ようこそホワイトルームが無くなった世界へ   作:好きjaなくないない無い

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裁判編(4)

 

 

 

「朝のホームルームだが、協議の日程が決まった。明日の放課後、正確にはホームルームから30分後だ。各クラスからそれぞれ三名ずつ協議の場に出てもらう。須藤は絶対に出てもらう。もう2人はどうする?」

 

「僕です。」「私です。」

 

間も無く手を挙げたのは平田と堀北。

 

「ほう。てっきり綾小路が行くと思っていたが...渋ったのか?」

 

「いいえ。綾小路くんにはまだやってもらわなくてはいけない仕事があるので。それに今回の騒動は彼のおかげもあって僕達2人でも十分戦えます。」

 

平田の自信のこもったその言葉にクラスは安心する。

 

「なかなかの自信だな。その言葉が本当か否かは私も特等席で楽しませてもらおう。それでは今日も一日頑張ってくれ。」

 

いつも通りの短いホームルームが終わり先生は早々に教室を去っていった。

 

「ねぇ!平田くん。どんな証拠見つけてくれたの?」

 

ホームルームが終わり次第、平田の恋人である軽井沢が平田に聞いてきた。他の生徒も集まってくる。

 

「ごめんね。今は教えられないんだ。Bクラスからの要求で...」

 

「そっかー。残念だなー。」

 

軽井沢が分かりやすく落胆する。

 

「けど大丈夫。今回は絶対に負けない自信があるよ。綾小路くんと一之瀬さんのおかげかな。」

 

ここで平田がオレを持ち上げる。鋭い彼には最近オレがある一定の人物に対して嫌われているのにも気づいているだろう。そのためだろうか、

 

「へぇー、やっぱり綾小路くんてすごいんだねー。頭もいいし、なんでこのクラスなんだろうね。」

 

平田の話に早速軽井沢が援護射撃する。クラスカーストトップの2人の話の流れは間違いなくこちらへと視線を向けた。ここで質問に答えないのもおかしな話だ。

 

「自分で言うのもなんだが入学試験でちょっとつまづいてな。そのせいだと思うぞ。」

 

オレの答えにみんなが納得してくれている中、オレは堀北が本当のことは黙ってくれと心から願っていた。

 

 

 

 

 

その日の放課後。オレは一之瀬とショッピングモールに来ていた。

 

「悪いな。一之瀬。忙しい中付き合わせて。」

 

「いいのいいの。私も協力するって言ったんだからこれくらいやらないと。」

 

ショッピングモールに来たのは気まぐれじゃない。今回の協議を左右させるほどの品を買いに来た。市瀬にも協力してもらいなんとか明日の協議に間に合いそうだ。だが、懸念点もあった。今まさに声をかけてきた人物だ。

 

「おーい。一之瀬ー。」

 

「あ、吉田先輩。こんにちわ。」

 

彼がしばらく後ろをついてきていたのは分かっていたが、自分から声をかけるのも違うと放置していた。今俺たちがいるのは目的地である電気店の近くで、比較的人通りの少ないところだ。なるほど、さっきまでは周りを気にして話しかけて来なかったのだろう。

 

「偶然じゃん!暇なの?ならちょっとカフェでも行かね?」

 

隣にオレがいるのに暇なわけないだろう。こんな空気の読めない奴にはなりたくないな.......

 

「今ちょっと綾小路くんと買い物をしなくちゃいけないんです。ごめんなさい。」

 

一之瀬はこんな奴でも優しく丁寧に接しているのか。オレや堀北ならもう関わろうとはしないだろう。(尤もそんな相手が出来るはずもないが)

 

「....なんでこんな奴といんだよ?」

 

吉田先輩がこちら(ほとんどオレ)を脅すような目で睨んでくる。一之瀬が若干怯えて後ずさる。計画のためにもオレがここで身を引くわけには行かない。

 

「吉田先輩。」

 

「なんだよ?」

 

「オレは前々から一之瀬と今日買い物に行くと話し合っていました。それを横取りしようとするのは先輩としてもどうなんでしょうか?」

 

「うるせぇぞ。綾小路。ならお前も知ってるだろう。先輩優先だ。それにそこらで買えるものなんて明日も明後日も買えるだろう。俺はお前と違って忙しいんだ。」

 

