「燈華くんにとって多分良いニュースと、恐らく残念なニュースがある」
ノーザンベースに帰還した後にそらが燈華に告げたのは、そんな言葉だった。
「…
「まずはディアゴスピーディーWRBについて、君に正式に所有権と使用権が与えられた。これで君は正式に変身を認められたことになる」
「へえそりゃあ
「ただし修理の際、出力に大幅なリミッターを付けさせて貰う」
「
「大秦寺さん渾身のプロテクトにソフィア様が封印を上乗せしたから元に戻せないし、暫くの間は十全に使えないものと思え、らしい」
「
「だからここまでが残念なニュースだ。どうやら君には所有権は有って無いようなものらしいからな」
「…じゃあ
「そのリミッターは君の成長度合いに応じて次第に解除できる、つまり制限が全て解けるころには君はもっと強くなっているわけだ」
「
なんだかんだ暫く経ったら戻されると踏んでいた燈華にとっては、良いニュースとはとても言い難かった。
「…成長する自信がないか?」
だがそらは燈華の苦情を他所に、何気なく火に油を注ぐ。
「成長できる自信が無いから、重いペナルティに感じるか?」
「は、
「成長すれば実質お咎めなしなんだろ?なら気にすることは何もない」
「
「よし、ならさっそく受けて立つ!」
そらは余裕のある爽やかな笑みで、噛みつく燈華に応えるのであった。
・・・
リベラシオン、南北のベースの両方に存在する特殊訓練場である。ここでは時間の流れが非常に遅く、短期間で力を付けるのにうってつけの環境なのだ。ノーザンベースのこの場所では、現在二人の剣士が相まみえている。そらは持っていたディアゴスピーディーWRBを燈華に手渡す。
「今の燈華くんの力を量らせてもらう、変身してみようか」
「いちいち
「そりゃ俺の父上の方だ」
「さいですかい。
「結構、それじゃあ…」
両者は間合いを取って向かい合う。それぞれがドライバーのシェルフにWRBを装填・展開し、“それ”は遂行される。
「「変身!」」
『ディアゴスピーディ―!!』
『キングオブアーサー!!』
似た音程の変身音から、2人の仮面ライダーが顕現する。どちらも本が持つ特定の具現化物体を聖剣としている剣士であり、
「…
「燈華くん、バイクが使えないとあまり戦えないだろ?まずそれを改善しないとな。とはいえ今のままじゃ君には不公平だから…」
エスカリブルは一旦後退し、せっかく持っていた聖剣をそっと置き去りにして戻ってきた。
「よし、これで俺の武装は
いきなり力を削がれたサーキュラーへの公平性を保つためのハンディマッチ、だがそれがサーキュラーの怒りに追い打ちをかけた。
「
・・・
同刻某所の裏路地にて、チューリップ帽の和装男はぶらぶらと出歩いていた。おおよそ治安のいい場所では無かったが、こういったところでしか手に入らないものが入り用である場合は仕方がない。ただでさえこの世界において希少価値のあるモノを探しているのだから、当たるも八卦という心持ちでウロウロと歩き回っている。
「しかし
などとやや意図的に不注意になっていた男は、歌舞いた柄物のスーツの二人組にぶつかってしまった。直接肩が当たった方の筋肉質の厳ついパンチパーマ男は大袈裟によろけると、すぐ隣に付いて歩いていたひょろ長いスキンヘッド男の方へ倒れ込んだ。スキンヘッド左腕はパンチパーマの体に巻き込まれ、ミシッ!と音をたてて下敷きになっていた。
「ぐっ、ぎゃああああああああああああん!!ガッヅリ折れだ!ガッヅリ逝っだ!痛っだああああああああああ!!」
