剣士異伝 仮面ライダーサーキュラー   作:TELTELボーズ

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お待たせしました!
最近ドンブラザーズに狂ってます。


第5環「零した夢想、圧政を興す。」(前編)

 空間の歪みから割って出てきたチューリップ帽の和装男は、燈華とそらを一瞥する。

 

 「てめえ前の異変(あのとき)の怪談屋だよな。今回は…今回もてめえの仕込みか」

 「ご明察!前以上に男前な剣士になったようで、あっしも嬉しいぜ」

 

 以前から一皮剥けた燈華との数秒の睨み合いに興じていたチューリップ帽の男の足元に、ギロチンに変身していたスキンヘッドのひょろ長い男・御影が泣き笑いで縋り付く。

 

 「あぁぁぁぁアンタまた惨めなオイラを助けに来てくれたんだなあぁぁぁ。アンタだけだよオイラの味方はぁぁぁ。ありがとぉぉぉ、ありがとぉぉぉぉぉ…」

 「礼を言うのはこっちでさあ。ありがとうねえ御影高司さん、あんさんのおかげで良い盛り上がりになったよぉ!」

 

 チョーリップ帽の男は御影に笑いかけて手を翳して言う。

 

 「でも、良い出汁は出尽くしたな。悪ぃが出涸らしはここで終いだぁ」

 

 すると、チューリップ帽の男の指は木の根へと変貌し、御影と蟹鋏剣を貫いた。

 

 「…あ、あえ?」

 

 貫かれた蟹鋏剣からはシェルフの付いたグリップが浮き出て、木の根に吸い込まれる。状況を理解できない様子の御影の身体も、瞬く間に細まって消えた。木の根が引いた後には、蟹鋏剣だったものの残骸とWRBが残るのみ。

 

 「…お前、何をした」

 「見ての通りでさぁ、尾上そらさん。()の後片付け」

 

 悪気もなく言ってのけるチューリップ帽に、そらの表情は険しさを増す。

 

 「ああいう塵でも人間な以上は正義の剣士は生かすしかない。けどこの手の塵がちゃんと始末されないってのも()()()()()。だからあっしが片付けさせていただいたんでさぁ」

 「勝手(テキトー)言ってんじゃねえ!どうせお前が仕込んだん癖によ!そのせいでギロチン(ヤツ)に巻き込まれて何人の一般人(パンピー)が…」

 

 先程まで守っていた群衆を指差して、燈華とそらは気付く。悉く四肢を折られていた筈の人々が、何事も無かったかのように辺りを行き交っていることに。サーキュラー達を見て怯えた少年も、友達と無邪気にかけっこしていた。

 

 「流石にあっしも惨いと思ったから、それ込みで後始末させていただきやした。産み出した剣士にはアフタァケアもバッチリ、ってやつでさぁ」

 

 先刻の木の根は聖剣の根幹と御影の命だけでなく、その悪業の結果も吸い取っていたのだ。

 

 「剣士は世界を守り、人々から恐怖は去り、塵屑は虚しく消え去る!最高にスカッとする展開でやんしょ?」

 

 チューリップ帽の言い分に、当然納得するようなそらと燈華ではない。特に燈華は普段の様な逆上を通り越して冷たく鋭い怒気を向けている。

 

 「…人間だろ」

 「ん?」

 「人間だって言ってんだよ!どんだけ塵屑(カス)性根(メンタル)してても、御影って野郎はただの人間だ、人間だった!てめえが剣士にしなきゃ!」

 

 燈華の刺々しい指摘にチューリップ帽は頬をぽりぽり掻く。

 

 「そりゃあそうなんだよねぇ、確かにあっしが力を渡さなきゃ御影高司さんはただの気弱な屑で無意味に生き永らえてたもんで。けど、君の為にゃああするのが良かったんだぜ?環足燈華さん」

 「…は?」

 「一目見たときから面白ぇたぁ思ったんだが、どうも君は自分に対して冷めすぎてたんでねぇ。だからとびっきりの塵屑が剣士になってるの見せりゃ、火が着くと思ったわけさ!いやはや上手いこといって良かった良かった」

 

 燈華の視界が灯の点りかけた目が、眩む。

 

 「あれれ、せっかく燃えてたモチベェションが消えかかってる?おいおいそりゃあ困りやすよ、君ほどの逸材が埋もれちゃ勿体ない!」

 「俺、か?俺の発破()せる為だけに、死んだ、のか?」

 「ええぇ…そんな気に病まないでおくれよぅ。逆でさぁ逆!君のお陰で初めて、御影高司さんは意味のある存在になれたのさ!」

 

 朗らかに励ましにかかるチューリップ帽の頬に、そらの左拳が繰り出される。怒りの籠った拳を前に、しかしながらチューリップ帽は予見していたように軽く避けた。

 

 「それ以上喋るな、人の心を知らない外道」

 「心外だねえ、人の心なら全部読めらぁ。現に今の拳も読めてたんだが…何をそんなカッカしてんのかねぇ?」

 「燈華、君に非はない。心を理解しない怪物が勝手に押し付けた因縁だ」

 

 そらは燈華を庇いながらWRBを構える。幸い先の戦闘で斬られた腕も元に戻り、十全な体勢で対応できる。が、チューリップ帽の男は両手を軽く挙げて退がる。

 

 「やぁ、あっしは君らとコトを構える気はねぇんでさぁ」

 

 退いた先の空間に、再び大きな亀裂が入った。チューリップ帽の男はその中にぴょん、と逃げ込む。

 

 「元気出しな環足燈華さん、君は大いなる意味に溢れた素ン晴らしい御人だぁ!()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()し、感謝を込めて返しておくぜ!」

 

 言うや否や空間の裂け目は閉じ、元の日常風景となった。

 

 「…『返す』?どういうことだ」

 

 訝しむそらの傍らで、ふら、と、燈華が歩き出す。そして残された蟹鋏剣の残骸から断頭キャンサーWRBを拾い上げた。

 瞬間、WRBの内容が燈華の脳裏に流れ込み、いくつかの記憶が甦ってくる。燈華は思わずWRBを取り落としてしまった。

 

 「…そういうことかよ鬼畜(クソ)…ッ」

 「!?どうした!?」

 

 駆け寄るそらに、燈華は力無い声で答える。

 

 「俺だよ…このWRB(ブック)、俺が奴に売却()った物語だ」

 「…何?」

 「そこの残骸も…蟹の剣士(ギロチン)()使()()()()()()()()()廃案()()()()()…」

 

 ぽつり、と、雨が降り始めた。

 

 ・・・

 

 病室に一人、何故か何処にも異常が無いのに入院している男がいた。厳つい顔面と体格のパンチパーマの男は、辺りを不思議そうに見回す。その部屋の片隅には、空間の裂け目が開こうとしていた…




ペース落ちるし忙しくなるしで不安定な連載ですが、これからもいいねくーださい!
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