ようこそホワイトルームが無くなった世界へ 作:好きjaなくないない無い
コメントで指摘してくれたことに注意しつつこれからも執筆していきますのでどうかよろしくお願いします。
登校中のバスの中でスマホニュースに目を向けるとそこには、「ホワイトルーム関係者の男 逮捕」と大きな文字で記されていた。無理もない。少年少女とはいえ数えきれない程の人数が廃人として再起不能になり、自殺者も出してきた。マスコミにとってはこれ以上ない程に叩きやすいニュースだろう。
「ねぇ、隣いいかしら?」
そんな声がオレの上から聞こえてきたので意識をそちらに向ける。そこには腰にまで伸ばした黒髪の少女がいた。制服を見るに俺と同じ高度育成教育学校の新入生だろう。
「もちろんだ。悪いな。ニュースに夢中になってたんだ。」
そう言って俺は二つ並んだ先の片方に置いていた学生鞄を自分の太ももの上に置く。
「構わないわ。」
そういった少女は俺が開けた席に腰をかけた。特に会話が続かないなと判断した俺はニュースに目を戻す。判決が下されるまでまだまだ時間があるらしい。しばらくは気にかける必要がありそうだ。
「そのニュース、」
さっきので会話が終わったと思っていたが、彼女が俺のスマホをのぞいて呟いた。まぁ、勝手に人の携帯を見るのはどうかと思うが、
「知っているのか?今朝起きたばかりのニュースなのにやけに耳が早いな。」
「あなた馬鹿にしているのかしら?朝見ていたニュース番組でも取り上げられていたわ。酷い話よね。自殺者を出させるほどの難易度を誇るカリキュラムなんて。」
「まぁ、たしかにな..........」
俺はそう言ってスマホの電源を切る。この携帯は学校側から配られたもので、校舎内に自分の携帯を持ち込めないらしくこの携帯でも外部に電話をしたりするのは校則違反らしい。別に電話しなくてはいけないほどの相手など俺にはいないが。
校舎前に着くとオレと彼女は降りて校門を目指す。
「ついてこないでくれないかしら。」
「なんのことだ?」
俺たちは歩きながらこんな会話をしていた。
「俺とお前が同じ高校ならルートは一緒に決まっているだろ。それをついてくるなとはとんだ自意識過剰だな。」
「なら先に行ってくれないかしら。私はあまり人と関わるのは好きじゃないの。」
「そういうことなら。」
俺は彼女よりも早めのペースで足をすすめる。校門に着くと、
「綾小路清隆だな?」
黒スーツにサングラス、いかにもSPっぽい人に声をかけられた。
「そうですが、なんでしょうか?」
「理事長がお前を呼んでほしいとのことだ。3階の理事長室へ向かってくれ。」
そう言うと、男はそのままどこかへ行ってしまった。いきなりの呼び出しではなく、父のことを含めたご挨拶ってところだろう。俺は特に不満もなく理事長室へ向かうことにした。
部屋のドアにノックをし、入るとそこには50代かそこらの男性が待っていた。
「お久しぶりです。清隆くん。と言っても私の顔を見るのはこれが初めてでしたよね。初めまして。私、この学校の理事長を務めております坂柳というものです。」
「貴方が坂柳理事長でしたか。この度は入学を許していただき大変感謝しています。」
「そんなそんな。綾小路先生には大変お世話になった身です。こんなもの恩返しのおの字にもなりません。先生のことは聞きました。とても残念です。」
彼は俺の父親のことを先生と呼ぶらしい。昔のことだろうから詮索は特にしない。
「いいえ。父はそうなって当然のことをしてしまいました。何もおかしなことはありません。」
「そうですね。さて、君を呼んだのは少々理由があってね。」
やはり、本命の話はそっちか。
「なんでしょう。」
「この高校について少し説明を、と思いまして。なんせ、あなたにとっては初めて触れる外のことですから。ですが、私からの説明よりもクラスの担任からの方がフェアな戦いでしょう。ぜひ彼女の説明を聞いてください。それとこれはお願いになりますが、どうか全力でこの学校に立ち向かってみてください。カリキュラムはホワイトルームの足元にも及びませんが、それでもこの学校には粒が揃っています。きっとあなたも楽しめることでしょう。」
「そうですか。それは楽しみにしておきます。」
理事長との会話はこれを最後に、俺は部屋を後にした。俺のクラスは一年D組だった。クラスはAからDまでの4クラスで、1クラス40人構成で学年合計160人となかなかの人数だ。俺は教室に指定された席に腰を下ろすと、
