転生したらポケモン世界だった件。ただし人類は未実装のものとする(白目)   作:水代

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いや、マジちょれーわ

 

 

「誰?」

「そっちこそ誰ですわ? そこは私の寝床ですの!」

 

 寝ぼけ眼を擦りながら起き上がれば、就寝前はまだ昼過ぎだった空はすっかり暗くなっていた。

 良く寝たと伸びをしながら早くどけと言わんばかりにこちらを睨んでくるイーブイに分かった分かったと言いながら場所を空ける。

 

「ふん、それで良いですの。覚えておくと良いですわ、ここは私のスペースですの」

 

 空いたスペースにそそくさとイーブイが座り込み、鼻を鳴らす。

 台詞だけ聞くときついのだが、語尾が面白すぎていまいち緊迫感に欠けていた。

 まあ割と寝心地の良い場所ではあったが、一番重要なのはこの場所が安全であるということ、そして無駄に騒ぐと『ぬし』であるドダイトスに振り落とされるということ。

 余計な(いさか)いでこの安全圏を手放すことになるのはどう考えても悪手だ。

 

 またどこか適当に寝る場所見つけないとなあ、と歩き出そうとして。

 

「アナタ、日当たりが良いほうがよいならあっちの頭側、木陰が良いなら樹の裏が空いてますの」

 

 後ろから聞こえた声に目を丸くして振り返れば、先ほどのイーブイが『ぼく』のほうを見ながら前足であっちこっちと方向を指していた。

 

「そっか、ありがとう」

「どーいたしまして、ですの」

 

 少し照れているのかふい、と顔を背けているが頭頂部に突き出た一対の耳はぴくぴくと揺れていた。

 

 思ったほど悪い子じゃないのかな?

 

 余談ではあるが、ヌメラ先生はまだ寝ていた。というか次の日まで全く起きる様子も無かった。

 

 

 * * *

 

 

「良く寝たぁ~」

「本当に寝たね? もうとっくに陽が昇ってるよ?」

 

 基本的に森での生活は日の出と共に動き始めて、日の入りまでに寝床を確保する。

 夜の森は非常に危険だ、視界という不利を負ってゴーストポケモンと鬼ごっこはもう二度とゴメンである。

 

「お腹空いたぁ~」

「言うと思ったからもう取ってきてるよ」

 

 実はここ一週間で多少体も成長したのか、きのみくらいなら抱えて運べるようになっていた。

 たった一週間で? と思うかもしれないが、ポケモンなんて進化する時は一瞬である。常に適応し続ける生物の名は伊達ではない。たった一週間でも自分の体がワンサイズ大きくなったのが実感できる。

 

「とは言え進化はいつになることやら」

「何が言ったぁ~?」

「何でも無いよ」

 

 体の成長と共に、体内で生成されるエネルギー量も増えた。

 今では『みずでっぽう』もちゃんと『みずでっぽう』と呼べるだけの威力を持っている。

 多分弱点タイプのポケモンに当てればそれなりの効果は出るだろう。とは言えこの森の中で『みず』タイプを弱点に持つポケモンというのは結構少ないのだが。

 

 さらに言えば、ちゃんと威力も上がったとは言え、まだまだエネルギー総量的には大したことはないレベルでしかないのだ、故に『みずでっぽう』でも三度、四度と使っていればすぐにガス欠になってしまう。

 ゲームのように『にげる』コマンドを押せば確率で逃げ出せるような世界ではないのだ。

 バトルを吹っ掛けておきながら簡単に逃げ出すようなことはできない以上、勝つ確信を持たないままにバトルをするのは危険と言えた。

 

 ―――とは言え、いつまでってのはあるよなあ。

 

 どこまで育てば確信を持てるのか。

 いや、そもそも確信なんて持てるようになるのか。

 何せいつまでも変化の無いゲームじゃないのだ、自分が日々進歩しているように周りのポケモンたちだって日々成長している。

 下手すれば周りとの差が永遠に埋まらない可能性だって無くはない。

 

 いつかは、と思うのだがそのいつかは一体いつになるのやら。

 

 嘆息しながらも朝から運んで来たきのみをヌメラと分け合って食べる。

 すでに満腹気味ではあったが、これも成長のための糧と思い無理矢理胃の中へと詰めていく。

 はち切れんばかりに腹が膨れ上がったギブアップ。

 

