転生したらポケモン世界だった件。ただし人類は未実装のものとする(白目)   作:水代

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大惨事森林大戦! VSヨクバリスおじさん~見よ、森は紅く燃えているか!~

 逃げ始めてすぐに悟る。

 

「ヌメラ、もっと速く走って!」

「む~りぃ~」

 

 ヌメラ抱えては逃げきれない、と。

 ヨクバリスもそう足の速いポケモンではないが、なんか丸くなって転がって来ることであっさり足の速さの問題を解決してきている。

 ヌメラにあれは無理だ、だって丸くなれないし。あとネチャってるし。

 

 となるとどうにかして撃退するしか逃げる方法が無いのだが。

 

 無理では?

 

 野生の直感とでもいうのか、基本的にポケモン同士が対峙すると何となくで相手の強さみたいなのが分かる。あくまでなんとなくであって、同じくらいの実力なら実際に戦ってみなければどっちが強いかなんて分からないのだが、それでも未進化の弱小ポケモンと一度進化したポケモンの実力というのは割と明確だった。

 

 とは言えだからって諦められるわけでは無い。

 

 と、なると。

 

「ヌメラ! この近くに強そうなポケモンいる?!」

「え、えぇ? え~とぉ」

「早く!」

「リングマがいたはずだよぉ」

「どっち!」

「え、っと、あ、あっちぃ」

 

 ヌメラが指し示す方を視線を向け、そちらに向かって走りだす。

 

「イーブイ! すなかけ!」

「はいですの!」

 

 “すなかけ”

 

「ぺっ、ぺ! なんじゃこりゃ、ぺっ」

 

 蹴り上げた後ろ脚で向かって来るヨクバリスに砂をかけてまた逃げ出す。

 巻き上げられた砂埃を転がりながら受けたヨクバリスの口に砂が入ったのか、転がるのを止めて砂を吐き出す。

 

「今! こなゆき!」

「りょーかいですわ!」

 

 “こなゆき”

 

 舞う粉雪がヨクバリスのほうへと叩きつけられる。

 大した威力の技ではないが、一瞬ヨクバリスの視界が雪で隠される。

 

「というわけで逃げるよ」

「はいですの!」

「あとヌメラ! 足場崩して!」

「はーいぃ」

 

 “あわ”

 

 頭上に担いだヌメラが後ろに向けて体液でもある粘液性の泡を吐き出す。

 これでダメージを稼ぐというよりは足元を滑りやすくするためのものだが、一度に出せる量が少なすぎて先ほどまでだと足場が滑ってまともに歩けなくなるよりヨクバリスが転がって突っ切って来るほうが早かったため使えなかったやり方だ。

 

 泡で後方の足場の摩擦を奪いながら逃げ出す。

 正直まともに相手してたら絶対に負ける以上、勝てない戦いは避けるしかない。

 ゲームじゃないのだ、ポケモンセンターのような回復手段も無ければ、目の前が真っ暗になって安全地帯に移動してたりはしない。

 逃げるが勝ち、野生環境なんて割とそんなものである。

 

 このまま逃げ切れれば御の字。

 

 なんて考えたのが多分フラグだったのだろう。

 

 

 * * *

 

 

 さーて、どうしたものか。

 

 前方にはこちらを殺気だって見つめてくるリングマ。

 多分逃げてる途中でリングマがミツハニーの蜜やきのみなどの食料を貯め込んでた大きな洞のある木を流れ弾で木っ端微塵にして中身を飛散させたのが原因だろう。完全にキレさせてしまった。というか直接壊したのはヨクバリスなんだからそっちに怒れば良いのに。いや、多分両方にキレてるんだろうなあ。

 

 後方には怒りに燃えるヨクバリス。

 粘液性の泡のせいで何度か転んで木にぶつけたらしい、よく見たら頭にタンコブできてる。というかそのせいで余計に怒らせてしまった感がある。自分で追いかけてきた癖に。

 

 つまり挟み撃ちである。

 

「じゃ、横から逃げよっか」

「はーいぃ~」

「りょーかいですわ」

 

 “あわ”

 

 “このは”

 

 乱れ舞うシャボン玉と木の葉がこちらの姿を隠す。

 『ぼく』もヌメラもイーブイも身長30センチとかなり小型のポケモンだけにこの程度の目くらましでもさっと姿を消すことができる。

 

「ていうかイーブイ、『このは』なんて使えたんだ」

「使えますの!」

 

 どやぁ、とでも言いたげな顔だ。

 

「どやぁ、ですわ」

「言っちゃうんだ、自分で」

「ねぇ~、まだ追って来るよぉ~」

「しつこいなあ」

 

 後ろを見やればリングマとヨクバリスが仲良く追って来る。

 正確にはヨクバリスがこちらを優先して追って来て、そのヨクバリスの後ろをリングマが待てこら、とでも言いたげに追って来ている感じ。

 

