転生したらポケモン世界だった件。ただし人類は未実装のものとする(白目)   作:水代

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今なんか変な声しなかった???

「技の使い方ぁ~?」

「そうそう、さっき『みずでっぽう』みたいなの使ってたじゃん、あれってどうやるの?」

「そんなのぉ、『みず』タイプのキミのほうが分かってると思うけどぉ~?」

「普通はね、そうなんだけどね」

 

 そこを何とか、と頼むとヌメラが不思議そうにしながらも、まあ良-よぉ~、と教えてくれることになった……やったぜ。

 

「自分の中のエネルギーは見えてるんだよねぇ~?」

「うん、まあ何となくは分かる」

「まあぁ? 途中で水出してたもんねぇ~」

 

 エネルギー。

 一番近い概念を当てはめるのならば前世の記録の中で言うところの『ポケモンカード』というやつだろうか。

 ポケモンカードのルールとして、バトルに出たポケモンが技を使用するには技ごとに決められたタイプの『エネルギー』が技ごとに決められた数だけ必要だった。

 同じように『ぼく』や他のポケモンの体内……のみならず、この世界のいたるところには『タイプ』ごとにエネルギーが存在する。

 例えば『みず』タイプであるメッソン(ぼく)ならば『みず』タイプのエネルギーを大量に持っている。

 例えば深い草木に覆われた森林地帯であるこの辺りならば『くさ』や『むし』のエネルギーが大量に存在している、といった感じだ。

 

「それを~、ぐ~っと集めて、ぎゅーっと固めて、びゅーん、って飛ばすんだよぉ~」

「擬音語多すぎて分かんないんだけど??」

 

 体内の『みず』エネルギーを……こう、ぐーっと集めて? それからぎゅーっと固めて? それで、びゅーんと飛ばす?

 

  “みずでっぽう”

 

 瞬間、指先から多量の水が勢いよく飛び出す。

 

「ふぁ!?」

「おぉ~、できたねぇ~」

「嘘やろ???」

 

 え、出来たの? 今の説明で? 何で?

 

 自分でも混乱してしまうくらいに、するっと放たれた『みすでっぽう』は真上に……つまり目の前のきのみの成る樹へと飛んでいき。

 

「お゛っほ゛ぉ゛」

 

 自分の体積にも匹敵せんばかりの大きなオボンのみを齧っていたホシガリス……の隣にいつの間にか並んで猛烈な勢いできのみを食らいつくさんとしていたヨクバリス(♂)の尻に見事にジャストミートした。というか今なんか変な声しなかった???

 

「あ、やべ」

「あららぁ~」

 

 ギロリ、と食事の邪魔をされたせいか、はたまた別の理由からか顔を真っ赤にしたヨクバリスがこちらを向いて。

 

「何すんじゃいワレぇ!」

「やべえ、逃げろ!」

「わ、わ、待ってぇ~」

 

 慌てて逃げ出そうとして、やはり足の遅いヌメラ。

 一瞬見捨てようかとおも思ったけど、ここまで世話になっておいて、それは無いだろうと考え直して慌てて拾いあげて走り出す。

 後になって気づくのだが、メッソンとヌメラでほぼ体重が同じのはずなのだが、ポケモンの体だった故かそれとも火事場の馬鹿力というやつか、普通にヌメラを担いで走れたのは幸運だっただろう。

 

「待たんかい! ワレらぁ!」

 

 ヨクバリスが怒りに燃えながら樹の上から飛び降りて……ヌメラにいた場所へと飛び降りる。

 ()()()()()()()()()()()と。

 

「あ」

「あっ」

 

 つるんっ、とギャグかよと思うくらいに見事な足の滑らせ方をしてヨクバリスがすっころび、そのまま顔面から地面にダイブする。

 

「ぐぺっ」

 

 そしてそのまま地面に突っ伏して……動かなくなった。

 

「え、殺っちゃった?」

「ポケモンだからだいじょーぶだよ? ……多分」

 

 最後に多分って言ったの聞こえたぞ、と言ってやりたいところだが、語尾が伸びない程度にはヌメラも焦っているらしいので今は置いておくことにしてやる。

 

「……えっと、そっとしておこうか」

「そうだねぇ、それが一番良いよぉ~」

 

 あ、語尾戻った、と思いながらそそくさとその場を立ち去った。

 

 

 * * *

 

 

