「
異変の地に湧くメギドたちを、
「
なすすべもなく掻き分けられる大群の中心にサーキュラーの求める親玉は鎮座していた。生物の怪人・マンドリルメギドの大群、その中でも他の2~3倍はあろう体躯を持つ個体が吠えた。
マンドリルメギドは長い腕を捩じり回し、回転による掘削力を伴った貫手をしなる巨躯の限りを尽くして左右双方向からサーキュラーに繰り出す。手先は勿論腕に触れることすら安否が危ういこの攻撃に対して、サーキュラーは左の輪刀を平らに構えて弾きにかかる。回転する右腕の貫手の下の辺りに僅かに触れた輪刀は逆に弾かれてしまった…が、その右腕は接触の際に僅かに転がった結果、サーキュラーの眼前スレスレで左腕とかち合うように逸らされていた。左右の腕がぶつかり弾き合ったことでがら空きとなったメギドの胴体に、サーキュラーが迅速に潜り込み輪刀の一閃を刻み込んだ。
「
爆散する親玉を背に吐き捨てるも、サーキュラーはふらついてしまう。一冊のみかつ代用とはいえ全知全能の書の一部である
「伏せろ燈華くん!『大断断《だいだんだん》』!!」
『キングスラッシュ!!』
だが脱力して倒れ込むことなら難しくはない。数秒前にサーキュラーの身体があった高さにエスカリブルが呼び出したキングカリブルの横一文字が繰り出され、マンドリルメギドの雑兵たちは胴を横薙ぎにされて爆散した。異変が収まるのを確認した
「追いつけて良かった。勝手な無茶はするな!」
「
そう、燈華は限界を超える心算で敢えてより危うい手法で戦いに臨んでいたが、車の聖剣のリミッターは未だに解除されない、聖剣の属性の恩恵無しにメギドを屠れる実力は既に十剣士のそれに追従するにもかかわらずだ。
「技がここまで研鑽されてもか。やはり燈華くんに求められているのは…」
「『
燈華は心底大きくため息をついた。薄々察していたことだが、突き付けられるといよいよ気が萎えてくる。
「…よし、成長ルートは
「…諦めが早いな?君は相当な自信家で負けず嫌いと思っていたが」
「そりゃ
燈華は起き上がって続ける。
「だからさ、俺が
「…そんなわけが」
そらは堪え切れずに燈華の両肩を掴む。
「そんなわけがないだろう!!君は自分を低く見積もり過ぎだ!」
「…」
「才能だけじゃない、努力する熱意もある!多少…いや大概危ういが真っ直ぐで前向きな精神もある!何より君も剣士達の想いの力を信じてるなら、俺と同じだ!」
「…え」
「だから諦めるな!聖剣を創りたいんだろ?俺に認めさせてやるんだろ?だったら止まるな!君ならきっと、聖剣を解放できる!」
「あ、おう、うん、ありがと?」
そらからの熱の籠ったエールに面食らい、燈華は思わずたじろぐ。
「…でも、俺別にリミッター外すのは諦めてねえよ?」
「…ん?だってさっき」
「正攻法で外せないリミッターなら、
「えっ、それありなのか?」
「通っちまえば邪道も立派な道なんだぜ!それにあんたを認めさせるってだけなら剣術だけで
「…ハハッ!」
全くもってへこたれていない燈華に、そらは思わず声を出して笑ってしまう。
「
「逆に安心したよ。でも君のそういうところは、君が思ってるより剣士向きだと思うぞ」
「だーかーらー、
ショキィン!…金物の摺り合う異様な音が唐突に聞こえる。談話に弛緩していた二人は即座に互いの背後を振り返った。
「…
「結界が解けている以上、マンドリルメギドは倒しきった。おそらく新手だ」
「どっから聞こえた?」
「わからん、だが遠くからだ」
ショキィン!…また遠くから聞こえてくる。が、今度は耳を澄まさずとも方角が判る、判ってしまう。間もなく人々の叫び声が響き渡った故に。
「急ぐぞ!」
「
「「変身!!」」
新たな異常事態に、二人の剣士が駆け出していった。
・・・
平時は人で満ちているであろう大通りは、苦痛に満ちていた。道に蹲る人々は生きている、意識もしっかりしている、それゆえに折れ曲がった腕や脚の痛みを大いに受け取ってしまっているのだ。どの者も最低1本の脚は折れていて、中には無事な四肢を探す方が早い者、無事な四肢が数えられない者まで大勢いた。
「たすけて!たすけてぇ!」
前方から怯えた男の子が駆け込んでくる。だが、サーキュラーとエスカリブルを視認したことでとっくに恐怖で染まっていた表情から更に血の気が引いていった。
「わ、わああぁ!おまえらもあのこわいヤツのなかまなの!?」
「…は?」
「いやだ!ひどいことしないで!いやだ!!」
男の子は泣きながら蹲ってしまう。自分たちに尋常ではないほど怯える相手に対して、二人は困惑を隠せない。一般人からここまで著しい恐怖の目を向けられることは現代の剣士においては珍しい、否、今回が初めてかという状況である。様子がおかしいのは男の子だけではない。痛みに苦しみながら、こちらに敵意を向けてくる被害者が何人もいる。
「…
「…っ!まさか!」
何かを察したエスカリブルが、男の子が来た方向へ走り出す。一瞬遅れてサーキュラーも後に続く。進むにつれて段々新鮮なものとなっていく悲鳴を耳にするに、この苦しみを人々に与えている元凶に近づいている。
剣士たちが変身する仮面ライダーと本の魔物メギド、両者はともに常人と異なる風貌を持つとはいえ、容姿の差は歴然である。両者を比べて前者を仲間とする者はまずいないだろう。だが
「どいつもこいつもナァ…みぃんな立派でナァ、キラキラしててナァ、幸せモンでナァ、強く生きててナァ…オイラは惨めで仕方ねぇんだよ…」
餓鬼のような妬ましさに満ち満ちた声で、その剣士は独りごちる。両手に振り回す剣の刃はしきりに開閉し、ショキン、ショキンと軋り続けている。
「これは立派なハラスメントってヤツだよナァ!オイラに対する虐待だよナァ~!!これは報いだ!オイラ以外の奴みぃんな俺より惨めに苦しめてやるんだぜ!ゲキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャ!!」
狂気の笑みで人々に鋏型の剣を振るうその者の風貌は、紛れもなく『仮面ライダー』のそれだった。
「…
「…燈華くん、聖剣を創りたいと言っていたな。ならしっかり覚えておけ。これが君がやりたいことに対して、俺や剣士の皆が恐れている最悪の事態だ」
聖剣と悪しき魂を持つ剣士という赦されざる存在、既にそれらと幾度も渡り合う運命にある燈華とそらだが、これが初の遭遇となる事件であった。
続く!
もうすぐライダー展にいけるぞお