「よし、こうなったら」

「「こうなったら?」」

「森中、全部巻き込むか」

「はぃ?」

「え?」

 

 そうと決まれば。

 

「ヌメラ、近くにいるやばそうなポケモンの生息地片っ端から教えて」

「え? えぇ?」

「一匹二匹だからこっちを狙って来るんだよ、こっちは基本的に木っ端……いてもいなくても気づかれないような弱小なんだ。というわけでもっと分母増やして紛れて行こうね??」

「えぇ~?」

「こいつ、やべーやつですの!」

「今日から毎日森を焼こうぜ!」

「『ほのお』技使えるのってぇ、イーブイだけだよねぇ~」

「私に全部押し付ける気ですわ?!」

 

 そうして三匹で後ろから追いかけてくる二匹から逃げながら周辺の『オヤブン』や『ぬし』のところに突っ込んでは逃げて、突っ込んでは逃げてを繰り返した結果。

 

 気づけば森中が戦乱に包まれていた。

 

「いやぁ……ナンデコンナコトニ」

「どう考えてもぉ~」

「アナタのせいですわ」

「いやいや、どう考えても『キング』のせいだって」

 

 

 突然、かつ今更だがこの島の縦割り構造を説明しようと思う。

 

 この島には現在島の最南西に位置する『大森林エリア』、その北の『大洞窟エリア』、東の『大平原エリア』、さらに東に『大山脈エリア』『大帯電エリア』『大雪原エリア』と六つの巨大なエリアが存在する。

 さらにそれぞれのエリアを『エリアキング』……略して『キング』がトップとして立っており、その下にエリアをいくつかの『ナワバリ』に分割してそれぞれのナワバリの主……つまり『ぬし』がいる。

 さらにその『ぬし』の下にそれぞれのナワバリの中で生きる数百、数千のポケモンたちを何十もの群れに分けて治める『オヤブン』が存在する。

 

 つまり。

 

『キング』→エリアのトップ。

『ぬし』→キングの下に集うそれぞれのナワバリのトップ。

『オヤブン』→ぬしのナワバリに住まうそれぞれの群れのトップ。

 

 という構造になっている。

 

 で、この構造が思ったより緩いというか強さが正義の野生環境の中において、絶対の強者というのは早々存在するものではなく。

 さすがに『キング』が簡単に交代することは無いのだが、それ以下の『ぬし』などは『オヤブン』からの下剋上を食らって地位が上下したりすることもあるらしい。

 さらにその下の『オヤブン』などはほとんど毎日のようにナワバリのどこかでその地位を巡って骨肉の争いがあるらしい。

 

 相手より優位に立ちたい、社会の中で上の地位になりたい。

 そういう願望はまあニンゲンだろうがポケモンだろうが変わりないようで、そして集団のボスという地位は分かりやすく優位な立ち位置だ、となればそれを巡る争いは必然とも言える。

 

 とは言え下剋上とは早々簡単に為せることではない。

 

 そもそも強いからこそ群れのボスになるのだ。

 つまり普通に戦っても勝てない、だからこそ下剋上とは簡単なことではない。

 

 だがひとたび騒乱が起これば、群れのボスが隙を見せれば、野心を心中に抱いた下が上を目指すために動き出す。

 

 そんな動きが『ぼく』たちが森に起こした騒乱の中で一つ、二つと重なっていき、重なった動きがさらに次の争乱を起こし、気づけば森の中が戦国時代に突入していた。

 

 そしてそんな戦乱の発端たる『ぼく』たちは。

 

「よし、ヨクバリスも撒いたし、ほとぼりが冷めるまでどこか別のエリアにでも行こうか!」

「えぇ~」

「こいつ、ひでーやつですの!」

「え、じゃあ残るの? この森に?」

「洞窟とかどうかなぁ~」

「草原のほうが良いに決まってますの!」

 

 やっぱこいつらも十分やべーやつなんだよなあ。

 

 途中で放ったイーブイの『ひのこ』のせいで一部森林火災が起きた森を背にしながら、そんなことを思った。

 

 




いつのまにか イーブイが なかまに なっていた。
たいへんだ もりが やけて しまった。
メッソンは そそくさと にげだした。




たびのなかま

メッソン 『ぼく』 せいかく:いのちをだいじに
┗わざ:みずでっぽう
┗ドウシテコンナコトニ……ドウシテ、ドウシテ……。

ヌメラ ♀ せいかく:のんきもの
┗わざ:みずでっぽう、あわ、????
┗ところでぇ~、イーブイっていつから仲間になったのぉ~?

イーブイ ♀ せいかく:おじょう
┗わざ:(ひのこ、でんきショック、みずでっぽう、ねんりき、かみつく、このは、こなゆき、チャームボイス)、しっぽをふる、すなかけ、つぶらなひとみ
┗こいつ、やべーやつですの!

旧作読者にちょっと質問。旧作と比べてどう?

  • 前のほうが良かった
  • こちらのほうが良い。
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