「ところでヌメラって群れにいたんだよね?」

「そーだよぉ~」

「群れに戻らなくて良いの?」

「ん~、まぁ良いんじゃないかなぁ~?」

「適当だなあ」

「何とかなるさぁ~、なんくるないさぁ~」

「キミどこの地方のポケモン???」

 

 もしかしてオキ〇ワ出身だったりするのだろうか。

 ポケモンになって当たり前のようにこうして会話しているのだが、実際のところ声帯を震わせて人間の言葉を喋っているのではなかったりする。

 というかそもそもよっぽどアレなポケモンでないと人間の言葉が発音できない。

 じゃあどうやって会話しているのかと言われると、ポケモンは鳴き声にそのまま意思を乗せれるのだ。

 鳴き声に乗せられた意思は同じポケモンならば理解できるらしい。

 

 つまり先ほどの会話を音だけ聞くとこうなる。

 

メソ(ところで)メソメソ(ヌメラって群れにいたんだよね)?」

ヌメ~(そーだよぉ~)

メソメソ(群れに戻らなくて)メソ(良いの)?」

ヌ~(ん~)ヌメヌメ~(まあ良いんじゃないかなぁ~)?」

メソォ(適当だなあ)

ヌメ~(何とかなるさぁ~)ヌメヌメ~(なんくるないさぁ~)

メソメソォ(キミどこの地方のポケモン)???」

 

 翻訳機ないと全く意味不明である。

 

「しかしこれからどうしたもんかなあ」

「何がぁ~?」

 

 首を傾げるヌメラを見やりながら考える。

 

「お腹は満たしたけど、ここからどうしたものかなあって」

 

 記憶が無いのだ。もしかすると忘れたのではなくて、存在しない可能性すらある。

 突然見知らぬ世界に放り出され、目的も指針も無い、そんな状況。

 次に何をすれば良いのか、残念ながら前世の記録にもこんな時どうすれば良いのか、なんて答えは無かった。

 

「そーだねぇ~。逆にさぁ、キミはどうしたいのかなぁ~?」

「どうしたい、か」

 

 どうしたいか、と言われるとこれもまた困るのだ。

 『ぼく』には記憶が無い。情緒とは記憶の積み重ねで作り上げるものなのに、その記憶が無いのだ。

 あるのは自分のものかどうか実感も無いような記録だけで、けれどそんな記録が『ぼく』という人格を構成している。

 だからこそ分からない。自分がどうしたいのか、なんて。

 

 『ぼく』にとって自分の心とは、この世で最も分からないものなのだから。

 

 ただそれでも。

 

「死にたくはないかな」

 

 道中で感じた命の危機に、心は恐怖した。

 情動が体を突き動かし、死にたくないと危険から逃げた。

 

 つまり『ぼく』は生きたがっていた。

 

 それだけは確かな事実で。

 

「だったら簡単だよぉ~」

 

 そんな『ぼく』の曖昧過ぎる言葉に、けれどヌメラはあっさりと返す。

 

「強くなれば良いのさぁ~」

「強く、か」

 

 そんな簡素で、けれど明確なヌメラの答えに、少しばかり考えて。

 

 ポケモン、ポケットモンスター。

 元はそういう名前のゲーム。そしてそのゲームの中で主人公となる『ポケモントレーナー』はポケモンを育てて、強くし、そしてライバルたちに勝っていく。

 

 つまりポケモンとは戦い、強くなることが明確な目的の一つとして設定されたゲームなのだ。

 

「そっか」

 

 記憶に無いけれど、深く記録に残るポケモンの知識は前世の『ぼく』だったら『ぼく』がそれだけポケモンを楽しんでいたということで。

 

「強くなるか」

 

 だからなのか、それとも別の原因があるのか、けれどとにもかくにも。

 

「楽しそうだね」

 

 『ぼく』の心はそう感じたのだ。

 

 

 




たびのなかま

メッソン 『ぼく』 せいかく:いのちをだいじに
┗わざ:みずでっぽう
┗うん、それはなんだか、たのしそうかな?

ヌメラ ♀ せいかく:なんくるないさぁ~
┗わざ:みずでっぽう、????、????
┗たぶんみなみのほうのでなんじゃないかなあ(しまそだち

旧作読者にちょっと質問。旧作と比べてどう?

  • 前のほうが良かった
  • こちらのほうが良い。
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