ようこそホワイトルームが無くなった世界へ 作:好きjaなくないない無い
「そんなことがあったんだね。堀北さんが行ってくれてよかったよ。」
「ああ、いてくれて助かった。」
「まぁ、私がやったことは茶柱先生を呼んだことくらいだけどね。」
あの事件から二日後の放課後、カラオケルームの一室であの日何があったのかを説明するオレ。隣にはそれぞれ平田と堀北が座っている。一昨日にあった一之瀬の件、この二人には情報の共有をすべきと思い話している。一之瀬からも了承をもらったし彼女も側近である神崎に話すとのことだ。このことは公にするべきではないで為、個室で声が漏れにくいカラオケを選んだ。
「だけど一之瀬さんに何もなくてよかった。綾小路くんもクラス移籍の件、断ってくれてホッとしたよ。」
平田がそう言って胸を撫で下ろす。オレが今回二人に話したのは2件。一之瀬の件と、星之宮先生からもらった今後の情報、そしてオレがBクラスに勧誘されたことだ。
「この先にまたポイント変動のチャンスがあるのは僕達Dクラスにとってはチャンスだ。是非生かしたいね。定期考査の例を見たら体育祭とかもありそうだね。」
「ああ、それだったら須藤も喜びそうだな。」
「そうね。」
「どうしたんだ、堀北?さっきから口数がやけに少ないな。」
そう言って先程から何か考えている様子の堀北に声をかける。
「いいえ、大したことではないわ。ただなんで星之宮先生は私ではなくて綾小路くんを勧誘したのかしら。そこがずっと引っかかってるのよ。」
思いのほか真剣に悩んでいるのでオレは絶句してしまった。平田はアハハと笑っている。
「まぁ、今後の試験でも出来る限り協力し合えればきっと勝機もあるよ。今のDクラスなら。」
平田が前向きな発言をする。
「そうだな。あと、近々Bクラスと同盟を組むかもしれない。今後のイベントでお互いに協力できるところがあれば協力するっとこだ。」
「それは心強いわね。Bクラスの団結力は学年で一番よ。Cクラスは龍園くんの独裁政治。Aクラスは坂柳さんと葛木くんの二大巨頭だそうからね。」
坂柳と葛木か。ここ最近思ったことはAクラスの情報が少ないことだ。そこはこれから取り入れていかないとな。たが、坂柳に関しては言わずもがな理事長の娘だろう。強敵に違いないな。なんせ、この前の小テストでオレと同じく満点を取ったのも坂柳だそうだ。
「ところで綾小路くん、そろそろ軽井沢さんが来るよ。もう話さないといけないことはないのかい?」
「いや、後一つだけある。」
実はこのカラオケルームに呼んだのはこの二人だけじゃない。軽井沢惠。Dクラスのカーストトップの女子生徒で平田の恋人でもある。今日は彼女にも声をかけた(正確には平田に頼んだ)が、その前にもう一つだけ話す事がある。
「やっぱりね。軽井沢さんに、いやクラスのみんなに知られないようにしたいって事だね。」
さすがは平田だ。ここに呼ばれた時点でどういう事かよく分かっている。
「ああ、それで話なんだが______________________
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「お待たせー。やっほー、平田くーん。ついでに綾小路くんと堀北さんも。」
軽井沢が来たのは話から15分後。遅刻だが、そんなことはどうでもいい。
「悪いな、軽井沢。オレがちょっと聞きたい事があるから平田越しで呼ばせてもらった。」
「別にいいけど、なる早でお願い。ねぇ!平田くん。後で新商品のパフェ食べに行こ!」
「いいよ。でもこの話し合いが終わってからだね。」
えー。どう不満を垂らす軽井沢はほっといて話を始める。心なしか平田が先ほどの会話から元気があまりない。
「それで、聞きたい事って何?」
軽井沢もおふざけを止め、真面目な顔つきで話を振る。
「ああ、今の時点、お前が知っているだけでいいから教えてほしい。オレの方針をあまり好んでいない奴はどれくらいいる?」
「.....綾小路くんってもしかしてメンタル弱いの?」
軽井沢の煽りとも言える発言を平田が止める。
「そういう事じゃないよ。多分これから先、信頼できるかって話だよ。」
「そうだ。それにもしもオレを嫌っている奴がいるならオレはリーダーをやるつもりはない。」
「ちょっと、綾小路くん!」「本気かい!」
流石に想定外なのか堀北と平田が声を上げる。
「綾小路くん。認めるのは癪だけどあなたのおかげでDクラスは戦えている。今あなたがリーダーから降りるのは得策じゃないわ。」
「そうだよ。綾小路くんの策は今の所全部成功している。この事実は曲げる事ができない。」
「二人とも勘違いしてるようだが............」
勘違いして必死に引き留める二人を落ち着かせ説明に入る。
「リーダーにならないだけだ。クラスのために知恵は貸すし、簡単に言えば裏の支配者のような存在だ。ついでに言えばオレはクラスの中でテストの点が高かっただけのリーダー代理みたいなものだ。元々コミュニケーション能力はないし、これを機にって思ったんだが、どうだ?」
「そういう事ならいいんじゃないかしら?全く驚かせないで欲しいわね。」
「僕も賛成だよ。それに、今まで苦手な立場にいてくれてありがとう。でも、何かするときは一声かけてくれると嬉しいな。」
