剣士異伝 仮面ライダーサーキュラー   作:TELTELボーズ

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社会人になって本作のテーマについてもグルグル考える機会が増えた今日この頃。
ついでに更新ペースガクッと落ちます。


第5環「零した夢想、圧政(あっせい)(おこ)す。」(後編)

 ・・・

 

 『ドリルマンドリル!!』

 

 この猩々を統べる両腕は

 横暴に障害を削ぎ穿つ

 

 ・・・

 

 ノーザンベース、そのうち一室の聖剣工房、そらが訪ねたその場所に大秦寺と燈華は対面していた。両者の傍らには蟹の剣士が遺した聖剣の残骸が鎮座している。

 

 「…どうでしたか、大秦寺さん?」

 「私が観たところ、この刀には燈華の鍛刀癖と似た形状があった」

 

 空気をヒリつかせて燈華に向き直る。

 

 「燈華、この刀を造ったか?」

 「…否定(ノー)だよ師匠(てっちゃん)蟹鋏剣(それ)構想中(あたまンなか)で止めてたやつだ」

 

 沈黙。だがその緊張は大秦寺の安堵のため息に破られる。

 

 「…だろうな。お前の言葉に嘘は聴こえない」

 

 そらも思わずほっと一息漏らした。

 

 「それにこの刀は製法が違う。鍛刀癖は形状だけのもので、刀身はシェルフから生えるように生成されている」

 

 シェルフ、チューリップ帽が回収した部品に相当する、WRBの伝承の具現化を行う装置である。

 

 「そこが本体…ということは、また蟹の剣士が出る可能性も?」

 「…俺の鍛刀癖(クセ)が残ってるなら、杞憂(ない)と思う。(コレ)がこっちにあるなら」

 

 燈華は懐からもう1つの回収物、断頭キャンサーWRBを机上に置く。すると表紙はひとりでに開かれ、蟹鋏剣の残骸を破片も残らず吸い込んでしまった。

 

 「…予感的中(ビンゴ)、刀身も俺の伝承(きおく)の内か」

 

 その様子を細めた目で見届けて、大秦寺は再び燈華に問う。

 

 「売った、と聞いている。この本の伝承を」

 「そうッス、()()と引き換えに」

 

 燈華は腰のポーチから金属を弾き出してそっぽ向いた。そらが掴んだそれは楠んだ銀色1色の硬貨、新500円玉がすっかり普及して久しい近頃では珍しい、旧500円玉だった。

 

 「いやー真摯(マジ)反省(わる)いと思ってるんスよ今回は!師匠(てっちゃん)四刀主達(にいさんねえさん)に口酸っっっぱく忠告(カツ)入れられてソッコー迂闊(やらか)したんでー!」

 「…燈華」

 「けど蟹鋏剣(かたな)の件まで責任追われんのは理不尽(ナンセンス)ッスよねー!脳内(アタマ)から記憶引っ張り出して来る相手じゃ情報秘匿(セキュリティ)とかいう問題じゃねッスよー!」

 「燈華」

 「結果的に被害は全部無問題(なかったこと)になってくれましたしー!?俺の利敵行為(ヘマ)逆転無罪(ノーカン)なんスよー!?ね!ね!」

 「燈華!…私は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と思っている」

 

 大秦寺の切実な一喝に燈華の大袈裟な貧乏揺すりが止まった。だか、肩は未だに震えたままである。

 

 「…子どもが、怯えてた」

 

 今までに無いほどか細い声で、燈華は溢し始めた。

 

 「希望じゃなくて、恐怖を与えた、仮面ライダーの姿が」

 

 ひとつ、心を溢す。

 

 「みんな、苦しめた、人も、剣士も」

 

 またひとつ、溢れる。

 

 「俺にも、掴めた、って、思っ、た、光は、出来レース、で」

 

 途切れ途切れの言葉とともに、涙も漏れだした。

 

 「それだけの、ために、っ…1人、死んだ…っ!」

 

 涙と嗚咽が燈華から止めどなく溢れてくる。そらは燈華のツナギの布地を握り混む手をぼすんと置いて慰めようとする。マメやささくれだらけの鍛えられた手だが、今は実年齢よりもずっと幼いように感じた。