「先輩って俺の名前知ってたんですね。オレは吉田先輩としか知りませんが。どちらにしろそんな理屈の通らないバカバカしい話につきあう義理はありません。僕らは急いでいるので失礼します。」

 

彼が返す言葉を考えている隙に一之瀬を連れて彼から離れる。その勢いのまま目的地の家電量販店へ入った。ここまでくればもう大丈夫だろう。そう思ってオレは一之瀬の方を向く。そこには珍しく顔を赤くした一之瀬がいた。なぜかと考えるとひとつだけ心当たりができた。

 

オレが一之瀬の手を握っていたことだ。

 

オレは慌てて手を離す。

 

 

「.....悪い、急いでいて、つい、」

 

オレは今まで一度もこう言ったハプニングに陥ったことがないためどう対応すればいいかと迷う。

 

「大丈夫大丈夫。びっくりはしたけどね.....それよりも、準備しないとね。」

 

「ああ、そうだな。」

 

一之瀬が大丈夫(大丈夫そうには見えないが)と言うのでオレはある商品を購入するために一之瀬の後を追って店内に入って行った。

 

 

______________________________________

 

 

 

 

 

 

今日は審議当日だ。私、堀北鈴音はこれからCクラスと暴力事件について協議し須藤くんの無罪を勝ち取らないといけない。同席する平田くんと須藤くんは先に向かったらしい。綾小路くんの計画も最終段階に入った。このままいけば計画は成功して須藤くんの無罪を勝ち取れる。

 

 

「まさかお前がくるとはな。てっきり綾小路が参加するのだと思っていたぞ。」

 

声をかけられ後ろを振り返る。そこには兄である堀北学が立っていた。いきなりの奇襲に狼狽える。前々からのことで分かっていると思うけれど、私は兄さんと話すのが苦手だ。だけど兄さんのことが嫌いなわけではない。むしろ尊敬をしている。小さい頃から文武共に優秀な成績を収め、中学校からは一年生から生徒会会長を任されていた。いつもトップの成績を収めていた兄は私にとっては誇るべき存在だった。私はいつも兄と同じ行動をとった。兄と同じ合気道を習い、柔道を習った。学校の成績だって一番だった。好みの髪型を教えてくれた時は自分もその髪型になれるように努力した。しかしなぜか兄さんは私を遠ざけた。兄さんが中学校に上がった頃からこのギクシャクした関係が続いている。

 

 

 

「どうした?まさかオレと話すこともできなくなったのか?」

 

兄さんの言葉が聴こえて一気に現実に身が戻ってきた。

 

「いいえ........ 」

 

「まだ俯いた喋り方しか出来ないのなら、お前は俺にとって恥だ。早くこの学校から去れ。」

 

兄さんからの一言、私を見放したような一言。だけど私にはなぜか励ましに聴こえた。今私は兄さんからの最低評価を受けているだろう。この態度を見れば誰でも分かる。だけど私が見せたいのはそんな自信のない私じゃない。これから成長してあなたの恥にならないような私を見てもらいたい。

 

私は顔を上げるそこには一つも迷いのない兄さんの顔があった。けれど怯むことはなかった。

 

「わたし...私は、絶対にAクラスになって見せます。今の私では無理ですけど、クラスのみんなで..絶対に..... 」

 

私は途中で言葉を言えなくなった。そうか、これが私の弱点だったんだ。人を足手纏いとして入学当初は1人でAクラスを目指していた。なのに今まで綾小路くんに、平田くんに、クラスのみんなに助けてもらったから、私はこの答えに辿り着けた。

 

「...クラスのみんなで...か..。こんな短期間でその思考に辿り着くとはやはり綾小路のおかげか?」

 

「腹立たしいですがその通りです。」

 

「フッ、あいつも中々底が知れんな。いいだろう。クラスポイントの差は歴然。ここから逆転出来るものならやってみろ。」

 

私は兄さんの笑顔を見たおそらく七年ぶりくらいに....、

ありがとうございます、兄さん。私は少なからず拒絶されなかっただけで成長だと感じとる。これからの一年で私の成長を見てもらう。そして卒業後にいい知らせができるようにしたい。私にこの特殊な学校での目標が生まれた瞬間だった。

 

 

「ところで綾小路はどうした?俺は少なくともあいつもクラスから今回の協議に参加する時踏んでいたんだが.... 」

 