「嫌な偶然ね。」
横から聞こえる声に顔を向けると、そこにはバスで出会った少女が座っていた。俺の席は窓側の一番後ろ。生徒内で言う当たり席だ。彼女はその右隣だった。
「まぁ、否定はしない。とにかくこれからは同じクラスメイトなんだ。よろしく頼む。」
「それもそうね。特にこれといったことはないけれど、堀北鈴音よ。」
「綾小路清隆だ。」
そう言って本当に軽い自己紹介を終えるとチャイムが鳴り担任の先生が教室に入ってくる。二十代半ばの女性でクールそうな印象を持った。
「始業だ。席につけ。」
先生の一声でこのクラスで各々雑談していた生徒40人がそれぞれの席に着く。軽く当たりを見回すがなかなか個性豊かな生徒たちが集まったように見える。他のクラスもそうなのだろうか。
「おはよう。私は茶柱佐枝と言う。このクラスの担任だ。なお、この学校にはクラス替えなどはない為君たちは三年間同じクラスとして過ごすことになる。とりあえずよろしく。」
クラスからは特に返事もないため茶柱先生は言葉を続ける。
「では、この学校について説明しようと思う。まずはこの資料を配る。一人一つ取って後ろに回すように。」
そういった先生は数ページの冊子を配り始めた。
「まずはこの学校の絶対的とも言えるルールだが、この学校は実力で生徒を測る。そのことをよく覚えといてくれ。ではまずはこの学校のカリキュラムについてだ。」
それから5分ほど先生は喋り続けていた。クラスメイトも特に質問があるわけでもなくただひたすらに話を聞いていた。いや、中には聞くのが飽きて近くの生徒にちょっかいを出す人もいたが、、、、、
「最後に君たちが今持っているであろう携帯端末を取り出して、通知に来ているアプリをダウンロードしろ。」
茶柱先生の言葉を耳にして各々スマホを取り出した。俺も取り出すとそこには特に名前のないアプリがあった。ダウンロードするとそこには自分の名前などの情報が載っている。
「見ればわかると思うがこれは学生証の代わりだ。便利なことにこの機械一台で向こうに見えるショッピングモールで買い物ができる。」
そこ言葉に「マジでっ!」「ホントに!」という声が上がる中、先程近くの友達とふざけていた生徒が手を挙げた。
「センセ!それって月いくらまで?」
「落ち着け、池。これから説明する。」
先生がそう言うと、池と呼ばれた男子生徒は席に座った。
「名前の下にある通り、君たちには今月すでに10万ポイントが振り込まれてある。この学校においてポイントで買えないものはない、1ポイント1円の価値だ。」
「てことは、、、じゅ、10万円!!」
今度は池とじゃれていた生徒が大声を出した。他のクラスメイトも同様を隠せていない。
「そんなに驚くことか?先程も言ったが、この学校は実力で生徒を測る。入学した君たちにはそれほどの価値があると判断したんだ。ポイントは毎月1日に振り込まれることになっている。使いすぎてもこの端末には送金機能があるから友達にでも借りるといい。それ以外は特に自由だ。ポイントは学食や娯楽などに使える。今日はオリエンテーションだけで終わりだからショッピングモールに行ってみろ。ゲームや洋服はもちろん、退屈しないことを約束する。それでは今日はここまでだ。明日からは授業があるから遅刻しないように。」
そう言って先生は足早に教室を後にした。
「ねぇねぇ、これからどうする?」 「私、お洋服買いに行きたい!」
「なぁなぉ、これからゲーセン行かね?」「ありあり!」
いきなりこんな大量のポイントを貰ったためさぞ金持ちになった気分だろう。クラスの大半が浮かれて今後の予定を決めている。今はまだ昼前なので遊ぼうと思えば今からでもたくさん遊べるだろう。
「不気味ね。」
クラスの惨状を見た堀北が俺に言ったのかわからないが呟いた。
「同感だ。もう少し校則が厳しくてメリハリがあると思ってた。」
「あら、あなたは違うと言うの?10万ポイントも手にして。」
「ビックリはしたが、今まで余り金を使ったことはないからな。」
この話は本当だ。現にホワイトルームの時は金や通貨には触れたことがなかった。
「そう。なら散財しないことをお勧めするわ。」
そう言って堀北は教室を後にした。その後すぐに、
「みんな、ちょっといいかな?」
窓側の前の方の席に座っていた好青年が全体に話を振った。