「分かった。極力声をかける。ただ、止めないでくれよ。これからはもしかしたらオレ個人での儲けがあるかもしれない。」
「何それ!ズルい!」
オレ個人の儲け、という部分に引っかかったんだろう。たまらず反対しかけたが、
「もちろん、クラス全体にも利益があるように努力する。それならいいだろ。」
「うん。それならいいけど、綾小路くんって今プライベートポイントいくらくらいあるの?」
軽井沢からそんな質問が飛んできた。
「私も気になるわ。試験となればいつも満点でなかなかな額を独占しているんじゃないかしら?」
堀北は本当にオレが悪く映るのが好きだな。まぁ、別に気にしていないから.....本当だぞ...。
「今ちょうど56万ポイントだ。」
入学時にもらった10万ポイントに試験で合計25万ポイント、そして一昨日の件で25万ポイントも入った。ついでに言うなら今月の一万ポイントも。携帯を見せるついでに、たった今きたメールの返信もする。
「すごっ!なんでそんなにもらえるの?」
「勉強を頑張ったからだ。それに俺の場合は出費が少ない。ここ二ヶ月で5万ポイントほどだしな。」
「むぅー。」
軽井沢を落ち着かせてオレは彼女を呼んだ本題を聞くことにする。
「話が逸れたが、聞かせて欲しい。どのくらいの人数がオレに不満を持っている。」
「オッケー。まず女子は、さつきちゃんに井の頭さん、あと園田さんと東さんに西村さんとかかな?男子ではあまり聞かないけどねー。」
「やっぱり女子が多いか。5人ほどだと思っていたが意外といるんだな。」
「そうねー。でも井の頭さんとかも嫌っている原因はさつきちゃん、じゃ分かんないか、篠原さんだよ。綾小路くんが仕切って勉強会した時に篠原さんと仲が良かった人たちと離ればなれになっちゃったのね。さつきちゃんが部活動があって夜の部しか出れなかったからね。それでちょっとばかりその人達と疎遠な関係になっちゃったらしいのよ。」
「そうだったのか。」
そればっかりは本当に想定外だ。彼女には悪いことをしたな。
「あーでもでも、私は綾小路くんのこと好きだし。私の周りにいる女子もそんな感じだと思うよ。クラス内でも男子の中だったら綾小路くんの人気は間違いなく男子で2番目だよ。」
1番目は言わずもがな平田だろう。他の女子には嫌われていない。これが知れただけで今日は収穫だ。
「分かった。なら今日聞きたいことはここまでだ。平田、軽井沢と遊ぶんだろ。楽しんでな。」
「ありがとう。じゃあ、お先に失礼するよ。」
「やった!平田くん。カフェ行こ!」
そう言って平田は軽井沢と一緒にカラオケ部屋を出た。オレはカラオケのたいざい時間の延長の為、伝票を持って部屋を出ようとする。
「待って。」
それを止めたのは堀北だった。
「どうした?まだ何か話す事があったか?」
「いいえ。あなたと話がしたいのよ。あなた程の人材が、どんな人生を歩んできたか。あなたのことが知りたいの。あなたは....一体何者なの?」
流石にここまで派手な動きを見せればそんなことを聞かれても仕方ないか。だが、堀北を、平田を、須藤を、みんなをオレの過去に巻き込むつもりはない。ホワイトルームという非現実的なものに取り憑かれるのはオレだけでいい。だけど................
「今は言えない。これからも言うつもりはない。オレの過去にみんなを巻き込みたくないからだ。ただ.....」
「ただ?」
オレの途切れ途切れの言葉に堀北は聞き返す。
「もしオレが言おうと思った時があったら、聞いて欲しい。これはお願いだ。だからそれまでは詮索をするな。」
「本当に話してくれるの?」
その気持ちに嘘はない。彼らなら、一之瀬なら、堀北なら、平田なら、オレの醜い過去を受け入れてくれると思ったからだ。ホワイトルームで1番の成績を保持した代償に沢山の同期を再起不能へと追いやった。そんなオレの醜い過去を..........
「..........分かったわ。待ってあげる。ただ、今年度中にして欲しいわね。私もそこまで待たされるのは嫌なのよ。」
堀北の言葉を聞いてオレは安心する。
「今年度中か。分かった。心の準備をしておくよ。」
「しておくことね。それより綾小路くん。なんでカラオケの延長をしようとしているの。あなたと二人で歌う趣味なんて持ち合わせていないのだけれど。」
「安心しろ。オレもだ。」
「じゃあ何で?」
オレは言葉を出さずに携帯を堀北の前にスライドさせ、その画面に出されたメールを見せる。
「一之瀬さん?今からここに来るの?」
「ああ、今からさっき言っていた同盟について話を詰める。向こうも二人らしいし、こっちはお前に同席してもらいたいんだが構わないか?」
「別に構わないけど何でこんな急に決めるの?同盟の話は昨日の今日なのだからもうちょっと落ち着いてからでもいいんしゃないかしら?」
「オレもそこは気になっているが善は急げだ。安心しろ。条件次第ではしっかりと断る。オレが不平等な同盟を呑むと思うか?」
「そうね。あなたなら大丈夫ね。ちなみに私を残したのは私をあなたの右腕にでもするつもり?」
「まさか、頼んでもやってくれないだろ?これからは多分お前と平田がクラスを引っ張っていくだろ?同盟の話くらい聞いて損はない。」
「確かにそうね。」
堀北はそれ以上何も言わずにこれからここに来る一之瀬を共に待った。