 

 「燈華、前言に背くことになるが、そんな重荷になるような意味なんて背負わなくていい。君の心は酷く傷ついている。今はゆっくりと癒すべきだ」

 

 包まれた拳が弛む。燈華の表情も一瞬和らいだが、すぐに強ばってしまった。

 

 「ゆっくりなんて…してられねえんだよ!」

 

 燈華は添えられたそらの手を振りほどき、外した腰のポーチを工房の床に投げ付けた。

 

 「終結(おわ)ってないんだよ!決着(おわ)ってないし解決(おわ)ってないし解明(おわ)ってないし救済(おわ)ってないし贖罪(おわ)ってないし通過(おわ)ってないし沈静(おわ)ってないし停止(おわ)ってない!!何も!何かも!!だから…」

 

 そう言い終わるや否や、燈華はディアゴスピーディーと机の断頭キャンサーWRBとを握り締めて走り出ていった。

 

 「だから、俺が対峙()らなきゃいけないんだ」

 

 ・・・

 

 燈華とそれを追って出たそらが去った後の工房の床には、ポーチの中身が散乱していた。開きっぱなしで叩き付けられたのだ、無理もない。無造作にレンチや金槌、紙ヤスリ、油差しなどがひっくり返っている。

 

 「…まさかここまで思い詰めているとは」

 

 大秦寺はポーチから溢れた中身を拾いながら、渋い顔をして燈華を想う。確かにチューリップ帽の男とやらが健在である限り脅威はあまり変わらない。何も終わっていない、とは的確な憂いである。

 

 「しかし、ああも自分で片をつけることに拘るとは…?」

 

 燈華は元々自分の意味に消極的、というか無意味であることに積極的だった上に、今回は敵によって自分の意味を誘導された形である。更に燈華の性格上()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ことを考えると、チューリップ男と再会することは更に記憶を奪われる危険性に繋がり得る。これらの理由から、寧ろ徹底的に関わりを避けると大秦寺は予想していた。

 

 「む?()()は確かそらが持って行ったはずだが…」

 

 ・・・

 

 深夜未明、犇めく高層ビル群。そのうち一角の天井に、亀裂が入る。それは階下に次ぐ階下に波及し、やがて建物全体が崩れ去った。

 ここに、鉄血の恐怖統治が始まった。

 

 ・・・

 

 『断頭キャンサー!!』

 

 この化け蟹の大鋏が、罪深き者を千切り刻む。

 甲羅の先の川を横切るには、対価が要求される。

 

 ・・・

 

 早朝より都市部で相次ぐ異変に対して、神代兄妹が派遣された。街のあちこちにほぼ原形を留めない高層ビルのなれの果てが乱立し、瓦礫と血痕が散らばる惨状。

 

 「酷いな…砲撃か?」

 「そうと仮定して射手を探します。お兄様は残った建造物に注意してください」

 『狼煙霧虫!』

 

 デュランダルに地上を任せ身体を煙と化したサーベラは、ビル群の全高に迫る上空へ飛翔してゆく。破壊の痕跡から、全ての破壊は同一の射出点から繰り出されていると確信できた。残存する中で一際高みにある摩天楼の屋上には、果たして下手人が立っていた。

 白いボディに4色のアクセントを含むかの()()は、鋼の肉体と言うに相応しい重い足音を響かせて踏み込む。小豆色の紋様が浮き出た右腕には斧型の剣が握られており、出鱈目で力強い投擲フォームからその斧剣が勢いよく放たれる。大きな礫と化した斧剣は、まだ形を保っているビルに向けて飛んでいた。そうはさせじと飛んできたサーベラが必殺技を繰り出す。煙の体積と昆虫のバイタリティを、剛力に長けたカブトムシの角の形で具現化する。

 

 『超狼煙霧虫!!』『昆虫煙舞一閃!!』

 「はあっ!」

 

 その一撃はしっかりと斧剣を捉え、地上へと叩き落した。だが突き落とされた斧剣が地面に突き刺さった瞬間、その威力の真価が発揮される。

 

 『重圧!』『版読撃!!』

 