「これからこのクラスで仲良くなるためにも、まずお互いを知らないと行けない。だから、今から自己紹介をしようと思うんだけどどうかな?」
「サンセー。」
「いいんじゃない。」
「そだねー。第一私達お互いの名前すら知らないし。」
賛成多数で彼の案が採用されかけたが、
「自己紹介なんて子供かよ。やりたいやつで勝手にやってろ。」
「俺も他人と関わるのは余り得意じゃない。またの機会にする。」
「私も.....人の前で言うなんて少しハードル高いかな。」
少数ではあるが反対勢力も。
「もちろん強制はしないよ。仲良くなるまでの道のりは人それぞれだから。今もし余り乗り気じゃない人がいるなら無理せず入ろうとしないでも全然大丈夫だよ。」
彼の言葉はとても優しいものだった。その言葉を聞いて10人ほどが教室を後にした。
「ではまず僕から始めるね。平田洋介。運動が得意で高校ではサッカー部に入る予定だよ。みんな、よろしく!」
爽やかな好青年といった感じだ。
「じゃあ、次私が。櫛田桔梗です。目標はこの学校のみんなと友達になることです。なので皆さん、どんどん声をかけてください。」
次に紹介したのは中央付近に座っていた。茶髪っぽいショートヘヤーの女の子。見るからに優しい人だが、、
ああ言う人ほど闇は深い。
「じゃ、次俺!池寛治。好きなものはかわいい女の子で、嫌いなものはイケメンだ。彼女募集中だから気軽に声かけてくれ!」
彼も先ほどから目立っていた少年だ。明るい性格の持ち主で、なかなか面白い。
「なら俺も!山内春樹って言うぜ!小学校の頃は卓球で全国大会に。中学は野球部でエースで背番号は4番だ。けど今怪我してるからリハビリ中だ。よろしく。」
.....嘘だ。間違いなく嘘だ。なんせ彼にはそれに相応しい筋肉は身についていない。彼こそが世に言うホラ吹きなのだろう。
「じゃあ、次は君。」
平田が次に指名したのは俺だった。先を???立ち上がり、
「綾小路清隆だ。苦手なものは特にない。趣味は読書だ。3年間よろしく。」
「なんか薄くなーい?」
「もっと言うことあったでしょ。」
なぜか分からないがバッシングを受けた。
最後に残ったみんなで互いに連絡先を交換し解散することになった。
「綾小路くん。よかったらお昼一緒にどうかな?」
このまま帰る予定だったが、平田に呼び止められて俺は振り返る。
「別に構わないが、他にも誘わないのか?」
「今日これから誘える人は特にいなかったかな。男子はゲームセンターに、女子は服屋に行っちゃったからね。」
「そうか。なら行こう。」
そう言って俺と平田はショッピングモールへ向かう。ショッピングモールの一角に格安のイタリア料理店があった。メイン一品とサイドメニューを頼んでも500ポイントいかないくらいだ。
「少し気になったけど、すごく物価が安いね。」
「そうなのか?余りお金を使ったことがないから価値基準が分からないな。」
「あはは、そうなんだ。けど、見た感じ外の商品よりかは安く設定されていると思うよ。」
外の世界はここよりも少し高い金額らしい。これも高校の配慮なのかもな。
「これからちょっと部活に必要なものを買いたいんだけどいいかな?」
「もちろんだ。おれもショッピングモールの全体図を把握したい。」
そう言って俺たちはレストランから出る。すると、
「ふざけんじゃねぇ!」
どこからか聞き覚えのある声が聞こえた。見ると、先ほど自己紹介をする事に否定的だった赤髪の少年だ。ネクタイの色からして上級生と何かしらのトラブルに陥っているようだ。
「お前、先輩への方の聞き方を知らないのか?これだからD組は。」
「なんだよ?俺がD組なこととなんか関係あんのかよ!」
「あるに決まってんだろ!お前みたいな不良品は相場が決まってんだよ!」
「んだとてめぇ!」
「だめだよ、すみません先輩。彼と同じクラスのものですが何があったんですか?」
平田がこのタイミングで出ていく状況把握に少し時間を費やしたのだろう。
「ああ、心配するな。喧嘩じゃねぇよ。ちょっと後輩の教育をしただけだ。そういうことだと。次からは気をつけるんだぞ。不良品の一年生。」
「なんだ.....」
「もう言っちゃダメだ。」
不良品と呼ばれて頭に血が上った少年を平田が体を使って止める。俺と平田は共に身長が175センチほどだが、彼はもっと高い。180はゆうに越しているだろう。そんな体を抑えるためには平田も全身を使うわけだ。