「ああ、彼ならこの事件を終わらせに行きました。」

 

「どういうことだ?」

 

「兄さんなら気づいていると思いますがこの事件は仕組まれたものです。もちろん中立の立場からは証拠なしに何を言っているんだと思うでしょうけど。けれど綾小路くんはすぐに打開策を用意しました。」

 

「ほう、なら今から行う協議は茶番になるわけだな。」

 

「その通りです。」

 

兄さんは綾小路くんの名前を聞き少し笑ったように見えた。彼の活躍が嬉しいのだろうか。もしそうなら少しばかり彼が羨ましい。だけど実際彼はあり得ないほどに超人だ。勉強も運動(運動している場面は表記していないが)もトップレベル。それに頭の回転が速い。ハッキリ言って彼は化け物だ。認めたくはないが兄さんとタメを張るだろう。当然兄さんが勝つだろうけど。だけど日に日に彼と兄さんの勝負が見たいと思ってしまっている私がいた。

 

 

 

 

______________________________________

 

 

「私は特別棟の奥で須藤くんとCクラスの三人が揉めあっているのを目撃しました。これがその証拠の写真です。」

 

ただいま佐倉さんは私たちのために生徒会長もいる協議会で証言してくれている。彼女のカメラから取り出した画像には須藤くんとCクラス三人がしっかり写っていた。

 

「これは証拠ではないですが、盗み聞きしている時須藤くんから喧嘩を仕掛けた様子はありませんでした。」

 

「ハァー。」

 

ここで大きなため息がひとつ。Cクラス担任の坂上先生だ。

 

「そんな証拠もない話をここでするなんて馬鹿なんじゃないですか?これだからDクラスの不良品は。」

 

怒られた。と解釈したのか佐倉が落ち込む。だが彼はそんなことを言える立場ではないことはここにいる誰もが分かっていることだろう。

 

「なら坂上先生にお尋ねしますがあなたの生徒三人はどちらにいらっしゃるのですか?」

 

坂上先生は眉を動かす。出来るだけ反応したくなかったのだろう。だが動揺を見せたならどんどんそこを突いていこう。

 

「約束の時間も守れないなんてどういう教育をすればいいのでしょうね?」

 

「はっ、言ってくれますね。どうせあなた達が足止めでもしているのでしょう?綾小路くんがここにいないことが何よりの証拠。生徒会長もそう思いませんか。」

 

1人では通用しないだろうと思ったのか、あくまで中立の立場の会長に同調を求める。たが、

 

「それこそ、証拠のない話じゃないのか?坂上先生?」

 

茶柱先生が援護してくれた。完全にカウンターを食らった坂上先生は奥歯を噛み締める。その時、

 

「会長。被害者のCクラス生徒三名がお見えです。」

 

「そうか。通してくれ。」

 

「分かりました。」

 

確かあの人は生徒会書記の橘先輩。彼女は兄さんの要求を受けて彼らを入室させる。その三人はどこか戦意がなく、そして不安な顔をしていた。

 

「遅かったじゃないか。石崎達。どうしたんだ?」

 

彼らが来たことに安心したのか、坂上先生は少し元気を取り戻した。しかし次の一言でその元気はどこかへ飛んでいった。

 

「生徒会長。今回の事件、取り下げてもいいでしょうか。」

 

「何を言っているのだ!石崎!!」

 

真っ青な顔をした石崎がそんなことを言ってきたのを坂上先生は怒鳴り返す。

 

「言っただろう。この事件はお前達の方が圧倒的に有利だ。この学校ではそう言った蹴落とし合いは日常茶飯事だ。使わない手はないと!」

 

坂上先生は必死に彼らに説得を向ける。どうやら彼はこの事件の真相を知らないらしい。

 

「先生、今回の事件では、僕たちにも非があったことが分かりました。だからこそ事件を取り下げるべきだと思いました。」

 

「しかし!.......分かった。お前達がそう決めたのならそれに従おう。」

 

坂上先生はまだ何か言いたそうだったが彼らの決意が変わらないことを察して諦めた。ここで兄さ、いや生徒会長が口を開く。

 

「只今、彼らからの事件の取り下げが出された。Dクラスはこれを受け入れますか?」

 

 

「フッざけんな!オレは納得いかねぇ!ならコッチから訴えてやるよ!」

 

