ルシフェルはレギエルに近づく。
「地島湖冬を、もらおうかな」
「…………は?」
「婚約を解消して? そうすれば一般人たち全員を解放するよ。そして、わけぎだっけ。……君たちの娘を連れてこようか」
「何を、」
「何を言っているのだ貴様ァ!!!」
真っ先に飛びついたアモンに、少し驚いた様子のルシフェル。軽く足払いして、矢を当てる。
「おいおいおい最初の、一緒に戦った君主よりも、今の恋情とはね」
「私の君主は地島湖冬だ!!」
「今のルシファーの事が気に入っているのは結構だけどさ」
蹴り飛ばし、転んだマジシャンの首を矢が射貫き、爆散。目を見開いて、レギエルが複雑な視線。
転がったアモン、灯田レイジが、レギエルを見て。
「はああああ!」
「無理だよ。対天使に関しては私の矢は右が居ない」
簡単に蹴り飛ばされ、そんなレギエルに諦めろとでも言うべき様で、ゆっくりと迫るルシフェル。同時に、アモンが立ち上がり、レギエルにも目で促す。
「そう、だな。天使では……勝ちようがない」
「良い分析力だね、アモン」
「………そうだな、天使では」
「何が言いたいの?」
無理矢理身を奮い立たせるレギエル。その前にアモンが立ち、手袋を整える。
「初代様。あなたは明確に認めている」
「何の話?」
アモンが小さな機械を取り出し、かちりとスイッチを押す。
『今のルシファーの事が気に入っているのは結構だけどさ』
「録音……」
「あなたは地島湖冬をルシファーとしている。地位の重複存在は緊急時には認められているからな。あなたも湖冬様もルシファーだ」
「……まさか」
「議会は地島湖冬をルシファーと認め、また我々、直属の実行委員会上層メンバー三人の認可があれば、応急的な権限の委譲が可能だ」
アモンの目くばせに、アスタロトが頷き、ベルゼブブはため息とともに仕方ないなと笑う。
「非常に不服だが……アモンの名の下に宣言しよう」
「何、を」
「……雨野菜摘!……貴殿を、地島湖冬の代理、臨時処遇として…………177代目ルシフェルとして、任命する!レギエル!堕天の準備はいいか?」
「……ああ!」
レギエルが倒れ、そこに菜摘が立っている。
『客星堕天』
不正解放機が渡され、同時にその腰に第二体強制解放装置が出現する。続けて渡されたキーたちが、不正解放機に吸い込まれていく。そしてたまたまその手にあったアザゼルと、オーディンのキーも不正解放機に入り。
「……頼む、お前の婚約者のために、戦ってくれ」
「当然だよ」
大きく構え、パチンと指を鳴らす。……そして、
「変身!!」
『超強制解放!』
不正解放機を差し込み、大きく手を広げ。黒い翼が広がり、菜摘の目に決意が灯る。
ばちゅん。はじけとんだ菜摘。血と肉が雨として降り、そこに、仮面ライダールシフェルは立っていた。……レギエルが堕ちたというべきその姿。
『堕落……腐敗……謀反……堕ちたる、終幕!』
ルシフェルとルシフェル、向顔。……レギエルと、オリジンと呼ぼう。悪魔たちの力を借りて、鎧に身を包むレギエルと、ただ一人、自分だけがそこに居るオリジン。
一撃目は矢だった。腕で防いだその一撃は、先ほどよりはるかに受け止めやすい威力。
「ったァ!!」
かつて湖冬の身を焼いたその炎。左腕に宿るそれが右手に燃え移り、両手で火炎の拳。食らいつつもバックステップ、そのまま矢を放ちレギエルも後ずさり。
……拮抗している。
「っは!」
「ぜああ!!」
飛んで来る矢をベルゼブブの跳躍でかわし、空中に来る矢はアラハバキで蹴り返し。着地の瞬間の跳躍で接近して繰り出すのはアザゼルの右腕。
「はは……愛されてるな、地島湖冬」
「ちょっと黙ってて」
「悪いね、その気はないよ」
六枚の翼で飛び上がるオリジン。放つ矢をレギエルは跳ねてかわす。そしてモリガンの布、自前の黒羽、アスタロトの竜の翼。これまた六枚の翼で追う。
「っぶないな!」
「それで済むと思わないで」
空気圧を蹴って迫る拳。かわされてもすぐ立て直し、低高度へ。愚者のキーと共に使うナックル、フォールンレジスターを取り出し、そこに引き抜いたアモンのキーを差し込む。
『マジシャン』
「っはァ!!!」
渦巻く炎の衝撃波がルシファーへ。それは矢に防がれるが想定していたようで、一気に高高度に上昇。太陽をバックに、その頭部からカラスを突撃させる。
「オーディンか……!」
オリジンは簡単に撃墜するが、気が逸れてレギエルの蹴りに気づいていなかったようだ。叩き込まれた一撃を喰らうが、そのまま着地。レギエルに向けた狙撃。
「食らわないよ」『フール』
アザゼルのキーをフォールンレジスターに差し込み突き出す。大きな拳のビジョンが重なり、それが平手に変わる。そのまま巨大な盾として働くようだ。
「っはァ!」
そしてまた握りなおし、拳を叩きつけ。オリジンが回避しつつ放った連射は正面から食らい、軽く膝をつき。それでもすぐに立って、ルシフェルとルシフェル、双方が向き直る。
『『第二体強化解放!』』
手をかざし、構え。走る!