スキンヘッドは割れるような絶叫をもって泣きわめいた。パンチパーマがそれをわざとらしく介抱して言う。
「あーあーあー、何てこっただよなー
「う゛え゛え゛え゛ん!と、
「おーうだよなあ御影ぇ。オメーをこんな目に合わせた奴にゃあキッチリ落とし前つけさせんとなーあ?」
片方のみが真に迫った茶番を経てパンチパーマはチューリップ帽の男にガンを飛ばし、胸ぐらを掴みかかった。
「つーわけでニイチャンよー、オメーのせいでウチの若えのが怪我したんだわ。治療費出せや、200万ほどでいいからよー」
「おやおや、そちらの方は骨折なさったんですかぃ」
「見りゃわかんだろうがよおおぉ!完ッ全に曲がっちゃいけない方に曲がって痛えんだぜえええええ!!」
「よーしよしよし、ちゃーんと治療費出して貰おうなー。こんな可哀想なんだからよー」
「ちなみに払わないとどうなるんでさぁ?」
「いいやどのみちウチのの治療費は払うんだよなー、そこにオメー自身の分が足されるか足されないかの違いってだけなんだわ」
完全に当たり屋、足すことのカツアゲである。加えて実際に怪我をしていることで同情方面からも攻める手口、実に悪辣である。
「やあ良い塩梅だあ。あっしはあんさんみたいなのを探してたんでさあ!」
パンチパーマの拘束がまるでなかったかのように、チューリップ帽の男はスキンヘッドに悠々と歩み寄っていく。
「お、オイラ?」
「そう、自分の惨めさと他人の強さを笠に着て人を責め立てて惨めにすることで安心感を覚える、そんな病んだ性根の御仁があっしにとっては最高なんでさぁ」
チューリップ帽の男は朗らかな顔で虚空から柄を取り出す。刀身は無いが、それはシェルフが付いた聖剣のグリップそのものだった。更につい最近生じた赤褐色のWRBをも取り出し、その伝承を読み上げる
『断頭キャンサー!!』
『この化け蟹の大鋏が、罪深き者の首を切り落とす…』
再び閉じたWRBをシェルフに装填し、スキンヘッドに手渡す。
「安心なされよ
スキンヘッド…御影は差し出されたグリップを受け取ると、填まっていたWRBが展開される。グリップはたちまち二振りの大鋏のような刀剣となり、御影の身体の周りを瘴気で包み込んでいく。間もなく鋭い金属音が鳴り、瘴気を内側から裂いて一人の剣士が現れる。
『甲殻寸断!』
『カニバル!カーニバル!蟹鋏剣障蟹!!』
『障蟹解禁!闇夜に煌めく積尸気の剣が、病める魂を断罪する!』
赤褐色と黒色の軽い装甲を身に纏い、歪な鋏のようなバイザーで辺りをギョロギョロ見回している。舎弟の御影のいた場所から現れた異形の剣士に、パンチパーマはたじろぐ。
「み、御影え?御影かオメー?なんなんだそのナリは!?」
「うるせーぜ富川サン…いや、富川ァ」
鋏の剣士となった御影は、指差すパンチパーマの腕にジョキン!と鋏を入れた。
「うぎゃあっ…あ?」
だが鋏が通過した腕は切断されていない。動かせるし感覚もあり、表皮が泣き別れする様子も血が吹き出る気配もない。
「な、なんだよ驚かしやがってよー」
パンチパーマは脂汗をかきながらも御影を軽く小突く。だがそれが先程鋏が通過した腕だったのがいけなかった。パンチパーマの腕はメシメシ音を立てて、あらぬ方向へだらりと垂れた。
「い、いぎゃああああああああ!!」
「説得力のためとか言って、今までさんざ痛い目に遭わせてくれたよなテメー…今度は
錆びた鋏が開閉するような不快に甲高い御影の高笑いを背に、チューリップ帽の男はケラケラ笑って去っていく。
「さあ盛り上げておくれよぅ、蟹の剣士・仮面ライダーギロチン」
いつかの明日キメてくる。