ようこそホワイトルームが無くなった世界へ 作:好きjaなくないない無い
無人島試験も最終日。
「うーん......」
「どうしたんだ?一之瀬。」
「あ、神崎くん。ちょっとね。」
試験最終日。私は星之宮先生からもらったプリントを眺めていた。そこには私達Bクラス以外のクラスのリーダーを記入できる欄があった。
「悩んでいるのか?アイツの名前を書くのに...」
「うん。龍園くんにあんなこといきなり言われたらねぇ。」
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「なんでここにいるのかな?龍園くん?」
「なんか歓迎されていないっぽいな。まぁいい。お前らにお得な情報を知らせに来た。」
そう言って龍園くんは私達の陣地に入って来た。
「今回は綾小路と同盟を組んでいないんだろ?それにDクラスの事はもう把握しているか?」
「クラス全員がリタイアしたって事だよね?」
私が言うとクラスは龍園くんは嬉しそうに笑った。
「ああ、その通りだ。びっくりだよな?俺でもなかなかに痺れたぜ。」
「本当に話が見えてこないね?冷やかしにでも来たのか?」
神崎くんが龍園くんの前に立ちはだかる。この中で一番龍園くんを危険視しているのは神崎くんだ。その龍園くんが笑いを浮かべながら近づいてきたら不快以外なんでもないだろう。そして、神崎くんは私の事件を知っている唯一のクラスメイトだ。そこも気を遣ってくれているのだろう。
「そう警戒すんなよ。お前達にとっていい情報を教えに来ただけだ。」
「何のことかな?」
聞き返すと彼はポケットからデジタルカメラを取って私に向け放り投げる。ビックリしたが、慌ててキャッチする。
「このカメラの写真を見ろ。」
1枚目の写真は島のどこかにあるだろう洞窟に入って行くAクラスの戸塚くんと葛城くんの姿が写っていた。
「これは.....Aクラスの葛城くんと戸塚くん?なんでこの写真を見せるのかな?」
「決まってるだろ?奴らが洞窟をさってから中を見たが、そこにはスポットがあった。それも占有されたばかりのものがな。」
ボタンを押して次の写真を見る。その写真にはスポットの電子版が写されていた。前の写真との時間差は3分。
「と言う事は...Aクラスのリーダーはこの2人のどちらかでちょうどこの時にスポットを占有した....」
「その通りだ。次、3枚目の写真を見ろ。最初の写真からおよそ8時間後だ。」
言われた通りボタンを操作し3枚目の写真を見る。そこにはAクラスの生徒が洞窟に入っていく姿が見えた。今度は戸塚くんと町田くん。
「これってもしかして....」
「ああ、そうだ。Aクラスのリーダーは十中八九戸塚だ。」
私は4枚目の写真を見る。すると3枚目の写真の3分後のスポットの電子版が撮影されており、先程と同じく更新されたばかりだった。ここだけ見るとAクラスのリーダーは戸塚くんで間違い無いだろう。しかし、
「そう簡単に奴を信用するな。一之瀬。」
「神崎くん。」
「龍園はそうやって相手の懐に入り込んでくる。もし仮にこの情報が合っているものだろうと、どうせこの後無茶な要求をしてくるに違いない。」
神崎くんが龍園を睨みつけながら指摘する。そんな指摘も龍園くんには通用しない。なんだったら笑って受け流している。
「おいおい、悲しいぜ同級生からそんな評価をされるなんてよ。」
「お前の日頃の行いのせいだ。で?俺達に何をさせるつもりなんだ?」
「いいね、いいね。俺のことをそこまで分かっていながら話を聞いてくれるなんて神崎は優しいんだなぁ〜。」
龍園の挑発に神崎くんは落ち着いている。
「まぁ、やって欲しい事は二つだ。一つはAクラスのリーダーの名前を書く事。これは単純にAクラスとのポイント差をこれ以上開かせることのないように。俺達2クラスだけでも100ポイント減らすことができる。そしてもう一つは、Dクラスのリーダーの名前も書いてもらう。」
「は?」「え?」
理解が追いつかず私と神崎くんはポカンと口を開け情けない声を出してしまった。
「ククク、まぁ言いたい事は分かる。Dクラスは全員リタイアしたんだからリーダーなんてわかるはずがない。そういうことだろ?」
「当たり前だ。俺達はこの無人島でアイツらと一回も言葉を交わしていない。それはお前もそのはずだろう?」
神崎くんが少し冷静さを欠けてるな。珍しい。熱くなった神崎を見て面倒臭そうな顔をした龍園は私に指示してきた。
「一之瀬、とっとと最後の写真を見ろ。」
私は言葉通りにボタンを押して、写真を見る。そこには森の中を移動する綾小路くんが見えた。
「え?」
「なんで綾小路がここにいるんだ?」
日時は試験三日目の午前10時。この時にはDクラス全員がリタイアしているはずだ。写真から伝わった情報を処理することができないままでいる。龍園は近づいて私の手からデジカメを奪った。
「アイツだけはリタイアしていなかったんだ。1週間で影を薄めながらスポットで少量だろうがボーナスポイントを稼ごうとしたのだろうな。」
綾小路くん以外がリタイアしたって事は、Dクラスの残りSポイント数はゼロだろう。だが、ルールに記されていた通りSポイントにはマイナスがない。つまり今彼は一度ゼロにしたポイントをもう一回地道に集めていると言う事だ。
「何でそんな無駄なことを...」
「さぁな。だが、奴を調子づけるのは間違っている。アイツははっきり言って化け物だ。少しでも奴の獲得するポイントを無くしたい。だから俺はお前らにこの情報を伝えたんだ。」
「信用できない.....って言いたいけど、ここまで証拠を見せられちゃったら信じないといけないかもね。」
「今回ばかりは俺もなにも求めない。俺にとっても十分利益があるからな。どうするかはお前らの自由だが。」
私達は固まっていた。いや、状況を飲み込むのには時間が足りなさすぎた。
「邪魔したな。後はお前らの頭で考えろ。」
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私はプリントに目を向ける。三つの記入欄があるがAクラスしか埋まっていない。
「あれから俺達も綾小路を探したが見つけることができなかった。だが龍園は目撃したと言っている。なかなか難しい選択だな。」
「そうだね。だから書くのやめようと思うの。」
「Aクラスだけを書くつもりか?」
「うん。確かな情報でもないし、リスクが大きいからね。それに私達はSポイントもボーナスポイントもだいぶあるしね。」
現在私達の残Sポイントは190。ボーナスポイントを合わせれば250程にはなるだろう。十分いい功績だとおもうし、ここから欲張る必要もないと思う。
「なら書かなくてもいい。外したら50ポイントマイナスがあるんだ。無茶しなくてもいい。」
神崎くんも同じ意見らしい。
「まぁ、俺には違う理由があるように見えるが......」
「エッ!.....な、な何言ってんの!じゃあ先生!これでお願いします!」
そうびっくりしながら私は星之宮先生にプリントを渡す。神崎くんは人が悪そうに笑っている。
「は〜い。では、後1時間ほどで終了なので、付近を片付けしてから試験開始時の浜辺に集合してね〜。」
「はい。じゃあみんな。後少しだけど頑張ろう。」
「おう。」「うん。」「分かった。」
この1週間でみんなとの距離もだいぶ縮まったな。そんな思いを抱きながら私は片付けをするのだった。
Bクラス
残Sポイント 190
獲得ボーナスポイント 85
他クラスリーダー指名
Aクラス 戸塚弥彦
Cクラス なし
Dクラス なし