無数の矢がオリジンと並走し、レギエルは火炎と共に走り。ベルゼブブの脚で迫り一回転、アラハバキで放つ。対しオリジンは雷撃になった矢を足に収束させ跳び回し蹴り。
「……」
「……」
果たして、倒れたのはレギエルだった。
「あーあ、駄目だったね」
振り返るオリジン。その目は、レギエルをとらえておらず。
ぱきりぱきり。それはルシフェルに…………オリジンに、ひびの入る音。光がだんだんと溢れはじめ、その様をずるずる起きながらレギエルが眺める。
閃光、爆破。
勝ったのは、菜摘だった。
「あーあー」
ルシファーが倒れると同時に、争っていたプリンシパリティたちも変身が解け、正気に戻り。ルシフェルが黒く弾け飛び、菜摘がルシファーを見下ろす。
「……わけぎは、僕と湖冬が、ちゃんと連れてくる」
「一言目は「湖冬はあげない」だと思ってた」
「それは前提だから。湖冬がお前を好きになるわけないし」
「……愛だなァ」
警察たちに囲まれながらルシファーはゆっくり起き上がる。
「ま、これからまた探せばいいでしょ。罪を償うのに何年かかるかは知らないけど」
「……ンン、大人なこといわれてしまったね」
「それにさ」
菜摘の後ろから、疲弊しきった様子で湖冬が現れる。
「……弟さん、あなたの事すごく愛してるよ。それは確か」
「ミカエル……。まァ、そうか、肉親いるんだもんな、私」
「急に素直になったね」
「昔からいろいろ思ってはいたんだよ。負けて頭が冷えた」
少し、アスタロトとベルゼブブを見て。追いついた明路たちも、兄弟と聞いて、いろいろと……矢沢兄妹だとか、そういうのを思い出して。
「さて、彼の処遇だが……」
「俺が決めていいかなァ?」
着地。一斉に視線が向いたのはルシファーのそばに立つシェイド……当代サタン、シカムだった。
「兄上ェ!!」
「マズい!そこから離」
言い切る前に、人間としてのルシファー、その肉体を、尻尾がぶち抜いた。
「逃がすか!」
疲弊の少ない明路がとっさにタオブラスターで狙い撃つがもう遅い。すでに遠くまで飛び去り、サタンが向かう先の建物の上から、アスモデウスがその様を見ている。
「これで……」
「ああ。やっとだよ。……いいチャンスが転がり込んできた」
「初代の魂はどうなりましたか」
「地獄に送られたっていうか弾き飛ばされた。研究し放題だぜ」
くつくつ笑って、二人はそっと降りて。そして、人込みに消える。こうなればアスモデウスの能力もあり捜査は不可能に近い。
「そん、な……」
遠くからサタンたちが眺めるのは、崩壊していく城塞であった。
膝をついて絶望するミカエルへ、ラファエルが近づき。そして何かを言おうとしてやめる。ガブリエルはただただそばに寄って。
「あなたの処遇をこちらで決める旨が人間との間で合意されました。行きますよ」
ガブリエルに連れられたミカエルは、ただ茫然自失。少し沈黙し、そして。
「彼は今地獄に送還されたようです。シカムたちの騒動が片付いたら、あちらの処遇もこちらで決めます。……出来得る限りの納得は目指しますので」
ミカエルはガブリエルに視線を移し、ただただうなだれる。そんな天使たちを見送り、湖冬はため息とともにメガネを持ち上げる。
「……いろいろ片付いたら、私のうち、行こうか。二人で……お父さんのご飯食べよ」
「うん」
12月の中頃、雪も降ってきた。
社会が混乱に陥りすぎる、という判断で、ラファエルの尽力でこの一件は一般人たちから記憶を消すこととなった。それは大丈夫なのかといろいろな議論が巻き起こったが、『主の意向』とのみガブリエルが告げて、すでにラファエルによって実行中。
「……で、どうすんの?」
「どうと言われてもな」
翌日、二人は屋上に座っていた。ここにも喫煙エリアがあり、春子が吸う横に明路がいる。
「……ああもう! 付き合うかって聞いてんの!」
「いや、まあやぶさかではないというか、嬉しいのだが…………」
「今の状況が、って話?」
「まあそうだな」
白い煙を吐いて、沈黙。春子は空を見てから明路を見て。
「今の状況だからこそ、じゃない?」
「……ああ、まあ、そうかも……な」
「自信なさすぎでしょ」
「ああ、分かった、ちゃんと言うよ。付き合おう春子」
「フ、喜んで」
「おー?アザゼルLINE?彼女とォー?」
「娘。……アザゼルとしてのだけどね~」