すわっていた須藤くんが立ち上がり大声を出す。当然といえば当然だ。彼は彼らに陥れられ停学や退学の危機にあった。そんなピンチがなくなりこんなチャンスが来れば乗らないはずがない。しかし、

 

「我々Dクラスもこれ以上追求する気はありません。この協議は無かったことにしましょう。」

 

「ハ!」

 

そう言う平田。その言葉に驚く須藤。

 

「Dクラスの決定によりこの協議は無かったことになる。では今日はこれで終わりだ。各クラス解散して15分後にはこの部屋から退出してくれ。」

 

そういって生徒会長と書紀の橘先輩が部屋を後にする。Cクラスもその後に続く。

 

「私たちも出ましょう。」

 

「いやいや、ちょっと待ってくれ!」

 

放心していた須藤が目を覚まして大声を出す。距離が近い分鼓膜にまで響いた。

 

「どうしたんだい須藤くん?」

 

平田くんが冷静に彼に聞く。

 

「どうしたもこうしたもねーだろ!このまま協議を続ければあいつらがペナルティを負うんだぞ。やらない理由なんかねぇだろ。」

 

少し落ち着いたのか後半から声量が落ちてきた。

 

「先生もそう思うだろ。今回の件で有罪の判決だったらクラスポイントに影響が出る。ならあいつらのクラスポイントを減らすチャンスだったんじゃねぇのか?」

 

須藤くんがここまで冷静に物事を見られるとは、入学時の彼からは思いもしなかった。これも彼の影響なのだろうか。

 

「確かにそうだな。少し驚いたぞ。お前がそこまで考えているなんてな。」

 

「いや、そこは今いいだろ。」

 

「そうだな。悪い悪い。つい揶揄いたくなっただけだ。そういうことだ。堀北、平田、答え合わせしてやれ。」

 

先生は残りの解説を私達に投げて職員室へと戻っていった。

 

「堀北さん、彼のところで説明した方がいいと思うんだけど.....」

 

彼、とは私達の中では1人しかいないだろう。

 

「ええ、そうね。そうしましょう。」

 

「あ、おい。彼って誰だよ!」

 

後ろから須藤くんが質問を飛ばすが私と平田くんは答えることなく特別棟に向かう。

 

 

 

______________________________________

 

 

特別棟3階。須藤くんの嘘の事件現場だ。着くと彼は近くのベンチに座っていた。その近くには一之瀬さんもいる。彼女は私達に気づくと手を振ってきた。

 

「おーい、堀北さーん。平田くーん。須藤くんはどうだった?」

 

「見ての通り無事よ。あなた達のおかげね。」

 

「にゃはは、そんなことないよ。作戦も全部綾小路くんが決めたんだし、」

 

「そうね。彼の作戦ってことだけが少し気に食わないわ。」

 

「いや、何でだよ。」

 

 

「まぁまぁ落ち着いて。須藤くんが無事なんだから一件落着だよ。」

 

「そうだね。それじゃ私はこれを返品してくるねー。」

 

そう言って一之瀬さんは紙袋を持って特別棟を後にした。

 

「あの〜、彼って綾小路のことだよな?」

 

須藤くんはまだ状況を理解出来ていないようだ。

 

「どの彼のことかは知らないが今回の作戦を作ったのはオレだ。」

 

「そうだったのか。で、作戦って何のことだよ?」

 

「それはオレも聞きてぇな。綾小路。」

 

その声にここにいた五人が振り返る。そこにはCクラスのリーダー、龍園君がいた。

 

「よう、龍園。お前が来ることは分かっていた。」

 

「だろうな。本質は違ぇが俺達は似たもの同士だ。育ち方の違いで性格までは似つかなかったけどな。」

 

彼は面白そうな顔で私たちを見る。綾小路君も龍園君も冷静そうに見える。これならここで一戦拳を交える心配は無さそうね。

 

「そんなことより種明かしを頼むぜ。あいつらから少し聞いて大体想像はつくけどな。」

 

龍園君が綾小路君を見下す形で立ち尽くす。そのことを気にも留めず彼は語り始めた。

 

「いいだろう。これは今から1時間前の話だ____________

 

 

 

 

 




更新頻度が遅くて誠に申し訳ありません。本業がピークに達しているのでピークが終わるまでは2、3週間に一回ほどの更新となります。今年までには原作の7.....6巻までは終わらせたい!!
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