「どこに入るの、マジで」

 

 なのに目の前のヌメラは『ぼく』の限界を軽々と超えてそれでもまだ食い続ける。

 明らかに体積以上に食べているはずなのだが、一体その小さな体のどこにそれだけの量が入るのか。

 

「成長期なのぉ~」

「そんな雑な言い訳で物理的な質量を無視するの止めてもらえませんかね」

 

 だったら『ぼく』だって成長期だろ、と言いたい。

 まあヌメラが多く食べるかもと思っていたのでまだきのみは残っているが、これは昼に食べる分も入っているのだ、さすがに全て食べ尽くされると困る。

 

「というわけで没収」

「えぇ~」

「えーじゃねーよ、こっちがえーだわ」

 

 ぐぅ~

 

「ぐーじゃねーよ、こんだけ食ってまだ腹鳴らしてるとか嘘でしょ?」

「えぇ~今の私じゃないよぉ~」

「お前以外に誰がいるんだよ」

 

 ぐぅ~

 

 再び聞こえた腹の音、今度はどこから聞こえたのかはっきり分ったのでそちらに視線をやって。

 

「……お腹空きましたの」

 

 こちらを、というかこちらの足元に置いてあるきのみに視線が釘付けにされたイーブイが腹の音を盛大に鳴らしながら蹲っていた。

 

「…………」

「ほらぁ、私じゃなかったぁ~」

「……いや、うん、ごめん」

 

 ヌメラがジト目で見つめてくるがそんなことはどうでも良くて、問題はあっちでヨダレを垂らしているイーブイである。

 今なおそのお腹からは盛大な腹の音が鳴り響いており、相当に空腹なのが分かる。

 少し考え、一瞬ヌメラのほうを見やるがヌメラは何が楽しいのか笑っているばかりでろくに答えも返さない。

 だがそれを勝手に了承を考えて、嘆息一つ、足元のきのみを抱えてイーブイの元へと運ぶ。

 

「お腹空いてるならあげるよ」

「え、マジですの……いやいや、施しなんて受け取りませんの!」

「えー、めんどくせぇなあ

 

 目の前にきのみを置くと、もうきのみ以外目に入らないってレベルで視線が釘付けで、口からはヨダレが洪水となって止まらないのにそれでも食べようとしないイーブイに嘆息する。

 なんか妙なプライド拗らせてるなあ、と思うのだがこの手のは何か正当化できる理由を与えないと絶対に望んではくれないだろうし……ああ、そうだ。

 

「じゃあお礼ってことで。ほら、昨日良い寝床の場所教えてくれたし」

「…………」

「えっと、どう?」

「…………」

「あ、あの?」

「わ……分かりましたの、そういうことなら頂いておきますわ」

 

 内心で随分な葛藤があったようだが、結局空腹には勝てなかったらしいイーブイが目の前のきのみへとかぶりつき。

 

「うめーですの! 一週間ぶりのまともなご飯ちょーうめーですの!」

 

 凄まじい勢いで食べ尽くされたきのみが芯と皮だけ残してぽい、と捨てられる。

 それでもまだ物足りなさそうなイーブイの顔に再度嘆息して、もう一つきのみを持ってくる。

 

「じゃあ、これもどうぞ」

「ありがとーですわ! アナタちょーいー(ポケモン)ですの!」

 

 ―――いや、マジちょれーわ。

 

 なんかこのイーブイ、悪いやつに騙されないか本気で心配になってくるくらいチョロいぞ?

 結局その後さらに追加で二つのきのみを食べ尽くし、イーブイは満足気に寝っ転がっていた。

 

 

 尚、余談だがイーブイにかかりきりで目を離した隙にお昼の分のきのみまで全部ヌメラ先生が食べ尽くしていた。

 

 あいつ絶対ゆるさん、後で覚えてろよ……。

 

 




たびのなかま

メッソン 『ぼく』 せいかく:いのちをだいじに
┗わざ:みずでっぽう
┗ちょーちょれぇ。

ヌメラ ♀ せいかく:のんき
┗わざ:みずでっぽう、????、????
┗まんぞくまんぞくぅ~。

旧作読者にちょっと質問。旧作と比べてどう?

  • 前のほうが良かった
  • こちらのほうが良い。
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