「あー、オグかナ? 巨人ノ」
「うん」
レイフ内で、留一はスマホをいじっていた。ベルゼブブはちょっとどうでもよさげにぼーっと見つめて。
「妹のこと、結構好きなんだな君」
「そりゃもう蝶よ花よだネ」
「どっちかというとあっちが姉っぽいけどな」
「なんだよそれェー」
不平そうなベルゼブブにやにやと見ながら、留一の視線は娘と会う予定に戻る。優しく微笑む父の姿を見て、ベルゼブブもちょっと笑って。
「良かったの?アモン」
「何がだ」
アスタロトの問いに、アモンは一瞥のみをくれて。
「菜摘クンのこと」
「……」
ただ、彼は沈黙。ヘパイストスは少し困りげに眺め、モリガンは他人事のようにニヤついている。
「……表情、明るくなったねナツ兄」
「うん」
炬燵を準備しながら、湖冬と菜摘は池雪の方を向く。
「もうフユ姉に何があったとかは聞かないけどね!要領得なさすぎ!」
「いや、全部本当だからね!」
「そうだよ」
「ナツ兄まで……」
呆れたように笑いつつも、池雪は少し幸せそうに。
「苗字、どうするの?」
「え?」
「いや、雨野湖冬?地島菜摘?」
「ああー……それ毎回結論出ないんだよね」
「どっちも語感いいしね。伝統に則って雨野湖冬かなーとは思うんだけど。でも私は行方不明だったりもあって、仕事再開に当たっていろんなものの契約し直さなきゃいけないから……」
「効率的じゃない、って?」
「そ」
「フユ姉は変わんないなあ」
「僕もいとこがいるから雨野姓残すのこだわらなくてもいいしー。このお家もよくお世話になってるしねー」
「お義母さんはなんて言ってる?」
「安心して猫の相手できるって」
ふふっ。湖冬と池雪は割と笑いのツボの似た姉妹である。湖冬の方が背が大きいのもあり、非常に姉妹感がある。池雪はメガネではないが。
「ほら、準備できたぞー」
「ごめんなさい、手伝いもせず……」
「いやあ、俺がしないでって言ったんだから」
「いよッ!パパの料理!」
「待ってました~」
「腕によりをかけるって感じの料理でもないけどな」
鍋を置いた炬燵を囲み、四人そろって。湖冬と菜摘は少し目を見合わせ。……わけぎの件はまた今度にしよう。そんな視線。今度は、この人の孫も連れてこようと決意する。
二人は炬燵の中でそっと手を重ね。
「「「「いただきます!」」」」
FIN
・ガブリエル
一番出番も多いし登場期間の長い天使ですが、担当はデバフ。メッセンジャーだもんね。まあ当然ですが彼女も変身した姿があるわけです。
・ルシフェル オリジンスタイル
初代ルシファーですね。装甲が少ない……というか、キー固有の装備がない、男性体系の仮面ライダールシフェルだと思ってください。ちなみに明路が認めてないので仮面ライダーではないです。
・仮面ライダールシフェル レギエルスタイル
これは男性体系でちょっと頭が違うルシフェルです。頭はオーディンで腕はアザゼルで。お分かりかと思いますが本編に出てるあいつはアキエルスタイルという名前です。
・仮面ライダーアキエル 魔術師解放
アモンで解放した姿です。炎をまとう能力は便利ですね。シャイニングフィンガーもできるし。
・仮面ライダーアキエル 星解放
アスタロトで解放した姿です。ルシフェル使用時も毒を使った攻撃よりも発火攻撃の方が多い気がします。
・仮面ライダーアキエル 塔解放
ベルゼブブで解放した姿です。ライダージャンプは大事です。
・仮面ライダーヘイナ シングルモード
その名の通り一人の仮面ライダーヘイナ。黄色をメインにフードがついてたりでかなりフィメル寄り。フードが七割ぐらいで欠けてる感じです。
・仮面ライダーゼイネル シングルモード
こちらは明路の方。青色で牙があったりとタオのメイルっぽい姿ですね。緑色も入ってたりしつつ、ヘイナともどもタオより軽装っぽいビジュアルです。
・シェイドタワー
薄黄色のシェイドベルゼブブです。他同様モノクロシェイドのみ登場してました。
・シェイドジャッジメント
金の兜はカービィのサーキブルが近いです。赤いマントと布切れでできた体というデザインがお気に入り。これも本編ではシェイドモリガンでしたね。
・シェイドストレングス
鋼に紅いラインのシェイドです。これは変身者の金古少年がメチャクチャ久しぶりの登場なのもあり普通に初変身。武器の即時生成って強いねキミ。