 すると斧剣の着弾地点の周囲50m近辺に著しい重力が発生した。道路はみるみる陥没していき、その上にある車や標識・信号機までもぺしゃんこにされてしまった。

 恐ろしいことに、着弾地点周辺を襲った重圧は上空に留まるサーベラにも影響し、空を舞える煙の剣士が落下を強いられる異常事態を引き起こした。

 

 「玲花!」

 

 駆けつけるデュランダルを、煙の像が御す。狼煙霧虫の発動が地表への激突に間に合っていたのだ。

 

 「未知の白い剣士を確認しました。ここで奴を待ち構えます!」

 

 いかに未知と言えど剣士、力の源と思わしき斧剣を手放しているならば必ず回収しに来るだろう。サーベラとデュランダルはそこを叩くつもりだったが、そうは()()が許さなかった。

 

 『だめだめだめだめダメでーす!!オマエ達に来られちゃ困りまーす!!』

 

 今度は足元から剣が伸び、亀裂が拡がる。サーベラとデュランダルは寡黙な剣士と雄弁な剣に引き込まれて、この場から隔離されてしまった。

 

 『サブキャラのオレ達はー、別の場所で遊ぼうぜ!!』

 

 その言葉を最後に亀裂は閉じ、すぐ後に二人の人物が相対する。一人は纏まりきらない赤い総髪の青年、燈華。もう一人は白い生地に色とりどりの焔刺繍があしらわれたスーツを着たパンチパーマの男、名を富川(とみかわ)敦郎(あつろう)といった。

 富川が斧剣を手に取る様を見て、燈華は荒んだ声で問う。

 

 「その斧剣(かたな)…てめえチューリップ帽の手先(パシリ)か?」

 「パシリだぁー?馬鹿言うんじゃねえ、奴は知っているだけなんだわ、貢献を捧げるべき『王』はこの俺ってことをなーあ?」

 

 着弾時に斧剣のシェリフから外れた本は勝手に開き、伝承を読み上げる。

 

 『鋼の王様!!』

 『とある一糸まとわぬ王は、剛なる肉体で我が道を進む…』

 

 瞬間、燈華の脳裏にまたも記憶が蘇る。先日に比べて朧気ながら、()()()()()()()()()()()()ことを確信するには充分であった。

 そのWRBは斧剣のシェリフに再装填され、ストーリーページと共に剣士の鎧を展開する。

 

 『重版出来!』

 『圧制剣!』『重圧!!』

 『状況を打破する鉞の剣が、統べて束ねて君臨する!』

 「『圧制の剣士・仮面ライダーラブリュス』、それが世界の王たる俺の名前、らしいぜ。」

 

 金色の刃を薙ぐ斧を模したバイザーが燈華を見下す。その視線がやがて加害行為へと至るのは想像に難くない。

 だが燈華はその目線に特に動じることはなく、サーキュラーに変身しながら別のことに思いを馳せていた。

 

 『最後に面白い話も()()()()()()()()()()やしたし』

 『君は()()()()()()()()()()素ン晴らしい御人だぁ!』

 

 チューリップ帽の男の台詞が反響する。道化役と原案1件、だけではああも複数であることを強調するには弱い。

 

 『これなら5()0()0()()は出したって惜しくねえや。受け取りな少年くん』

 

 そして燈華はポーチの中に増えた()()()()5()0()0()()()()1()()()()()()ことに、既に気づいていた。

 

 「てめえも俺の罪過(あやまち)なんだな…圧制の剣士(ラブリュス)…!」

 

 サーキュラーは歯を食いしばってラブリュスと刃を交える。

 燈華のポーチの中で増えた貨幣は6枚。伝承5つ分相当の清算は、未だ済んでいなかった。

 

《続》




意外と使い勝手の悪い剣士ばっかりだったぜ。
おかげで構成大変だぜ。

この小説は私のTwitterで挙げてる装動オリジナル剣士を基に書いてます。良かったら下のリンクも見てね
https://twitter.com/teltel_fumibo/status/1317730772095168518?s=20&t=ZJwglVRPuEDpn8HO-m7WqA

今回の挿絵代わり⇓
https://twitter.com/teltel_fumibo/status/1512810825786195969?s=20&t=aPp742ZWiy3kunO0S3799g
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