「ちっ。」
舌打ちをした彼はそのままこの場を離れる。しかしその道中にあったゴミ箱を蹴って行った。
「平田、俺は大丈夫だから、彼について行ってくれないか?また先輩と会ってトラブルになったらたまったもんじゃない。」
「そうだね。分かった。じゃあ今日はありがとう。」
そう言った平田は少年の跡を追う。俺は彼が倒して行ったゴミ箱を直してから寮へと戻った。
次の日からは普通の教科も授業が始まり、いよいよ本格的に高校生としての自覚が出てきた。しかし、先生が話している中で一部の生徒は近くの人たちと話している。最初はごく少数だったが、先生が注意しないことをいいことにみんながノートを取るのをやめてしまった。今しっかりと講義に耳を傾けているのはこのクラスの半分以下だろう。俺は板書だけノートにしっかりと取っておいた。正直こんな範囲はずっと前に習っている。
「あなた、もっとちゃんと授業を受けたらどうかしら?」
休み時間に堀北がこちらに声をかけた。板書以外書いていないことに気づいたんだろう。
「別にいいだろ。俺はこれで大丈夫と判断したんだから。それに俺よりも注意するべき人はたくさんいると思うが。」
「私はあまり人と関わりたくないと前言ったでしょう。隣の席の人からの情けを聞き入れられない人ならもういいわ。」
そう言った堀北はまた自分のノートに目を向ける。よく復習するもんだと感心したそこに、
「堀北さん、ノートの作り方上手だね。もしよかったらちょっと参考に見せてくれない?」
そう言って近づいたのは櫛田。彼女は自己紹介の時言った「この学校のみんなと仲良くなる」という目標を達成するべく堀北との距離を縮めようとしていた。しかし残念ながら結果は、
「櫛田さん、あなたは授業を真面目に受けているように見えたのだけど。」
「う、いやそのやっぱり心配で。」
「私に聞かないで他を当たってちょうだい。あなたなら私以外でも頼れる人がいるでしょう。それと、もう私には話しかけないで結構よ。私はあまり人と関わりたくないの。」
強烈な一撃が櫛田にクリーンヒットする。だが、
「また今度誘うね。」
めげずに笑顔を見せた櫛田が自分の席付近にいる生徒の元へ戻っていった。
「なぁ、なんで櫛田をそんなに拒むんだ?こんなこと言うのもアレだが、いくらお前でも少し言い過ぎな気がするんだが?」
俺は純粋な疑問を掘北になげた。
「多分だけど、私はあの子に嫌われている。そう思うからよ。」
意外な返しを受けた。確かに櫛田は善人すぎる。そんな奴には大抵裏があるとは言うが。俺にはまだ見抜けていなかった。
「そこまで言い切るには何かしらの証拠はあるんだろうな?」
「ないわよ。ただ、私は武道の心得を持っているわ。彼女から私に憎悪のようなものが向けられているのは多分だけど間違ってないわ。」
俺もこれからは全身だけでなくその精神まで観察しないとな。そうでなければいざ櫛田のような人に会ったときに本性がわからない。
そこから一ヶ月俺は週一回ほどで平田と定期的に遊ぶようになった。遊ぶと言っても昼飯か夕飯を食べるだけで、残りの時間は部活と女子たちに奪われてしまった。もっと遊びたいとも思ったが、俺もそこまで一人が嫌いなわけではない。読書などの時間は十分に確保できた。しかし、四月ももうあと一日で終わるという時に、それは起こった。
「では今日は、小テストを行う。」
「ええーーーーーーーーーーー!!!!」
茶柱先生の一言にクラスの大半は声に出して嫌がった。一足先に池が、
「センセー。聞いてないっすよー!」
そう叫びたくなるのも無理はない。ただでさえ茶柱先生はこれまで俺たちと最低限の会話しかしてこなかったからな。
「安心しろ、池。今回の小テストは成績に入らない。だからって適当にやるのはナシだぞ。」
そう言って先生はプリントを配り始めた。オレの手元にやってきて確認すると解答用紙に空欄が二十個ほどある。多分だが5点×20問の形式だろう。そんなことを思っていると、先生が俺の前に来て、
「理事長から『全力でやれ』とのことだ。」
そう言って去っていった。
「では、初め。」
なるべく目立たず平均点くらいを取る予定だったが理事長が言うからには仕方がない。彼にはオレに入学許可を与えてくれた恩がある。だから俺はしっかりと全空欄に答えを書くことにした。
波乱の予感がした四月は特に何もなかった。そう、四月には、