ようこそホワイトルームが無くなった世界へ 作:好きjaなくないない無い
「でもよー。具体的にどうすんだ?綾小路。」
昼休み。売店で買ったおにぎりを頬張りながら池が聞いてきた。彼も山内も親友のためならばと快く協力してくれた。ここにいない人たちもいるがオレは今後の方針を話すことにする。
「とりあえずは情報収集だ。些細なことでもいい。被害者のCクラスの生徒についてや目撃者など。情報が入り次第教えてほしい。」
「それなら私、役に立てるかも?」
そう言って立ち上がったのは櫛田。彼女の顔の広さはみんな知っている。それに彼女のコミュニケーション能力なら初対面の人でも情報をもらえるかもしれない。
「オレもそれやる!」
次に池。彼の顔の広さは詳しく知らないがコミュニケーション能力に関しては文句はない。
「なら、櫛田と池、平田達もまずは情報収集からだ。何かわかったら明日教えてくれ。」
「わかった。」 「オッケー。」
須藤のためなのか、ポイントのためなのかほとんどの人が協力してくれている。オレも自分のやることをやらないとな。
「綾小路くんは何をするの?まさか自分だけ何もやらないわけないよね?」
一致団結していたクラスの雰囲気が一気に静まり返る。発言者は篠原。先ほどオレに憎悪の視線を送った張本人であり、おそらくだがオレは彼女に嫌われている。しかし困ったな。秘密裏に行動するためにも気今からやる事を話すわけにもいかない。限られた時間で良い言い訳を考えていると、
「それなら心配ないわ。綾小路くんは私と確かめたいことを確認しに行くわ。それが終わり次第私たちも情報収集に回るわ。」
堀北がオレを庇ってくれた。......いや、違うな。オレと行動を共にする為に言ったのだろう。仮に彼女を置いていったらサボっていたなんて言われてみんなに叩かせるつもりなんだろう。本当に成長した。ちょっと面白くない方に......
「そういう事だ。報告するなら朝のホームルーム前にしてくれ。それ以外で逐一報告しなくても良い。」
オレはそう言って締めくくる。食べ終わった生徒から席を立ち上がって廊下に出る。三宅に篠原に井の頭、おそらく部活動の友達にあたりに行くんだろう。オレも立ち上がって目的の場所へ向かう。堀北と平田がついてきていたが特に気にはしない。
「で、どうするつもりなのかしら?みんなの前であれだけ大きく出てまさか作戦はないなんて言わないでしょうね。」
「僕にも聞かせてほしいな。何か手伝えることがあれば良いんだけど。」
「そうだな。今はまだ何も知らない方がいい。」
オレは校舎を出ながらそれだけ告げる。2人ともまだ意味を理解しなかったがオレの目の前にいたグループを見て察してくれた。
「よう綾小路。息災か?」
「お前のおかげで毎日退屈してないぞ。龍園。」
目の前にいたのは龍園。そして彼の取り巻きだろうか。男子生徒が2人、女子生徒が1人。片方の男子はだいぶひどい怪我を負っている。おそらくは須藤の件での被害者役だろう。
「まぁ今回はなかなかのことをしてくれたな龍園。てっきりお前は上昇志向しかないと思っていたぞ。」
「ククク、間違ってねぇよ。ただ実験台としてちょうどよかったのがお前らだっただけだ。」
「その言い方.....やっぱりあなた達は、」
堀北が苦虫を噛み締めたような顔で龍園を見る。彼らの非道が許せないのだろうか。
「おっと、何の話だ?今の会話のどこに俺が仕組んだって証拠があるんだよ?」
龍園はそんな堀北を軽く受け流し俺の前に立つ。
「綾小路、言っておくぜ。この学校の王は1人で十分だ。確かにお前や坂柳みたいな粒はいるが俺の敵じゃねぇ。すぐに屈服させてやるよ。」
そう言って彼らは去っていった。坂柳という生徒についてよく知らない為分からないが、恐らくは龍園も認めるほどの実力者なのだろう。
「今の様子を見るに須藤くんは騙された可能性が高いね。」
平田が冷静に彼らを分析する。こんな修羅場でこんなに冷静を保てるのは何故だろう。堀北もそうだがこの2人はクラスでもダントツで肝が据わっている。頼りになるが今はそれどころじゃない。オレはすぐに特別塔の中へ行った。
事件が起きたのは特別塔の3階。理科室がある廊下だ。オレは床に指を置く。かなりの量の埃が出てきた。おそらく本校舎と違って掃除が行き届いていないのだろう。さらにはこの人気のなさ。密会や呼び出しにはもってこいだ。
「確かにここなら須藤くんを陥れるのは難しくないかもしれないわね。でもそんなに上手くいくのかしら。今回のテストで彼も多少なりとも善悪の区別はつくようになったわ。この学校では校則を破ることがどれだけいけないことなのか、彼は分かっているはずよ。」
「堀北さんのいう通りだ。正直どうやって須藤くんを怒らせたか、それが分からない。」
堀北と平田が考察を始め、オレにも意見を求めてきた。
「今のところオレは二つ考えがある。一つは須藤が成長しないでなりふり構わず暴力を振った。これは可能性的には低いとオレも思う。」
「なら、二つ目は?」
堀北が急かすように聞いてくる。
「あいつの性格から考えて何かプライドを傷つけられたんだろう。例えばあいつの親友である池や山内をバカにされたとかな。」
「!!なるほど。それなら須藤くんは手を出してくるだろうね。でもそんな作戦を思いつくなんて、さすが龍園くんだね.......」
平田が握り拳を作りギュッと握りしめる。彼の優しさが龍園のした事を許せなかったのだろう。真実はわからないが須藤は根のいい奴だ。定期考査の後は授業態度も改め一月前まで貼られていたヤンキーのレッテルもクラス内では徐々に剥がれつつある。だからこそ今回の協議はなんとしても勝たないといけない。
クラスポイントのためにも......彼のためにも......
「....そうだな。あいつは、本当によく悪知恵が働くな。....だが少しばかりツメが甘い。」
「?それはどういうことだい?綾小路くん?」
平田が意味がわからないと首を傾げる。しかし、堀北は
「なるほど。確かにここには何も証拠がないわね。だけど今回はそれが仇になる。」
「君たちは一体何が分かったというのかい?」
平田がわからないとばかりに両手を上げ、降参の意思を見せる。オレは別に平田を仲間はずれにしたいわけではない。しかし正解を言おうとした時、オレは階段のほうにある気配を感じた。堀北も平田も気配を察知し、階段に目を向ける。気配の主も視線に気づいたようだがまだ出てこようとはしなかったので俺は声を出して言うことにした。
「.....そこにいるのは分かっている。誰だ?」